私を溺愛してくれたのは同期の御曹司でした

日下奈緒

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御曹司と言う立場

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純粋。純粋培養されたお嬢様だわ。

「利夏さん、男性とお付き合いされた事はないのですか?」

「ありません。結婚相手の方と恋をすると思ってましたから。」

すると利夏さんは、ポロポロと泣き出した。

「どうして、私じゃダメなんですか?私は何か、いけない事をしましたか?」

かわいい!これで落ちない男は、いないだろうというくらい可愛い!

「利夏さん。あなたは何も悪くありません。ただ僕が、恭香と恋に落ちてしまったから。」

「恋に?」

「はい。俺達、愛し合っているんです。」

私は頭が真っ白になった。

よくもまあ、恥ずかしくもなく愛だの恋だの語れるな。

聞いてる私が、恥ずかしいわ。

「私、結婚は恋や愛ではないと思います。」

「利夏さん、それは違います。」

「いいえ。結婚は両家の利益の為です。私と結婚すれば、結城家は藤高コーポレーションの株主を半分持つ事ができるのですよ。」

「半分⁉」

社長と柊真は、叫ぶほど驚きを隠せない。

「それは業務提供という事ですか!」

「親父、落ち着いて。」

さすが柊真。冷静に判断しようとしている。

「利夏さん。」

「はい。」

「それは、確定事項なんでしょうか。」

私はガクッと、膝を着いた。

「株主総会で承認されるものなんでしょうか。」

「ちょっと!」

私は立ち上がって、柊真の肩を掴んだ。

「本気なの?」

「そんな訳ないだろ。」

柊真がニコッと笑うけれど、半分本気だよね。

ああ、終わった。私にはそんな資金ないわ。

「社長。私は、柊真さんとの結婚を諦めます。」

「えっ⁉」

だって、私と結婚したって入ってくるお金は、ないに等しいもん。

「いいの?恭香ちゃん⁉」

「親父、いい訳ないだろ!」

「どうぞ、利夏さんと結婚して、株式の半分を頂いて下さい。」

私は頭を下げて、応接室を出ようとした。

「恭香っ!」

案の定、柊真が追いかけてくる。

「冗談だって、言ってるだろ。」

「あらあ?冗談には聞こえなかったけれど?」

「意地の悪い事言うな。俺にはおまえだけだって、知ってて言ってるのか。」

必死な柊真の表情。

だって、柊真の立場を考えれば、そういう結婚だって必要じゃないの。

「私には、お金ないもん。」

「なんだ。そんな事か。」

「そんな事⁉」

私と利夏さんは、同時に叫んだ。

「利夏さん。愛はお金じゃない。」

「それは嘘です。愛は、お金に比例します。」

真っ直ぐな目で答えた。

本当にこのお嬢さん、愛はお金だって思ってるんだわ。

「……それは、ご両親がそうだからですか?」

柊真は私の肩を抱き寄せた。

「僕は、両親が若い頃から愛を育んできた事を知っています。父だって、若い頃はお金がなかった。それでも母は父を信じて付いてきてくれた。もし僕が今無職になったとしても、恭香は変わらず僕の傍にいてくれると信じています。」

「それはただの妄想ですよね。」

「えっ……」

柊真は私を見た。私に答えさせるの?

「彼女が柊真さんに付いていくのは、未来に社長の椅子が用意されてるから。お母様も、きっと同じです。」

「ちょっと!」

私はたまらず前に出てしまった。

「さっきから聞いてれば、いい加減にして!」

「恭香……」

「どういう教育を受けたのか分かりませんが、あなたは本当の恋を知らないんですか!」

愛ってお金って……社長の椅子が見えるから、付いて行ったなんて。

どうしても、この子が愛情いっぱいに育てられたとは思えない。

「社長は、あなたの事を、社長夫人として教育を受けた令嬢だと言っていました。」

「ええ、その通りです。私は、社長夫人となるべく、厳しく教育されました。」

「でも、愛が何なのか、分かってないじゃないですか!」

「恭香、落ち着いて。」

柊真が私を利夏さんから、遠ざける。

「では、あなたは愛が何なのか、分かっているとでも?」

それを追いかけるように、利夏さんは追及の質問をしてくる。

「少なくても、あなたよりは知っています。」

そうだと断言できる。

だって、私は。私は……

「あなたの言っている事、全部自分本位じゃないですか。」

そう。何もかも私は私は。

柊真の事、一回も思いやる言葉や共感の言葉なんて、言ってないじゃない。
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