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一人の医師として
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あの頃が懐かしい。
「えっ……」
血圧が高い。
「熱はありますか?吐き気は?」
すると少し気持ち悪いと言っていると言う。
「吐き気が気になりますね。CTで頭の画像を……」
またハッとした。
ここは機器がそろっていないんだった。
「今度はどうした?」
土井先生からまた声がかけられた。
「この女性、高血圧と吐き気があるんです。頭部CTを撮りたいんですけど……」
そう言っても、ここでは撮れない。
「……またバスでジアー行きですよね。」
すると土井先生は、おばあちゃんに話しかけた。
「意識障害もない。瞳の充血もない。ただの高血圧症だろう。」
「でも……」
「大丈夫だ。その女性は、万年高血圧だからな。」
「えっ……」
おばあちゃんを見ると、ニコニコしている。
「じゃあ、血圧の薬だけでいいんですか?」
「ああ。毎月受け取りに来ている。渡せ。」
「はい。」
奥から乱雑になっている薬の棚から、血圧の薬を探した。
「あった。」
30日分、袋に入れておばあちゃんに手渡した。
「お大事ね、おばあちゃん。」
そしておばあちゃんは、ニコニコしながら帰って行った。
「……一つの症状に囚われていたんじゃ、ここではダメなんですね。」
「ああ。何せ機器がないからな。もっと問診しておくべきだったな。」
土井先生は、患者さんからいろんな話を聞く。
私もあんなふうになりたい。
「はい。」
私は次の患者さんへと向かった。
「薬はどうやって、買ってるんですか?」
「国王が海外から買い付けている。薬代はタダだ。」
「私達は、ボランティアですね。」
「そうだ。でも住む場所も食べる物にも困らない。全部モルテザー王国が支給してくれるからな。」
私と土井先生は、微笑み合った。
「じゃあ、気合入れて患者さんを治さないと。」
「そう言う事だ。」
それが私の望んだ道だ。
しばらくして陽が落ち、患者さん達はぞろぞろと家に帰って行った。
「今日も終わったか。」
私の元へは、あの風邪の男の子が残された。
その時だった。
バスの運転手から、ジアー行きの最終バスが出ると言付けがあった。
「乗ります。」
私は男の子を抱きかかえ、診療所を後にした。
「千奈ちゃん、アムジャドによろしく。」
津田先生に送られて、私達はバスでサハルを出た。
初めて来た時よりも、道は整備されていて、身体が揺れる事は少なかった。
そして1時間後、バスは首都ジアーに着いた。
「アリさん、大きな病院分かる?」
「分かるよ。こっち。」
アリさんに連れて行ってもらった場所は、中心部にある大きな病院だった。
「すみません。」
声を掛けると、奧からお医者さんが出てきた。
「私、森川と言います。」
「ああ、Dr,ドイのいる場所で働いている女医さんね。子供が来るって連絡あった。こちらね。」
あの男の子を抱えて、奧の部屋へと歩いて行った。
「ここがレントゲン。好きなように使っていいよ。」
「ありがとうございます。」
私は男の子をレントゲンの前に立たせて、写真を撮った。
「現像するのは明日ね。」
「じゃあ、明日の朝またここに来ます。」
「男の子は任せて。ベッドは空いているから。」
「はい。」
そして私はアリさんと一緒に、病院を出た。
「王宮まで送るよ。Dr,ツダに頼まれた。」
「津田先生に?アリさんは、どこに泊るの?」
「家がジアーだからね。家で寝るよ。」
私達はその後、笑い話をしながら、王宮に入った。
「チナ!」
「アムジャド……」
「会いたかった。」
アムジャドが玄関まで迎えに来てくれていた。
「遅いじゃないか。心配した。」
「ごめんなさい。患者さんを診なければならなくて。」
するとアムジャドは、ぎゅっと私を抱きしめてくれた。
「気が変わったかと思ったよ。」
「そんな訳ないじゃない。私はいつだって、アムジャドの側にいるわ。」
私はアムジャドを見つめた。
2年振り。アムジャドをこうして見つめるのは。
「えっ……」
血圧が高い。
「熱はありますか?吐き気は?」
すると少し気持ち悪いと言っていると言う。
「吐き気が気になりますね。CTで頭の画像を……」
またハッとした。
ここは機器がそろっていないんだった。
「今度はどうした?」
土井先生からまた声がかけられた。
「この女性、高血圧と吐き気があるんです。頭部CTを撮りたいんですけど……」
そう言っても、ここでは撮れない。
「……またバスでジアー行きですよね。」
すると土井先生は、おばあちゃんに話しかけた。
「意識障害もない。瞳の充血もない。ただの高血圧症だろう。」
「でも……」
「大丈夫だ。その女性は、万年高血圧だからな。」
「えっ……」
おばあちゃんを見ると、ニコニコしている。
「じゃあ、血圧の薬だけでいいんですか?」
「ああ。毎月受け取りに来ている。渡せ。」
「はい。」
奥から乱雑になっている薬の棚から、血圧の薬を探した。
「あった。」
30日分、袋に入れておばあちゃんに手渡した。
「お大事ね、おばあちゃん。」
そしておばあちゃんは、ニコニコしながら帰って行った。
「……一つの症状に囚われていたんじゃ、ここではダメなんですね。」
「ああ。何せ機器がないからな。もっと問診しておくべきだったな。」
土井先生は、患者さんからいろんな話を聞く。
私もあんなふうになりたい。
「はい。」
私は次の患者さんへと向かった。
「薬はどうやって、買ってるんですか?」
「国王が海外から買い付けている。薬代はタダだ。」
「私達は、ボランティアですね。」
「そうだ。でも住む場所も食べる物にも困らない。全部モルテザー王国が支給してくれるからな。」
私と土井先生は、微笑み合った。
「じゃあ、気合入れて患者さんを治さないと。」
「そう言う事だ。」
それが私の望んだ道だ。
しばらくして陽が落ち、患者さん達はぞろぞろと家に帰って行った。
「今日も終わったか。」
私の元へは、あの風邪の男の子が残された。
その時だった。
バスの運転手から、ジアー行きの最終バスが出ると言付けがあった。
「乗ります。」
私は男の子を抱きかかえ、診療所を後にした。
「千奈ちゃん、アムジャドによろしく。」
津田先生に送られて、私達はバスでサハルを出た。
初めて来た時よりも、道は整備されていて、身体が揺れる事は少なかった。
そして1時間後、バスは首都ジアーに着いた。
「アリさん、大きな病院分かる?」
「分かるよ。こっち。」
アリさんに連れて行ってもらった場所は、中心部にある大きな病院だった。
「すみません。」
声を掛けると、奧からお医者さんが出てきた。
「私、森川と言います。」
「ああ、Dr,ドイのいる場所で働いている女医さんね。子供が来るって連絡あった。こちらね。」
あの男の子を抱えて、奧の部屋へと歩いて行った。
「ここがレントゲン。好きなように使っていいよ。」
「ありがとうございます。」
私は男の子をレントゲンの前に立たせて、写真を撮った。
「現像するのは明日ね。」
「じゃあ、明日の朝またここに来ます。」
「男の子は任せて。ベッドは空いているから。」
「はい。」
そして私はアリさんと一緒に、病院を出た。
「王宮まで送るよ。Dr,ツダに頼まれた。」
「津田先生に?アリさんは、どこに泊るの?」
「家がジアーだからね。家で寝るよ。」
私達はその後、笑い話をしながら、王宮に入った。
「チナ!」
「アムジャド……」
「会いたかった。」
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「遅いじゃないか。心配した。」
「ごめんなさい。患者さんを診なければならなくて。」
するとアムジャドは、ぎゅっと私を抱きしめてくれた。
「気が変わったかと思ったよ。」
「そんな訳ないじゃない。私はいつだって、アムジャドの側にいるわ。」
私はアムジャドを見つめた。
2年振り。アムジャドをこうして見つめるのは。
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