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第1章 仕事とプライベートは分けたいだけ
①
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依田 景子。
この度無事、新しい仕事を見つけました。
その仕事は、真田コーポレーションという、そこそこ大きな会社の、社長秘書。
秘書の仕事は、何年もやっているから、慣れたもの。
今日は、その初出勤日です。
「おはようございます。」
社長室に入って、まずは挨拶をした。
もう社長は来ていて、椅子に座っている。
「今日から秘書をさせて頂きます、依田景子です。宜しくお願い致します。」
一礼をすると、椅子にはどう考えても、まだ若い男性が座っていた。
「あの……社長は?」
「あっ、社長は俺。」
「えっ!?」
驚いてよく見ると、柔らかそうな茶髪、中性的な顔に、セクシーな唇。
まだ20代半ばくらいなのに、着ているスーツは高そうだ。
「と言っても、昨日社長になったばかりなんだ。こちらこそ、宜しくね。」
「は、はい。」
昨日社長になったばかりの、新人社長。
しかも、ろくに社会人経験もなさそうな。
こんな社長とコンビを組むなんて、私、大丈夫か?
すると早速、社長のスマートフォンに電話がかかってきた。
「ああ、ありがとう。これからいろいろ教えて下さい。」
内容から察するに、社長就任のお祝いの電話だろうか。
「もしもし、桃子?ありがとう。これからも宜しく。」
ん?桃子?
「もしもし?あっ、里美か。うん、ありがとう。これからも宜しく。」
電話を切った社長に、思い切って話しかけてみる。
「真田社長。今のお電話は……」
「友人からだよ。社長になっておめでとうって言う電話。」
「ご友人にしては、随分親しい間柄だと思えましたが。」
「あはっ!バレた?」
この軽い感じは、何なのだろう。
社長って、もっと落ち着いた感じの人なのではないのか!?
「ところで、私の席はどこでしょう。」
「適当に使っていいよ。」
「畏まりました。」
適当にと言われても、余っているデスクは、社長室の入り口にあるカウンター付きの、あの場所しかない。
そのデスクに行ってみると、一応パソコンはあるみたいだ。
「ところで、君。いくつなの?」
社長は、ニコニコしている。
「女性に、年齢を聞くものじゃありませんよ。」
「いいじゃん。綺麗なんだし。」
思わず眉がピクッと動く。
綺麗だと言われて、不快な思いにはならない。
自分でも、肌の手入れはしている方だと思う。
「ありがとうございます。」
「ねえ。いくつ?」
何故か馴れ馴れしい態度で、私の年齢を聞いてくる社長が、面倒に感じる。
「……32歳です。」
「へえ。年上か。」
思い違いか、社長が私をじーっと見ている。
「秘書の仕事は、経験あるの?」
「はい。5年くらいのキャリアはあります。」
急に仕事の事聞かれたから、真面目に答えてしまった。
「じゃあ、俺よりも社長の仕事は、慣れてるね。」
あっ……もしかして、私の事頼ってくれている?
そうだよね。昨日、社長になったばかりだもんね。
「社長。」
「ん?」
「私、一生懸命社長をお支えできるように、頑張ります。」
その時の社長の微笑みは、天使のようだった。
「俺も頑張るよ。父親が病気で倒れたからね。自分の代で、潰すような事は支度ないから。」
その時、胸がズキッとした。
2代目だったら、皆思う事。
自分の代で潰したくない。
そうだよね。
「依田さん?」
社長に呼ばれて、ハッとした。
「大丈夫?」
「はい!仕事に集中します。」
何、昔の事思い出してるの!
昔は昔、今は今よ!
「早速なんだけど、依田さん。書類に捺印する仕事、手伝ってくれない?」
「はい。」
初めての仕事、集中しよう。
私は、社長のデスクの向かい側に座った。
「まずは、小口現金等は、余程でない限り捺印ね。」
「はい。」
私は稟議書を、小口現金とその他に分けた。
「小口現金、結構ありますね。」
「支店の数も、そこそこあるからね。」
そうだ。真田コーポレーションと言えば、各地域の都市部には必ずある会社。
そこからの稟議書となると、半端ない数だ。
しかも前社長が倒れて、今の社長が継ぐ昨日まで、決済書が降りていなかったんだから、大変な事になっている。
「社長、小口現金捺印しました。」
「ありがとう。」
その間に、他の稟議書を見ていたのか、社長の顔付きが変わった。
「名古屋支店のこれ、どう思う?」
「えっ?」
社長から稟議書を渡され、内容を読んだけれど、はっきり言って分からない。
けれど、決済額は50万。
決して、はい捺印と言えない額だ。
「社長、今の時点では私もまだ、稟議書の事がよく分かりません。他の人を呼んできましょう。」
「そうだな。」
私は、社長室を出ると、一番近くの人に聞いてみた。
この度無事、新しい仕事を見つけました。
その仕事は、真田コーポレーションという、そこそこ大きな会社の、社長秘書。
秘書の仕事は、何年もやっているから、慣れたもの。
今日は、その初出勤日です。
「おはようございます。」
社長室に入って、まずは挨拶をした。
もう社長は来ていて、椅子に座っている。
「今日から秘書をさせて頂きます、依田景子です。宜しくお願い致します。」
一礼をすると、椅子にはどう考えても、まだ若い男性が座っていた。
「あの……社長は?」
「あっ、社長は俺。」
「えっ!?」
驚いてよく見ると、柔らかそうな茶髪、中性的な顔に、セクシーな唇。
まだ20代半ばくらいなのに、着ているスーツは高そうだ。
「と言っても、昨日社長になったばかりなんだ。こちらこそ、宜しくね。」
「は、はい。」
昨日社長になったばかりの、新人社長。
しかも、ろくに社会人経験もなさそうな。
こんな社長とコンビを組むなんて、私、大丈夫か?
すると早速、社長のスマートフォンに電話がかかってきた。
「ああ、ありがとう。これからいろいろ教えて下さい。」
内容から察するに、社長就任のお祝いの電話だろうか。
「もしもし、桃子?ありがとう。これからも宜しく。」
ん?桃子?
「もしもし?あっ、里美か。うん、ありがとう。これからも宜しく。」
電話を切った社長に、思い切って話しかけてみる。
「真田社長。今のお電話は……」
「友人からだよ。社長になっておめでとうって言う電話。」
「ご友人にしては、随分親しい間柄だと思えましたが。」
「あはっ!バレた?」
この軽い感じは、何なのだろう。
社長って、もっと落ち着いた感じの人なのではないのか!?
「ところで、私の席はどこでしょう。」
「適当に使っていいよ。」
「畏まりました。」
適当にと言われても、余っているデスクは、社長室の入り口にあるカウンター付きの、あの場所しかない。
そのデスクに行ってみると、一応パソコンはあるみたいだ。
「ところで、君。いくつなの?」
社長は、ニコニコしている。
「女性に、年齢を聞くものじゃありませんよ。」
「いいじゃん。綺麗なんだし。」
思わず眉がピクッと動く。
綺麗だと言われて、不快な思いにはならない。
自分でも、肌の手入れはしている方だと思う。
「ありがとうございます。」
「ねえ。いくつ?」
何故か馴れ馴れしい態度で、私の年齢を聞いてくる社長が、面倒に感じる。
「……32歳です。」
「へえ。年上か。」
思い違いか、社長が私をじーっと見ている。
「秘書の仕事は、経験あるの?」
「はい。5年くらいのキャリアはあります。」
急に仕事の事聞かれたから、真面目に答えてしまった。
「じゃあ、俺よりも社長の仕事は、慣れてるね。」
あっ……もしかして、私の事頼ってくれている?
そうだよね。昨日、社長になったばかりだもんね。
「社長。」
「ん?」
「私、一生懸命社長をお支えできるように、頑張ります。」
その時の社長の微笑みは、天使のようだった。
「俺も頑張るよ。父親が病気で倒れたからね。自分の代で、潰すような事は支度ないから。」
その時、胸がズキッとした。
2代目だったら、皆思う事。
自分の代で潰したくない。
そうだよね。
「依田さん?」
社長に呼ばれて、ハッとした。
「大丈夫?」
「はい!仕事に集中します。」
何、昔の事思い出してるの!
昔は昔、今は今よ!
「早速なんだけど、依田さん。書類に捺印する仕事、手伝ってくれない?」
「はい。」
初めての仕事、集中しよう。
私は、社長のデスクの向かい側に座った。
「まずは、小口現金等は、余程でない限り捺印ね。」
「はい。」
私は稟議書を、小口現金とその他に分けた。
「小口現金、結構ありますね。」
「支店の数も、そこそこあるからね。」
そうだ。真田コーポレーションと言えば、各地域の都市部には必ずある会社。
そこからの稟議書となると、半端ない数だ。
しかも前社長が倒れて、今の社長が継ぐ昨日まで、決済書が降りていなかったんだから、大変な事になっている。
「社長、小口現金捺印しました。」
「ありがとう。」
その間に、他の稟議書を見ていたのか、社長の顔付きが変わった。
「名古屋支店のこれ、どう思う?」
「えっ?」
社長から稟議書を渡され、内容を読んだけれど、はっきり言って分からない。
けれど、決済額は50万。
決して、はい捺印と言えない額だ。
「社長、今の時点では私もまだ、稟議書の事がよく分かりません。他の人を呼んできましょう。」
「そうだな。」
私は、社長室を出ると、一番近くの人に聞いてみた。
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