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恋人が他の人と結婚
①
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キーボードをカタカタと音を鳴らしながら、システムで承認のボタンを押していく。
私はこの瞬間が、たまらなく好きである。
「原田君。昨日の企画、承認しておいたから。」
「ありがとうございます。」
私が目に付けている原田君は、28歳で将来のエースだ。
彼を主任にあげる事が、今の私の仕事のやりがいだ。
「課長、今日は生き生きしてますね。」
原田君は席が近いせいか、私の事をよく見ている。
「そう?今日は、目だったトラブルもなく、早く帰れそうだからね。」
「と言いつつ、何かトラブルがあっても、課長だったら素早く対処するんですよね。」
「やだ、原田君。私の事、買い被り過ぎよ。」
そうよ。私は敢えて、若い時からトラブルに対処してきた。
後輩のトラブルもそう。
後輩を庇い、その尻ぬぐいもしてきた。
そのおかげで、私は今。課長職にある。
何かあれば、この人が対処してくれる。若い子は皆、私を慕ってくれる。
それが、今の私の力になっている。
こうして、味方を増やす事で、部長への昇進も夢ではない。
目指せ!キャリアウーマン!
「浅見、おまえこの企画、甘い目で見てるだろ。」
私は隣の席を見た。
1課の課長、同期の結城柊真。
同じ歳に会社に入社し、親がこの会社の社長という御曹司は、自分の力で社長職に上り詰めたいと、陰ながら努力している人だ。
同じ歳の同期で、残っているのは私と結城だけという、腐れ縁でもある。
「そうね。何事もチャレンジだから。8割成功する確率があるなら、承認するわ。」
「それでよく、フォローするのがおまえの仕事か?」
「そうよ。じゃなかったら、何の為に上司がいるの?」
彼が率いる1課は、精鋭ぞろい。
私が見ている2課とは、レベルが違う。
彼のレベルについて行くのは、大変だろうけれど、将来の社長に相応しい人材が揃っているのだから、仕方がない。
「結城のところは、何割成功だったら、承認するの?」
「一か八かだな。」
「はあ?成功一割でも、承認するの?」
「それだけブラッシュアップできる。優秀な人材が揃っているという訳だ。」
考え方が違い過ぎる。
失敗したら、責任取るのはお父さんだぞ?
ちらっと見ると、眼鏡を掛けている結城がいる。
最近、老眼が入ってきていると言っていた。
彼はまだ結婚していない。
将来、会社を継ぐ御曹司だったら、結婚したい女子はたくさんいるだろうに。
その時、結城のスマホがピロリーンと鳴った。
「随分陽気な着信ね。」
「ああ、婚約者だ。」
その時、オフィスがざわついた。
「御曹司に婚約者⁉遂に結婚か⁉」
「誰だ⁉相手は⁉」
未来の社長夫人に皆、騒然としている。
「ああ、今日は忙しい。また後日。」
そう言って会話30秒の電話は終わった。
「いいの?そんな雑に扱って。」
私は、相手の婚約者が気の毒に思えた。
「相手は社長令嬢だ。仕事が忙しい事くらい分かっている。」
何その、遠回しな婚約者自慢。
「で?その物分かりのいい婚約者は、一体いくつなの?」
「ん?新卒だから、22歳か。」
私はにっこりと、彼を見た。
うん。彼だったら38歳のアラフォーのオジサンでも、若い女の子は結婚したいだろう。
そうそう。イケオジだからね。
って、大丈夫なの?その婚約者。
「その彼女、男性とお付き合いするのは、結城が初めて?」
「そうだが?」
「手、付けたの?」
「まだだ。焦ってない。結婚すれば、嫌でもできるからな。」
くぅー。何だよ、それ。
しかし、初めて付き合う男の人が、アラフォーのイケオジって、どんな社長令嬢なのよ。
「ところで、浅見は?結婚はしないのか?」
グサッとくる言葉に、言葉もない。
同じく38歳。アラフォー・独身・子なし。
絶賛、結婚希望中。
だが私には、愛すべき恋人がいる。
「結婚は焦ってないわ。これだと言う人に巡り合えたから。」
「焦ろよ。子供産めなくなるぞ。」
部下達が、クスクス笑っている。
こいつが同期って、一体何の巡り合わせよ。
私はこの瞬間が、たまらなく好きである。
「原田君。昨日の企画、承認しておいたから。」
「ありがとうございます。」
私が目に付けている原田君は、28歳で将来のエースだ。
彼を主任にあげる事が、今の私の仕事のやりがいだ。
「課長、今日は生き生きしてますね。」
原田君は席が近いせいか、私の事をよく見ている。
「そう?今日は、目だったトラブルもなく、早く帰れそうだからね。」
「と言いつつ、何かトラブルがあっても、課長だったら素早く対処するんですよね。」
「やだ、原田君。私の事、買い被り過ぎよ。」
そうよ。私は敢えて、若い時からトラブルに対処してきた。
後輩のトラブルもそう。
後輩を庇い、その尻ぬぐいもしてきた。
そのおかげで、私は今。課長職にある。
何かあれば、この人が対処してくれる。若い子は皆、私を慕ってくれる。
それが、今の私の力になっている。
こうして、味方を増やす事で、部長への昇進も夢ではない。
目指せ!キャリアウーマン!
「浅見、おまえこの企画、甘い目で見てるだろ。」
私は隣の席を見た。
1課の課長、同期の結城柊真。
同じ歳に会社に入社し、親がこの会社の社長という御曹司は、自分の力で社長職に上り詰めたいと、陰ながら努力している人だ。
同じ歳の同期で、残っているのは私と結城だけという、腐れ縁でもある。
「そうね。何事もチャレンジだから。8割成功する確率があるなら、承認するわ。」
「それでよく、フォローするのがおまえの仕事か?」
「そうよ。じゃなかったら、何の為に上司がいるの?」
彼が率いる1課は、精鋭ぞろい。
私が見ている2課とは、レベルが違う。
彼のレベルについて行くのは、大変だろうけれど、将来の社長に相応しい人材が揃っているのだから、仕方がない。
「結城のところは、何割成功だったら、承認するの?」
「一か八かだな。」
「はあ?成功一割でも、承認するの?」
「それだけブラッシュアップできる。優秀な人材が揃っているという訳だ。」
考え方が違い過ぎる。
失敗したら、責任取るのはお父さんだぞ?
ちらっと見ると、眼鏡を掛けている結城がいる。
最近、老眼が入ってきていると言っていた。
彼はまだ結婚していない。
将来、会社を継ぐ御曹司だったら、結婚したい女子はたくさんいるだろうに。
その時、結城のスマホがピロリーンと鳴った。
「随分陽気な着信ね。」
「ああ、婚約者だ。」
その時、オフィスがざわついた。
「御曹司に婚約者⁉遂に結婚か⁉」
「誰だ⁉相手は⁉」
未来の社長夫人に皆、騒然としている。
「ああ、今日は忙しい。また後日。」
そう言って会話30秒の電話は終わった。
「いいの?そんな雑に扱って。」
私は、相手の婚約者が気の毒に思えた。
「相手は社長令嬢だ。仕事が忙しい事くらい分かっている。」
何その、遠回しな婚約者自慢。
「で?その物分かりのいい婚約者は、一体いくつなの?」
「ん?新卒だから、22歳か。」
私はにっこりと、彼を見た。
うん。彼だったら38歳のアラフォーのオジサンでも、若い女の子は結婚したいだろう。
そうそう。イケオジだからね。
って、大丈夫なの?その婚約者。
「その彼女、男性とお付き合いするのは、結城が初めて?」
「そうだが?」
「手、付けたの?」
「まだだ。焦ってない。結婚すれば、嫌でもできるからな。」
くぅー。何だよ、それ。
しかし、初めて付き合う男の人が、アラフォーのイケオジって、どんな社長令嬢なのよ。
「ところで、浅見は?結婚はしないのか?」
グサッとくる言葉に、言葉もない。
同じく38歳。アラフォー・独身・子なし。
絶賛、結婚希望中。
だが私には、愛すべき恋人がいる。
「結婚は焦ってないわ。これだと言う人に巡り合えたから。」
「焦ろよ。子供産めなくなるぞ。」
部下達が、クスクス笑っている。
こいつが同期って、一体何の巡り合わせよ。
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