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EP.2 時計の精

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今日は12月31日、大晦日。私の親はよふかししてお酒を飲むらしい。
「私はまだ子供だから」ともう寝るように言われた。けどまだ眠くない、0時まで起きてやろう。

眠れない日私は決まって時計を眺める。チクタク、チクタクとなる時計をね。

秒針はグルグルと回り続け長針の方はゆっくりと12の数字へ向かう。いつもどうりだ。私は少しウトウトしながら時計を見つめた。

私がもうほとんど目をつぶり眠ろうとしていた瞬間、時計は眩く光り私を包み込んだ。

眩しさから閉じた目を再び開いた時、そこにはチョビ髭の目立つおじさんが居た。
「やぁ、僕は時計。」その男は確かにそう言った。
「時計?」

「あぁ付喪神さ。私は今日で作られて100年目、それでもっておかげで私は魂を受けた。」時計は淡々とそう言った。
「そうなんだ。本当に付喪神なんてものが居たんだ。。」

「寒くないのか?」時計は言った。

「お布団に入っているから大丈夫よ。」
 
「ご飯は食べたのかい?」時計は心配そうに言う。
「さっき食べたよ。おかあさんと一緒にね。」

「お母さんとか…そうかい。なら良かった。」時計はそう言ってしばらく私を見つめたあと再び口を開いた。

「僕は君を救ってあげたいんだ。今から君にいくつかの人生を見せる。好きな人生を選んでくれ!」

「先の事なんて私にはまだ分からないよ。」

「頼む。もう時間が無いんだよ。」時計は鬼気迫った顔でそう言うと私の手を握った。するとなんだか目の前が白くなっていき最終的に真っ白で何も無い空間になった。
「もう1つの人生を見せる。」そう言うと白い空間に徐々に色が付いていった。



小学生の頃 ドラマで医者に興味を持った君は物凄く努力をし大学を経て医療の仕事に就く。収入もかなり安定しているが結婚は一生できない。

この人生はどうだい?

「私に努力なんて出来ないわ。疲れてしまう。」


ならこれならどうだろう。


君は高校生の頃知り合った彼氏と24で結婚する。お互い収入は良くなくかなり苦労するだろうが二人の子供に恵まれた。


「育児は私に向いていない。子供を持っていいわけがない。」


ならば!これは!!


君は演技の道に入る!そして若くして売れそこから国民的スターさ!!これ以上はない!
素晴らしい人生だぞ!!

「スターか……憧れるね。だけど私には合わない。」

な、なんで……

「私は別に今までの人生に後悔はしていない。凄く辛くて苦労もしたけど楽しいこともあった。」

 そうなのか。


気がつくと辺りは公園に戻っていた。

「もう私のために頑張らなくてもいいのよ時計。あなたのせいじゃない。」

「だがしかし……」時計は悲しげな顔をしていた。

「せめて……最後の夜も君と共に居させてくれ。」時計はそう言うと人間のような姿から機会の時計に戻った。古いおんぼろの時計だ。

私はそれを抱き抱えると再びベンチへ横たわった。お母さんはまだお酒を飲んでテレビを見ているのかな。

なんだかいつもよりもまぶたが重い。随分と夜更かしをしてしまった。

「おやすみ時計。」  さっきまで冷たく感じたベンチの感触がなんだか暖かく感じた。


EP.2  時計の精 終わり。
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