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すれ違う心と体
①
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それから、一週間が過ぎ。
二課の承認は青川君が、一課の承認は私がするようになった。
「三田主任、この企画書もう一度確認してもらえる?」
「またですか?」
三田主任に企画書を返すのは、これで4度目。
何か毎回彼は、予算額が変更になっていて、本当にこの予算を信じていいのか分からない。
「何度も計算し直してますよ。」
「じゃあなぜ、毎回1000万単位で、予算が毎回違ってくるの?」
適当に計算しているとしか、思えないでしょ。
「三田。」
見かねた柊真が、三田主任を手招きする。
「三田。おまえ、ここ計算違ってるよ。」
「ええっ?」
後ろの席で、柊真が直接指導。
「それに、今の一課の課長は浅見なんだから、浅見に従え。」
「……はい。」
それも付け加えてくれるなんて、さすがは結城部長だわ。
「浅見。」
「はい?」
立ち上がって柊真の元へ行く。
「三田は、適当に計算するところがあるから、間違っていたら返すだけじゃなくて、どこが間違っているか教えてやってくれないか。」
「はい。」
そう言うのも、一課では必要なのね。
「あいつ、一課の盛り上げ役なんだよ。いい奴なんだ。」
それとこれとは違うと思うけれど。私も部長の命令には逆らえない。
「分かりました。」
「頼むよ。」
デスクに戻ると、今度は青川君が二課の案件について、質問してくる。
「ああ、この企業は……」
細かに教えてあげると、原田君が立ち上がってやってきた。
「青川課長。僕の企画書、何かありましたか?」
「ああ、ええっと……この部分なんだけど。」
原田君に教えてあげようとしたら、書類を青川君に取られた。
「何でもないです。ただ気になった事があっただけなんで。」
原田君はやりにくそうに、自席に戻っていく。
そう言えばあまり青川君の周りに、二課の皆が行くことはない。
そんな時だった。
「ちょっと斉藤さん。これ、斉藤さんが調べた物品、ほとんど間違ってるよ。」
「えっ!」
柚希ちゃんが急いで三田主任の元へ行く。
青川君が課長になって、柚希ちゃんの面倒は三田主任がやるようになったんだよね。
「ほら、ここ。何を見て調べたの?」
「すみません。やり直します。」
柚希ちゃんはこれまた急いで、自分の席に戻る。
でも彼女のいいところは、めげないところなんだよね。
普通あんな言い方したら、今の新人たちは直ぐに辞めていくのに。
すると今度は、神崎係長からだ。
「浅見課長、一課の承認溜まってます。」
「えっ?」
ふと見ると、1ページ目全部承認待ちだ。
「ごめんなさい、神崎係長。下から見て行って、返す案件は返してくれる?」
「了解です。」
本当は神崎係長にも、係長としての仕事があるのよね。
皆が企画に集中できるのも、神崎係長が細かい調整してくれてるからなのよね。
「ええっと、浅見課長。返却した方が良いかお聞きしてもいいですか?」
「ああ、待って。」
見ると、青川君のところも承認待ちが、溜まってきている。
「青川君、二課の承認待ち案件、お願い。」
「はい!」
そして今度は、神崎係長の方に行く。
今度は、木元主任の案件だ。
「木元君、案件№2507再確認お願い。」
「えっ、その案件。まだ承認されてないんですか?」
逆に木元主任の方が驚く。
「これ、本当に予算合ってる?もっと、他の案を出せば……」
その時、青川君が神崎係長の元へ来た。
「浅見課長、これが最適な案ですよ。」
「そうなの?」
「逆に他の案を再考していたら、取引先の締め切りに間に合いません。」
「だからと言って、相手の予算よりも2500万もオーバーしていいの?」
「一課の案件は、幅も大きいんです。1000万単位で変わってくるのは、いつもの事です。」
企画部がシーンと静まりかえる。
「おい、皆!どうしたんだ。」
柊真が珍しくイライラしている。
「進むべき仕事が、進んでないじゃないか。何をしているんだ。」
確かに、柊真の言う通りだ。
二課の承認は青川君が、一課の承認は私がするようになった。
「三田主任、この企画書もう一度確認してもらえる?」
「またですか?」
三田主任に企画書を返すのは、これで4度目。
何か毎回彼は、予算額が変更になっていて、本当にこの予算を信じていいのか分からない。
「何度も計算し直してますよ。」
「じゃあなぜ、毎回1000万単位で、予算が毎回違ってくるの?」
適当に計算しているとしか、思えないでしょ。
「三田。」
見かねた柊真が、三田主任を手招きする。
「三田。おまえ、ここ計算違ってるよ。」
「ええっ?」
後ろの席で、柊真が直接指導。
「それに、今の一課の課長は浅見なんだから、浅見に従え。」
「……はい。」
それも付け加えてくれるなんて、さすがは結城部長だわ。
「浅見。」
「はい?」
立ち上がって柊真の元へ行く。
「三田は、適当に計算するところがあるから、間違っていたら返すだけじゃなくて、どこが間違っているか教えてやってくれないか。」
「はい。」
そう言うのも、一課では必要なのね。
「あいつ、一課の盛り上げ役なんだよ。いい奴なんだ。」
それとこれとは違うと思うけれど。私も部長の命令には逆らえない。
「分かりました。」
「頼むよ。」
デスクに戻ると、今度は青川君が二課の案件について、質問してくる。
「ああ、この企業は……」
細かに教えてあげると、原田君が立ち上がってやってきた。
「青川課長。僕の企画書、何かありましたか?」
「ああ、ええっと……この部分なんだけど。」
原田君に教えてあげようとしたら、書類を青川君に取られた。
「何でもないです。ただ気になった事があっただけなんで。」
原田君はやりにくそうに、自席に戻っていく。
そう言えばあまり青川君の周りに、二課の皆が行くことはない。
そんな時だった。
「ちょっと斉藤さん。これ、斉藤さんが調べた物品、ほとんど間違ってるよ。」
「えっ!」
柚希ちゃんが急いで三田主任の元へ行く。
青川君が課長になって、柚希ちゃんの面倒は三田主任がやるようになったんだよね。
「ほら、ここ。何を見て調べたの?」
「すみません。やり直します。」
柚希ちゃんはこれまた急いで、自分の席に戻る。
でも彼女のいいところは、めげないところなんだよね。
普通あんな言い方したら、今の新人たちは直ぐに辞めていくのに。
すると今度は、神崎係長からだ。
「浅見課長、一課の承認溜まってます。」
「えっ?」
ふと見ると、1ページ目全部承認待ちだ。
「ごめんなさい、神崎係長。下から見て行って、返す案件は返してくれる?」
「了解です。」
本当は神崎係長にも、係長としての仕事があるのよね。
皆が企画に集中できるのも、神崎係長が細かい調整してくれてるからなのよね。
「ええっと、浅見課長。返却した方が良いかお聞きしてもいいですか?」
「ああ、待って。」
見ると、青川君のところも承認待ちが、溜まってきている。
「青川君、二課の承認待ち案件、お願い。」
「はい!」
そして今度は、神崎係長の方に行く。
今度は、木元主任の案件だ。
「木元君、案件№2507再確認お願い。」
「えっ、その案件。まだ承認されてないんですか?」
逆に木元主任の方が驚く。
「これ、本当に予算合ってる?もっと、他の案を出せば……」
その時、青川君が神崎係長の元へ来た。
「浅見課長、これが最適な案ですよ。」
「そうなの?」
「逆に他の案を再考していたら、取引先の締め切りに間に合いません。」
「だからと言って、相手の予算よりも2500万もオーバーしていいの?」
「一課の案件は、幅も大きいんです。1000万単位で変わってくるのは、いつもの事です。」
企画部がシーンと静まりかえる。
「おい、皆!どうしたんだ。」
柊真が珍しくイライラしている。
「進むべき仕事が、進んでないじゃないか。何をしているんだ。」
確かに、柊真の言う通りだ。
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