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異動してきた綺麗系男子

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彼の第一印象は、やたら綺麗な顔立ちをしているな、だった。

営業部から異動してきた彼。

会社内では、密かに彼のファンクラブまであると言う。

村上想太。

歳は確か、今年で30歳だと聞いた。


「部長。今度僕を、食事に連れて行って下さい。」

休憩中にコーヒーを飲んでいると、村上想太が隣にやってきた。

「いいけど、何かあった?」

「やだな。上司なのに知らないですか?」

てっきり誕生日なのかと思って、私も上司としてはまだまだだなと思う。

「ごめん。最近忙しくて。プロフィール見れてなかった。」

確か、総務部に彼が異動してきた時に、今までの営業成績等が載っていたプロフィールをもらった気がする。

「後で、チェックしてみるね。」

私はそう言うと、彼から離れた。

今まで特別面倒を見ていた男性社員はいたけれど、皆私に懐いてきた訳じゃなかった。

その中でも、彼は特別で。

私が声を掛けなくても、彼の方から声を掛けてくる。

それが半分嬉しくもあり、ある意味”危険”を知らせていた。


その時だった。

「おっ、村上。昇進、おめでとう。」

後ろを振り返ると、営業部の部長が彼に話しかけていた。

「ありがとうございます。」

「おまえも遂に、課長か。」

何⁉村上想太が、課長⁉

えっ⁉部長の私が、聞いてないですけど!

私は自分のデスクに戻ると、届いているメールを一斉にチェックした。

でも、そんなお知らせは私に届いていない。

「どういう事ですか?」

私は人事部に、事の真相を尋ねにやってきた。

「ああ、そう言えば彼は、総務部に異動になっていたんでしたね。」

「そうです。村上の管轄は、総務部ですよ?どうして私が彼の昇進を知らなくて、営業部の部長が知っているんですか?」

「すみません。部署を間違えたようで。」

要するに、村上想太がまだ営業部だと思っていたようだ。

「でも、総務部に来てから、まだ半年も経っていないのに課長だなんて。村上には肩の荷が重いと思いませんか?」

「でも、彼の営業成績は、課長に匹敵する程ですよ。」

営業部の特権。成績次第では、年数や人柄も気にせずに昇進させるシステムだ。

「分かりました。今後は気を付けて下さい。」

そう言って私は、人事部を後にした。
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