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「そりゃあんた、誰がどう見ても、立派なスケバンってヤツだよ」
 あたしの悪友、紐織結奈ひもを ゆなはきっぱりと言い切った。

 自慢じゃないけれど、あたし、清滝巴きよたき ともえは、生徒会執行部風紀委員でも強面こわもてで通っている。自分からそう言って回ったわけじゃないけれど、そう言われている自覚はあるし、実際そう見えるだろうなとも思うから納得もしている。
 なので、今まで、男子の目なんて気にしたことは無かったんだけど。
 週明け二日目、火曜の昼食時。食堂で見かけた結奈に、あたしは聞いてみた。率直に言って、あたしのことを、周りはどう見ているのかって。昨日丸一日考えて、結局自分では答えが出せなかったから。

「背も高い、スタイルもまあ、出るとこ出てる……腹もだけど」
「うさい!」
「正直、素材は悪くないと思うけど。はっきり言うけど、その髪とスカートだよね。あと木刀」
 結奈は、歯に布着せるって事が無い。あたしの髪の色、地毛だけど栗色のそれと、長いスカートをずばずばと指摘する。
「ま、木刀は剣道部だしいいとしても、その髪型と目つきがね」
 どうもあたしは、何かっていうと木刀持ってうろついてるイメージがあるらしい。別に四六時中持ち歩いているわけじゃないけど、生徒会執行部の仕事中にごくたまに持って歩いてるから、それが印象強いんだろうか。
 それと、目つきは生まれつきこうなんだけど。髪型は、まあ、ある程度狙ってそうしてる事は認めるけど……
「あんた垂れ目で、そこにそんな茶髪のワンレンで。雰囲気がモロやり手のホステスなのよ」
 ド直球で真正面からそう言われ、あたしは返す言葉がない。
「……やっぱそれかー……仕方ないじゃない、こういう顔なんだから……」
 うどんをすすりながら、あたしは愚痴る。老け顔だって自覚はあるけど……
「ま、あたしはあんたのその顔、好きだけどね。にしても珍しいわね、泣く子も黙る鬼の風紀総番長、巴御前ともあろうあんたが。今更イメチェンでもしようっての?」
 嫌な二つ名をフルコースで並べて、結奈が聞く。イメチェンねぇ。そりゃ確かに、スカート丈とか演出の部分はある、けど、根本的にあたしは、絶望的なくらいミニスカートとか似合わない。一度、妹の服借りて着てみた――あたしには妹が二人居る――けど、鏡見て自己嫌悪で寝込みそうになった。だから、制服のスカート丈も短くする方には絶対、行かない。
「……あんたん所の新入りが、さぁ。ちょっかい出してくるからさぁ……」
 ぽろっと、あたしはこぼしてしまう。結奈には、割と平気で本音が出せる。
「あらぁ、巴御前に春が来たっての?」
「そんなんじゃないけど……」
 そういう事じゃ、ない。硬派を気取るわけじゃないけど、あたしにとって色恋沙汰は御法度。とは言っても、あたしだって、一応、女の子ではある。男子にちょっかい出されて、気にならないほど朴念仁でもない。
「……信仁しんじか」
 流石に、結奈は鋭い。
「でもあいつ、割と誰彼構わず声かけてるよ?それに、典型的な「仲良くなるけどその先に行かない」タイプと見たけど」
「は?なにそれ?」
「居るのよ、女子の話に混ざるの上手い男子って。多分あいつ、女兄弟居るんだと思うよ」
「そういうもの?」
「って、美羅みらが言ってた」
「ああ……」
 鑑美羅かがみ みらはあたしの悪友その2にして、生徒会庶務出納部のお局様かつ自称「学校の女王」だ。
「……まあ、男子の事は、美羅が言うなら確かか……そうだ、男子って言えば、あんたん所のもう一人の問題児はどうよ?」
寿三郎じゅざぶろうの事?あれ、一見めんどくさいけど、ただのツンデレだから割とチョロいよ?」
「……はい?」
「ま、あの二人、あたしに隠れてなんかコソコソ始めたから、そのうち尻尾掴んでとっちめてやるけど」
「わかった、まあいいわ。あいつらが上手くやってんなら」
 あたしは、最後に残した卵の黄身を割って、最後の一口のうどんに絡め、一気に片づける。
「ありがと結奈、じゃね」
「ん」
 空のどんぶりの載ったトレーを手に、あたしは結奈に礼を言って席を立った。
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