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心と体
⑨
しおりを挟む身体を伸ばしている大我と、酔って項垂れながら水を飲んでいる俺の目が合う。
「それもそうか。階堂は美雨を愛しているんだっけ?」
「ああ、そうだよ。美雨に手を出すなんて、一生許さない。」
そう言って、二人で気が抜けたのか、ふはははっと力無く笑った。
だが次の瞬間、太我は俺の腕を、ギュッと握った。
「階堂。だとしたら、森川社長に気をつけるんだ。」
「ああ……わかってる。」
森川社長は、曲者だ。
一筋縄では相手できない。
「何か森川社長とあったのか?」
「ああ。俺の会社の株主の一人だ。」
「株主!?筆頭じゃあないだろうな!!」
「まだ、そこまでには。」
だが、あの森川社長だ。
いつ筆頭株主になっても、おかしくない勢いだ。
「しかも、俺に菜摘さんをもらってくれと言ってきた。」
「……それで?それでどうした?」
俺の腕を握る、太我の手の力が強くなる。
「もちろん、断った。俺には美雨がいる。」
そこでパッと、俺の腕を離した太我。
「どうした?太我。」
「それで、森川社長は納得したか?」
「さあ、それは知らん。」
「階堂。それで森川社長が納得していなかったら、大変なことになるかもしれないぞ。」
「えっ?」
太我はゴクンと、息を飲んだ。
「三科の兄貴が、左遷されたのは、知っているよな。」
「ああ。」
「あの原因は森川社長だ。」
「森川社長が!?」
俺は持っていたコップを、落としそうになった。
「森川社長は、三科の兄貴の行動を知っていた。ある時、女と一緒にホテルから出てくる場所を、写真で押さえたんだ。」
「それで?」
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「はあ?」
そんな事があるなんて……
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「それを森川社長に知られ、逆鱗に触れた三科の兄貴は、すぐに飛ばされた。決して仕事の失敗なんかじゃないんだ。」
俺はなぜか首筋がゾクっとした。
「階堂。森川社長の逆鱗に触れると、有りもしないことで人生が台無しになる。おまえは大丈夫か?」
返事ができない。
「階堂。なにかあったら、すぐに俺に言え。」
俺は太我の肩に手を置くと、小刻みに首を縦に動かした。
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