9 / 16
朝も昼も夜も
③
しおりを挟む
「ふふふっ!私もそう思います。私、自分の名前、好きですから。」
「へえ。そうなんだ。じゃあ、両親に感謝だな。」
「はい‼」
私達は他の人が見たら、バカップルなんじゃないかと思うくらいに、お互いを見つめあって、照れながら笑い合った。
もしかして、もしかして。
この雰囲気なら、普段口に出せないことも、思いきって言えるかも。
「あのね、先生。」
「何?」
その優しい返事が、余計私の心を駆り立てた。
「私ね、もう一つ、自分の名前が好きな理由があるの!!」
自分でも信じられないくらいに、興奮していた。
「実はね、May,Jも本名、メイって言うの!私と一緒なんだよ~~!!」
興奮し過ぎて、息が切れた。
「May,J?」
「うん‼」
だけど先生のリアクションは鈍い。
「ああ、俺、メイって『となりのトトロ』に出てくるサツキとメイの方だと思ってた。」
「サツキとメイ?」
先生は口元を指で広げた。
「いるだろう。小さくてパンツ見えそうな感じで走ってる女の子が。」
「なっ!」
パンツ! パンツ見えそうって!!
「猫バスで見つけた時、トウモロコシ持ちながら泣きべそかいてたメイちゃんだよ。」
失笑している先生に、口を尖らせた。
「うわっ!益々メイにそっくり。」
もう限界。
私は先生の体を、何度も叩き始めた。
「痛い痛い!止めろって!」
もう一回おまけに叩いてやろうかと思ったのに、それは簡単に先生の手に阻まれた。
「芽依、もう終わり。」
不意にも名前で呼ばれた事に、心臓が高鳴る。
「だって……」
「だって?」
「……そんなパンツ見せてるような子供じゃないもん。」
わかってる。
先生から見たら、まだまだ泣きべそかいてるメイちゃんと同じだって。
「そうだな。」
先生はその一言だけ言い残すと、クルっとテーブルの方を向き、また小説の続きを書き始めた。
面倒くさがられた。
いちいち相手にしてたら、肝心の執筆が進まない。
絶対そう思われた。
お風呂に入った後、髪を乾かしながら、明日、塾に行く準備をする。
いつもはここで、宿題忘れたとか、辞書がない参考書がないだの騒ぐけれども、我慢する。
もう先生の邪魔はしたくない。
そう言ってる矢先に、早速明日使う辞書が行方不明。
あ~あ。
私、何やってるんだろう。
軽くため息をつきながら、辺りを探す。
確か日中、ここで使った気がした。
早く探さなきゃ。
でなければ、また先生の、
「何探してんの?」
ほら、始まった。
「あっ、いや。自分で探します。」
「一人で探すより、二人で探した方が、早いだろ。」
そう言って先生は、執筆している手を止めて、私の側に来た。
「で?何?」
黙っていると、私のバッグの横を、右や左に体を揺らしながら詮索。
「もしかして、辞書?」
なんでわかっちゃうかな。
私は観念して、頷いてみた。
「昼間、この辺で使ってなかったっけ?」
はい。
そんな事をまで、知ってるんですか。
「あっ、ほら。あった。」
先生が探し当てた場所。
そこはベッドの下だった。
なんで、そこ!?
先生から辞書を受け取りながら、反省。
「有り難うございます。」
「うん。」
辞書から手を離しても、先生は一向に立ち上がらなかった。
「しっかし、ベッドの下って。どこをどうしたら、そんなとこに辞書置けるんかな。」
この一言が、私の胸に刺さった。
「どうせ子供です。」
「へっ?」
先生が呆れた顔で、私を覗き込む。
「子供だから、変な場所に物を置いちゃうんです。」
受け取った辞書を持って、先生に背中を向けた。
「もしかして、昼間言ったことまだ気にしてんの?」
私は手をぎゅっと握った。
また子供だと思われた。
するとお決まりの、後ろからぎゅっと抱き締めポーズ。
先生は慰めてくれる時は、いつもこのポーズ。
この一週間で、大分わかった。
「芽依。ごめん。」
変わったとすれば、いつ頃か私の事を名前で呼ぶようになった事だ。
「言い過ぎた。ほんの冗談。芽依の事、子供だと思ってないよ。」
「先生……」
私は抱き締めてくれている先生の腕に、そっと触れた。
「もちろん、まだ自立してる大人じゃないとは思ってるけど、ちゃんと自分で自分の道を決められる。もう子供じゃない。」
なんだか胸がホカホカしてくる。
「それに子供だと思ったら、芽依の事抱いてないでしょ?」
「そうなの?」
先生の腕の中で、クルっと体を振り向かせた。
「当たり前。」
すると先生は、私の背中と足を、抱き抱えた。
俗に言う、お姫様抱っこ。
もちろん、男の人にしてもらうなんて初めて。
「重い、ですよね。」
「ううん。全然。」
すると私の額に、チュッとキスを一つ。
「女性一人抱えきれなかったら、男なんて勤まりませんよ。」
そう言って先生は、私をベッドにそっと降ろした。
「さあ、お姫様。どこに触れて欲しいですか?」
「えっ……」
途端に顔が、赤くなる。
「どこでも仰ってください。あなたが望む場所、全て気持ちよくして差し上げますよ。」
そんな言葉使いされて、気が狂う。
「どうしました?恥ずかしがらずに、仰ってください。」
「ぷっ!」
あまりにも執事キャラが似合わなくて、思わず笑ってしまった。
「何で笑う?」
「だってそう言う口調、先生には似合わないんだもん。」
私の目の前で、項垂れる先生。
もしかして本人的には、イケテると思ってたのかな。
「じゃあ、どういう口調がいいの?」
「どういうって……」
そんな飾った先生はいや。
「いつもの……先生がいい。」
ギャッ!
言っちゃった‼
赤くなる顔を両手で覆う。
「いつもの?」
だけど本人は困惑気味。
「わかった。いつも通りに……、芽依。」
「はっ、はい。」
私は顔を覆っていた両手を、顔の脇に置く。
「俺にどうして欲しいか、教えて。」
う~ん。
その甘い声での要求。
悪くはないんだけど。
「なんか、まだ先生じゃないみたい。」
「はあ?」
先生の呆れた顔。
あっ、それそれ。
「その顔……」
「この顔?」
「責められてるみたいで、ドキドキする……」
私の胸はキュンキュンしていると言うのに、何故か先生は苦笑。
「先生?」
「お前はマゾか。」
えっ?
マゾ?
マゾって、叩かれて喜んでいる人?
「違います‼」
「はいはい。」
するとまた先生が、私の上に覆い被さった。
「いいから教えろ。お前の感じるところ。」
ゾクッとした。
背中が悶える。
「ほら、どこ?」
私はたまりかねて、横を向いた。
「首?」
そう聞くと先生は、私の首筋を舌で何度もなめ回してきた。
「胸?」
そして次は、大きな手で私の胸を包み込む。
「はぁぁ……」
思わずこぼれた吐息に、先生は気分が乗ってきたのか、少しずつ少しずつ、私の体に触れてくる。
「せんせぇ。」
「何だ?」
「もう私の事はいいから、今度は先生が気持ちよくなって。」
すると先生は、私の体をぎゅっと、抱き締めてくれた。
あっ……
こうして裸同士で抱き合うと、とても温かい。
「芽依。」
「ん?」
「俺だけじゃダメなんだ。」
私を見つめる先生の眼差しは、優しい。
「芽依も気持ちよくならなきゃ。」
「先生……」
すると先生は、私を頬を長い指でなぞった。
「二人で、一緒に、気持ちよくなろう。」
そして私はその夜。
なぜその行為を、『愛し合う』と言うのか。
少しだけ、わかった気がした。
「へえ。そうなんだ。じゃあ、両親に感謝だな。」
「はい‼」
私達は他の人が見たら、バカップルなんじゃないかと思うくらいに、お互いを見つめあって、照れながら笑い合った。
もしかして、もしかして。
この雰囲気なら、普段口に出せないことも、思いきって言えるかも。
「あのね、先生。」
「何?」
その優しい返事が、余計私の心を駆り立てた。
「私ね、もう一つ、自分の名前が好きな理由があるの!!」
自分でも信じられないくらいに、興奮していた。
「実はね、May,Jも本名、メイって言うの!私と一緒なんだよ~~!!」
興奮し過ぎて、息が切れた。
「May,J?」
「うん‼」
だけど先生のリアクションは鈍い。
「ああ、俺、メイって『となりのトトロ』に出てくるサツキとメイの方だと思ってた。」
「サツキとメイ?」
先生は口元を指で広げた。
「いるだろう。小さくてパンツ見えそうな感じで走ってる女の子が。」
「なっ!」
パンツ! パンツ見えそうって!!
「猫バスで見つけた時、トウモロコシ持ちながら泣きべそかいてたメイちゃんだよ。」
失笑している先生に、口を尖らせた。
「うわっ!益々メイにそっくり。」
もう限界。
私は先生の体を、何度も叩き始めた。
「痛い痛い!止めろって!」
もう一回おまけに叩いてやろうかと思ったのに、それは簡単に先生の手に阻まれた。
「芽依、もう終わり。」
不意にも名前で呼ばれた事に、心臓が高鳴る。
「だって……」
「だって?」
「……そんなパンツ見せてるような子供じゃないもん。」
わかってる。
先生から見たら、まだまだ泣きべそかいてるメイちゃんと同じだって。
「そうだな。」
先生はその一言だけ言い残すと、クルっとテーブルの方を向き、また小説の続きを書き始めた。
面倒くさがられた。
いちいち相手にしてたら、肝心の執筆が進まない。
絶対そう思われた。
お風呂に入った後、髪を乾かしながら、明日、塾に行く準備をする。
いつもはここで、宿題忘れたとか、辞書がない参考書がないだの騒ぐけれども、我慢する。
もう先生の邪魔はしたくない。
そう言ってる矢先に、早速明日使う辞書が行方不明。
あ~あ。
私、何やってるんだろう。
軽くため息をつきながら、辺りを探す。
確か日中、ここで使った気がした。
早く探さなきゃ。
でなければ、また先生の、
「何探してんの?」
ほら、始まった。
「あっ、いや。自分で探します。」
「一人で探すより、二人で探した方が、早いだろ。」
そう言って先生は、執筆している手を止めて、私の側に来た。
「で?何?」
黙っていると、私のバッグの横を、右や左に体を揺らしながら詮索。
「もしかして、辞書?」
なんでわかっちゃうかな。
私は観念して、頷いてみた。
「昼間、この辺で使ってなかったっけ?」
はい。
そんな事をまで、知ってるんですか。
「あっ、ほら。あった。」
先生が探し当てた場所。
そこはベッドの下だった。
なんで、そこ!?
先生から辞書を受け取りながら、反省。
「有り難うございます。」
「うん。」
辞書から手を離しても、先生は一向に立ち上がらなかった。
「しっかし、ベッドの下って。どこをどうしたら、そんなとこに辞書置けるんかな。」
この一言が、私の胸に刺さった。
「どうせ子供です。」
「へっ?」
先生が呆れた顔で、私を覗き込む。
「子供だから、変な場所に物を置いちゃうんです。」
受け取った辞書を持って、先生に背中を向けた。
「もしかして、昼間言ったことまだ気にしてんの?」
私は手をぎゅっと握った。
また子供だと思われた。
するとお決まりの、後ろからぎゅっと抱き締めポーズ。
先生は慰めてくれる時は、いつもこのポーズ。
この一週間で、大分わかった。
「芽依。ごめん。」
変わったとすれば、いつ頃か私の事を名前で呼ぶようになった事だ。
「言い過ぎた。ほんの冗談。芽依の事、子供だと思ってないよ。」
「先生……」
私は抱き締めてくれている先生の腕に、そっと触れた。
「もちろん、まだ自立してる大人じゃないとは思ってるけど、ちゃんと自分で自分の道を決められる。もう子供じゃない。」
なんだか胸がホカホカしてくる。
「それに子供だと思ったら、芽依の事抱いてないでしょ?」
「そうなの?」
先生の腕の中で、クルっと体を振り向かせた。
「当たり前。」
すると先生は、私の背中と足を、抱き抱えた。
俗に言う、お姫様抱っこ。
もちろん、男の人にしてもらうなんて初めて。
「重い、ですよね。」
「ううん。全然。」
すると私の額に、チュッとキスを一つ。
「女性一人抱えきれなかったら、男なんて勤まりませんよ。」
そう言って先生は、私をベッドにそっと降ろした。
「さあ、お姫様。どこに触れて欲しいですか?」
「えっ……」
途端に顔が、赤くなる。
「どこでも仰ってください。あなたが望む場所、全て気持ちよくして差し上げますよ。」
そんな言葉使いされて、気が狂う。
「どうしました?恥ずかしがらずに、仰ってください。」
「ぷっ!」
あまりにも執事キャラが似合わなくて、思わず笑ってしまった。
「何で笑う?」
「だってそう言う口調、先生には似合わないんだもん。」
私の目の前で、項垂れる先生。
もしかして本人的には、イケテると思ってたのかな。
「じゃあ、どういう口調がいいの?」
「どういうって……」
そんな飾った先生はいや。
「いつもの……先生がいい。」
ギャッ!
言っちゃった‼
赤くなる顔を両手で覆う。
「いつもの?」
だけど本人は困惑気味。
「わかった。いつも通りに……、芽依。」
「はっ、はい。」
私は顔を覆っていた両手を、顔の脇に置く。
「俺にどうして欲しいか、教えて。」
う~ん。
その甘い声での要求。
悪くはないんだけど。
「なんか、まだ先生じゃないみたい。」
「はあ?」
先生の呆れた顔。
あっ、それそれ。
「その顔……」
「この顔?」
「責められてるみたいで、ドキドキする……」
私の胸はキュンキュンしていると言うのに、何故か先生は苦笑。
「先生?」
「お前はマゾか。」
えっ?
マゾ?
マゾって、叩かれて喜んでいる人?
「違います‼」
「はいはい。」
するとまた先生が、私の上に覆い被さった。
「いいから教えろ。お前の感じるところ。」
ゾクッとした。
背中が悶える。
「ほら、どこ?」
私はたまりかねて、横を向いた。
「首?」
そう聞くと先生は、私の首筋を舌で何度もなめ回してきた。
「胸?」
そして次は、大きな手で私の胸を包み込む。
「はぁぁ……」
思わずこぼれた吐息に、先生は気分が乗ってきたのか、少しずつ少しずつ、私の体に触れてくる。
「せんせぇ。」
「何だ?」
「もう私の事はいいから、今度は先生が気持ちよくなって。」
すると先生は、私の体をぎゅっと、抱き締めてくれた。
あっ……
こうして裸同士で抱き合うと、とても温かい。
「芽依。」
「ん?」
「俺だけじゃダメなんだ。」
私を見つめる先生の眼差しは、優しい。
「芽依も気持ちよくならなきゃ。」
「先生……」
すると先生は、私を頬を長い指でなぞった。
「二人で、一緒に、気持ちよくなろう。」
そして私はその夜。
なぜその行為を、『愛し合う』と言うのか。
少しだけ、わかった気がした。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる