上 下
1 / 13
他の女を抱くくせに

しおりを挟む
女御として入内した映子。

相手は同じ歳で時の帝だった。

最初は毎日のように、枕を交わしていた二人だが、時が経つにつれて映子にお呼びがかからなくなった。

そして映子は知る。

帝には数人の妃がいて、自分はその中の一人にしかすぎない事を。



この場所に帝の妃としてやってきたのは、今思えば間違いだった。

「梅壺の女御様。今宵、御上がお召でございます。」

「体調が悪い。お断り申し上げておくれ。」

「まあ、体調が悪いとは、どこが……」

「よいから、断っておくれ!」

女房に当たっても仕方ない事なのに、大きな声を出さずにはいられない。


今日は、数日振りに御上からお呼びがかかった。

でも、御上の閨に行く気にはなれない。

あの方は、他の女も抱いている。

私ではなくても、あの方の欲望を満たす女は、たくさんいるのだ。


そして、女房が浮かない顔をして戻って来た。

「今宵は、梨壺の更衣様をお召になるとの事でした。」

「梨壺?」

あの、身分の低い女を?

「こう言っては何ですが、更衣様は最近入内されたばかりなので、帝は目移りされているだけだと思いますよ。」

「だから、何なのだ。」

畳の上を、爪で掻いた。

「本当は体調など悪くはないのでしょう。最近、どうされたのですか?一時は、あんなにお呼びがかかったと言うのに。」

「あの身分の低い、若い女で満足なのであろう。」


私の父は、左大臣の位にあって。

私は子供の頃から当然のように、帝の妃となり、中宮になる事を約束されていた。

入内したあの日、同じ歳のこの人が、私の背の君になると思うと、心が躍った。

毎晩のようにおしゃべりし、枕を交わした日は、幸せを感じていた。

なのに。

清涼殿の近くに、帝が東宮(皇太子)の時から妃でいる藤壺の女御がいる事を知った。

藤壺の女御の父は、右大臣だ。

先に皇子を産めば、その子が次代の帝になる事もある。

そして、次は桐壷、梨壺と、数多の女が帝の妃になっていく。

私よりも身分が低いのに、帝に近づいて寵愛を受けるのが、恨めしい。


私は一体、何なのか。

帝と情を交わしていると思っていたのは、勘違いだったのか。

ああ、こんな所に来るのではなかった。


そして夜になり、梨壺の更衣が清涼殿に行く。

遠目に映るあの女が、今宵帝に抱かれると思うと、歯ぎしりが起こる。

「梅壺様。そんなに恨めしく思うのであれば、帝のお召に素直に応じてはいかがですか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

両隣から喘ぎ声が聞こえてくるので僕らもヤろうということになった

ヘロディア
恋愛
妻と一緒に寝る主人公だったが、変な声を耳にして、目が覚めてしまう。 その声は、隣の家から薄い壁を伝って聞こえてくる喘ぎ声だった。 欲情が刺激された主人公は…

女の子がひたすら気持ちよくさせられる短編集

恋愛
様々な設定で女の子がえっちな目に遭うお話。詳しくはタグご覧下さい。モロ語あり一話完結型。注意書きがない限り各話につながりはありませんのでどこからでも読めます。pixivにも同じものを掲載しております。

【R18】深夜に蜜は滴り落ちる

ねんごろ
恋愛
 エッチです

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

【完結】堕ちた令嬢

マー子
恋愛
・R18・無理矢理?・監禁×孕ませ ・ハピエン ※レイプや陵辱などの表現があります!苦手な方は御遠慮下さい。 〜ストーリー〜 裕福ではないが、父と母と私の三人平凡で幸せな日々を過ごしていた。 素敵な婚約者もいて、学園を卒業したらすぐに結婚するはずだった。 それなのに、どうしてこんな事になってしまったんだろう⋯? ◇人物の表現が『彼』『彼女』『ヤツ』などで、殆ど名前が出てきません。なるべく表現する人は統一してますが、途中分からなくても多分コイツだろう?と温かい目で見守って下さい。 ◇後半やっと彼の目的が分かります。 ◇切ないけれど、ハッピーエンドを目指しました。 ◇全8話+その後で完結

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

恋人の水着は想像以上に刺激的だった

ヘロディア
恋愛
プールにデートに行くことになった主人公と恋人。 恋人の水着が刺激的すぎた主人公は…

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

処理中です...