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新しい環境
①
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こうして、半ば社長と企画部部長の公認の仲になった私と柊真。
ある日の事だった。
「恭香。俺、企画部の部長になれるかもしれない。」
「えっ……」
部長に⁉それは、昇進ではないか!
「また一歩、社長に近づいたわね。」
「ああ。」
御曹司って言っても、柊真は御曹司扱いされるのが、ものすごく嫌だった。
― 結城君って、何もしなくても社長になれるんでしょ。いいね。-
同期の仲間は、そう言って御曹司である柊真を冷やかした。
― 俺たちは、君の手足になって働くだけだよ。 -
そんな同期を前に柊真は、はっきりと言った。
「悔しかったら、俺の代わりに社長になってみろよ。俺は実力で社長になる。」
思い出すな。それで今の部長に、付いて回ったんだよね。
柊真、自ら。
「ふふふ。」
思い出したら、笑っちゃった。
「何だよ。」
「ううん。昔の事思い出したら、おかしくて。」
「何?何を思い出したんだよ。」
柊真は、私に顔を近づけた。
「ん?何だか、実力で社長になってやるって、言ってた事。」
「ああ、その事?俺もまさかここまで、実力主義だと思ってなかった。」
「ははは!自分で望んだ事じゃん!」
おかしくて笑ったら、柊真が微笑んでいた。
「柊真?」
「俺、長い間おまえに片思いしてたから、こんなふうに傍で笑ってくれてるおまえを見ると、頑張っててよかったと思うよ。」
「そんな大げさな。」
私なんか、柊真にそんなそこまで言われる女じゃないのに。
「本当だよ。」
柊真は両手で抱き寄せてくれて、キスをくれた。
いつもキスしてくれる柊真は、きっとキス魔だと思う。
「……ところで、柊真が部長になったら、今の部長はどうなるの?」
「ああ、部長は取締役になるらしい。」
「ええっ⁉」
あの部長が、取締役になるの⁉
「じゃあ、柊真が社長になる時って、あの部長が承認しなきゃいけないの?」
「そうなるね。」
「へえ。」
なんであの柊真にペコペコしてる部長が、取締役となるんだろう。
あっ、そんな事言ったら、部長に失礼か。
「まあ、今度の取締役会議で、承認されたらの話だけどね。」
「そっか。」
そんな話もあり、私の部長を見る目が変わった。
「どうしたの?浅見課長?」
「えっ?」
「さっきから俺を見つめて。もしかして、結城課長から鞍替え?」
「そんな訳ないじゃないですか。」
せっかく私を溺愛してくれる人に出会ったのに、簡単に手ばしてたまるか。
「ところで、二人はいつ結婚するの?」
「えっ……まだ、日取りは決まってませんけど。」
「と言う事は、結婚することは決まってるんだね。」
「え、ええ。」
よく考えれば私まだ、プロポーズされてない?
確かに結婚してくれとは、言われてるけれど。
「ああ、思い出すな。御曹司が俺の周りをちょこちょこ動き回っていた時の事。」
「はははっ!」
そう言えば、部長。逆に柊真に気を遣っていたもんね。
「俺、コピーとか書類作成から、教えたんだよ。あの御曹司に。」
「それ、何気に自慢ですね。」
「そうだよ。今となったら、優秀な一課の課長で、俺の出番ないけど。」
「ふふふ。」
笑える。入社当時の柊真って、メモ帳持って部長の一言一言、書いてたんだよね。
だが、事態は別の方向に動いた。
「えっ⁉部長が支社に転勤⁉」
まさか取締役会議で、承認されなかった⁉
「そうなんだよ。でも副支社長だから、栄転と言えば栄転だけど。」
副支社長って、かなり偉いじゃん。
「なかなか本社にも戻って来れなくなるね。」
部長、寂しそうだな。
「そう言えば、俺の後は御曹司を推しておいたよ。」
「ありがとうございます!」
柊真、嬉しそうだ。
よかったね。
「それで一課の課長なんだけど。」
うんうんと私と柊真は、うなづいた。
「浅見ちゃん、やってみない?」
「えっ?私ですか?」
一課と二課の違いは、扱う予算の違い。
二課は、何十万とか何百万とか、比較的小さな規模を扱うけれど、一課は1000万単位で仕事が動く。
ある日の事だった。
「恭香。俺、企画部の部長になれるかもしれない。」
「えっ……」
部長に⁉それは、昇進ではないか!
「また一歩、社長に近づいたわね。」
「ああ。」
御曹司って言っても、柊真は御曹司扱いされるのが、ものすごく嫌だった。
― 結城君って、何もしなくても社長になれるんでしょ。いいね。-
同期の仲間は、そう言って御曹司である柊真を冷やかした。
― 俺たちは、君の手足になって働くだけだよ。 -
そんな同期を前に柊真は、はっきりと言った。
「悔しかったら、俺の代わりに社長になってみろよ。俺は実力で社長になる。」
思い出すな。それで今の部長に、付いて回ったんだよね。
柊真、自ら。
「ふふふ。」
思い出したら、笑っちゃった。
「何だよ。」
「ううん。昔の事思い出したら、おかしくて。」
「何?何を思い出したんだよ。」
柊真は、私に顔を近づけた。
「ん?何だか、実力で社長になってやるって、言ってた事。」
「ああ、その事?俺もまさかここまで、実力主義だと思ってなかった。」
「ははは!自分で望んだ事じゃん!」
おかしくて笑ったら、柊真が微笑んでいた。
「柊真?」
「俺、長い間おまえに片思いしてたから、こんなふうに傍で笑ってくれてるおまえを見ると、頑張っててよかったと思うよ。」
「そんな大げさな。」
私なんか、柊真にそんなそこまで言われる女じゃないのに。
「本当だよ。」
柊真は両手で抱き寄せてくれて、キスをくれた。
いつもキスしてくれる柊真は、きっとキス魔だと思う。
「……ところで、柊真が部長になったら、今の部長はどうなるの?」
「ああ、部長は取締役になるらしい。」
「ええっ⁉」
あの部長が、取締役になるの⁉
「じゃあ、柊真が社長になる時って、あの部長が承認しなきゃいけないの?」
「そうなるね。」
「へえ。」
なんであの柊真にペコペコしてる部長が、取締役となるんだろう。
あっ、そんな事言ったら、部長に失礼か。
「まあ、今度の取締役会議で、承認されたらの話だけどね。」
「そっか。」
そんな話もあり、私の部長を見る目が変わった。
「どうしたの?浅見課長?」
「えっ?」
「さっきから俺を見つめて。もしかして、結城課長から鞍替え?」
「そんな訳ないじゃないですか。」
せっかく私を溺愛してくれる人に出会ったのに、簡単に手ばしてたまるか。
「ところで、二人はいつ結婚するの?」
「えっ……まだ、日取りは決まってませんけど。」
「と言う事は、結婚することは決まってるんだね。」
「え、ええ。」
よく考えれば私まだ、プロポーズされてない?
確かに結婚してくれとは、言われてるけれど。
「ああ、思い出すな。御曹司が俺の周りをちょこちょこ動き回っていた時の事。」
「はははっ!」
そう言えば、部長。逆に柊真に気を遣っていたもんね。
「俺、コピーとか書類作成から、教えたんだよ。あの御曹司に。」
「それ、何気に自慢ですね。」
「そうだよ。今となったら、優秀な一課の課長で、俺の出番ないけど。」
「ふふふ。」
笑える。入社当時の柊真って、メモ帳持って部長の一言一言、書いてたんだよね。
だが、事態は別の方向に動いた。
「えっ⁉部長が支社に転勤⁉」
まさか取締役会議で、承認されなかった⁉
「そうなんだよ。でも副支社長だから、栄転と言えば栄転だけど。」
副支社長って、かなり偉いじゃん。
「なかなか本社にも戻って来れなくなるね。」
部長、寂しそうだな。
「そう言えば、俺の後は御曹司を推しておいたよ。」
「ありがとうございます!」
柊真、嬉しそうだ。
よかったね。
「それで一課の課長なんだけど。」
うんうんと私と柊真は、うなづいた。
「浅見ちゃん、やってみない?」
「えっ?私ですか?」
一課と二課の違いは、扱う予算の違い。
二課は、何十万とか何百万とか、比較的小さな規模を扱うけれど、一課は1000万単位で仕事が動く。
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