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第4章 愛されたい それよりも
①
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あの日から、3日が経った。
【今日、会えないか?】
部長からの誘いのLine。
そろそろかと思っていたけれど、実際受け取ってみたら、嬉しくて仕方がなかった。
もう2度と、誘われないと思っていたから。
そして気づく。
私は、部長に抱かれる事を、望んでいるのだと言う事に。
だからこそ、返事をしない。
そこに気持ちがあるのなら、セフレはしない方がいい。
そんな時だった。
また部長からの連絡。
【まだ、怒っているのか?】
胸がキュンとする。
もしかして、繋ぎ止めようとしている?
【怒っていません。】
【じゃあなぜ、返事をしない。】
【もう、会いたくないからです。】
そこから、部長の返事は、途絶えた。
それはそうだ。
会いたくないなんて言われたら、普通の人なら傷つく。
私は静かに、スマートフォンを閉じた。
これで終わり。
仕事が終わって、帰る時だった。
会社の駐車場から、部長の車が出て行くのが見えた。
今、帰りなんだ。
気にしないようにしているのに、どうしても目で追ってしまう。
そしてしばらく、部長の車が走った後、私の目の前で停まった。
思わずドキッとした。
車から、部長が降りてくる。
「高杉。」
いつもと同じように、私の名前を呼んでくれる。
でも、この胸のときめきは、許されない事だ。
「何ですか?」
「二度と会わないなんて、嘘だろう?」
「本当です。」
すると部長は、私の腕を掴んで、車の中に押し込んだ。
「何するんですか?」
「今から、おまえを抱くんだよ。」
そんな言葉に、また胸が高鳴る。
ああ、私は部長に、恋をしてしまったんだろうか。
その証拠に、抵抗できない。
大人しく、部長の車の助手席に乗っているだけ。
どうしよう。
このまま、部長に抱かれたら。
車はそのまま、ホテルへと向かって行く。
「部長、停めて下さい!」
私は車のハンドルを掴んで、車を急停車させた。
「危ないだろ!」
「このまま、部長に抱かれる方が、危険です!」
知らない間に、涙が出ていた。
「高杉……」
「ごめんなさい。私、気づいたんです。」
そうだ。
私は、約束違反をした。
「ただ、抱かれるだけじゃ嫌なんです。」
「えっ……」
「部長には、私の心も一緒に、抱いて欲しいんです。」
私と部長は、見つめ合った。
「本当にごめんなさい。私の方から、体だけの関係を迫ったのに。」
私はシートベルトを外した。
「今までの事は、全部忘れて下さい。」
助手席のドアを開け、車の外に出ようとした。
その時だった。
部長に、後ろから抱きしめられた。
「忘れられる訳、ないだろう。」
胸が苦しくなった。
「高杉の事、抱けば抱く程、放したくなくなった。愛おしくて、このままの関係が、ずっと続けばいいと思った。」
私はその言葉に驚いて、後ろを振り返った。
「体も気持ちも、一緒に抱いてほしいと思ったのは、俺も一緒だ。高杉。」
「部長……」
普通だったらここで、キスの一つでもするのだろうけれど。
「私、ダメなんです。」
「えっ?」
私はゴクンと息を飲んだ。
「追いかけられると、逃げたくなっちゃう。」
そう言うと、部長の前から走り去った。
「おい!高杉!」
後ろで部長が私を呼ぶ声がする。
これでいいんだ。
所詮、誰かの一番になるとか、好き同士で一緒にいるとか、私には似合わない。
好きな時に会って、抱き合うだけ。
そんなスタンスの恋が、一番合っている。
「……ヒックッ……」
知らない間に、私は泣いていた。
どうして涙が出てくるのか、分からない。
部長と口を利かない日が、何日か続いた。
あちらは、私に呆れ果てたのか、話しかけもしてこない。
こうなると、また体が寂しくなってくる。
そんな時に声を掛けて来たのが、元カレの典浩だ。
「環奈。」
今でも名前で呼んでくるなんて、勘違いもいいところ。
そう言う私も、名前で呼んでいるけれどね。
「なに?」
澄ました顔をして、エレベーターを待っていると、典浩が私の耳元で囁いた。
「なんだか、欲求不満って顔してるな。」
私は典浩をチラッと見た。
「よく分かるわね。」
「分かるさ。伊達に3年も付き合ってないだろう。」
そう。
大学時代に付き合っていた男が、典浩だった。
初めてだった。
純愛だった。
典浩しか、愛せないと思っていた。
あいつの浮気現場を見るまでは。
「どうだ?久しぶりに。」
気づかれない程度に、耳をペロッと舐められただけで、体が熱くなってくる。
【今日、会えないか?】
部長からの誘いのLine。
そろそろかと思っていたけれど、実際受け取ってみたら、嬉しくて仕方がなかった。
もう2度と、誘われないと思っていたから。
そして気づく。
私は、部長に抱かれる事を、望んでいるのだと言う事に。
だからこそ、返事をしない。
そこに気持ちがあるのなら、セフレはしない方がいい。
そんな時だった。
また部長からの連絡。
【まだ、怒っているのか?】
胸がキュンとする。
もしかして、繋ぎ止めようとしている?
【怒っていません。】
【じゃあなぜ、返事をしない。】
【もう、会いたくないからです。】
そこから、部長の返事は、途絶えた。
それはそうだ。
会いたくないなんて言われたら、普通の人なら傷つく。
私は静かに、スマートフォンを閉じた。
これで終わり。
仕事が終わって、帰る時だった。
会社の駐車場から、部長の車が出て行くのが見えた。
今、帰りなんだ。
気にしないようにしているのに、どうしても目で追ってしまう。
そしてしばらく、部長の車が走った後、私の目の前で停まった。
思わずドキッとした。
車から、部長が降りてくる。
「高杉。」
いつもと同じように、私の名前を呼んでくれる。
でも、この胸のときめきは、許されない事だ。
「何ですか?」
「二度と会わないなんて、嘘だろう?」
「本当です。」
すると部長は、私の腕を掴んで、車の中に押し込んだ。
「何するんですか?」
「今から、おまえを抱くんだよ。」
そんな言葉に、また胸が高鳴る。
ああ、私は部長に、恋をしてしまったんだろうか。
その証拠に、抵抗できない。
大人しく、部長の車の助手席に乗っているだけ。
どうしよう。
このまま、部長に抱かれたら。
車はそのまま、ホテルへと向かって行く。
「部長、停めて下さい!」
私は車のハンドルを掴んで、車を急停車させた。
「危ないだろ!」
「このまま、部長に抱かれる方が、危険です!」
知らない間に、涙が出ていた。
「高杉……」
「ごめんなさい。私、気づいたんです。」
そうだ。
私は、約束違反をした。
「ただ、抱かれるだけじゃ嫌なんです。」
「えっ……」
「部長には、私の心も一緒に、抱いて欲しいんです。」
私と部長は、見つめ合った。
「本当にごめんなさい。私の方から、体だけの関係を迫ったのに。」
私はシートベルトを外した。
「今までの事は、全部忘れて下さい。」
助手席のドアを開け、車の外に出ようとした。
その時だった。
部長に、後ろから抱きしめられた。
「忘れられる訳、ないだろう。」
胸が苦しくなった。
「高杉の事、抱けば抱く程、放したくなくなった。愛おしくて、このままの関係が、ずっと続けばいいと思った。」
私はその言葉に驚いて、後ろを振り返った。
「体も気持ちも、一緒に抱いてほしいと思ったのは、俺も一緒だ。高杉。」
「部長……」
普通だったらここで、キスの一つでもするのだろうけれど。
「私、ダメなんです。」
「えっ?」
私はゴクンと息を飲んだ。
「追いかけられると、逃げたくなっちゃう。」
そう言うと、部長の前から走り去った。
「おい!高杉!」
後ろで部長が私を呼ぶ声がする。
これでいいんだ。
所詮、誰かの一番になるとか、好き同士で一緒にいるとか、私には似合わない。
好きな時に会って、抱き合うだけ。
そんなスタンスの恋が、一番合っている。
「……ヒックッ……」
知らない間に、私は泣いていた。
どうして涙が出てくるのか、分からない。
部長と口を利かない日が、何日か続いた。
あちらは、私に呆れ果てたのか、話しかけもしてこない。
こうなると、また体が寂しくなってくる。
そんな時に声を掛けて来たのが、元カレの典浩だ。
「環奈。」
今でも名前で呼んでくるなんて、勘違いもいいところ。
そう言う私も、名前で呼んでいるけれどね。
「なに?」
澄ました顔をして、エレベーターを待っていると、典浩が私の耳元で囁いた。
「なんだか、欲求不満って顔してるな。」
私は典浩をチラッと見た。
「よく分かるわね。」
「分かるさ。伊達に3年も付き合ってないだろう。」
そう。
大学時代に付き合っていた男が、典浩だった。
初めてだった。
純愛だった。
典浩しか、愛せないと思っていた。
あいつの浮気現場を見るまでは。
「どうだ?久しぶりに。」
気づかれない程度に、耳をペロッと舐められただけで、体が熱くなってくる。
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