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第四章-月齢27.5-
第4章 第66話
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「すみません、その……何と言うか、理解が追いつきません」
ペーター少尉は、率直に今の気持ち、今の自分の状態を口にする。
「無理もありません」
王子は、ペーター少尉にゆっくりと頷いてみせる。
「本来、こういった事は同胞団であってもそれなりに上位の構成員にしか開示されない情報です。もちろん、今お話ししたのはあくまで概容であり、同胞団員ともなれば、微に入り細にわたった『教育』が行われます。いずれにしても理解しておくべき事、心に刻んでおくべき事は、この地球の外には、地球人類の想像をはるかに超えた、むしろ想像だにし得ない世界が広がっていると言う事です。そこでは、地球人類など、矮小にして貧弱、取るに足らない存在でしかありません……ですが」
両手を広げ、やや仰向いて話していた王子は、はたとペーター少尉に目を戻し、目を見て、言う。
「この地球上では、地球人類は取るに足らないどころか、地上の支配者と自負している……あまつさえ、人智を超え、あるいは拠り所となる『神』という存在にさえ、地球人類は己の似姿を当てはめています。誠に、自己評価の高い生き物であるとは思いませんか?」
王子に問われたペーター少尉は、咄嗟に言葉が返せなかった。王子の言わんとするところを理解出来なかった、いや、理解したくなかったのだと、ペーター少尉は自己分析する。
王子の言わんとするところ、それは、『神』なる存在があるとして、それは人間、地球人類とは似ても似付かない姿形をしている、そういう事なのだろうから。
「……おっしゃりたいのはつまり、主イエス・キリストも、あるいはブッダも、我々が信奉する姿はまがい物である、と?」
「ああ、私の言をそう理解されるのも道理ではありますが、そうではないのです」
優しい笑顔のまま、王子はペーター少尉の抗議にも似た質問に、手を振って否定の意を表しながら答える。
「チベット密教も含め、かつて神や仏が存在し、奇跡を起こしたり、説法をして回ったり、そのような伝承は枚挙に暇なく地球上のあらゆる神話体系に残されています。それ自体は恐らく事実か、事実に近い形での伝聞なのでしょう。そこを疑う必要は無いのですが、その伝承においては、『神や仏』は目に見え、手で触れる事すら出来る存在であり、あえてその姿をあれこれ語る必要など無かった。しかるに、今はそうではない。神や仏に触れる事が出来なくなった地球人類は、伝承の不足する部分を補うため、精一杯の想像力をもって、空想ではなく手で触れ確かめられる存在として、神や仏を偶像化した。信仰の対象としての地球人類の似姿は、地球人類のそうした信仰心、芸術性、想像を具現化する熱意、そういったものが高度に結晶した、『人ならざる尊きもの』の具現化された姿であり、『尊きものは地球人類の延長線上にある』という願望の表れなのだ、そう解釈する事が出来ます」
その王子の説明は、ペーター少尉にも納得がいくものだった。神が実在するか否か、居ないと言い切ってしまえるほどにはペーター少尉は不信心ではなく、しかし、では今どこに居て、どんな姿をしているのかを説明出来るほどには宗教家でもない、ごく一般的なキリスト教徒として、神の姿を客観視するとそのような解釈になるというのは、理解出来る話しだった。
「……しかしながら、では今、実際に、目で見、手で触れる事の出来る『神』なる存在が、実際におわしますとしたら?」
王子は、理解を追いつかせるのが精一杯のペーター少尉に、新たな質問を投げた。
「……実際に、ですか?この世界に、実在する、とおっしゃいますか?」
理解が、納得が追いつかない状態で次々に浴びせかけられる情報に溺れながらも、ペーター少尉はそう問い返した。いかがわしい新興宗教の指導者兼現人神ならともかく、まっとうな宗教の『神』がこの地球上に降臨したら、それがどこであれ何宗であれ、話題にならないはずがない。
「常にこの地球上におわす、というわけではありませんし、不用意に近づくと神罰が下る事もままありますが、ご質問の答えは、イエスです」
王子は、ゆっくりと頷いてペーター少尉に応える。
「先に申し上げた、我らに英知をもたらす『ユッグゴトフ由来の菌類』、彼らの言葉では『マイゴウ』と、この地に穴を穿った『古い奴ばら』とのこの地における抗争、これに終止符を打たせたのも、そういった二柱の『神』の御業であると聞き及んでおります。そして『神』は、この地から生み出される『貢ぎ物』をその対価として受け取り、再び抗争が起きぬよう『御神木』とその『守り手』を残された……大変におおざっぱですが、そのように『マイゴウ』から伝え聞いています」
『御神木』と聞いた時、ペーター少尉の脳裏に、あの枯れ木、見ようによっては身をくねらせる女性とも見えるその異形がまざまざと甦った。そしてペーター少尉は、その姿はおろか、その根の周囲の腐葉土のような、やや湿ったカビ臭い匂いさえ感じたように思った。
「なんとも……いや、なんとも壮大な話で……」
ペーター少尉は、話のあまりの現実感の無さに目眩がし、体が傾くような、あるいは世界が斜めにひしゃげていくような不快感を感じた。脳が疲れてきたのだろう、ブンブンと、何か金属板が自励振動を起こしているような耳障りな音、ハムノイズ的な不快な耳鳴りまで感じ、ペーター少尉は軽い吐き気すら覚えた。
「……しかし、それが過去の話であるならば、今まさに目で見、手で触れるというのとは多少違うのではないでしょうか?その『御神木』とやらが霊験あらたかである、というのであればまた話は違いますが」
「おっしゃる通りです」
ペーター少尉のやや不躾な、疲れと不快感から来るやや配慮に欠けた質問にも、王子は微笑みを崩さずに応える。
「ですが、それは確かに実在し、手に触れる事も可能なのです。もちろん、みだりに『御神木』に手を触れようものなら、ひどい神罰を覚悟しなければなりません。この私とて、その神罰から逃れる事はかないません。それが故に『御神木』は『御神木』であり、『守り手』がそれを守るのです」
「守り手、ですか?」
ペーター少尉は、自分がうかつに『御神木』に手をのばした時の事を思い出す。あの時、その手を止めたのは……
「はい」
はっきりと大きく頷き、王子は明瞭に答えた。
「『御神木』の『守り手』、『貌の無い王』と『偉大なる諸神の母』より生まれし神の落とし子、生き神にして何人たりとも干渉し得ない仙女」
王子は目を閉じ、手を合わせ、軽く会釈し、そして改めて目を開けてから、言った。
「我らが母なる『赤の女王』その人です」
「赤の、女王……」
ペーター少尉は、その単語を思わず繰り返す。不可思議で、しかもこの都市には、いやこのチベットという地には不釣り合いな女性だとは思っていたが、まさかそれが……
「得心が、行きませんか?」
ペーター少尉の顔色からその心の中を読んだのだろう、王子が、ペーター少尉に聞く。
「はい、いえ、あの……はい。正直に申し上げるならば、私がお会いした、私がこの地を訪れた際にたまたまそこにいらしたとうかがっております『赤の女王』は、不思議な方とは思いましたが、そのような……」
言葉を探して一旦口ごもってから、ペーター少尉は言い直す。はっきり言うべきだ、そう決心して。
「先ほど王子がおっしゃられたような、地球人類と一線を画する別な何者かだとは、どうにも思えませんでした」
「その通りです。それこそが、『神』がこの地に下ろした神の落とし子、守り手の姿ですから。『神』はあまりに強大で偉大にして絶大、この地にその姿を全て現す事は困難です。故に、多くの場合でそのごく一部のみがこの世に顕現される。その一部とて、我々の知る物質、我々の知る化学物理学生物学の範疇になど収まりません。結果として、接触を求めた地球人類、ひ弱な精神と脆弱な肉体しか持たぬ彼らは、ほとんどの場合で破滅してしまいますが、それは『神』の本意ではありません。これを嘆かれた『神』は、可能な限り地球上の物質に似せた『化身の木』と、その木を守り、またその資格のある者にのみ木に触れる事を許す『守り手』、『諸神の母』の胎を経て受肉した地球人類の肉体に『貌の無い王』の精を受けその意思を持つ落とし子、『赤の女王』とはつまりそのような存在でありますれば、あなたがた地球人類との差異などわずかなものなのです」
「……なんと……」
あまりに荒唐無稽、あまりに飛躍したその話の内容に、ペーター少尉は驚嘆し、王子が『我々』ではなく『あなたがた』と言ったことに気付く、あるいは疑問を持つ余裕すら無かった。
「そのようなお方でありますれば、この都において『赤の女王』は至高の存在であり、それが故に我々『同胞団』の活動には干渉されませんし、我々『同胞団』も『赤の女王』のふるまいには何一つ干渉いたしません。幾多の歴史を見、幾多の人の、国の勃興と衰退を見てきたであろう『赤の女王』を、ごくまれに気にいった者をその側に置き、自らの英智の一部を授ける様をして、この地では『仙女』『西王母』と永く呼んできたとも聞いています」
「……では、仙人というのは……」
「最も最近では、仙人、つまり『西王母』の寵愛をいただいているのはドルマと、モーセス・グースです」
ペーター少尉の中で、無数にあって整理の仕様もなく混沌としていたいくつもの点のうちの、少なくとも三つが、線で繋がった。
何かが、腑に落ちた。ペーター少尉は、そう感じ、だからこそ、その二人の名を口にした際の王子の、ほんのわずかに口惜しげに歪んだ口角に気付く事は無かった。
ペーター少尉は、率直に今の気持ち、今の自分の状態を口にする。
「無理もありません」
王子は、ペーター少尉にゆっくりと頷いてみせる。
「本来、こういった事は同胞団であってもそれなりに上位の構成員にしか開示されない情報です。もちろん、今お話ししたのはあくまで概容であり、同胞団員ともなれば、微に入り細にわたった『教育』が行われます。いずれにしても理解しておくべき事、心に刻んでおくべき事は、この地球の外には、地球人類の想像をはるかに超えた、むしろ想像だにし得ない世界が広がっていると言う事です。そこでは、地球人類など、矮小にして貧弱、取るに足らない存在でしかありません……ですが」
両手を広げ、やや仰向いて話していた王子は、はたとペーター少尉に目を戻し、目を見て、言う。
「この地球上では、地球人類は取るに足らないどころか、地上の支配者と自負している……あまつさえ、人智を超え、あるいは拠り所となる『神』という存在にさえ、地球人類は己の似姿を当てはめています。誠に、自己評価の高い生き物であるとは思いませんか?」
王子に問われたペーター少尉は、咄嗟に言葉が返せなかった。王子の言わんとするところを理解出来なかった、いや、理解したくなかったのだと、ペーター少尉は自己分析する。
王子の言わんとするところ、それは、『神』なる存在があるとして、それは人間、地球人類とは似ても似付かない姿形をしている、そういう事なのだろうから。
「……おっしゃりたいのはつまり、主イエス・キリストも、あるいはブッダも、我々が信奉する姿はまがい物である、と?」
「ああ、私の言をそう理解されるのも道理ではありますが、そうではないのです」
優しい笑顔のまま、王子はペーター少尉の抗議にも似た質問に、手を振って否定の意を表しながら答える。
「チベット密教も含め、かつて神や仏が存在し、奇跡を起こしたり、説法をして回ったり、そのような伝承は枚挙に暇なく地球上のあらゆる神話体系に残されています。それ自体は恐らく事実か、事実に近い形での伝聞なのでしょう。そこを疑う必要は無いのですが、その伝承においては、『神や仏』は目に見え、手で触れる事すら出来る存在であり、あえてその姿をあれこれ語る必要など無かった。しかるに、今はそうではない。神や仏に触れる事が出来なくなった地球人類は、伝承の不足する部分を補うため、精一杯の想像力をもって、空想ではなく手で触れ確かめられる存在として、神や仏を偶像化した。信仰の対象としての地球人類の似姿は、地球人類のそうした信仰心、芸術性、想像を具現化する熱意、そういったものが高度に結晶した、『人ならざる尊きもの』の具現化された姿であり、『尊きものは地球人類の延長線上にある』という願望の表れなのだ、そう解釈する事が出来ます」
その王子の説明は、ペーター少尉にも納得がいくものだった。神が実在するか否か、居ないと言い切ってしまえるほどにはペーター少尉は不信心ではなく、しかし、では今どこに居て、どんな姿をしているのかを説明出来るほどには宗教家でもない、ごく一般的なキリスト教徒として、神の姿を客観視するとそのような解釈になるというのは、理解出来る話しだった。
「……しかしながら、では今、実際に、目で見、手で触れる事の出来る『神』なる存在が、実際におわしますとしたら?」
王子は、理解を追いつかせるのが精一杯のペーター少尉に、新たな質問を投げた。
「……実際に、ですか?この世界に、実在する、とおっしゃいますか?」
理解が、納得が追いつかない状態で次々に浴びせかけられる情報に溺れながらも、ペーター少尉はそう問い返した。いかがわしい新興宗教の指導者兼現人神ならともかく、まっとうな宗教の『神』がこの地球上に降臨したら、それがどこであれ何宗であれ、話題にならないはずがない。
「常にこの地球上におわす、というわけではありませんし、不用意に近づくと神罰が下る事もままありますが、ご質問の答えは、イエスです」
王子は、ゆっくりと頷いてペーター少尉に応える。
「先に申し上げた、我らに英知をもたらす『ユッグゴトフ由来の菌類』、彼らの言葉では『マイゴウ』と、この地に穴を穿った『古い奴ばら』とのこの地における抗争、これに終止符を打たせたのも、そういった二柱の『神』の御業であると聞き及んでおります。そして『神』は、この地から生み出される『貢ぎ物』をその対価として受け取り、再び抗争が起きぬよう『御神木』とその『守り手』を残された……大変におおざっぱですが、そのように『マイゴウ』から伝え聞いています」
『御神木』と聞いた時、ペーター少尉の脳裏に、あの枯れ木、見ようによっては身をくねらせる女性とも見えるその異形がまざまざと甦った。そしてペーター少尉は、その姿はおろか、その根の周囲の腐葉土のような、やや湿ったカビ臭い匂いさえ感じたように思った。
「なんとも……いや、なんとも壮大な話で……」
ペーター少尉は、話のあまりの現実感の無さに目眩がし、体が傾くような、あるいは世界が斜めにひしゃげていくような不快感を感じた。脳が疲れてきたのだろう、ブンブンと、何か金属板が自励振動を起こしているような耳障りな音、ハムノイズ的な不快な耳鳴りまで感じ、ペーター少尉は軽い吐き気すら覚えた。
「……しかし、それが過去の話であるならば、今まさに目で見、手で触れるというのとは多少違うのではないでしょうか?その『御神木』とやらが霊験あらたかである、というのであればまた話は違いますが」
「おっしゃる通りです」
ペーター少尉のやや不躾な、疲れと不快感から来るやや配慮に欠けた質問にも、王子は微笑みを崩さずに応える。
「ですが、それは確かに実在し、手に触れる事も可能なのです。もちろん、みだりに『御神木』に手を触れようものなら、ひどい神罰を覚悟しなければなりません。この私とて、その神罰から逃れる事はかないません。それが故に『御神木』は『御神木』であり、『守り手』がそれを守るのです」
「守り手、ですか?」
ペーター少尉は、自分がうかつに『御神木』に手をのばした時の事を思い出す。あの時、その手を止めたのは……
「はい」
はっきりと大きく頷き、王子は明瞭に答えた。
「『御神木』の『守り手』、『貌の無い王』と『偉大なる諸神の母』より生まれし神の落とし子、生き神にして何人たりとも干渉し得ない仙女」
王子は目を閉じ、手を合わせ、軽く会釈し、そして改めて目を開けてから、言った。
「我らが母なる『赤の女王』その人です」
「赤の、女王……」
ペーター少尉は、その単語を思わず繰り返す。不可思議で、しかもこの都市には、いやこのチベットという地には不釣り合いな女性だとは思っていたが、まさかそれが……
「得心が、行きませんか?」
ペーター少尉の顔色からその心の中を読んだのだろう、王子が、ペーター少尉に聞く。
「はい、いえ、あの……はい。正直に申し上げるならば、私がお会いした、私がこの地を訪れた際にたまたまそこにいらしたとうかがっております『赤の女王』は、不思議な方とは思いましたが、そのような……」
言葉を探して一旦口ごもってから、ペーター少尉は言い直す。はっきり言うべきだ、そう決心して。
「先ほど王子がおっしゃられたような、地球人類と一線を画する別な何者かだとは、どうにも思えませんでした」
「その通りです。それこそが、『神』がこの地に下ろした神の落とし子、守り手の姿ですから。『神』はあまりに強大で偉大にして絶大、この地にその姿を全て現す事は困難です。故に、多くの場合でそのごく一部のみがこの世に顕現される。その一部とて、我々の知る物質、我々の知る化学物理学生物学の範疇になど収まりません。結果として、接触を求めた地球人類、ひ弱な精神と脆弱な肉体しか持たぬ彼らは、ほとんどの場合で破滅してしまいますが、それは『神』の本意ではありません。これを嘆かれた『神』は、可能な限り地球上の物質に似せた『化身の木』と、その木を守り、またその資格のある者にのみ木に触れる事を許す『守り手』、『諸神の母』の胎を経て受肉した地球人類の肉体に『貌の無い王』の精を受けその意思を持つ落とし子、『赤の女王』とはつまりそのような存在でありますれば、あなたがた地球人類との差異などわずかなものなのです」
「……なんと……」
あまりに荒唐無稽、あまりに飛躍したその話の内容に、ペーター少尉は驚嘆し、王子が『我々』ではなく『あなたがた』と言ったことに気付く、あるいは疑問を持つ余裕すら無かった。
「そのようなお方でありますれば、この都において『赤の女王』は至高の存在であり、それが故に我々『同胞団』の活動には干渉されませんし、我々『同胞団』も『赤の女王』のふるまいには何一つ干渉いたしません。幾多の歴史を見、幾多の人の、国の勃興と衰退を見てきたであろう『赤の女王』を、ごくまれに気にいった者をその側に置き、自らの英智の一部を授ける様をして、この地では『仙女』『西王母』と永く呼んできたとも聞いています」
「……では、仙人というのは……」
「最も最近では、仙人、つまり『西王母』の寵愛をいただいているのはドルマと、モーセス・グースです」
ペーター少尉の中で、無数にあって整理の仕様もなく混沌としていたいくつもの点のうちの、少なくとも三つが、線で繋がった。
何かが、腑に落ちた。ペーター少尉は、そう感じ、だからこそ、その二人の名を口にした際の王子の、ほんのわずかに口惜しげに歪んだ口角に気付く事は無かった。
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