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他の女を抱くくせに

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「よいのだ。」

「しかし……」

「あの方は、私ではなくてもよいのだ!」

すると、清涼殿の先に御上が立っているのが見えた。

私の方を見ている。

「まあ、御上。わざわざ梨壺の更衣様をお迎えに?」

身体がわなわなと震えてくる。

「梨壺様はまだ幼い顔立ちをしていると言うのに。御上はあのようなお顔立ちがお好きなのでしょうか。」

「黙れ!」

私は御上に背を向けると、御簾の中に入った。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

もう、我慢ができない。

この場所にはいたくない。


「明日、御上にお宿下がりを申し上げる。」

「えっ……身籠ってもいないのに、お宿下がりとは。御上がお許しになるか。」

「もうこの場所は嫌じゃ!」

「あ、あの……」

女房が、慌てて近くに来る。

「どうしたのじゃ!」

「御上が、いらっしゃって……」

その瞬間だった。

御簾が開いて、御上がこちらを向いていた。

「御上……」

「大声を出しているから来てみれば。宿下がりなど勝手な事を。」

「勝手ではございません。もう我慢できないのです。」


イライラしている私の前に、御上はため息をつきながら座った。

「何が我慢できないと申すのか。」

私は、答えられなかった。

何を言っても、恨みにしか聞こえないと思ったからだ。

「申してくれ。それでなければ、朕にも分からぬ。」

そのか細い声に、負けてしまった。

「嫌なのです。御上が……」

「朕が嫌いか?」

「そうではなく……御上が他の女を!抱くのが嫌なのです!」

言ってしまった。

御上を見ても、呆れている。

「愚か者だと笑って下さい。」

「梅壺……」

「御上程の方が、私だけでは満足できないのは、分かっているのです。」

涙が出てくる。

自分が惨めで、嫌になってくる。


「いっそ、御上を嫌いになれれば……」

そう言って、ハッとした。

御上は立ち上がって、こちらを見降ろしている。

「申し訳ございません!」

まさか、そんな言葉が口から出てくるなんて。

「愚か者の戯言だとお思いになって、お許しを……」

すると御上は、私の顎を指でクイっと上げた。

「映子。」

ドキッとした。

御上から名前を呼ばれるなんて、初めての気がする。

「いっそ朕を嫌いになれれば、気が楽になると申すのか。」

「あの……」

「それでは、朕に心奪われていると申しているのと、一緒ではないか。」

そして私は見てしまった。

御上の瞳に映る、私の姿を。

「御上……」

「映子に閨を断られる度に、朕は傷ついた。もう、あのような恋焦がれる夜は来ないのかと。」

胸が締め付けられた。

「もう遠慮はせぬ。朕達は、恋に恋をするような子供ではない。」

ゆっくりと御上に押し倒されて、袴の紐をほどかれた。

「このような場所で……」

「構わぬ。惚れた女の部屋で抱く事の、どこが悪いのか。」

あっという間に服を脱がされ、御上の舌が私の肌を這う。
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