29 / 30
第10章 プロポーズ
②
しおりを挟む
あれから3日間経った頃だった。
店長さんが、デザインの仕事で、本社にやってきた。
「いやぁ、お話を貰った時は、すごく嬉しかったよ。俺でももう一度デザインの仕事ができるのかってね。」
店長さんは、とてもいい顔をしていた。
「張り切って作って来たよ。ほら、」
目の前に広げれられたデザイン画。
どれも、この地域のOLさんが、好きそうなものだ。
「すごいですね。どれも、ぴったりなデザインだ。」
「当たり前よ。これでも毎日、街中のOLを見回しているんだからね。」
店長さんは、胸をドンっと叩いた。
「そうだ。これを見てくれよ。これが一番おすすめするデザインなんだ。」
テーブルに広げた何枚かのデザイン画から、店長さんは1枚の紙をピックアップした。
それは、シンプルなデザインの中に、少しだけ流行りの絞りが入れられていた。
「どうだ?女性は、こういうのが、好きだろう?」
いかにも女性の好きな物は、知っていますって言う顔の店長に、私はクスッと笑った。
「熱いですね。」
「そうよ。仕事は情熱を持ってやらないと、成功しないからな。なあ、門馬さん。」
店長は、雪人の背中を叩いた。
「そうですね。」
当たり障りのない返事。
クールな雪人には、ついていけないテンションだったかな。
「恋愛だって、そうでしょ。」
急に恋の話を始めた店長さん。
ちょっと大人の人が、珍しい。
「ここぞと言う時に、冷めた目で『去る者、追わず。』って顔をしている奴は、結局誰も捕まえられないのさ。」
そのセリフに、側にいた清水係長が、クスクス笑う。
「本当に、熱いわね。」
「だから、仕事も恋愛も、熱くなきゃダメって事。」
「その勢いで、今の奥さんも結婚に、持ち込んだんだもんね。」
清水係長は、店長の肩を突っついた。
「そのお陰で、今もラブラブ。いいぜ?好きな女と、毎日一緒にいられるのは。」
「あら、ご馳走様。」
「清水も早く、男探せよ。」
私と門馬は、仲のいい清水係長と店長の会話を、終始聞いていた。
「仲、いいね。あの二人。」
「ああ、そうだな。」
数日振りの、落ち着いた会話。
これも後どのくらいで、ビジネスライクに戻るんだろう。
そんな事を考えたら、途端に寂しくなった。
その時、秋香が私のスマートフォンを持って、ミーティング室にやってきた。
「打ち合わせ中にごめんなさい。」
秋香は、私に向かって来ると、スマートフォンを差し出した。
「ミーティング終わるまで待ってようと思ったんだけど、お母さんから何度も連絡が……」
「ええ?」
お母さんから何度も連絡なんて、家で何かあったのかな。
「ちょっと失礼します。」
私は秋香からスマートフォンを受け取って、お母さんに電話をした。
『もしもし?』
「ああ、お母さん?何?仕事中に。」
『ごめんなさいね、お父さんが何度も電話しろって、うるさいから。』
「お父さんが?」
私は立ち上がって、部屋の隅に行った。
「お父さんが、何だって?」
『離婚よ。離婚の事で、家に戻ってくるなって、怒ってるのよ。』
「何よ、その事で?」
私は、はぁーっとため息をついた。
「お父さんには、また私から話すから。」
『あのね、お母さんも反対よ?もう一度雪人君と、よく話し合って……』
私はチラッと、雪人を見た。
そのせいで、勘のいい雪人は、私達の事だと気づいたみたい。
「それは、家に帰ってから、話すから。今、ここで話す事じゃあ、ないでしょう?」
『だけどね、夏海……』
その時だった。
私のスマートフォンは、誰かの手に吸い取られていった。
「お母さん、安心してください。僕が何とかしますから。」
私は飛び上がるくらいに、その場でびっくりした。
店長さんが、デザインの仕事で、本社にやってきた。
「いやぁ、お話を貰った時は、すごく嬉しかったよ。俺でももう一度デザインの仕事ができるのかってね。」
店長さんは、とてもいい顔をしていた。
「張り切って作って来たよ。ほら、」
目の前に広げれられたデザイン画。
どれも、この地域のOLさんが、好きそうなものだ。
「すごいですね。どれも、ぴったりなデザインだ。」
「当たり前よ。これでも毎日、街中のOLを見回しているんだからね。」
店長さんは、胸をドンっと叩いた。
「そうだ。これを見てくれよ。これが一番おすすめするデザインなんだ。」
テーブルに広げた何枚かのデザイン画から、店長さんは1枚の紙をピックアップした。
それは、シンプルなデザインの中に、少しだけ流行りの絞りが入れられていた。
「どうだ?女性は、こういうのが、好きだろう?」
いかにも女性の好きな物は、知っていますって言う顔の店長に、私はクスッと笑った。
「熱いですね。」
「そうよ。仕事は情熱を持ってやらないと、成功しないからな。なあ、門馬さん。」
店長は、雪人の背中を叩いた。
「そうですね。」
当たり障りのない返事。
クールな雪人には、ついていけないテンションだったかな。
「恋愛だって、そうでしょ。」
急に恋の話を始めた店長さん。
ちょっと大人の人が、珍しい。
「ここぞと言う時に、冷めた目で『去る者、追わず。』って顔をしている奴は、結局誰も捕まえられないのさ。」
そのセリフに、側にいた清水係長が、クスクス笑う。
「本当に、熱いわね。」
「だから、仕事も恋愛も、熱くなきゃダメって事。」
「その勢いで、今の奥さんも結婚に、持ち込んだんだもんね。」
清水係長は、店長の肩を突っついた。
「そのお陰で、今もラブラブ。いいぜ?好きな女と、毎日一緒にいられるのは。」
「あら、ご馳走様。」
「清水も早く、男探せよ。」
私と門馬は、仲のいい清水係長と店長の会話を、終始聞いていた。
「仲、いいね。あの二人。」
「ああ、そうだな。」
数日振りの、落ち着いた会話。
これも後どのくらいで、ビジネスライクに戻るんだろう。
そんな事を考えたら、途端に寂しくなった。
その時、秋香が私のスマートフォンを持って、ミーティング室にやってきた。
「打ち合わせ中にごめんなさい。」
秋香は、私に向かって来ると、スマートフォンを差し出した。
「ミーティング終わるまで待ってようと思ったんだけど、お母さんから何度も連絡が……」
「ええ?」
お母さんから何度も連絡なんて、家で何かあったのかな。
「ちょっと失礼します。」
私は秋香からスマートフォンを受け取って、お母さんに電話をした。
『もしもし?』
「ああ、お母さん?何?仕事中に。」
『ごめんなさいね、お父さんが何度も電話しろって、うるさいから。』
「お父さんが?」
私は立ち上がって、部屋の隅に行った。
「お父さんが、何だって?」
『離婚よ。離婚の事で、家に戻ってくるなって、怒ってるのよ。』
「何よ、その事で?」
私は、はぁーっとため息をついた。
「お父さんには、また私から話すから。」
『あのね、お母さんも反対よ?もう一度雪人君と、よく話し合って……』
私はチラッと、雪人を見た。
そのせいで、勘のいい雪人は、私達の事だと気づいたみたい。
「それは、家に帰ってから、話すから。今、ここで話す事じゃあ、ないでしょう?」
『だけどね、夏海……』
その時だった。
私のスマートフォンは、誰かの手に吸い取られていった。
「お母さん、安心してください。僕が何とかしますから。」
私は飛び上がるくらいに、その場でびっくりした。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです
坂合奏
恋愛
「I love much more than you think(君が思っているよりは、愛しているよ)」
祖母の策略によって、冷徹上司であるイギリス人のジャン・ブラウンと婚約することになってしまった、二十八歳の清水萌衣。
こんな男と結婚してしまったら、この先人生お先真っ暗だと思いきや、意外にもジャンは恋人に甘々の男で……。
あまりの熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです。
※物語の都合で軽い性描写が2~3ページほどあります。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる