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別れは突然に
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泣いて泣いて、泣き果てて、私の涙は枯れ果ててしまった。
もうお化粧もグチャグチャ。
もうアムジャドと会えない、その気持ちが、胸をズタズタに引き裂いた。
イマードさんは、とにかく日本だけの恋人に拘った。
私とアムジャドは、国へ帰っても、一緒にいるという選択肢をとった。
でも結果、イマードさんの思惑通りになって、私達は今、一緒にいる事ができなくなった。
「アムジャド……」
その名を呼べば、胸がいっぱいになる。
「アムジャド……アムジャド……」
枯れ果てた涙は、また搾り取るように、目からポロッと落ちた。
そんな時だった。
空港にいる人が、私を見かねて声を掛けてくれた。
「あなた、大丈夫?」
「はい。」
ビショビショのハンカチを持って、何とか返事をした。
「どうしたの?」
そのご婦人は、私の隣に座った。
「その様子だと、好きな人とでも、別れてきたの?」
その言葉を聞いて、また涙が出て来た。
「あらら。図星だったのね。」
私はまたハンカチを目に当てて、泣き始めた。
「相手は日本の人?それとも、外国の人?」
「……外国の人です。」
「そう。国境線を超えられなかったのね。」
それを聞くと、また涙がほろほろ出て来た。
「相手も私も、国境線を超える覚悟で、ここに来たんです。」
「あらま。じゃあどうして、付いていかなかったの?」
「付いていかなかった、じゃないんです。付いて行く事を邪魔されたんです。」
「誰に?」
「お付きの人に。」
あの大金が入った封筒を思い出すと、悔しくなってくる。
イマードさんは、私が大金を払えば、アムジャドと別れると思っていたんだわ。
そんな風に思われていたなんて。
「その人は、身分のある人なのね。」
「はい。」
「だとしたら、絶対迎えに来てくれるわ。」
ご婦人は、にこにこ笑っている。
「……迎えに来なかったら?」
「自分から飛び込んでいけばいい。」
あまりにも突拍子のない意見に、私はポカンとしてしまった。
「自分から飛び込んで、拒否されたらどうするんですか?」
「あら、あなたさっき、相手の人も一緒に来て欲しいって、言ったじゃない。」
「はい。」
「大丈夫よ。愛があれば、全て乗り越えられるわ。」
-愛があれば、全て乗り越えられる-
「ありがとうございます。」
私はご婦人に頭を下げた。
「いいえ。決して、希望を捨ててはダメよ。」
「はい。」
「じゃあね。」
ご婦人は、そう言うとどこかへ消えてしまった。
希望を捨てない。
アムジャドともう一度、会える希望を捨てない。
うん。そうやって生きて行こう。
「帰ろう。」
荷物を持ち、空港の外に向かって歩き出した。
お母さん、あんなに劇的なお別れをしたのに、帰ってきたら、何て言うかな。
外に出て、タクシーを拾った。
さっきはアムジャドとの新しい生活で、胸が興奮でいっぱいだったけれど、今は冷静になっている。
そう。もしかしたら、医者になる道を途中で捨てるなって、神様が言っているのかもしれない。
「うん。そうかもしれない。」
私は窓の外を見た。
飛行機が飛んでいる。
アムジャドもあんな風に、行ってしまったんだろうか。
「アムジャド。」
前はアムジャドの名前を呼ぶ度に、切なくなっていた。
でも今は、彼の名前を呼ぶと、強くなれる気がする。
タクシーが家の前に停まり、私は再び家に帰って来た。
「ただいま。」
「千奈!」
お母さんが玄関の前まで、走って来てくれた。
「へへへ。戻って来ちゃった。」
「戻って来たって?」
私は荷物を持って、家の中に入った。
「連れて行ってもらえなかったの。」
「そんな……」
私はソファに座った。
「でも、結果よかった。」
「どうして?」
「だって、このまま医学部辞めたら、お父さんとお母さんに、申し訳ないもの。」
私はお母さんに、笑って見せた。
「千奈。お母さんね。あなたが選んだ道だったら、相手に付いて行ってもいいって、思ってたのよ。」
「大丈夫。愛があれば、また会えるから。」
私は、心から微笑んだ。
もうお化粧もグチャグチャ。
もうアムジャドと会えない、その気持ちが、胸をズタズタに引き裂いた。
イマードさんは、とにかく日本だけの恋人に拘った。
私とアムジャドは、国へ帰っても、一緒にいるという選択肢をとった。
でも結果、イマードさんの思惑通りになって、私達は今、一緒にいる事ができなくなった。
「アムジャド……」
その名を呼べば、胸がいっぱいになる。
「アムジャド……アムジャド……」
枯れ果てた涙は、また搾り取るように、目からポロッと落ちた。
そんな時だった。
空港にいる人が、私を見かねて声を掛けてくれた。
「あなた、大丈夫?」
「はい。」
ビショビショのハンカチを持って、何とか返事をした。
「どうしたの?」
そのご婦人は、私の隣に座った。
「その様子だと、好きな人とでも、別れてきたの?」
その言葉を聞いて、また涙が出て来た。
「あらら。図星だったのね。」
私はまたハンカチを目に当てて、泣き始めた。
「相手は日本の人?それとも、外国の人?」
「……外国の人です。」
「そう。国境線を超えられなかったのね。」
それを聞くと、また涙がほろほろ出て来た。
「相手も私も、国境線を超える覚悟で、ここに来たんです。」
「あらま。じゃあどうして、付いていかなかったの?」
「付いていかなかった、じゃないんです。付いて行く事を邪魔されたんです。」
「誰に?」
「お付きの人に。」
あの大金が入った封筒を思い出すと、悔しくなってくる。
イマードさんは、私が大金を払えば、アムジャドと別れると思っていたんだわ。
そんな風に思われていたなんて。
「その人は、身分のある人なのね。」
「はい。」
「だとしたら、絶対迎えに来てくれるわ。」
ご婦人は、にこにこ笑っている。
「……迎えに来なかったら?」
「自分から飛び込んでいけばいい。」
あまりにも突拍子のない意見に、私はポカンとしてしまった。
「自分から飛び込んで、拒否されたらどうするんですか?」
「あら、あなたさっき、相手の人も一緒に来て欲しいって、言ったじゃない。」
「はい。」
「大丈夫よ。愛があれば、全て乗り越えられるわ。」
-愛があれば、全て乗り越えられる-
「ありがとうございます。」
私はご婦人に頭を下げた。
「いいえ。決して、希望を捨ててはダメよ。」
「はい。」
「じゃあね。」
ご婦人は、そう言うとどこかへ消えてしまった。
希望を捨てない。
アムジャドともう一度、会える希望を捨てない。
うん。そうやって生きて行こう。
「帰ろう。」
荷物を持ち、空港の外に向かって歩き出した。
お母さん、あんなに劇的なお別れをしたのに、帰ってきたら、何て言うかな。
外に出て、タクシーを拾った。
さっきはアムジャドとの新しい生活で、胸が興奮でいっぱいだったけれど、今は冷静になっている。
そう。もしかしたら、医者になる道を途中で捨てるなって、神様が言っているのかもしれない。
「うん。そうかもしれない。」
私は窓の外を見た。
飛行機が飛んでいる。
アムジャドもあんな風に、行ってしまったんだろうか。
「アムジャド。」
前はアムジャドの名前を呼ぶ度に、切なくなっていた。
でも今は、彼の名前を呼ぶと、強くなれる気がする。
タクシーが家の前に停まり、私は再び家に帰って来た。
「ただいま。」
「千奈!」
お母さんが玄関の前まで、走って来てくれた。
「へへへ。戻って来ちゃった。」
「戻って来たって?」
私は荷物を持って、家の中に入った。
「連れて行ってもらえなかったの。」
「そんな……」
私はソファに座った。
「でも、結果よかった。」
「どうして?」
「だって、このまま医学部辞めたら、お父さんとお母さんに、申し訳ないもの。」
私はお母さんに、笑って見せた。
「千奈。お母さんね。あなたが選んだ道だったら、相手に付いて行ってもいいって、思ってたのよ。」
「大丈夫。愛があれば、また会えるから。」
私は、心から微笑んだ。
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