56 / 58
第六章 月齢0ー朔の月ー
610
しおりを挟む
『友情を糾う』の呪いは、ユモは母からその存在は聞いていたが、同時に、母自身もそれを使ったことはないとも聞いていた。
呪文自体の難易度は、『月の魔女』の呪いとしてはむしろ低い方に属する。しかし、一部の禁呪以外のほとんどの呪いを一度は経験している母であっても、この呪いはその条件の厳しさ故に唱えたことはなかったのだ、と。
その条件とは、つまり。
呪いを行う主体となる魔女あるいは魔法使いに対し、独立した個人でありながら友情という非常に抽象的な概念で結ばれ、かつ、互いを補完し合う力関係にある他者の存在が不可欠である事だった。
「お友達は居ますよ。それはもう、いっぱい。ただ、皆、魔法使いなので、糾うに値する『補完する関係』たりえないのです」
娘から見て非の打ち所のない偉大な魔女である母だが、そのような『友人』と呼ぶに相応しい対等の『補完する関係』は在ったことが無く、そしてそれが故にこの呪い、『友情を糾う』は使う機会が無かったと、母が苦笑交じりにそう言ったのを娘は覚えていた。
「『補完する関係』って、具体的に、どういう関係なの?」
ユモは、もっと幼い頃、母にそう聞いたことを思い出す。そのユモの素朴な疑問に、母は微笑んで答えた事も。
「自分と同等かそれ以上の源始力を扱う包容力を持ち、かつ、私達魔法使いにとって絶対的に欠けている一面、精神面を追求する我々と対となる、肉体面を追求した存在、でしょうか……」
そう言って、母は何事か思い出すように、遠い目をした事を、ユモは覚えていた。
「……もしかしたら、あの方であれば、ゆくゆくはそのような関係になれたかも、分かりませんでしたね……」
その母の言葉が誰を指すのか、ユモには分からない。だが、自分とユキが、東洋人で、人狼で、体力と体術と包容力に秀でた『使い魔一号』がその『補完する関係』の対象そのものである事は、『友情を糾う』の呪いが成就した事で、ユモの中で確信に変わっていた。
時間にすれば、それはほんの一瞬だった。頭に流れ込むユモの『意図』の通りに呪文を唱えた雪風は、ほんの一瞬、まぶたの裏に眩しいほどの輝きを、体の中心に熱い何かが迸る感触を覚え、思わず目をつぶった。
雪風の首筋にしがみついて呪文を唱えたユモの体がまばゆい光を放ち、間を置かず雪風の体も同じように光る。時間にすればほんの一瞬、微妙に異なる二つの光は一つに融合し、共振し、新たな波長を生み出しつつさらに強く輝く。
その光は、呪文の最終段を唱えるために立ち止まった二人に飛びかからんとした『ウェンディゴ憑き』の目をくらまし、二人が振動させた呪文の共鳴がもたらすエーテルの波動は『ウェンディゴ憑き』を物理的に押しとどめる。
「……ちぇすとぉおおおっ!」
光の中から現れた鈍色に輝く一降りの剣が、その『ウェンディゴ憑き』を横薙ぎに薙ぎ払う。旋風のごとくに剣を振りきって光の中から跳び出したのは、黒と金の長い髪をなびかせ、軍用コートを羽織りライフルを背負った一人の大柄な女性。別の足場に飛び移り、木刀を正眼に構え直したその女の顔は明らかに人とは異なる口吻が突き出し、その瞳は金色に燃える。
「……視野が高いわね?もしかしてあたし、背が伸びてる?」
発達した犬歯の覗くその口吻から、雪風の声が呟く。
――あんたとあたしの体と力が一つになった結果よね、足して二で割るってわけじゃあ、ないって事ね――
エーテルの振動が、ユモの声となって鼓膜に届く。
「マジか……まあいいわよ、これはこれでいい感じだもの」
狼の口が、大きく耳まで裂けて、笑う。
「そういうことなら、じゃあ、魔法は任したわよ」
雪風のみだった頃には膝丈だったが今はミニ丈に近い膝上の、黒い制服のプリーツスカートからはみ出した尻尾をゆらゆらと振りながら、雪風が言い、
――あんたこそ、体の方は任したわよ――
明らかに高揚した声色のユモの声が、それに答える。
「おーけー。そんじゃ、時間もないことだし、ぶわぁ~っと行きますか!」
それに意思や思考があるとして、それらを人間が理解できる言語で説明するのは、基本的には不可能だし意味のない事だった。
なぜならば、それは何一つとして、単細胞生物を含む既知の動植物と一致する部分を持たず、唯一、直立歩行する類人猿に似たその形状ですら、この地で多く観察された『微生物』を真似たものでしかなく、そうすることでその『微生物』が通常と異なる反応を示すことが分かったからに過ぎなかった。
だから、あえて今、それが何を思っているかを無理やりにでも記述するとするならば。
それは、己の意図に反することが起こっている現状に対する混乱であり、疑問であり、憤りであった。
その『微生物』は、確かに二つ、あった。形状には、今まで見てきた他の微生物とさしたる差があるようには見えなかったが、それらの移動能力も、移動方法も、捕えようとするそれの手から逃れるやり方も、実にユニークで見たことがなかった。
はじめのうちは面白半分であったが、次第に、それは、その微生物が意のままにならないことに不快を感じた。そして、その微生物があれの保存庫に入ったのを見て、それは、逃げ道のないここで捕まえよう、そう決めた。
捕まえて何をするか、なぜ捕まえるのか、そのようなことはそれにとって意味がなかった。捕まえる、ただそれだけだった。
だから。どうにも捕まらない、どころか、嫌な臭いのする光を放ち、いつの間にか一つになったその微生物に、それは混乱し、憤っていた。
だから。それは、洞窟の上半分で渦巻き、居座る己から、まるで手を伸ばすがごとくに五本の吹雪の触手のついた触腕を、洞窟の底に向けて伸ばした。
――……って、ちょっと待って!――
『友情を糾う』の呪いが成功した直後、前にも増して力強く木剣を振るい、足場から足場に跳躍するその体のコントロールを雪風に全面的に任せたユモは、自分の分担である呪文を唱えようとして、ある事に気付いて愕然とし、声なき声で大声を上げた。
「うわ!な、何よいきなり!」
突然、直接鼓膜をエーテルの振動で叩かれて、体をコントロールする雪風は跳躍のリズムを崩し、足場を踏み外しそうになる。その隙を突いて上から被せてきた吹雪の五本指を雪風はあえて避けず、腰を落として稼いだほんの一瞬を使って念を木刀に集中し、
「……てりゃあ!」
気合い一閃、渾身の突きでその吹雪で出来た歪な手を押し戻し、蹴散らす。散らされた吹雪の手が再びまとまる前に、ベースになっている雪風の体より頭一つ背が高く、相応に幅も厚みも増えているその体は別の足場に跳躍し直す。
離れた足場から吹雪の指が再び形を成すのを見た、ユモと雪風が合体した存在、寸が詰まってミニ丈に見えるセーラー服の上に膝丈でちょうど良い按配の軍用コートを羽織り、右半分が黒、左半分が金の長い髪を風になびかせる金の瞳の獣魔女は、木刀を肩に担いで、独りごちる。
「……で?何?」
突き出た口吻、大きく鋭い犬歯から漏れる声はやや重いが雪風のもの。暗闇をも見通すようなその金の瞳は、油断なく吹雪の指と周囲の『ウェンディゴ憑き』を警戒する。
――手よ!手!あんたの手、貸して!呪文唱えても印が結べなきゃ呪いが完成しないわ!――
切羽詰まったユモの声なき声が、直接鼓膜に響く。
「んな事言ったって!」
向かってきた吹雪の指を避けるべく跳躍しながら、雪風の声が答える。
「手が使えなきゃあたしだって困るわ、よ!」
言いながら、獣魔女は飛びかかってきた『ウェンディゴ憑き』を木刀で叩きのめす。
――じゃあ、どうすんのよ!――
テンパって、キレ気味にユモの声が返す。
「知らないわよ!いっそ阿修羅みたいに手でもいっぱい生やしてみる!?」
雪風も、売り言葉に買い言葉で思いつきをそのまま口に出す。
――何よそのアーシュラって!?――
「こういうのよ!仏教の神様!」
突っ込みどころ満載の答えを返しながら、雪風は脳裏に阿修羅のイメージを浮かべる。もっとも強いイメージは興福寺の阿修羅像、ヒンドゥーのアスラが仏教に取り込まれ、修羅道を治める阿修羅王の仏像である。互いの意識は独立していても、使い魔の契約だけの状態より明確にイメージが共有できていることに、二人は何の疑問も抱かない。
――うわ……でも……これ、いけるわ!――
「うえっ?」
一瞬、見慣れないその仏像のイメージに気圧されたものの、すぐに何かをひらめいたらしいユモの声と気迫に、今度は逆に雪風が気圧される。
――つまり、こうよ!――
言うが早いか、羽織っていた軍用コートの袖の中に、今ある腕より明らかに華奢な腕が出現する。その腕は、セーラー服の腰に巻かれたガンベルトの、そのさらに上に巻かれた弾薬盒ベルトから銃剣と聖灰を取り出す。
「……そういう事か!」
気を取り直した雪風の声と共に、獣魔女は再び木刀に念を込め、自分を掴み取ろうとした吹雪の掌を斬り飛ばし、霧散させる。
――我が前方にラファエル!我が後方にガブリエル!……――
ユモの凜とした声が、印を切る腕の動きに乗って洞窟中のエーテルを振動させた。
呪文自体の難易度は、『月の魔女』の呪いとしてはむしろ低い方に属する。しかし、一部の禁呪以外のほとんどの呪いを一度は経験している母であっても、この呪いはその条件の厳しさ故に唱えたことはなかったのだ、と。
その条件とは、つまり。
呪いを行う主体となる魔女あるいは魔法使いに対し、独立した個人でありながら友情という非常に抽象的な概念で結ばれ、かつ、互いを補完し合う力関係にある他者の存在が不可欠である事だった。
「お友達は居ますよ。それはもう、いっぱい。ただ、皆、魔法使いなので、糾うに値する『補完する関係』たりえないのです」
娘から見て非の打ち所のない偉大な魔女である母だが、そのような『友人』と呼ぶに相応しい対等の『補完する関係』は在ったことが無く、そしてそれが故にこの呪い、『友情を糾う』は使う機会が無かったと、母が苦笑交じりにそう言ったのを娘は覚えていた。
「『補完する関係』って、具体的に、どういう関係なの?」
ユモは、もっと幼い頃、母にそう聞いたことを思い出す。そのユモの素朴な疑問に、母は微笑んで答えた事も。
「自分と同等かそれ以上の源始力を扱う包容力を持ち、かつ、私達魔法使いにとって絶対的に欠けている一面、精神面を追求する我々と対となる、肉体面を追求した存在、でしょうか……」
そう言って、母は何事か思い出すように、遠い目をした事を、ユモは覚えていた。
「……もしかしたら、あの方であれば、ゆくゆくはそのような関係になれたかも、分かりませんでしたね……」
その母の言葉が誰を指すのか、ユモには分からない。だが、自分とユキが、東洋人で、人狼で、体力と体術と包容力に秀でた『使い魔一号』がその『補完する関係』の対象そのものである事は、『友情を糾う』の呪いが成就した事で、ユモの中で確信に変わっていた。
時間にすれば、それはほんの一瞬だった。頭に流れ込むユモの『意図』の通りに呪文を唱えた雪風は、ほんの一瞬、まぶたの裏に眩しいほどの輝きを、体の中心に熱い何かが迸る感触を覚え、思わず目をつぶった。
雪風の首筋にしがみついて呪文を唱えたユモの体がまばゆい光を放ち、間を置かず雪風の体も同じように光る。時間にすればほんの一瞬、微妙に異なる二つの光は一つに融合し、共振し、新たな波長を生み出しつつさらに強く輝く。
その光は、呪文の最終段を唱えるために立ち止まった二人に飛びかからんとした『ウェンディゴ憑き』の目をくらまし、二人が振動させた呪文の共鳴がもたらすエーテルの波動は『ウェンディゴ憑き』を物理的に押しとどめる。
「……ちぇすとぉおおおっ!」
光の中から現れた鈍色に輝く一降りの剣が、その『ウェンディゴ憑き』を横薙ぎに薙ぎ払う。旋風のごとくに剣を振りきって光の中から跳び出したのは、黒と金の長い髪をなびかせ、軍用コートを羽織りライフルを背負った一人の大柄な女性。別の足場に飛び移り、木刀を正眼に構え直したその女の顔は明らかに人とは異なる口吻が突き出し、その瞳は金色に燃える。
「……視野が高いわね?もしかしてあたし、背が伸びてる?」
発達した犬歯の覗くその口吻から、雪風の声が呟く。
――あんたとあたしの体と力が一つになった結果よね、足して二で割るってわけじゃあ、ないって事ね――
エーテルの振動が、ユモの声となって鼓膜に届く。
「マジか……まあいいわよ、これはこれでいい感じだもの」
狼の口が、大きく耳まで裂けて、笑う。
「そういうことなら、じゃあ、魔法は任したわよ」
雪風のみだった頃には膝丈だったが今はミニ丈に近い膝上の、黒い制服のプリーツスカートからはみ出した尻尾をゆらゆらと振りながら、雪風が言い、
――あんたこそ、体の方は任したわよ――
明らかに高揚した声色のユモの声が、それに答える。
「おーけー。そんじゃ、時間もないことだし、ぶわぁ~っと行きますか!」
それに意思や思考があるとして、それらを人間が理解できる言語で説明するのは、基本的には不可能だし意味のない事だった。
なぜならば、それは何一つとして、単細胞生物を含む既知の動植物と一致する部分を持たず、唯一、直立歩行する類人猿に似たその形状ですら、この地で多く観察された『微生物』を真似たものでしかなく、そうすることでその『微生物』が通常と異なる反応を示すことが分かったからに過ぎなかった。
だから、あえて今、それが何を思っているかを無理やりにでも記述するとするならば。
それは、己の意図に反することが起こっている現状に対する混乱であり、疑問であり、憤りであった。
その『微生物』は、確かに二つ、あった。形状には、今まで見てきた他の微生物とさしたる差があるようには見えなかったが、それらの移動能力も、移動方法も、捕えようとするそれの手から逃れるやり方も、実にユニークで見たことがなかった。
はじめのうちは面白半分であったが、次第に、それは、その微生物が意のままにならないことに不快を感じた。そして、その微生物があれの保存庫に入ったのを見て、それは、逃げ道のないここで捕まえよう、そう決めた。
捕まえて何をするか、なぜ捕まえるのか、そのようなことはそれにとって意味がなかった。捕まえる、ただそれだけだった。
だから。どうにも捕まらない、どころか、嫌な臭いのする光を放ち、いつの間にか一つになったその微生物に、それは混乱し、憤っていた。
だから。それは、洞窟の上半分で渦巻き、居座る己から、まるで手を伸ばすがごとくに五本の吹雪の触手のついた触腕を、洞窟の底に向けて伸ばした。
――……って、ちょっと待って!――
『友情を糾う』の呪いが成功した直後、前にも増して力強く木剣を振るい、足場から足場に跳躍するその体のコントロールを雪風に全面的に任せたユモは、自分の分担である呪文を唱えようとして、ある事に気付いて愕然とし、声なき声で大声を上げた。
「うわ!な、何よいきなり!」
突然、直接鼓膜をエーテルの振動で叩かれて、体をコントロールする雪風は跳躍のリズムを崩し、足場を踏み外しそうになる。その隙を突いて上から被せてきた吹雪の五本指を雪風はあえて避けず、腰を落として稼いだほんの一瞬を使って念を木刀に集中し、
「……てりゃあ!」
気合い一閃、渾身の突きでその吹雪で出来た歪な手を押し戻し、蹴散らす。散らされた吹雪の手が再びまとまる前に、ベースになっている雪風の体より頭一つ背が高く、相応に幅も厚みも増えているその体は別の足場に跳躍し直す。
離れた足場から吹雪の指が再び形を成すのを見た、ユモと雪風が合体した存在、寸が詰まってミニ丈に見えるセーラー服の上に膝丈でちょうど良い按配の軍用コートを羽織り、右半分が黒、左半分が金の長い髪を風になびかせる金の瞳の獣魔女は、木刀を肩に担いで、独りごちる。
「……で?何?」
突き出た口吻、大きく鋭い犬歯から漏れる声はやや重いが雪風のもの。暗闇をも見通すようなその金の瞳は、油断なく吹雪の指と周囲の『ウェンディゴ憑き』を警戒する。
――手よ!手!あんたの手、貸して!呪文唱えても印が結べなきゃ呪いが完成しないわ!――
切羽詰まったユモの声なき声が、直接鼓膜に響く。
「んな事言ったって!」
向かってきた吹雪の指を避けるべく跳躍しながら、雪風の声が答える。
「手が使えなきゃあたしだって困るわ、よ!」
言いながら、獣魔女は飛びかかってきた『ウェンディゴ憑き』を木刀で叩きのめす。
――じゃあ、どうすんのよ!――
テンパって、キレ気味にユモの声が返す。
「知らないわよ!いっそ阿修羅みたいに手でもいっぱい生やしてみる!?」
雪風も、売り言葉に買い言葉で思いつきをそのまま口に出す。
――何よそのアーシュラって!?――
「こういうのよ!仏教の神様!」
突っ込みどころ満載の答えを返しながら、雪風は脳裏に阿修羅のイメージを浮かべる。もっとも強いイメージは興福寺の阿修羅像、ヒンドゥーのアスラが仏教に取り込まれ、修羅道を治める阿修羅王の仏像である。互いの意識は独立していても、使い魔の契約だけの状態より明確にイメージが共有できていることに、二人は何の疑問も抱かない。
――うわ……でも……これ、いけるわ!――
「うえっ?」
一瞬、見慣れないその仏像のイメージに気圧されたものの、すぐに何かをひらめいたらしいユモの声と気迫に、今度は逆に雪風が気圧される。
――つまり、こうよ!――
言うが早いか、羽織っていた軍用コートの袖の中に、今ある腕より明らかに華奢な腕が出現する。その腕は、セーラー服の腰に巻かれたガンベルトの、そのさらに上に巻かれた弾薬盒ベルトから銃剣と聖灰を取り出す。
「……そういう事か!」
気を取り直した雪風の声と共に、獣魔女は再び木刀に念を込め、自分を掴み取ろうとした吹雪の掌を斬り飛ばし、霧散させる。
――我が前方にラファエル!我が後方にガブリエル!……――
ユモの凜とした声が、印を切る腕の動きに乗って洞窟中のエーテルを振動させた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
Solomon's Gate
坂森大我
SF
人類が宇宙に拠点を設けてから既に千年が経過していた。地球の衛星軌道上から始まった宇宙開発も火星圏、木星圏を経て今や土星圏にまで及んでいる。
ミハル・エアハルトは木星圏に住む十八歳の専門学校生。彼女の学び舎はセントグラード航宙士学校といい、その名の通りパイロットとなるための学校である。
実技は常に学年トップの成績であったものの、ミハルは最終学年になっても就職活動すらしていなかった。なぜなら彼女は航宙機への興味を失っていたからだ。しかし、強要された航宙機レースへの参加を境にミハルの人生が一変していく。レースにより思い出した。幼き日に覚えた感情。誰よりも航宙機が好きだったことを。
ミハルがパイロットとして歩む決意をした一方で、太陽系は思わぬ事態に発展していた。
主要な宙域となるはずだった土星が突如として消失してしまったのだ。加えて消失痕にはワームホールが出現し、異なる銀河との接続を果たしてしまう。
ワームホールの出現まではまだ看過できた人類。しかし、調査を進めるにつれ望みもしない事実が明らかとなっていく。人類は選択を迫られることになった。
人類にとって最悪のシナリオが現実味を帯びていく。星系の情勢とは少しの接点もなかったミハルだが、巨大な暗雲はいとも容易く彼女を飲み込んでいった。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる