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他の女を抱くくせに
①
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女御として入内した映子。
相手は同じ歳で時の帝だった。
最初は毎日のように、枕を交わしていた二人だが、時が経つにつれて映子にお呼びがかからなくなった。
そして映子は知る。
帝には数人の妃がいて、自分はその中の一人にしかすぎない事を。
この場所に帝の妃としてやってきたのは、今思えば間違いだった。
「梅壺の女御様。今宵、御上がお召でございます。」
「体調が悪い。お断り申し上げておくれ。」
「まあ、体調が悪いとは、どこが……」
「よいから、断っておくれ!」
女房に当たっても仕方ない事なのに、大きな声を出さずにはいられない。
今日は、数日振りに御上からお呼びがかかった。
でも、御上の閨に行く気にはなれない。
あの方は、他の女も抱いている。
私ではなくても、あの方の欲望を満たす女は、たくさんいるのだ。
そして、女房が浮かない顔をして戻って来た。
「今宵は、梨壺の更衣様をお召になるとの事でした。」
「梨壺?」
あの、身分の低い女を?
「こう言っては何ですが、更衣様は最近入内されたばかりなので、帝は目移りされているだけだと思いますよ。」
「だから、何なのだ。」
畳の上を、爪で掻いた。
「本当は体調など悪くはないのでしょう。最近、どうされたのですか?一時は、あんなにお呼びがかかったと言うのに。」
「あの身分の低い、若い女で満足なのであろう。」
私の父は、左大臣の位にあって。
私は子供の頃から当然のように、帝の妃となり、中宮になる事を約束されていた。
入内したあの日、同じ歳のこの人が、私の背の君になると思うと、心が躍った。
毎晩のようにおしゃべりし、枕を交わした日は、幸せを感じていた。
なのに。
清涼殿の近くに、帝が東宮(皇太子)の時から妃でいる藤壺の女御がいる事を知った。
藤壺の女御の父は、右大臣だ。
先に皇子を産めば、その子が次代の帝になる事もある。
そして、次は桐壷、梨壺と、数多の女が帝の妃になっていく。
私よりも身分が低いのに、帝に近づいて寵愛を受けるのが、恨めしい。
私は一体、何なのか。
帝と情を交わしていると思っていたのは、勘違いだったのか。
ああ、こんな所に来るのではなかった。
そして夜になり、梨壺の更衣が清涼殿に行く。
遠目に映るあの女が、今宵帝に抱かれると思うと、歯ぎしりが起こる。
「梅壺様。そんなに恨めしく思うのであれば、帝のお召に素直に応じてはいかがですか?」
相手は同じ歳で時の帝だった。
最初は毎日のように、枕を交わしていた二人だが、時が経つにつれて映子にお呼びがかからなくなった。
そして映子は知る。
帝には数人の妃がいて、自分はその中の一人にしかすぎない事を。
この場所に帝の妃としてやってきたのは、今思えば間違いだった。
「梅壺の女御様。今宵、御上がお召でございます。」
「体調が悪い。お断り申し上げておくれ。」
「まあ、体調が悪いとは、どこが……」
「よいから、断っておくれ!」
女房に当たっても仕方ない事なのに、大きな声を出さずにはいられない。
今日は、数日振りに御上からお呼びがかかった。
でも、御上の閨に行く気にはなれない。
あの方は、他の女も抱いている。
私ではなくても、あの方の欲望を満たす女は、たくさんいるのだ。
そして、女房が浮かない顔をして戻って来た。
「今宵は、梨壺の更衣様をお召になるとの事でした。」
「梨壺?」
あの、身分の低い女を?
「こう言っては何ですが、更衣様は最近入内されたばかりなので、帝は目移りされているだけだと思いますよ。」
「だから、何なのだ。」
畳の上を、爪で掻いた。
「本当は体調など悪くはないのでしょう。最近、どうされたのですか?一時は、あんなにお呼びがかかったと言うのに。」
「あの身分の低い、若い女で満足なのであろう。」
私の父は、左大臣の位にあって。
私は子供の頃から当然のように、帝の妃となり、中宮になる事を約束されていた。
入内したあの日、同じ歳のこの人が、私の背の君になると思うと、心が躍った。
毎晩のようにおしゃべりし、枕を交わした日は、幸せを感じていた。
なのに。
清涼殿の近くに、帝が東宮(皇太子)の時から妃でいる藤壺の女御がいる事を知った。
藤壺の女御の父は、右大臣だ。
先に皇子を産めば、その子が次代の帝になる事もある。
そして、次は桐壷、梨壺と、数多の女が帝の妃になっていく。
私よりも身分が低いのに、帝に近づいて寵愛を受けるのが、恨めしい。
私は一体、何なのか。
帝と情を交わしていると思っていたのは、勘違いだったのか。
ああ、こんな所に来るのではなかった。
そして夜になり、梨壺の更衣が清涼殿に行く。
遠目に映るあの女が、今宵帝に抱かれると思うと、歯ぎしりが起こる。
「梅壺様。そんなに恨めしく思うのであれば、帝のお召に素直に応じてはいかがですか?」
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