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会ってくれないか
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「津田先生、土井先生。私、アムジャドの側にいられれば、それでいいんです。」
「いや、でも!」
「私は、医者になるんだし。ここで患者さんを診て、時々アムジャドと会えれば、それでいいんです。」
「千奈ちゃん……」
するとアムジャドが、私の体を抱きしめてくれた。
「チナ。そんな事言わないでくれ。ジャミレトの事は、なんとかする。時々じゃない。毎日君に会う。」
「アムジャド……」
気づけば、土井先生も津田先生も、私達に背中を向けている。
「どうもアラブ人の甘い口説き文句には、日本人は耐えられん。」
「そうですね。」
二人共、耳まで真っ赤にしている。
「それでは今日も、お姫様を連れていきますよ。」
アムジャドは、私の手を繋いだ。
医者になって、この地に帰ってくる。
それを伝えてから、アムジャドは私をお姫様扱いしなくなった。
一人の女として、見てくれるようになったのだ。
「ねえ、アムジャド。」
「なに?」
「私を抱えて歩いていた時と、手を繋いでいる今、どっちがいい?」
するとアムジャドは、私の手にキスをした。
「どちらも愛おしいよ。優越なんてつけられない。」
いつもアムジャドの笑顔が降り注ぐ、すぐ隣にいたいと思うのは、決して難しい事ではないはず。
「日本に帰ったら、Lineちょうだいね。あっ、Lineって無料通信アプリね。日本版だと嬉しいな。」
「その前に、まだ1カ月もここにいるじゃないか。Lineがどうのこうの言うより、二人の会っている時間を大切にしよう。」
「そうね。」
そしてアムジャドの泊まっているテントの中に入った。
すると中から湯気がふわり。
「なに?この湯気はどこからきているの?」
するとアムジャドは、クスリと笑った。
「こちらへ。」
「ん?」
隣のテントに繋がっている布を捲ると、そこにはお風呂が設置されていた。
「ハマムというアラブ式のお風呂だよ。」
「へえ。こんな大きなお風呂、見た事ない。」
「ハマムは大衆浴場だからね。さあ、入ろう。」
早速私達は服を脱いで、二人でハマムに入った。
「なんだか、寂しいわね。」
「ははは。こんなに大きなお風呂に、二人だけだからかい?」
私は体をタオルで拭きながら、診療所にいるみんなを思った。
「津田先生も連れてくるんだった。土井先生も、ずっとお風呂入っていないでしょうに。」
アムジャドはゆっくりと、私を抱き寄せた。
「チナは、いつも周りの事を心配するんだね。」
「前はこんなんじゃなかった。モルテザー王国に来てからかな。何て言うか、みんな助け合わないと生きていけないって言うか。日本が希薄だから、余計にそう思うのかな。」
「そんな事はない。日本人は、僕達に優しかった。日本人はシャイだから、仲良くなるまでに時間はかかったけれどね。」
アムジャドの肩にもたれかかった。
「明日、Dr,ドイやDr,ツダも呼ぼう。二人共喜ぶと思うよ。」
「そうね。」
その時にピンときた。
「この街の人、みんな呼んだら?」
「この街の人?みんな?そんな事したら、一日じゃあ、足りないよ。」
「そうか。何でもやればいいってものじゃないのね。」
「でもいい心がけだ。さすが未来の王妃は、慈悲深い。」
そう言ってくれるアムジャド。
その言葉は嬉しいけれど、やはりジャミレトさんの事が気になる。
誰がどう考えたって、ジャミレトさんの方が、王妃に相応しい。
そして私は、側に仕える妾妃になるだけ。
ううん。側にいられるだけいいなんて言っておきながら、本当は誰にもアムジャドを取られたくない。
どうすればいいの?
「チナ。どうしてそんな悲しい顔をするの?」
「ううん。何でもない。」
「チナはいつも、自分の思った事、心の中に閉じ込めてしまう。それはよくないよ。僕はいつもチナの味方だ。思った事、考えている事全部教えて。」
アムジャドは優しい。
優しいから、甘えてしまう
「どうしたら、アムジャドを独り占めできるのか、考えてしまうの。」
「いや、でも!」
「私は、医者になるんだし。ここで患者さんを診て、時々アムジャドと会えれば、それでいいんです。」
「千奈ちゃん……」
するとアムジャドが、私の体を抱きしめてくれた。
「チナ。そんな事言わないでくれ。ジャミレトの事は、なんとかする。時々じゃない。毎日君に会う。」
「アムジャド……」
気づけば、土井先生も津田先生も、私達に背中を向けている。
「どうもアラブ人の甘い口説き文句には、日本人は耐えられん。」
「そうですね。」
二人共、耳まで真っ赤にしている。
「それでは今日も、お姫様を連れていきますよ。」
アムジャドは、私の手を繋いだ。
医者になって、この地に帰ってくる。
それを伝えてから、アムジャドは私をお姫様扱いしなくなった。
一人の女として、見てくれるようになったのだ。
「ねえ、アムジャド。」
「なに?」
「私を抱えて歩いていた時と、手を繋いでいる今、どっちがいい?」
するとアムジャドは、私の手にキスをした。
「どちらも愛おしいよ。優越なんてつけられない。」
いつもアムジャドの笑顔が降り注ぐ、すぐ隣にいたいと思うのは、決して難しい事ではないはず。
「日本に帰ったら、Lineちょうだいね。あっ、Lineって無料通信アプリね。日本版だと嬉しいな。」
「その前に、まだ1カ月もここにいるじゃないか。Lineがどうのこうの言うより、二人の会っている時間を大切にしよう。」
「そうね。」
そしてアムジャドの泊まっているテントの中に入った。
すると中から湯気がふわり。
「なに?この湯気はどこからきているの?」
するとアムジャドは、クスリと笑った。
「こちらへ。」
「ん?」
隣のテントに繋がっている布を捲ると、そこにはお風呂が設置されていた。
「ハマムというアラブ式のお風呂だよ。」
「へえ。こんな大きなお風呂、見た事ない。」
「ハマムは大衆浴場だからね。さあ、入ろう。」
早速私達は服を脱いで、二人でハマムに入った。
「なんだか、寂しいわね。」
「ははは。こんなに大きなお風呂に、二人だけだからかい?」
私は体をタオルで拭きながら、診療所にいるみんなを思った。
「津田先生も連れてくるんだった。土井先生も、ずっとお風呂入っていないでしょうに。」
アムジャドはゆっくりと、私を抱き寄せた。
「チナは、いつも周りの事を心配するんだね。」
「前はこんなんじゃなかった。モルテザー王国に来てからかな。何て言うか、みんな助け合わないと生きていけないって言うか。日本が希薄だから、余計にそう思うのかな。」
「そんな事はない。日本人は、僕達に優しかった。日本人はシャイだから、仲良くなるまでに時間はかかったけれどね。」
アムジャドの肩にもたれかかった。
「明日、Dr,ドイやDr,ツダも呼ぼう。二人共喜ぶと思うよ。」
「そうね。」
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「この街の人、みんな呼んだら?」
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「そうか。何でもやればいいってものじゃないのね。」
「でもいい心がけだ。さすが未来の王妃は、慈悲深い。」
そう言ってくれるアムジャド。
その言葉は嬉しいけれど、やはりジャミレトさんの事が気になる。
誰がどう考えたって、ジャミレトさんの方が、王妃に相応しい。
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ううん。側にいられるだけいいなんて言っておきながら、本当は誰にもアムジャドを取られたくない。
どうすればいいの?
「チナ。どうしてそんな悲しい顔をするの?」
「ううん。何でもない。」
「チナはいつも、自分の思った事、心の中に閉じ込めてしまう。それはよくないよ。僕はいつもチナの味方だ。思った事、考えている事全部教えて。」
アムジャドは優しい。
優しいから、甘えてしまう
「どうしたら、アムジャドを独り占めできるのか、考えてしまうの。」
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