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御曹司と言う立場

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「いい相手がいないかと、相談されてな。」

「そんなんで、自分の息子を勝手に薦めるな。」

柊真は立ち上がると、会議室を出た。

「俺も行く。」

「えっ?社長も⁉」

部長達は飛び上がるように驚く。

だよね。えっ?これって、婚約破棄を白紙撤回⁉

すると社長は、私に手招きをした。

「浅見課長は、来なくていいのか?」

「私もですか?」

「関係者だよね。一応。」

あの社長が、一気にキャラ変更?私の事、柊真にふさわしくないみたいな事、言ってたくせに。


「何で、浅見課長が?」

部長の一人が首を傾げる。

すると企画部の部長が、余計な事を言った。

「彼女、社長夫人候補なんです。」

「はあ?あの社長の?」

「いえいえ、御曹司のですよ。」

私は部長の背中を叩いた。

「あっ、まだ内緒だった?」

部長を睨みながら、私も会議室を出た。

何なの⁉婚約者が会社に来るなんて、全然婚約破棄になってないんですけど!


私はエレベーターの上から、社長と柊真が、藤高コーポレーションのご令嬢を連れてくるのを見た。

エレベーターを上がってくる。

社長も柊真も、ご令嬢をもてなす気満々だ。

私は急いで、応接室のドアを開けに行った。

「どうぞ。」

「あら、先ほどの。」

さすがはご令嬢。顔を覚えるのが早い。

「申し遅れました。結城課長と同じく企画部の課長をしております、浅見恭香と申します。」

「よろしく。」

「はい。」

私は深々と、頭を下げた。

それで?私はどうしろと?何気なく応接室に一歩入る。

「浅見課長がどうしてここに?」

いや、鋭いよ。さすがは社長令嬢。

「浅見課長はね、柊真の交際相手なんですよ。」

「はあ?柊真さんの⁉」

そしてさっきは、そんな名前だったはずと言っていた柊真の名前を、習得したお嬢様。

能力は最高だよ。いや、演技力って言うんでしょうか。

そして社長と柊真は、下座に座った。

「ええっと、藤高コーポレーションのご令嬢が、足を運んで頂き、ありがとうございます。」

柊真が場を仕切る。

「やはり、婚約破棄の件ですよね。」

「他に、何かご用件がありますか?」

「いえ。その通りです。」

柊真、もうお嬢様のペースに乗せられてるじゃない。

「ええーっと、」

そして肝心の名前を、柊真は知らない。

社長もにっこり笑って、知らない素振りだ。

思わず私が、柊真の耳元で囁いた。

「藤高……リマさんです。」

「利夏よっ!」

「失礼しましたっ!」

やばい!初っ端から名前を間違えるという失態。

「……利夏さん。結婚の件、利夏さんはどのようにお考えですか?」

柊真が切り出す。

「どのようにって、私は結婚すると決めてましたけど?」

えっ⁉名前もうろ覚えの人と?

びっくりだわ。このお嬢様。

「利夏さんには、交際相手はいらっしゃらないのですか?」

「はい。現在お付き合いしている方は、いません。」

「……失礼ですが、年齢はいくつでしょうか。」

「28です。何ですか?歳は関係ありますか?私達の結婚は、両家が望んでいたはず。」

柊真は社長を見た。

「ええ。ですが、柊真には真剣に結婚を考えている相手がいましてね。」

社長、はっきり言ってくれた。

「それがそこにいる浅見課長だと言うのですか?」

「その通りです。」

「はあ?」

利夏さんは、顔を歪ませながら不思議な表情。

「柊真さん。逆に私達の結婚をどうお考えでしたか?」

逆に質問されてる。

「正直、あまり考えてはいませんでした。」

「結婚するのにですか?」

「僕からはっきりと、プロポーズをした覚えもありません。逆になぜ利夏さんは、逆に僕との結婚を考える事ができたのですか?」

「父親が、結婚相手だと写真を見せてくれたんです。」

「写真ですか?」

「はい。」

利夏さんは、スマホから柊真の写真を差し出した。

「これ……今年の春に撮った写真。なぜこれを利夏さんが?」

すると社長は、柊真から離れて行った。

社長、柊真に黙って写真を提供したな。

「私は幼い頃から、結婚相手は父親が決めてくれると教わってきたんです。初めてなんです。父が結婚相手だよって、写真を見せてくれたのは。」
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