私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした

日下奈緒

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すれ違う心と体

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それから、一週間が過ぎ。

二課の承認は青川君が、一課の承認は私がするようになった。

「三田主任、この企画書もう一度確認してもらえる?」

「またですか?」

三田主任に企画書を返すのは、これで4度目。

何か毎回彼は、予算額が変更になっていて、本当にこの予算を信じていいのか分からない。

「何度も計算し直してますよ。」

「じゃあなぜ、毎回1000万単位で、予算が毎回違ってくるの?」

適当に計算しているとしか、思えないでしょ。

「三田。」

見かねた柊真が、三田主任を手招きする。


「三田。おまえ、ここ計算違ってるよ。」

「ええっ?」

後ろの席で、柊真が直接指導。

「それに、今の一課の課長は浅見なんだから、浅見に従え。」

「……はい。」

それも付け加えてくれるなんて、さすがは結城部長だわ。

「浅見。」

「はい?」

立ち上がって柊真の元へ行く。

「三田は、適当に計算するところがあるから、間違っていたら返すだけじゃなくて、どこが間違っているか教えてやってくれないか。」

「はい。」

そう言うのも、一課では必要なのね。

「あいつ、一課の盛り上げ役なんだよ。いい奴なんだ。」

それとこれとは違うと思うけれど。私も部長の命令には逆らえない。

「分かりました。」

「頼むよ。」

デスクに戻ると、今度は青川君が二課の案件について、質問してくる。

「ああ、この企業は……」

細かに教えてあげると、原田君が立ち上がってやってきた。

「青川課長。僕の企画書、何かありましたか?」

「ああ、ええっと……この部分なんだけど。」

原田君に教えてあげようとしたら、書類を青川君に取られた。

「何でもないです。ただ気になった事があっただけなんで。」

原田君はやりにくそうに、自席に戻っていく。

そう言えばあまり青川君の周りに、二課の皆が行くことはない。


そんな時だった。

「ちょっと斉藤さん。これ、斉藤さんが調べた物品、ほとんど間違ってるよ。」

「えっ!」

柚希ちゃんが急いで三田主任の元へ行く。

青川君が課長になって、柚希ちゃんの面倒は三田主任がやるようになったんだよね。

「ほら、ここ。何を見て調べたの?」

「すみません。やり直します。」

柚希ちゃんはこれまた急いで、自分の席に戻る。

でも彼女のいいところは、めげないところなんだよね。

普通あんな言い方したら、今の新人たちは直ぐに辞めていくのに。

すると今度は、神崎係長からだ。

「浅見課長、一課の承認溜まってます。」

「えっ?」

ふと見ると、1ページ目全部承認待ちだ。

「ごめんなさい、神崎係長。下から見て行って、返す案件は返してくれる?」

「了解です。」

本当は神崎係長にも、係長としての仕事があるのよね。

皆が企画に集中できるのも、神崎係長が細かい調整してくれてるからなのよね。

「ええっと、浅見課長。返却した方が良いかお聞きしてもいいですか?」

「ああ、待って。」

見ると、青川君のところも承認待ちが、溜まってきている。

「青川君、二課の承認待ち案件、お願い。」

「はい!」

そして今度は、神崎係長の方に行く。

今度は、木元主任の案件だ。

「木元君、案件№2507再確認お願い。」

「えっ、その案件。まだ承認されてないんですか?」

逆に木元主任の方が驚く。

「これ、本当に予算合ってる?もっと、他の案を出せば……」

その時、青川君が神崎係長の元へ来た。

「浅見課長、これが最適な案ですよ。」

「そうなの?」

「逆に他の案を再考していたら、取引先の締め切りに間に合いません。」

「だからと言って、相手の予算よりも2500万もオーバーしていいの?」

「一課の案件は、幅も大きいんです。1000万単位で変わってくるのは、いつもの事です。」

企画部がシーンと静まりかえる。


「おい、皆!どうしたんだ。」

柊真が珍しくイライラしている。

「進むべき仕事が、進んでないじゃないか。何をしているんだ。」

確かに、柊真の言う通りだ。
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