砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~

日下奈緒

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蜜愛

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あの3人の嬉しそうな顔が浮かぶ。

「着いたよ。チナ。」

今日もアムジャドのベッドに、座らされる。

「待った!今夜もすぐ私を抱くの?」

「ダメ?」

やる気満々のアムジャドに、ついていけない。

「あの……そんなにしなくても。」

「どうして?僕はチナを、一晩中抱いていたい。何度も君の中で果てたいと思うよ。」

そんなエロい事言われても、一晩中なんて私の体がもたない。

「ごめん。寝る前ならいいけれど。」

「そうか。チナの言う事を聞くよ。」

アムジャドは、優しく抱きしめてくれた。

「そうだ。チナは、お香が気に入ったと言っていたね。チナの為に、お香をたこう。」

「そうね。何の香りがあるの?」

お香か。日本にいる時、少しだけはまっていた時があったな。

するとアムジャドは、側の棚から一つのお香を取り出した。

「イランイランだ。官能的な香りがする。」

火を着けると、その煙が辺り一帯を漂った。

「どう?いい香りだろ?」

「うん……」

確かにいい香りだけど、官能的って言われてもね。

恋人の誘いを断るなんて、私ダメな彼女なのかしら。


「今日も宴といこう。」

昨日と同じように、給仕の人達や踊り子たちがスタンバイをする。

「今夜がチナが、始まりの合図をして。」

アムジャドが両手を打つ真似をした。

「こう?」

見よう見まねで手を叩くと、音楽が流れ始め、踊り子たちがダンスを始めた。

昨日も見たけれど、スタイルのいい人達ばかり。

「ねえ、アラブの王様は、この中から恋人を選ぶ時があるの?」

「あるよ。でも多くは、悲しい結末に終わるらしい。」

「それって?」

「妾妃に迎える事なく、別れてしまう事だよ。」


艶めかしい踊り。

懸命に腰や腕をくねらせる彼女達の、望むモノは何なんだろうか。

ううん。本当は私だって、この踊り子達と一緒なんだわ。

そんな事を考えると、寂しくなってきた。


「そんな顔しないで、チナ。」

アムジャドが私の額にキスをする。

「チナが寂しい顔をすると、僕も寂しくなる。」

「うん。そうね。」

私はアムジャドに笑って見せた。


何を寂しい事があるの。

アムジャドはここにいるというのに。

私の側にいると言うのに。

この瞬間を、限りなく楽しまなきゃ。


「チナ……僕達のこれからの事なんだけど。」

私はハッとした。

「チナと二度と離れたくない。留学が終わっても、モルテザー王国に残る気はないか。」

ここに。モルテザー王国に。

こうしてアムジャドと一緒に、お香の香りに包まれて、踊り子たちを見ながら暮らすの?

「アムジャド。私、一旦日本に帰るわ。」

「チナ……」

アムジャドは、私をきつく抱きしめた。

「ああ、チナ。再び遠くに行ってしまうなんて。僕には耐えられない。」

「アムジャド……」

もし、アムジャドの言うように、ここに残れば、この世の極楽を味わいながら、楽しく過ごせるだろう。

でも?私は?私の人生は?

「アムジャド。私、日本で医師免許を取ってくるわ。」

「チナ?」

「そしてまた、モルテザー王国に戻ってくる。今度は医者として。」

するとアムジャドは、私をそっと放した。

「そうか。それがチナの夢なんだね。」

「うん。」

「……応援するよ。チナの夢が叶うように。そして再びモルテザー王国に来る事を。」

「アムジャド!」

私達は確かめ合うように、キスをした。


その瞬間、給仕や踊り子達が、ササッとテントの外に出て行く。

「えっ?」

「ははは。皆、空気を読んでいるな。」

アムジャドは呑気に笑っている。

「さあ、僕達の愛し合う時間が来たようだ。」

「あっ……」

アムジャドに服を脱がされ、そっと押し倒された。

「みんなに教えてやりたいよ。僕はチナに溺れているって。」

「私もよ。アムジャドに溺れているわ。」

合わせた肌から、温かいぬくもりが伝わってくる。

「ああ……やっぱり一晩中、チナを抱いていたい。」

満天の星空の下、私達は飽きる事なく、抱き合った。
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