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会ってくれないか
①
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そしてあっという間に、2か月の時が過ぎた。
「2か月も経つと、この生活も慣れてきたな。」
津田先生は、ベッドの上で欠伸をした。
先生、最初の頃は床で寝ていたんだよね。
そして私が、アムジャドのテントで寝るようになって、ようやくベッドで寝る事ができた。
夕食も、アムジャドの計らいで、豪華な食事を運んでいるというし、このままこんな暮らしが続けば……
なーんて、夢物語か。
「ところでアムジャドは、まだ来ないのか?」
土井先生が、イライラしながら、アムジャドが来るのを待っている。
「そろそろだと思いますけど。」
私は土井先生が、なぜイライラしているのか、分からなかった。
「アムジャドに何か用があるんですか?」
「ああ?おまえさんとの事だ。」
「私の事ですか?」
「ああ。」
増々分からなくなった私を他所に、アムジャドは診療所に顔を出した。
「チナ。」
「アムジャド。」
そしていつものように、アムジャドに抱き着こうとした時だ。
先に土井先生が、私達の間に入った。
「皇太子。少しお話させてください。」
「ああ、いいよ。Dr,ドイ。」
すると二人は、診療所の外へ。
何気に動いている振りをして、入り口に陣取った。
「皇太子。お話をしたいのは、千奈の事です。」
「チナの事?何があった?」
アムジャドの表情が、直ぐに固くなった。
「何かあったではありません。皇太子は、チナをどうするおつもりですか?」
アムジャドが黙った。
「ただの遊びですか?」
「遊びではない。本気だ。」
アムジャド、はっきり言ってくれた。
「ならば、このまま千奈を、モルテザー王国に?」
「そうしたい。だが、チナがそれを望んでいない。」
「えっ?」
土井先生が、こっちを見た。
慌てて、壁の裏に隠れて、土井先生から見えないようにした。
「医師になってから、またモルテザー王国に来ると言ってくれた。」
「なんでそんな事を……」
土井先生が、泣いている。
「それじゃあ、また皇太子とチナは、離れ離れになるではないか。」
私達の為に、土井先生は泣いてくれているんだ。
胸がジーンと温かくなる。
「大丈夫です、Dr,ドイ。今の私達は前と違います。どんなに離れていても、心は一緒です。」
「それならいいが。」
「それに、王妃になる女性には、自立した方が必要です。チナはそれに相応しい。」
「なんと……」
すると土井先生は、アムジャドの肩を叩いた。
「そうか。そう言う事か。それならいいんだ。」
アムジャドが微笑んでいる。
アムジャドと土井先生の間には、確かな絆があるんだろうな。
「よかったね、千奈ちゃん。」
後ろから津田先生が、話しかけてきた。
「アムジャドは、千奈ちゃんと結婚する気なんだろうな。」
「そうですね。でも複雑かも。」
「どうして?」
「こっちでは、私達外国人じゃないですか。外国人が王妃になるなんて、信じられないし。それに……」
「それに?何かあるの?」
「アムジャドには……ジャミレトさんって言う、婚約者がいるんです。」
「えっ!?」
津田先生は、茫然としている。
「それじゃあ、千奈ちゃんは?どういう立場になるんだよ!」
すると津田先生は、外にいるアムジャドの元へ行った。
「津田先生?」
「やい!アムジャド!君は千奈ちゃんを一体、どうするつもりなんだ。」
津田先生が怒っている姿、初めて見た。
「津田先生、それはさっき聞いた。皇太子は、千奈と結婚する気だ。」
「じゃあ、ジャミレトさんっていう婚約者は、どうするんですか。」
「えっ?婚約者?」
津田先生と土井先生が、アムジャドを見つめる。
「結婚って言っても、そのジャミレトさんとして、千奈ちゃんは妾妃にするつもりなんじゃないのか?」
「な、なに?皇太子、それは本当か?」
アムジャドは、何も答えられず、黙って立っていた。
そんな姿を、このまま見続ける事はできなくて、私はそっとアムジャドの横に立った。
「2か月も経つと、この生活も慣れてきたな。」
津田先生は、ベッドの上で欠伸をした。
先生、最初の頃は床で寝ていたんだよね。
そして私が、アムジャドのテントで寝るようになって、ようやくベッドで寝る事ができた。
夕食も、アムジャドの計らいで、豪華な食事を運んでいるというし、このままこんな暮らしが続けば……
なーんて、夢物語か。
「ところでアムジャドは、まだ来ないのか?」
土井先生が、イライラしながら、アムジャドが来るのを待っている。
「そろそろだと思いますけど。」
私は土井先生が、なぜイライラしているのか、分からなかった。
「アムジャドに何か用があるんですか?」
「ああ?おまえさんとの事だ。」
「私の事ですか?」
「ああ。」
増々分からなくなった私を他所に、アムジャドは診療所に顔を出した。
「チナ。」
「アムジャド。」
そしていつものように、アムジャドに抱き着こうとした時だ。
先に土井先生が、私達の間に入った。
「皇太子。少しお話させてください。」
「ああ、いいよ。Dr,ドイ。」
すると二人は、診療所の外へ。
何気に動いている振りをして、入り口に陣取った。
「皇太子。お話をしたいのは、千奈の事です。」
「チナの事?何があった?」
アムジャドの表情が、直ぐに固くなった。
「何かあったではありません。皇太子は、チナをどうするおつもりですか?」
アムジャドが黙った。
「ただの遊びですか?」
「遊びではない。本気だ。」
アムジャド、はっきり言ってくれた。
「ならば、このまま千奈を、モルテザー王国に?」
「そうしたい。だが、チナがそれを望んでいない。」
「えっ?」
土井先生が、こっちを見た。
慌てて、壁の裏に隠れて、土井先生から見えないようにした。
「医師になってから、またモルテザー王国に来ると言ってくれた。」
「なんでそんな事を……」
土井先生が、泣いている。
「それじゃあ、また皇太子とチナは、離れ離れになるではないか。」
私達の為に、土井先生は泣いてくれているんだ。
胸がジーンと温かくなる。
「大丈夫です、Dr,ドイ。今の私達は前と違います。どんなに離れていても、心は一緒です。」
「それならいいが。」
「それに、王妃になる女性には、自立した方が必要です。チナはそれに相応しい。」
「なんと……」
すると土井先生は、アムジャドの肩を叩いた。
「そうか。そう言う事か。それならいいんだ。」
アムジャドが微笑んでいる。
アムジャドと土井先生の間には、確かな絆があるんだろうな。
「よかったね、千奈ちゃん。」
後ろから津田先生が、話しかけてきた。
「アムジャドは、千奈ちゃんと結婚する気なんだろうな。」
「そうですね。でも複雑かも。」
「どうして?」
「こっちでは、私達外国人じゃないですか。外国人が王妃になるなんて、信じられないし。それに……」
「それに?何かあるの?」
「アムジャドには……ジャミレトさんって言う、婚約者がいるんです。」
「えっ!?」
津田先生は、茫然としている。
「それじゃあ、千奈ちゃんは?どういう立場になるんだよ!」
すると津田先生は、外にいるアムジャドの元へ行った。
「津田先生?」
「やい!アムジャド!君は千奈ちゃんを一体、どうするつもりなんだ。」
津田先生が怒っている姿、初めて見た。
「津田先生、それはさっき聞いた。皇太子は、千奈と結婚する気だ。」
「じゃあ、ジャミレトさんっていう婚約者は、どうするんですか。」
「えっ?婚約者?」
津田先生と土井先生が、アムジャドを見つめる。
「結婚って言っても、そのジャミレトさんとして、千奈ちゃんは妾妃にするつもりなんじゃないのか?」
「な、なに?皇太子、それは本当か?」
アムジャドは、何も答えられず、黙って立っていた。
そんな姿を、このまま見続ける事はできなくて、私はそっとアムジャドの横に立った。
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