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釣り合わない
①
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朝出発した一行は、お昼前には宮殿に着いた。
「さあ、チナ。私の部屋に案内するよ。」
「うん。」
馬から降ろされ、私は宮殿の庭を通った。
「綺麗な庭ね。」
「ああ。奥には日本庭園もある。午後から案内しよう。」
「ありがとう。」
宮殿の正面玄関が近づく度に、私は緊張の渦に巻き込まれて行く。
「緊張してきたか?」
「うん。なんだか心臓が口から飛び出そう。」
「それは、大変な緊張だ。」
するとアムジャドは、私を横から抱きしめてくれた。
「大丈夫だよ。僕が側にいる。」
「うん……」
ようやく正面玄関に辿り着いて、扉がゆっくりと開いた。
「アムジャド皇太子のお戻りです。」
開いた扉の先には、ずらりと使用人の人が並んでいた。
「お待ちしておりました。」
「ああ。」
イマードさんが、一歩前に出る。
「チナ様もお待ちしておりました。」
「ありがとう。」
それが本心なのか、疑ってしまう。
ううん。皆の手前、ただ言っているだけよ。
「まず部屋で一息つく。」
「かしこまりました。」
「行こう、チナ。」
私の腰に手を当て、アムジャドは奥の部屋に進む。
「チナ様もお連れするつもりですか?」
「何か問題でも?」
アムジャドとイマードさんは見つめ合った。
この張りつめた空気が、私の緊張をより大きくする。
「……いいえ。」
イマードさんが一歩退くと、アムジャドは私の手を引いて、歩き始めた。
「ねえ、アムジャド。まだイマードさんと仲直りしていないの?」
「そうじゃない。ただ距離を置いているだけだ。」
しばらく歩くと、大きな階段が見えて来た。
「この階段を昇った奥が、僕の部屋だ。」
「そうなんだ。」
私が階段を昇り始めた時だった。
「待ちなさい。」
後ろから、やけに低い声が聞こえてきた。
アムジャドの表情が曇る。
「アムジャド。戻って来たら、先に私に会うべきだな。」
私はアムジャドの顔を見た。
「……お父さん、日本語を話せるの?」
「ああ。Dr,ドイの影響でな。」
するとアムジャドは、お父さんのところへ行った。
「申し訳ありません。長いテント生活で、疲れていたもので。それに私の恋人を休ませようと。」
お父さんは、チラッと私の方を見た。
「こんにちは。」
私が頭を下げると、お父さんも”こんにちは”と言ってくれた。
「あなたがアムジャドが手折った、東洋の花か。綺麗な方だ。」
急に褒められて、顔が赤くなった。
アムジャドの甘いささやきは、お父さんに似たのかな。
「後で昼食会を開く。彼女も連れてくるといい。」
「分かりました。」
そう言い残して、お父さんは行ってしまった。
「先にお父さんと会いに行かなくてよかったの?」
「ああ、いいんだ。」
アムジャドはにっこりと笑って、私の手を繋ぐと、階段を昇り始めた。
私もそれに合わせて、昇り始める。
「僕の部屋からは、さっき通った庭も見えるよ。」
「綺麗な眺めでしょうね。」
アムジャドと話をしていると、緊張が取れてきた。
そう言えば、お父さんと会った時、緊張しなかったのは、なぜなんだろう。
ああ、そうだ。アムジャドと雰囲気が似ているからだわ。
あの柔らかくて、太陽のような雰囲気。
アムジャドはきっとお父さんに似たのね。
そんな事を思っていたら、大きな部屋の前に来た。
「ここが僕の部屋だよ。」
私が入ろうとすると、一人の女性が前に出た。
「お待ちください、皇太子。あなた様の寝所に入れるのは、正妻の方だけでございます。」
「チナは、将来正妻になる者だ。問題はない。」
「ただ……」
「何だ?」
「父王様の許可をまだ得ておりません。」
私は下を向いた。
ここでも私は、余所者扱いを受けるのか。
「分かった。」
アムジャドは私を連れて、今度は奥の部屋に向かった。
「どこへ行くの?アムジャド。」
「父王のところだ。」
「さっき、会ったじゃない。」
「今直ぐ、チナとの結婚を認めて頂く。」
「アムジャド!」
私は繋いだ手を放した。
「さあ、チナ。私の部屋に案内するよ。」
「うん。」
馬から降ろされ、私は宮殿の庭を通った。
「綺麗な庭ね。」
「ああ。奥には日本庭園もある。午後から案内しよう。」
「ありがとう。」
宮殿の正面玄関が近づく度に、私は緊張の渦に巻き込まれて行く。
「緊張してきたか?」
「うん。なんだか心臓が口から飛び出そう。」
「それは、大変な緊張だ。」
するとアムジャドは、私を横から抱きしめてくれた。
「大丈夫だよ。僕が側にいる。」
「うん……」
ようやく正面玄関に辿り着いて、扉がゆっくりと開いた。
「アムジャド皇太子のお戻りです。」
開いた扉の先には、ずらりと使用人の人が並んでいた。
「お待ちしておりました。」
「ああ。」
イマードさんが、一歩前に出る。
「チナ様もお待ちしておりました。」
「ありがとう。」
それが本心なのか、疑ってしまう。
ううん。皆の手前、ただ言っているだけよ。
「まず部屋で一息つく。」
「かしこまりました。」
「行こう、チナ。」
私の腰に手を当て、アムジャドは奥の部屋に進む。
「チナ様もお連れするつもりですか?」
「何か問題でも?」
アムジャドとイマードさんは見つめ合った。
この張りつめた空気が、私の緊張をより大きくする。
「……いいえ。」
イマードさんが一歩退くと、アムジャドは私の手を引いて、歩き始めた。
「ねえ、アムジャド。まだイマードさんと仲直りしていないの?」
「そうじゃない。ただ距離を置いているだけだ。」
しばらく歩くと、大きな階段が見えて来た。
「この階段を昇った奥が、僕の部屋だ。」
「そうなんだ。」
私が階段を昇り始めた時だった。
「待ちなさい。」
後ろから、やけに低い声が聞こえてきた。
アムジャドの表情が曇る。
「アムジャド。戻って来たら、先に私に会うべきだな。」
私はアムジャドの顔を見た。
「……お父さん、日本語を話せるの?」
「ああ。Dr,ドイの影響でな。」
するとアムジャドは、お父さんのところへ行った。
「申し訳ありません。長いテント生活で、疲れていたもので。それに私の恋人を休ませようと。」
お父さんは、チラッと私の方を見た。
「こんにちは。」
私が頭を下げると、お父さんも”こんにちは”と言ってくれた。
「あなたがアムジャドが手折った、東洋の花か。綺麗な方だ。」
急に褒められて、顔が赤くなった。
アムジャドの甘いささやきは、お父さんに似たのかな。
「後で昼食会を開く。彼女も連れてくるといい。」
「分かりました。」
そう言い残して、お父さんは行ってしまった。
「先にお父さんと会いに行かなくてよかったの?」
「ああ、いいんだ。」
アムジャドはにっこりと笑って、私の手を繋ぐと、階段を昇り始めた。
私もそれに合わせて、昇り始める。
「僕の部屋からは、さっき通った庭も見えるよ。」
「綺麗な眺めでしょうね。」
アムジャドと話をしていると、緊張が取れてきた。
そう言えば、お父さんと会った時、緊張しなかったのは、なぜなんだろう。
ああ、そうだ。アムジャドと雰囲気が似ているからだわ。
あの柔らかくて、太陽のような雰囲気。
アムジャドはきっとお父さんに似たのね。
そんな事を思っていたら、大きな部屋の前に来た。
「ここが僕の部屋だよ。」
私が入ろうとすると、一人の女性が前に出た。
「お待ちください、皇太子。あなた様の寝所に入れるのは、正妻の方だけでございます。」
「チナは、将来正妻になる者だ。問題はない。」
「ただ……」
「何だ?」
「父王様の許可をまだ得ておりません。」
私は下を向いた。
ここでも私は、余所者扱いを受けるのか。
「分かった。」
アムジャドは私を連れて、今度は奥の部屋に向かった。
「どこへ行くの?アムジャド。」
「父王のところだ。」
「さっき、会ったじゃない。」
「今直ぐ、チナとの結婚を認めて頂く。」
「アムジャド!」
私は繋いだ手を放した。
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