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第六章:金曜、それぞれの思惑、それぞれの決意
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……茉茉、お母さんを手伝って頂戴。お前のお友達に、起きてもらうの。いい?……
青葉五月は、見よう見まねで念をこらし、印を切り、呪を唱える。符籙は張果が用意したそのもの、手順も理屈もこれで間違いはない、その自信はある。道教の呪は、陰陽道のそれと密接に関係している。密教をベースに、陰陽術の使い勝手の良い所をちゃんぽんで会得している五月にとっては、この程度なら聞いた呪文をそっくり真似ることは造作もない。
「……勅到玩偶 好聴好看好動是神勅 急急如律令!」
それなりの念を込めて、呪を発する。発したはずだった。手応えは、あった。体の中を、強い念が通った感覚はあった。
だが、エータは動かない。エータの額に貼られた符籙を通じて念は伝わったが、エータの中に浸透せず、表面で弾かれた、そんな手応えだった。
……流石、いおりさんの傑作だけのことはあるわね……
額に汗し、肩で息をしつつ、五月は、自分の呪が通らなかったことより、それを軽く弾いたいおりのオートマータのセキュリティに素直に感心していた。
「……やはり動かぬか。じゃが、お前の術はなかなか堂に入っている。惜しいのう、今からでも遅くはない、気を替えてみんか?」
失敗する事を予想していたのか、張果は落胆した様子もなく、逆に一発で自分の術を真似て見せた五月の業前に感心するそぶりすら見せる。
「……あなたの技量は凄いと思う。けど、だからこそ、信念が相容れないわ。この術は有り難くもらっておくけど」
張果の方を向かず、顔を上気させた五月が答える。
「まあよい。いずれにしろお前に選択肢は無い……茉茉の力も少しは引き出せたのだろう?それを儂の役に立ててくれれば、儂としても助かるのだがな……」
まるで骸骨が笑ったらこんな感じだろう、そんな笑顔らしきものを、張果は五月に向ける。
「お前が自ら協力してくれる方がよいのだがな、脅したり、薬を使ったりでは力が削がれるでな……さて、そろそろ昼にしようかよ、粥しか用意出来んがな。まあ、いつでも気が変わったら言うが良かろう」
それだけ言って、張果は部屋を出た。葉法善も続く。
ドアに鍵がかかり、足音が鉄階段を下って離れ、聞こえなくなってから、五月は肘掛け椅子にどさりと崩れるように座る。
座って、体の芯に感じる不可思議な熱量の正体を探ろうと考える。
そこに、もしかしたら今のこの状況をひっくり返すヒントがあるかも知れないと、万に一つの希望をかけて。
茉茉の力を引き出す方法は、他にもあるかも知れないけど、大きく分けて二つ。茉茉を傷つけるか、茉茉にお願いするか。そして、傷つければ無条件に、お願いなら、茉茉が聞き届ければという条件付きだけど、体が触れている術者から幾ばくかの法力を吸い取り、茉茉はそれを増幅して術に載せる。とりあえず、そこまではわかった。
五月は、今の時点で理解出来たことから整理を始める。
そして、傷つけられた時、茉茉は反射的に手加減抜きで法力を奪う、自分を護るために。傷つける程度にもよるのだろうけれど、並の術者なら、五回、いや三回も吸われれば足腰立たなくなるでしょうね。そうすると、火曜の夜、車椅子で私の前に現れた時の張果は、茉茉を使って何らかの術を使った直後だったのね、何をしたのかは知らないけど。どうせろくな事じゃないだろうし。それに対して、お願いして力を貸してもらった時は、術者の消耗は遥かに小さいみたい。
五月は、さっきその身で実感した事を確認する。
そして、多分だけど、茉茉が力を貸すのはそこそこ希な事、何らかの条件に合う術者にしか力を貸さないのでしょうね。それが誰にでもに出来るんだったら、そもそも茉茉を傷つける必要は無いし、張果自身が車椅子に乗るほど消耗することもなかっただろうから。
であるならば。私は、どうやらその条件とやらに当てはまったみたいね……。
五月はそう思い、そして、その条件が何かを考える。
私が女だから?張果が「お母さん」として頼めと言ったのだから、それは恐らく必須の条件よね。それなりの法力を持つ術者である事ももちろん必要。けど、それだけならば、私にお鉢が回ってこなくても、張果なら裏社会から人材を調達出来たと思う。その程度には、張果は道士として優秀だもの。あれほどの道士なら、裏社会ではきっとそれなりに名前が通っているはずね、私の拝み屋仲間では聞いたことは無かったけど。
五月は、考えが行き詰まったのを感じる。自分と、それ以外の術者の違いがよく分からない。
……いや、あると言えば、あるわね……
五月は、普段は自分でも意識していないことを思い出した。
そうだ、私は、鬼になっちゃってたんだっけ。
……けど、その理屈だと、茉茉が力を貸すのは人ならざるもの、という事になるわね……可能性としてゼロじゃとは言えないけど、でも、かなり考えづらい事よね……
五月は、行き詰まっ考えを一旦ここで保留にして、もう一つ気になっている、この体の芯の違和感の方を考えることにした。なんとなれば、五月は、このような違和感を感じたのは初めてだったからだ。
確かに、術を成した直後に高揚を感じることは何度もあった。特に未熟なうちは、いや、今だってきっと師匠に言わせれば私は未熟なんだろうけど、今はよっぽどのことがない限り私は冷静に術を使えてるつもり、そのはず。
五月は、初めて感じるこの違和感を、正確に分析しようと努力する。
けど、今感じてるこれは違う。こんな違和感は今まで感じたことない。術が成功した時の高揚感とも、失敗した時の悔しさとも違う、未知の感覚。
……いや、違う。未知じゃない、感じた事はある。この、不安や寂しさ、人恋しさが募る感じと同時に感じる、温かいものが胸の中に染みこむ感じ。でも、それは……
五月は、混乱する。状況と感覚が一致しない。混乱しつつ、努めて冷静に、分析しようとする。そこに、この違和感の原因を知ることに、この状況を切り返す鍵があると信じて。
そもそも、何が原因で私はこの違和感を感じているんだろう?原因はともかく、きっかけははっきりしている、茉茉が手を貸してくれたから。張果がアイスピックを刺した時は、茉茉は私の法力を強引に奪い取った、大量に。けど今回は、吸う量も少ないし、それに……
五月は、ある事に気付き、立ち上がる。
茉茉、もう一度、ほんのちょっと、ほんのちょっとだけでいいから、お手伝いして頂戴。
心の中で茉茉に念じ、呼吸を整える。ほんの少しだけ念を練り、ものは試しと、慣れ親しんだ真言を唱える、エータに向けて。
「唵 阿謨伽 尾盧左曩 摩訶母捺囉 麼抳 鉢納麼 入嚩攞 鉢囉韈哆野 吽」
実際に明るさを感じる光球が出現したわけではない。しかし、目の善くない者であっても感じられるほどそれは強い輝きを放って、エータに掌を向けた五月の右手からエータの胸元へと宙を奔り、エータに吸い込まれた。
同時に五月は、まるで後押しするかのように肩や背中から優しく力が体に染み入り、五月の法力と混ざって茉茉に吸い込まれていくのを感じた。
……これだ。さっき感じたのも、やっぱりこれだ。つまり、これは……
五月は、想像以上に強い光明が発したことに驚きつつ、その力のわずかな一部が自分の体に残り、体の芯を火照らせているのを確認し、そしてその力の出所にも気付く。
この力の出所はこの道袍、いいえ、道袍はあくまで通り道で、その根源は……
五月は、羽織らされているボロボロの道袍を右手でさすりながら、鍵のかかった隣の「開かずの間」に目を向けた。
「何を、している?」
いつ、ドアの鍵を開けたのか。葉法善を伴った張果が、そこにいた。
青葉五月は、見よう見まねで念をこらし、印を切り、呪を唱える。符籙は張果が用意したそのもの、手順も理屈もこれで間違いはない、その自信はある。道教の呪は、陰陽道のそれと密接に関係している。密教をベースに、陰陽術の使い勝手の良い所をちゃんぽんで会得している五月にとっては、この程度なら聞いた呪文をそっくり真似ることは造作もない。
「……勅到玩偶 好聴好看好動是神勅 急急如律令!」
それなりの念を込めて、呪を発する。発したはずだった。手応えは、あった。体の中を、強い念が通った感覚はあった。
だが、エータは動かない。エータの額に貼られた符籙を通じて念は伝わったが、エータの中に浸透せず、表面で弾かれた、そんな手応えだった。
……流石、いおりさんの傑作だけのことはあるわね……
額に汗し、肩で息をしつつ、五月は、自分の呪が通らなかったことより、それを軽く弾いたいおりのオートマータのセキュリティに素直に感心していた。
「……やはり動かぬか。じゃが、お前の術はなかなか堂に入っている。惜しいのう、今からでも遅くはない、気を替えてみんか?」
失敗する事を予想していたのか、張果は落胆した様子もなく、逆に一発で自分の術を真似て見せた五月の業前に感心するそぶりすら見せる。
「……あなたの技量は凄いと思う。けど、だからこそ、信念が相容れないわ。この術は有り難くもらっておくけど」
張果の方を向かず、顔を上気させた五月が答える。
「まあよい。いずれにしろお前に選択肢は無い……茉茉の力も少しは引き出せたのだろう?それを儂の役に立ててくれれば、儂としても助かるのだがな……」
まるで骸骨が笑ったらこんな感じだろう、そんな笑顔らしきものを、張果は五月に向ける。
「お前が自ら協力してくれる方がよいのだがな、脅したり、薬を使ったりでは力が削がれるでな……さて、そろそろ昼にしようかよ、粥しか用意出来んがな。まあ、いつでも気が変わったら言うが良かろう」
それだけ言って、張果は部屋を出た。葉法善も続く。
ドアに鍵がかかり、足音が鉄階段を下って離れ、聞こえなくなってから、五月は肘掛け椅子にどさりと崩れるように座る。
座って、体の芯に感じる不可思議な熱量の正体を探ろうと考える。
そこに、もしかしたら今のこの状況をひっくり返すヒントがあるかも知れないと、万に一つの希望をかけて。
茉茉の力を引き出す方法は、他にもあるかも知れないけど、大きく分けて二つ。茉茉を傷つけるか、茉茉にお願いするか。そして、傷つければ無条件に、お願いなら、茉茉が聞き届ければという条件付きだけど、体が触れている術者から幾ばくかの法力を吸い取り、茉茉はそれを増幅して術に載せる。とりあえず、そこまではわかった。
五月は、今の時点で理解出来たことから整理を始める。
そして、傷つけられた時、茉茉は反射的に手加減抜きで法力を奪う、自分を護るために。傷つける程度にもよるのだろうけれど、並の術者なら、五回、いや三回も吸われれば足腰立たなくなるでしょうね。そうすると、火曜の夜、車椅子で私の前に現れた時の張果は、茉茉を使って何らかの術を使った直後だったのね、何をしたのかは知らないけど。どうせろくな事じゃないだろうし。それに対して、お願いして力を貸してもらった時は、術者の消耗は遥かに小さいみたい。
五月は、さっきその身で実感した事を確認する。
そして、多分だけど、茉茉が力を貸すのはそこそこ希な事、何らかの条件に合う術者にしか力を貸さないのでしょうね。それが誰にでもに出来るんだったら、そもそも茉茉を傷つける必要は無いし、張果自身が車椅子に乗るほど消耗することもなかっただろうから。
であるならば。私は、どうやらその条件とやらに当てはまったみたいね……。
五月はそう思い、そして、その条件が何かを考える。
私が女だから?張果が「お母さん」として頼めと言ったのだから、それは恐らく必須の条件よね。それなりの法力を持つ術者である事ももちろん必要。けど、それだけならば、私にお鉢が回ってこなくても、張果なら裏社会から人材を調達出来たと思う。その程度には、張果は道士として優秀だもの。あれほどの道士なら、裏社会ではきっとそれなりに名前が通っているはずね、私の拝み屋仲間では聞いたことは無かったけど。
五月は、考えが行き詰まったのを感じる。自分と、それ以外の術者の違いがよく分からない。
……いや、あると言えば、あるわね……
五月は、普段は自分でも意識していないことを思い出した。
そうだ、私は、鬼になっちゃってたんだっけ。
……けど、その理屈だと、茉茉が力を貸すのは人ならざるもの、という事になるわね……可能性としてゼロじゃとは言えないけど、でも、かなり考えづらい事よね……
五月は、行き詰まっ考えを一旦ここで保留にして、もう一つ気になっている、この体の芯の違和感の方を考えることにした。なんとなれば、五月は、このような違和感を感じたのは初めてだったからだ。
確かに、術を成した直後に高揚を感じることは何度もあった。特に未熟なうちは、いや、今だってきっと師匠に言わせれば私は未熟なんだろうけど、今はよっぽどのことがない限り私は冷静に術を使えてるつもり、そのはず。
五月は、初めて感じるこの違和感を、正確に分析しようと努力する。
けど、今感じてるこれは違う。こんな違和感は今まで感じたことない。術が成功した時の高揚感とも、失敗した時の悔しさとも違う、未知の感覚。
……いや、違う。未知じゃない、感じた事はある。この、不安や寂しさ、人恋しさが募る感じと同時に感じる、温かいものが胸の中に染みこむ感じ。でも、それは……
五月は、混乱する。状況と感覚が一致しない。混乱しつつ、努めて冷静に、分析しようとする。そこに、この違和感の原因を知ることに、この状況を切り返す鍵があると信じて。
そもそも、何が原因で私はこの違和感を感じているんだろう?原因はともかく、きっかけははっきりしている、茉茉が手を貸してくれたから。張果がアイスピックを刺した時は、茉茉は私の法力を強引に奪い取った、大量に。けど今回は、吸う量も少ないし、それに……
五月は、ある事に気付き、立ち上がる。
茉茉、もう一度、ほんのちょっと、ほんのちょっとだけでいいから、お手伝いして頂戴。
心の中で茉茉に念じ、呼吸を整える。ほんの少しだけ念を練り、ものは試しと、慣れ親しんだ真言を唱える、エータに向けて。
「唵 阿謨伽 尾盧左曩 摩訶母捺囉 麼抳 鉢納麼 入嚩攞 鉢囉韈哆野 吽」
実際に明るさを感じる光球が出現したわけではない。しかし、目の善くない者であっても感じられるほどそれは強い輝きを放って、エータに掌を向けた五月の右手からエータの胸元へと宙を奔り、エータに吸い込まれた。
同時に五月は、まるで後押しするかのように肩や背中から優しく力が体に染み入り、五月の法力と混ざって茉茉に吸い込まれていくのを感じた。
……これだ。さっき感じたのも、やっぱりこれだ。つまり、これは……
五月は、想像以上に強い光明が発したことに驚きつつ、その力のわずかな一部が自分の体に残り、体の芯を火照らせているのを確認し、そしてその力の出所にも気付く。
この力の出所はこの道袍、いいえ、道袍はあくまで通り道で、その根源は……
五月は、羽織らされているボロボロの道袍を右手でさすりながら、鍵のかかった隣の「開かずの間」に目を向けた。
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