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釣り合わない

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「えっ!?」

ジャミレトさんは、顔が引きつっていた。

「そして僕は、このチナを正妻に迎えます。」

「そんな!」

ジャミレトさんのお父さんとお母さんは、肩を寄せ合い、嘆いている。

「アムジャド皇太子は、いままで誠意を尽くしてきたジャミレトを、捨てるおつもりですか。」

「婚約破棄の事は、大変申し訳ないと思っています。だが僕は、自分の気持ちに嘘はつけない。」

はっきりと言ってくれたアムジャドの顔を、しっかり見た。

そうよ。

一人の男性に正妻は、一人しか迎えられない。

私がアムジャドと結婚するって事は、ジャミレトさんに退いてもらうしかないのだ。


「待て、アムジャド。」

アムジャドとジャミレトさんの間に、アムジャドのお父さんが入った。

「ジャミレトとの婚約破棄は、私が許さない。」

「父王!」

「おまえの気持ちも分かる。それ故、妾妃に迎えてもいいと言っているだろう。だがモルテザー王国の者以外が、王妃につくのは無理だ。」

涙が流れた。

やっぱり日本人の私では、アムジャドと結婚できないの?

「父王。僕は、チナしか欲しくありません。僕が永遠を誓う相手は、チナなんです。ジャミレトではない。」

「ジャミレトは、私が決めた花嫁だ。ジャミレト以外の女と、結婚するのは、絶対に許さん。」

「どうして、そんなにモルテザー王国の者に拘るのですか?血筋ですか?モルテザー王国の者以外の血が、王室に流れるのが、そんなに嫌なんですか?」

「ああ、そうだ。」

「ならば愚かな考えだ。僕はチナを愛している。その人の血を愛おしいとも思っている。日本人の血が王室に混ざるのは、愛故の事だ。」

「おまえは何か勘違いしている。王室を存続させる為に、愛など必要ない。必要な事は、血筋だ。」

「ならば私がジャミレトと結婚して、妾妃にチナを迎えるとしましょう。おそらくジャミレトに子は生まれない。産まれるのは、チナとの間の子供だけでしょう。」

「ああ……」

ジャミレトさんのお母さんは、床に膝間づいてしまった。

「お母さん。」

ジャミレトさんは、お母さんの側に。

「なんてこと……ジャミレトを未来の王妃として、国王の母として、幼い頃から厳しく育ててきたと言うのに……これではジャミレトが可哀相だわ。」

「全くだ。なぜその日本人ではないといけないのか。」

「愛しているからです。それ以外に理由などない。」

アムジャドのきっぱりとした発言で、私の涙も不安も吹き飛んだ。

「アムジャトのお父さん。」

「何だ。」

「私、本当にアムジャドの事を愛しています。生涯アムジャドだけだと誓えます。どうか、私達の結婚を許して頂けないでしょうか。」

「チナ……」

私とアムジャドは、手を握り体を寄せ合った。

「父王。この通りです。チナと結婚できないのならば、私は皇太子の地位を降ります。」

「なに!?後は誰が継ぐのだ。」

「弟達の誰かが継げばいいでしょう。僕はチナの事を、最優先に考える。」

「そこまで……」

アムジャドのお父さんは、椅子の上で倒れそうになった。

「王よ。大丈夫ですか?」

ジャミレトさんが、王を支えた。

「ああ、ジャミレト。こんな事になってしまった事を許してくれ。全ては私の責任だ。」

「何を仰いますか。王は何も悪くはありません。」

するとジャミレトさんは、私をきつい目で見た。

「悪いのは、アムジャド皇太子をそそのかした、あの女です。」

そう言って指を指された。

「アムジャド皇太子は、あの女にそそのかされているのです。」

「そんな!」

私は初めて、ジャミレトさんに反抗した。

「私はアムジャドをそそのかしてなんかいないわ。真剣に愛し合っているだけよ!」

「そう思わせているのが、そそのかしていると言うのよ!」

ジャミレトさんは、鋭い目で私を射抜いた。

「アムジャド皇太子を、元に戻して!モルテザー王国に必要な方よ!あなたが奪っていい権利なんて、何一つない!」

私の目から、涙が溢れた。

「ただアムジャドを愛しただけなのに、どうしてそんな事を言われなきゃいけないの?」
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