社長とは恋愛しません!

日下奈緒

文字の大きさ
上 下
1 / 6
第1章 仕事とプライベートは分けたいだけ

しおりを挟む
依田 景子。

この度無事、新しい仕事を見つけました。

その仕事は、真田コーポレーションという、そこそこ大きな会社の、社長秘書。

秘書の仕事は、何年もやっているから、慣れたもの。

今日は、その初出勤日です。


「おはようございます。」

社長室に入って、まずは挨拶をした。

もう社長は来ていて、椅子に座っている。

「今日から秘書をさせて頂きます、依田景子です。宜しくお願い致します。」

一礼をすると、椅子にはどう考えても、まだ若い男性が座っていた。

「あの……社長は?」

「あっ、社長は俺。」

「えっ!?」

驚いてよく見ると、柔らかそうな茶髪、中性的な顔に、セクシーな唇。

まだ20代半ばくらいなのに、着ているスーツは高そうだ。


「と言っても、昨日社長になったばかりなんだ。こちらこそ、宜しくね。」

「は、はい。」

昨日社長になったばかりの、新人社長。

しかも、ろくに社会人経験もなさそうな。

こんな社長とコンビを組むなんて、私、大丈夫か?

すると早速、社長のスマートフォンに電話がかかってきた。

「ああ、ありがとう。これからいろいろ教えて下さい。」

内容から察するに、社長就任のお祝いの電話だろうか。

「もしもし、桃子?ありがとう。これからも宜しく。」

ん?桃子?

「もしもし?あっ、里美か。うん、ありがとう。これからも宜しく。」

電話を切った社長に、思い切って話しかけてみる。

「真田社長。今のお電話は……」

「友人からだよ。社長になっておめでとうって言う電話。」

「ご友人にしては、随分親しい間柄だと思えましたが。」

「あはっ!バレた?」

この軽い感じは、何なのだろう。

社長って、もっと落ち着いた感じの人なのではないのか!?


「ところで、私の席はどこでしょう。」

「適当に使っていいよ。」

「畏まりました。」

適当にと言われても、余っているデスクは、社長室の入り口にあるカウンター付きの、あの場所しかない。

そのデスクに行ってみると、一応パソコンはあるみたいだ。


「ところで、君。いくつなの?」

社長は、ニコニコしている。

「女性に、年齢を聞くものじゃありませんよ。」

「いいじゃん。綺麗なんだし。」

思わず眉がピクッと動く。


綺麗だと言われて、不快な思いにはならない。

自分でも、肌の手入れはしている方だと思う。

「ありがとうございます。」

「ねえ。いくつ?」

何故か馴れ馴れしい態度で、私の年齢を聞いてくる社長が、面倒に感じる。

「……32歳です。」

「へえ。年上か。」


思い違いか、社長が私をじーっと見ている。

「秘書の仕事は、経験あるの?」

「はい。5年くらいのキャリアはあります。」

急に仕事の事聞かれたから、真面目に答えてしまった。

「じゃあ、俺よりも社長の仕事は、慣れてるね。」

あっ……もしかして、私の事頼ってくれている?

そうだよね。昨日、社長になったばかりだもんね。


「社長。」

「ん?」

「私、一生懸命社長をお支えできるように、頑張ります。」


その時の社長の微笑みは、天使のようだった。


「俺も頑張るよ。父親が病気で倒れたからね。自分の代で、潰すような事は支度ないから。」

その時、胸がズキッとした。

2代目だったら、皆思う事。

自分の代で潰したくない。

そうだよね。


「依田さん?」

社長に呼ばれて、ハッとした。

「大丈夫?」

「はい!仕事に集中します。」

何、昔の事思い出してるの!

昔は昔、今は今よ!


「早速なんだけど、依田さん。書類に捺印する仕事、手伝ってくれない?」

「はい。」

初めての仕事、集中しよう。

私は、社長のデスクの向かい側に座った。

「まずは、小口現金等は、余程でない限り捺印ね。」

「はい。」

私は稟議書を、小口現金とその他に分けた。

「小口現金、結構ありますね。」

「支店の数も、そこそこあるからね。」


そうだ。真田コーポレーションと言えば、各地域の都市部には必ずある会社。

そこからの稟議書となると、半端ない数だ。

しかも前社長が倒れて、今の社長が継ぐ昨日まで、決済書が降りていなかったんだから、大変な事になっている。


「社長、小口現金捺印しました。」

「ありがとう。」

その間に、他の稟議書を見ていたのか、社長の顔付きが変わった。

「名古屋支店のこれ、どう思う?」

「えっ?」

社長から稟議書を渡され、内容を読んだけれど、はっきり言って分からない。

けれど、決済額は50万。

決して、はい捺印と言えない額だ。


「社長、今の時点では私もまだ、稟議書の事がよく分かりません。他の人を呼んできましょう。」

「そうだな。」

私は、社長室を出ると、一番近くの人に聞いてみた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました

瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

練習なのに、とろけてしまいました

あさぎ
恋愛
ちょっとオタクな吉住瞳子(よしずみとうこ)は漫画やゲームが大好き。ある日、漫画動画を創作している友人から意外なお願いをされ引き受けると、なぜか会社のイケメン上司・小野田主任が現れびっくり。友人のお願いにうまく応えることができない瞳子を主任が手ずから教えこんでいく。 「だんだんいやらしくなってきたな」「お前の声、すごくそそられる……」主任の手が止まらない。まさかこんな練習になるなんて。瞳子はどこまでも甘く淫らにとかされていく ※※※〈本編12話+番外編1話〉※※※

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜

みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
身長172センチ。 高身長であること以外はいたって平凡なアラサーOLの佐伯花音。 婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。 名前からしてもっと可愛らしい人かと…ってどういうこと? そんな人こっちから願い下げ。 −−−でもだからってこんなハイスペ男子も求めてないっ!! イケメン副社長に振り回される毎日…気が付いたときには既に副社長の手の内にいた。

処理中です...