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第4話 付き合って
①
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しばらくして、私は目を覚ました。
天井が、廊下と違う。
「えっ……ここ、どこ……」
動こうとすると、腕に重さを感じた。
「井出さん……」
胸が熱くなる。
井出さんが、私の手を握りながら、ベッドに顔を埋めて寝ていたのだ。
見ると、外はとっくに夜になっていた。
「ん……」
井出さんは起きると、目を覚ました私に気づいたようだ。
「結野ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫です。寝たからかな。」
「廊下で倒れたって聞いた時に、心臓が止まるかと思ったよ。」
「すみません、心配かけて。」
私、井出さんに心配されてばかりだ。
「ところでここって……」
「ああ、ヒルズの病院だよ。」
「病院……」
えっ!?病院!?
私、病院に運ばれたの!?
「過労だって。働き過ぎだよ、結野ちゃん。」
「ははは、情けない。」
「そんな事ないよ。」
井出さんは、私の手をぎゅっと、握ってくれた。
「まだ若いのに、倒れるまで仕事するなんて。」
井出さんの、その悲しそうな表情が、私には歪んで見えた。
「そんなに、悲しい目で見ないで下さい。」
「結野ちゃん。」
「生活の為に働くって、普通の事ですから。それに今回倒れたのも、私が体力なかっただけで、今度は倒れないようにしますから。」
辺りがしーんとなる。
「結野ちゃんの言う通りだ。」
「すみません、生意気言って。」
「ただね。俺が、結野ちゃんを心配している事は、知って欲しい。」
井出さんは、私の目をじっと見つめる。
「はい。知っています。だって、倒れただけで病院に運んでくれるなんて。却って迷惑なんじゃないかって。」
「迷惑じゃないよ。」
じーっと、井出さんに見つめられると、身体が熱くなってくる。
井出さんの目って、吸い込まれそう。
井出さんも、私が目を離せない事、気づいている。
スーッと井出さんの顔が近づいて、唇が重なった。
キスした後、井出さんは私を優しく見降ろした。
「帰ろうか。」
井出さんはナースコールをすると、看護師さんに帰宅する事を告げた。
「今、退院の手続きしますので、お待ちくださいね。」
「は、はい。」
何となく、井出さんを見ながら、ベッドから出る。
さっきキスした事が、ウソのようだ。
しばらくして、看護師さんが請求書を持って来た。
「では、お帰り頂いても大丈夫ですよ。治療費は帰りにお支払い下さいね。」
そう言えば、そうだあああ。
病院で診て貰ったって事は、お金払わないと。
いくらなんだろう。
手持ちのお金で、間に合うかな。
「行こう。」
「はい。」
私達は病室を出て、エレベーターに乗った。
井出さんは、何も話さない。
ふいに、その横顔を見てしまった。
あー、やっぱりカッコいい。
好きだなぁ、井出さんの事。
エレベーターが1階に着いて、私達はお会計の窓口に行った。
「金額、こちらになります。」
出された金額に、とりあえずほっとした。
財布を出そうとしたら、横から井出さんの声がした。
「カードで。」
「えっ!」
驚いている内に、係の人はクレジットカードで処理をしている。
「井出さん!」
「いいから。」
支払いが終わり、私には領収証だけが残った。
「行こう。タクシーで送るよ。」
「あの、こういうの、困ります。」
「どうして?俺が勝手に、病院に連れて来たんだし。」
「でも、自分の病院代は、自分で払わないと。」
こんなに、井出さんに迷惑ばかりかけて。
何やってんだろ、私。
「じゃあ、お礼に俺と付き合って。」
病院の入り口の前。
私は目が点になった。
「俺の彼女になってよ。」
そう言って井出さんは、私の腕を取って、タクシーに乗った。
頭が混乱している私は、返事もできずに、頭がボーっとしている。
「家、どこ?」
「あっ、中央町の方。」
「OK、運転手さん、中央町まで。」
タクシーが動くと、井出さんは私の手の上に、自分の手を置いた。
温かい。
井出さんの温もりが伝わってくる。
そう言えば井出さんは、いつも優しかった。
迷惑ばっかりかけているのに、そんな素振りも見せないで。
「あの、井出さん。」
「返事は、タクシーを降りてから聞くよ。」
「えっ?」
天井が、廊下と違う。
「えっ……ここ、どこ……」
動こうとすると、腕に重さを感じた。
「井出さん……」
胸が熱くなる。
井出さんが、私の手を握りながら、ベッドに顔を埋めて寝ていたのだ。
見ると、外はとっくに夜になっていた。
「ん……」
井出さんは起きると、目を覚ました私に気づいたようだ。
「結野ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫です。寝たからかな。」
「廊下で倒れたって聞いた時に、心臓が止まるかと思ったよ。」
「すみません、心配かけて。」
私、井出さんに心配されてばかりだ。
「ところでここって……」
「ああ、ヒルズの病院だよ。」
「病院……」
えっ!?病院!?
私、病院に運ばれたの!?
「過労だって。働き過ぎだよ、結野ちゃん。」
「ははは、情けない。」
「そんな事ないよ。」
井出さんは、私の手をぎゅっと、握ってくれた。
「まだ若いのに、倒れるまで仕事するなんて。」
井出さんの、その悲しそうな表情が、私には歪んで見えた。
「そんなに、悲しい目で見ないで下さい。」
「結野ちゃん。」
「生活の為に働くって、普通の事ですから。それに今回倒れたのも、私が体力なかっただけで、今度は倒れないようにしますから。」
辺りがしーんとなる。
「結野ちゃんの言う通りだ。」
「すみません、生意気言って。」
「ただね。俺が、結野ちゃんを心配している事は、知って欲しい。」
井出さんは、私の目をじっと見つめる。
「はい。知っています。だって、倒れただけで病院に運んでくれるなんて。却って迷惑なんじゃないかって。」
「迷惑じゃないよ。」
じーっと、井出さんに見つめられると、身体が熱くなってくる。
井出さんの目って、吸い込まれそう。
井出さんも、私が目を離せない事、気づいている。
スーッと井出さんの顔が近づいて、唇が重なった。
キスした後、井出さんは私を優しく見降ろした。
「帰ろうか。」
井出さんはナースコールをすると、看護師さんに帰宅する事を告げた。
「今、退院の手続きしますので、お待ちくださいね。」
「は、はい。」
何となく、井出さんを見ながら、ベッドから出る。
さっきキスした事が、ウソのようだ。
しばらくして、看護師さんが請求書を持って来た。
「では、お帰り頂いても大丈夫ですよ。治療費は帰りにお支払い下さいね。」
そう言えば、そうだあああ。
病院で診て貰ったって事は、お金払わないと。
いくらなんだろう。
手持ちのお金で、間に合うかな。
「行こう。」
「はい。」
私達は病室を出て、エレベーターに乗った。
井出さんは、何も話さない。
ふいに、その横顔を見てしまった。
あー、やっぱりカッコいい。
好きだなぁ、井出さんの事。
エレベーターが1階に着いて、私達はお会計の窓口に行った。
「金額、こちらになります。」
出された金額に、とりあえずほっとした。
財布を出そうとしたら、横から井出さんの声がした。
「カードで。」
「えっ!」
驚いている内に、係の人はクレジットカードで処理をしている。
「井出さん!」
「いいから。」
支払いが終わり、私には領収証だけが残った。
「行こう。タクシーで送るよ。」
「あの、こういうの、困ります。」
「どうして?俺が勝手に、病院に連れて来たんだし。」
「でも、自分の病院代は、自分で払わないと。」
こんなに、井出さんに迷惑ばかりかけて。
何やってんだろ、私。
「じゃあ、お礼に俺と付き合って。」
病院の入り口の前。
私は目が点になった。
「俺の彼女になってよ。」
そう言って井出さんは、私の腕を取って、タクシーに乗った。
頭が混乱している私は、返事もできずに、頭がボーっとしている。
「家、どこ?」
「あっ、中央町の方。」
「OK、運転手さん、中央町まで。」
タクシーが動くと、井出さんは私の手の上に、自分の手を置いた。
温かい。
井出さんの温もりが伝わってくる。
そう言えば井出さんは、いつも優しかった。
迷惑ばっかりかけているのに、そんな素振りも見せないで。
「あの、井出さん。」
「返事は、タクシーを降りてから聞くよ。」
「えっ?」
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