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第一章 月齢24.5
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「つまり、あたし達の疑いは晴れてない、という事ね?」
ため息交じりに、ユモは焚き火を囲む男達を見まわして、言う。
「私の調べた限り、この付近にメーリングという集落はありません。日本人がここに居るのも不自然極まりない。そして、あなた方はさっき、今日は何月何日かを聞いた、充分に疑惑のある行動だったと言えます。とはいえ、私はだからといってあなた方を今ここでどうこうしようというつもりはありませんが」
パイプを磨き、懐に仕舞いながら言ったオーガストの言葉に、ユモとユキは顔を見合わせる。日時を聞いたのは、二人とも無意識に、自分たちが居た時代との色々な差を感じ、具体的には季節の違いに気付いていたからなのだが、こういう言われ方をされてしまうと反論のしようがないし、二人とも、余計な事は言わない方が良いという暗黙の了解があった。
「お前達に不審な点は多いが、少なくとも、今のお前達はイタクァに獲られたようにも、ウェンディゴ憑きにも見えない。油断するつもりはないが、邪険に扱うつもりもない……オースチン、そろそろ仕事の話をしないか?」
チャックが、木皿を雪で洗ってから布で拭きつつ、言った。
「そうだな……モーリー大尉が言ったとおり、僕たちはこの付近の調査を行っている。本来なら、君たちのようなお嬢さん方をこんな荒野にいつまでも置いておくのは良くないから、街に連れて行きたいんだが、仕事を放り出すわけにも行かない。そこで、だ。ずっと考えてたんだが」
スティーブが、飲み残した冷えたコーヒーを雪原に撒いてから、言葉を続ける。
「僕たちは今日、この付近の洞窟の調査をする予定だった。まずは下調べだけどね。その際には、一旦テントを畳んで持っていかないと無用心なんだが、数日調査をするとなるといちいち毎日テントを畳むのも効率が悪い。なので、どうだろう、僕たちが調査に行っている間、お嬢さん方にテントの番をしておいてもらう、というのは?勿論、この洞窟の調査が終わり次第、お嬢さん方は街に送り届ける。落とし所だと思ったんだが?」
「……食料の匂いで、熊や狼が来たら?」
スティーブの提案に、チャックが即座に問題点を指摘する。
「銃を一丁か二丁置いていけばいいだろう。なに、当てる必要はないさ。大きな音がするだけで、奴らは退散するさ。そうだな、大尉の銃なんかちょうど良いんじゃないか?」
答えて、スティーブはオーガストに目を向ける。チャックも、オーガストを見る。
「……確かに。私のアレは洞窟調査には長すぎるし、今時単発だから実用性も低いですが、威嚇用なら充分役に立つでしょう」
「えっと……」
話しについて行けず、いや、内容は理解しているが、ユモは可否の判断に戸惑う。
「それしかないなら」
そのユモの隣で、ユキは言って首肯した。
「……いいの?あんな簡単にOKしちゃって」
よし話は決まった、じゃあ準備を始めようと言ったスティーブの一言をきっかけに動き出した男達をよそに、ユモとユキは一旦テントに戻っていた。
「他にアイデアないもん、正直、とにかく情報が欲しいけど、ここじゃ限界みたいだし……」
「でも……」
別に何か用意があるわけではないが、なんとなくテントに戻った二人は、さっきの話しと今後の事について、どちらともなく相談をはじめる。
口火を切ったユモにユキは論理的に答え、しかしユモは何か納得いかなげな、ちょっとだけ不安げな顔をする。
「大丈夫よ。熊だろうが何だろうが、あたしが追い払ってあげるから」
その不安を、さっきチャックが言った「熊や狼が食料を狙ってテントに来るかも」が原因だと思ったユキは、ユモにそう言って笑顔を見せる。
「ち、違うわよ!そうじゃなくて!」
「にしても、得物の一つや二つは借りておきたい所よね」
「話聞きなさいよ!そうじゃなくて!あんた一体この状況をどう考えてるのかって事よ!」
半分は図星を突かれたユモは、ずっと気になっていた事もあって、逆にユキに食ってかかる。
「大体、あんたなんでしょ?その熊ってのをやっつけたの?」
「え?」
「見えるのよ。あんたの手に、『穢れ』が残ってるのが」
思わず動きを停めて、ユキはユモに振り向く。
「うっすらとだし、別にあたしはそれを悪いことだとも思ってないし、責めるつもりもないわ。食べるため、生きるために命を奪う事は、決して悪いことじゃない。そう教わってるし、あたしもそう思うもの」
そうでなければ、私たちはお肉を食べられないし、広い意味では植物すら食べることが出来ない。私利私欲のため、楽しむために殺すのは大罪だけど、自分を護る為、命を繋ぐために殺すのは、むしろ尊いこと。ユモは、かなり幼い時分に先生からそう教わったことを思い出していた。
「何をどうやったのかは知らないけど、あんたがやったんだって事は、状況から言っても間違いない。でも、あんたはそれを人に言えない。理由は知らないけど。そうでしょ?」
「……ジュモーはあたしに、野暮は言いっこなしって、言ったわよね」
腰に手を置いてふんぞり返って自分を半ば糾弾する様子の金髪の少女を、ユキは真っ直ぐに見つめて、言う。
「だったら、お互い様よ。あたしも、ただの日本人のユキ・ターキー。少なくとも今はそういう事にしておいて」
みだりに、秘密を語ってはダメ。ユキは、曾祖母と叔母と、何より母からそうきつく言われていることと、その意味を噛みしめつつ、言った。
「まあ、確かにこの銃じゃ、実用性はちょっと問題よね……」
ユキは、オーガストから使い方を教えられ、万一の為に予備弾込みで渡されたライフル銃を手に、つぶやく。
「これ、あんたの背丈より長いんじゃない?」
手にした旧式ライフル、オーガストが『前の戦争の戦利品』と言う、モーゼルM1871歩兵銃、通称Gew71とユモを見比べて、ユキはちょっとだけ意地悪そうに笑いながら言う。
「そんな事ないわよ!」
ユモは即座に否定するが、だからといって、全長135センチの旧式ライフルと自分の身長を比べてみようとはしない。
「まあいいわ、で、どうする?代わりにこっち持つ?」
まだにやにやしながら、ユキは革のガンベルトとホルスターごと、これも借り物のコルトM1917リボルバーを差し出す。
「いらないわよ!」
一通りの準備を整えて、男達が馬で出かけた後、残ったユモとユキは暇つぶしもかねてテント内外の荷物を整理し始めた。
男達は、小娘二人をテントに残す事自体にはやはり不安はあったようだが、相応に打合せをし、最低限身を守るだけの武器も置いていったことで、楽観的なスティーブだけでなく、懐疑的なチャックもオーガストも一応は納得して、明るいうちには戻るつもりだと言い残して出かけていった。
ユモとユキは、自分たちが発見された場所と時間帯、その時の気象変化などのあらましを聞き出し、許可を得た書類については読むことも許されているが、ユモはともかくユキは、会話はなんとかなっても読み書きまではユモの呪いはフォローしてくれない。ユキの義務教育の中学英語では、専門用語が多く文法的にも複雑な業務書類は、手書きはおろかタイプライターの文字ですら意味をとるのはほぼ不可能だった。
とはいえ、書類の量自体少ない上に得られた情報は先ほどのオーガストの話しと大差なく、徒労に終わったユモは、借り物の銃とナイフをためつすがめつ眺めていたユキに声をかけ、軽口を返されていた。
「護身用、要らない?」
シリンダーを開けてハーフムーンクリップに収められた弾丸を出し入れしながら、ユキが重ねて聞く。
「要らない。なるたけ不浄のものは持ちたくないの」
ぷい、とふくれ面を背けながら、ユモは言い返す。
「ふうん……ま、いいけど」
喉元まで出かかった言葉を、ユキは飲み込む。それを言ってしまったら、自分がユモの隠し事に気付いている事が明らかになり、つまり自分もそっち方面に多少なりとも知識がある、ということまで、どうやら回転は速いらしいジュモーのことだから気付くに違いない。ユキはそう思い、余計な事は言わないようによくよく気を付けようと気持ちを新たにする。
「じゃあ、早速行きましょうか」
「え?」
予想外の一言に、ユモは真顔でユキに振り向き直す。
「行くって、どこに?」
「そりゃ、決まってるわよ。あたし達が倒れてた所」
ガンベルトを巻きながら、ユキが答える。
「やっぱり現場は見ておきたいし。それに」
これまた借り物の、大振りなボウイナイフをガンベルトにつけたシースに収めながら、ユキが付け足した。
「熊の肉、もう少し欲しいし」
「そんな理由?って、待ちなさいってば!」
十二歳の西洋人種としては小柄なユモはもとより、十四歳の東洋人種としては大柄なユキと比べても不釣り合いに大きい、現代銃に比べるとやたらに長い旧式ライフルを担ぎ、なんと言うこともなさそうに歩き出そうとしたユキを、ユモは慌てて引き留める。
「ここ、離れちゃっていいの?獣が来るかもって言ってたじゃない!」
「それは多分大丈夫。あんたじゃないけど、おまじないみたいなもの、してあるから」
「……何をしたのよ?」
――まさか、あたしの知らない、あたしに何も感じさせないやり方の呪いを、ユキが知っているって言うの?――
朝から特にこの周りで源始力の流れや放射閃の煌めきを感じていなかったユモは、不思議に思って聞く。
「ナイショ」
振り向かず、ユキはごまかす。
――さっき、テントの向こうの草むらの影に爆弾処理したなんて、言えるわけないじゃない……――
ため息交じりに、ユモは焚き火を囲む男達を見まわして、言う。
「私の調べた限り、この付近にメーリングという集落はありません。日本人がここに居るのも不自然極まりない。そして、あなた方はさっき、今日は何月何日かを聞いた、充分に疑惑のある行動だったと言えます。とはいえ、私はだからといってあなた方を今ここでどうこうしようというつもりはありませんが」
パイプを磨き、懐に仕舞いながら言ったオーガストの言葉に、ユモとユキは顔を見合わせる。日時を聞いたのは、二人とも無意識に、自分たちが居た時代との色々な差を感じ、具体的には季節の違いに気付いていたからなのだが、こういう言われ方をされてしまうと反論のしようがないし、二人とも、余計な事は言わない方が良いという暗黙の了解があった。
「お前達に不審な点は多いが、少なくとも、今のお前達はイタクァに獲られたようにも、ウェンディゴ憑きにも見えない。油断するつもりはないが、邪険に扱うつもりもない……オースチン、そろそろ仕事の話をしないか?」
チャックが、木皿を雪で洗ってから布で拭きつつ、言った。
「そうだな……モーリー大尉が言ったとおり、僕たちはこの付近の調査を行っている。本来なら、君たちのようなお嬢さん方をこんな荒野にいつまでも置いておくのは良くないから、街に連れて行きたいんだが、仕事を放り出すわけにも行かない。そこで、だ。ずっと考えてたんだが」
スティーブが、飲み残した冷えたコーヒーを雪原に撒いてから、言葉を続ける。
「僕たちは今日、この付近の洞窟の調査をする予定だった。まずは下調べだけどね。その際には、一旦テントを畳んで持っていかないと無用心なんだが、数日調査をするとなるといちいち毎日テントを畳むのも効率が悪い。なので、どうだろう、僕たちが調査に行っている間、お嬢さん方にテントの番をしておいてもらう、というのは?勿論、この洞窟の調査が終わり次第、お嬢さん方は街に送り届ける。落とし所だと思ったんだが?」
「……食料の匂いで、熊や狼が来たら?」
スティーブの提案に、チャックが即座に問題点を指摘する。
「銃を一丁か二丁置いていけばいいだろう。なに、当てる必要はないさ。大きな音がするだけで、奴らは退散するさ。そうだな、大尉の銃なんかちょうど良いんじゃないか?」
答えて、スティーブはオーガストに目を向ける。チャックも、オーガストを見る。
「……確かに。私のアレは洞窟調査には長すぎるし、今時単発だから実用性も低いですが、威嚇用なら充分役に立つでしょう」
「えっと……」
話しについて行けず、いや、内容は理解しているが、ユモは可否の判断に戸惑う。
「それしかないなら」
そのユモの隣で、ユキは言って首肯した。
「……いいの?あんな簡単にOKしちゃって」
よし話は決まった、じゃあ準備を始めようと言ったスティーブの一言をきっかけに動き出した男達をよそに、ユモとユキは一旦テントに戻っていた。
「他にアイデアないもん、正直、とにかく情報が欲しいけど、ここじゃ限界みたいだし……」
「でも……」
別に何か用意があるわけではないが、なんとなくテントに戻った二人は、さっきの話しと今後の事について、どちらともなく相談をはじめる。
口火を切ったユモにユキは論理的に答え、しかしユモは何か納得いかなげな、ちょっとだけ不安げな顔をする。
「大丈夫よ。熊だろうが何だろうが、あたしが追い払ってあげるから」
その不安を、さっきチャックが言った「熊や狼が食料を狙ってテントに来るかも」が原因だと思ったユキは、ユモにそう言って笑顔を見せる。
「ち、違うわよ!そうじゃなくて!」
「にしても、得物の一つや二つは借りておきたい所よね」
「話聞きなさいよ!そうじゃなくて!あんた一体この状況をどう考えてるのかって事よ!」
半分は図星を突かれたユモは、ずっと気になっていた事もあって、逆にユキに食ってかかる。
「大体、あんたなんでしょ?その熊ってのをやっつけたの?」
「え?」
「見えるのよ。あんたの手に、『穢れ』が残ってるのが」
思わず動きを停めて、ユキはユモに振り向く。
「うっすらとだし、別にあたしはそれを悪いことだとも思ってないし、責めるつもりもないわ。食べるため、生きるために命を奪う事は、決して悪いことじゃない。そう教わってるし、あたしもそう思うもの」
そうでなければ、私たちはお肉を食べられないし、広い意味では植物すら食べることが出来ない。私利私欲のため、楽しむために殺すのは大罪だけど、自分を護る為、命を繋ぐために殺すのは、むしろ尊いこと。ユモは、かなり幼い時分に先生からそう教わったことを思い出していた。
「何をどうやったのかは知らないけど、あんたがやったんだって事は、状況から言っても間違いない。でも、あんたはそれを人に言えない。理由は知らないけど。そうでしょ?」
「……ジュモーはあたしに、野暮は言いっこなしって、言ったわよね」
腰に手を置いてふんぞり返って自分を半ば糾弾する様子の金髪の少女を、ユキは真っ直ぐに見つめて、言う。
「だったら、お互い様よ。あたしも、ただの日本人のユキ・ターキー。少なくとも今はそういう事にしておいて」
みだりに、秘密を語ってはダメ。ユキは、曾祖母と叔母と、何より母からそうきつく言われていることと、その意味を噛みしめつつ、言った。
「まあ、確かにこの銃じゃ、実用性はちょっと問題よね……」
ユキは、オーガストから使い方を教えられ、万一の為に予備弾込みで渡されたライフル銃を手に、つぶやく。
「これ、あんたの背丈より長いんじゃない?」
手にした旧式ライフル、オーガストが『前の戦争の戦利品』と言う、モーゼルM1871歩兵銃、通称Gew71とユモを見比べて、ユキはちょっとだけ意地悪そうに笑いながら言う。
「そんな事ないわよ!」
ユモは即座に否定するが、だからといって、全長135センチの旧式ライフルと自分の身長を比べてみようとはしない。
「まあいいわ、で、どうする?代わりにこっち持つ?」
まだにやにやしながら、ユキは革のガンベルトとホルスターごと、これも借り物のコルトM1917リボルバーを差し出す。
「いらないわよ!」
一通りの準備を整えて、男達が馬で出かけた後、残ったユモとユキは暇つぶしもかねてテント内外の荷物を整理し始めた。
男達は、小娘二人をテントに残す事自体にはやはり不安はあったようだが、相応に打合せをし、最低限身を守るだけの武器も置いていったことで、楽観的なスティーブだけでなく、懐疑的なチャックもオーガストも一応は納得して、明るいうちには戻るつもりだと言い残して出かけていった。
ユモとユキは、自分たちが発見された場所と時間帯、その時の気象変化などのあらましを聞き出し、許可を得た書類については読むことも許されているが、ユモはともかくユキは、会話はなんとかなっても読み書きまではユモの呪いはフォローしてくれない。ユキの義務教育の中学英語では、専門用語が多く文法的にも複雑な業務書類は、手書きはおろかタイプライターの文字ですら意味をとるのはほぼ不可能だった。
とはいえ、書類の量自体少ない上に得られた情報は先ほどのオーガストの話しと大差なく、徒労に終わったユモは、借り物の銃とナイフをためつすがめつ眺めていたユキに声をかけ、軽口を返されていた。
「護身用、要らない?」
シリンダーを開けてハーフムーンクリップに収められた弾丸を出し入れしながら、ユキが重ねて聞く。
「要らない。なるたけ不浄のものは持ちたくないの」
ぷい、とふくれ面を背けながら、ユモは言い返す。
「ふうん……ま、いいけど」
喉元まで出かかった言葉を、ユキは飲み込む。それを言ってしまったら、自分がユモの隠し事に気付いている事が明らかになり、つまり自分もそっち方面に多少なりとも知識がある、ということまで、どうやら回転は速いらしいジュモーのことだから気付くに違いない。ユキはそう思い、余計な事は言わないようによくよく気を付けようと気持ちを新たにする。
「じゃあ、早速行きましょうか」
「え?」
予想外の一言に、ユモは真顔でユキに振り向き直す。
「行くって、どこに?」
「そりゃ、決まってるわよ。あたし達が倒れてた所」
ガンベルトを巻きながら、ユキが答える。
「やっぱり現場は見ておきたいし。それに」
これまた借り物の、大振りなボウイナイフをガンベルトにつけたシースに収めながら、ユキが付け足した。
「熊の肉、もう少し欲しいし」
「そんな理由?って、待ちなさいってば!」
十二歳の西洋人種としては小柄なユモはもとより、十四歳の東洋人種としては大柄なユキと比べても不釣り合いに大きい、現代銃に比べるとやたらに長い旧式ライフルを担ぎ、なんと言うこともなさそうに歩き出そうとしたユキを、ユモは慌てて引き留める。
「ここ、離れちゃっていいの?獣が来るかもって言ってたじゃない!」
「それは多分大丈夫。あんたじゃないけど、おまじないみたいなもの、してあるから」
「……何をしたのよ?」
――まさか、あたしの知らない、あたしに何も感じさせないやり方の呪いを、ユキが知っているって言うの?――
朝から特にこの周りで源始力の流れや放射閃の煌めきを感じていなかったユモは、不思議に思って聞く。
「ナイショ」
振り向かず、ユキはごまかす。
――さっき、テントの向こうの草むらの影に爆弾処理したなんて、言えるわけないじゃない……――
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