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あなただけの歌姫
①
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あの日、広場で歌っていた時。
馬に乗っていたあなたを見て、心奪われた。
しばらくして、あなた専属の歌姫になって。
私の人生は、あなた一色になった。
「エリカ。今日も私の為に歌ってくれ。」
「はい、皇帝殿下。」
私はスーッと息を吸うと、ただ一人の為に、歌を歌った。
そして歌い終わると、皇帝殿下は拍手を送ってくれた。
「さすがは、宮廷付きの歌姫。」
「ありがとうございます。」
頭を下げると、私の心は静かに音を立てた。
皇帝殿下。
私は、あなただけの為に歌っています。
そして……
私は、チラッと皇帝殿下を見た。
でも、皇帝殿下の表情は、眉一つ動かない。
それが何よりも、切なかった。
私には、一つ悩みがあった。
大人になった皇太子殿下が、やたら私に絡んでくるのだ。
「エリカ。今度、俺の為に歌え。」
ニヤニヤしながら、私の肩を抱き寄せてくる。
「恐れながら、私は皇帝殿下の歌姫です。他の方に歌う気にはなれません。」
「何だと!生意気な!」
皇太子殿下に頬を打たれた。
「ふん!父上が退位されたら、おまえは俺の歌姫だ!その時には、有無を言わさないからな。」
私は、部屋に帰ると悔しくて、涙を零した。
所詮、私は”皇帝”の歌姫であって、あの人のモノじゃない。
もし、あの人が皇太子殿下に皇帝の座を譲ってしまったら、私はどうなるのだろう。
「うう……」
届かない想いに、私は泣き続けるしかなかった。
そして、恐れていたことが起こった。
皇帝殿下が、退位を表明されたのだ。
そしてその日から、私は皇帝殿下と皇太子殿下に、歌を聴かせる事になった。
歌い終わると、皇太子殿下は興奮したように、激しく手を叩いた。
「さすがエリカ!」
皇太子殿下の喜ぶ姿に、皇帝殿下も満足気だ。
「エリカ。」
「はい、皇帝殿下。」
「皇太子も、そなたを気に入っているようだ。引き続き、宮廷の歌姫として、皇太子を支えて欲しい。」
嫌だった。
断りたかった。
「エリカ?」
「……懸命に、励みます。」
そう伝えると、皇太子殿下は鼻息を荒くした。
どうして皇太子殿下は、私にこだわるのだろう。
馬に乗っていたあなたを見て、心奪われた。
しばらくして、あなた専属の歌姫になって。
私の人生は、あなた一色になった。
「エリカ。今日も私の為に歌ってくれ。」
「はい、皇帝殿下。」
私はスーッと息を吸うと、ただ一人の為に、歌を歌った。
そして歌い終わると、皇帝殿下は拍手を送ってくれた。
「さすがは、宮廷付きの歌姫。」
「ありがとうございます。」
頭を下げると、私の心は静かに音を立てた。
皇帝殿下。
私は、あなただけの為に歌っています。
そして……
私は、チラッと皇帝殿下を見た。
でも、皇帝殿下の表情は、眉一つ動かない。
それが何よりも、切なかった。
私には、一つ悩みがあった。
大人になった皇太子殿下が、やたら私に絡んでくるのだ。
「エリカ。今度、俺の為に歌え。」
ニヤニヤしながら、私の肩を抱き寄せてくる。
「恐れながら、私は皇帝殿下の歌姫です。他の方に歌う気にはなれません。」
「何だと!生意気な!」
皇太子殿下に頬を打たれた。
「ふん!父上が退位されたら、おまえは俺の歌姫だ!その時には、有無を言わさないからな。」
私は、部屋に帰ると悔しくて、涙を零した。
所詮、私は”皇帝”の歌姫であって、あの人のモノじゃない。
もし、あの人が皇太子殿下に皇帝の座を譲ってしまったら、私はどうなるのだろう。
「うう……」
届かない想いに、私は泣き続けるしかなかった。
そして、恐れていたことが起こった。
皇帝殿下が、退位を表明されたのだ。
そしてその日から、私は皇帝殿下と皇太子殿下に、歌を聴かせる事になった。
歌い終わると、皇太子殿下は興奮したように、激しく手を叩いた。
「さすがエリカ!」
皇太子殿下の喜ぶ姿に、皇帝殿下も満足気だ。
「エリカ。」
「はい、皇帝殿下。」
「皇太子も、そなたを気に入っているようだ。引き続き、宮廷の歌姫として、皇太子を支えて欲しい。」
嫌だった。
断りたかった。
「エリカ?」
「……懸命に、励みます。」
そう伝えると、皇太子殿下は鼻息を荒くした。
どうして皇太子殿下は、私にこだわるのだろう。
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