私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした

日下奈緒

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御曹司と言う立場

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はあ?という表情をする柊真。

「でも私が、きっとお互いの会社の懸け橋になってくれますよと、申し上げたんです。」

「ちょっと、親父。」

私は柊真を止めた。

「子供の幸せな結婚を願わない親はいませんよ。お父さんだって、きっと利夏さんは幸せになると思って、この結婚に乗ってくれたんだと思いますよ。」

利夏さんは、渡されたハンカチで涙を拭いていた。

「さあ、見送りしましょう。」

社長は利夏さんを連れて、応接室を出た。

「僕も……」

そう言った柊真の目の前で、応接室のドアは閉められた。


残されたのは、私達二人。

ほんと、気まずい。

「柊真、あの……」

「なんだよ、あの態度。」

しかも柊真、完全に怒ってるし。

「どうぞ、結婚してお金貰って下さいって何だよ。」

「ごめん。あれは、その……」

「ほんと、全く分かってないよ。俺がどんなに恭香を好きなのか。」

「ごめなさいっ!」

謝った瞬間、柊真は私の顔を掴んで、キスをした。

「んんっ……」

息ができない、激しいキス。

「柊真……」

たまりかねて、柊真の名前を呼ぶと、思いっきりソファーに押し倒された。


「やだ、ここでするの?」

「誰も来ないよ。俺たちだけの部屋だって。」

「社長が来るわよ!」

「親父だって気を利かせて、戻って来ないよ。」

柊真の吐息が、私の首にかかる。

「思い出したよ。おまえに恋した瞬間。」

「えっ……」

「あの時も、俺を庇ってくれた。」


― 結城君は、そんな人じゃありません!きっと取引先を思ってしたことです! -


「俺の初めての失敗、皆は御曹司なのに派手な失敗したって、嘲笑ってた。でも恭香だけは、俺を信じてくれていた。」

「あの時?」

一緒に頑張っていた時。誰よりも早く認めてもらおうとして、焦って失敗したのを分かってた。

でもそれを、御曹司だからって失敗しちゃいけないって、笑ってるのもどうかと思った。

何よりも、人の何倍も努力してるのを、私は知っていた。

「それで思ったんだ。もし、恭香が同じ立場になっても、俺だけは恭香の味方になるって。こいつの事、絶対守ってみせるって。」


私は、柊真の赤く腫れた頬に触れた。

「柊真は、ちゃんと守ってくれたよ。」

「あのくらい、どうってことないよ。」

「でも、痛かったでしょ。」

「恭香を傷つけられる方が、何倍も痛いよ。」

そして私達は、社長には申し訳ないけれど、応接室で一時の情事を味わった。
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