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9章 二人の航海
アースの書~航海・4~
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どうしてなんだ?
直しても直しても同じ場所が凹むのは……。
何かの呪いでもかかっているのではないだろうか。
もはやそうとしか考えられん。
「え~と……その……なんというか……」
俺が頭を気にしているのを見たソフィーナさんが言いよどんでいる。
その気持ちはわかる、俺がソフィーナさんの立場なら同じ様になるだろうな。
「……あ、あノ……ア……アース……様……」
俺の中から弱々しいラティアの声が聞こえてきた。
おっとそうだ、ソフィーナさんとの会話の為にラティアを連れて来たんだった。
頭の事で衝撃ですっかり忘れていた。
この状況をちゃんと話しておかないといけないな。
『ああ、すまん。ソフィーナさんがこの船に乗――』
「……そう……でス……」
……ん? 今なんて言ったんだろう。
ラティアの声が小さくてよく聞こえな――。
「…………うぷッ!」
っ!
何を言っていたのか、今ので全部わかった!!
『ちょっちょっと我慢してくれ!』
俺は急いで自分御頭を外し、甲板の手すりまで走った。
そして海に向かってラティアの頭を出した。
「オロロロ~」
と同時にラティアの胃の中の物が海に向かって発射された。
調子が悪いのに無理やり動かしたからこうなっちゃうのは当たり前だよな。
これはラティアには可愛そうな事をしてしまった。
そう考えると、大人しく部屋で隠れていた方が良かったかもしれん。
「あ~なるほど……ずっと無口だったのは船酔いをしていたせいだったんですね」
ソフィーナさんが俺達の傍に寄って来て背中をさすってくれた。
本当はそうじゃないけど、そういう事にしておこう。
ただ、俺の体の部分をさすっても意味がないんだけども……。
「……あウ……うッ……オロロロ~」
「それにしても、よくもまあこんな状態なのにあれだけ動けましたね……」
あの時は中身がいませんでしたから。
「今といい高熱を出した時といい……まるで鎧に意思があって、アイリスさんとは別に動いている様だわ」
うぐっ! 流石に怪しまれてしまったか。
誤魔化そうにもラティアがこの状態だし……これは困ったぞ。
「なんて、そんな馬鹿な事があるわけないか。高熱を出した時は自覚してない感じだったし、今回もクラーケンを相手にして船酔いどころじゃなかったものね」
よっ良かった。
よくわからないが自己完結してくれたようだ。
うーん、これからはもっと注意深くして行動しないといけないな。
「オロロロロ~」
というか、さっきからラティアがまずいな。
この状態だと下手に動かせないし……。
「えと……部屋に戻りますか? それともここに……」
「オロロロロ~……」
「……今は動かさない方が良さそうですね……」
の方が良さそうです。
結局ソフィーナさんはラティアが落ち着くまで傍についていてくれたのだった。
◇◆アース歴9年 7月19日◇◆
その後クラーケンが再び襲って来る事もなく、俺達は無事に北の大陸の港町ザレスへ到着した。
『ここが北の大陸か……』
この大陸のどこかにオリバーがいるのか。
俺は窓から見える景色を見つつ、爺さんに渡された石を取り出した。
改めて見てもやっぱりただの石にしか見えないな……。
あいつはこの石をどうするつもりなんだろうか。
「お待たせしました! ザレスに到着です! 下船の際、お荷物のお忘れない様にお気を付けくださいね!」
船長の声が船内に響き渡る。
俺はすぐには出ず、扉を少し開け通路の様子を見る事にした。
少し経つと、ソフィーナさんがジョンさんを背負って甲板へ向かって行った。
『……行ったみたいだな』
挨拶をしないのはどうかとは思うが……。
「……うウ……」
「……うう……」
ベッドの上で寝込んでいるこの2人。
この状態でソフィーナさんと鉢合わせすると、また面倒な事になりそうだしな。
こればかりは仕方ない。
『とはいえ、俺達も船から降りないとな』
俺はラティアを自分の中に入れ、エイラを背負って甲板へ向かった。
「乗船ありがとうございましたー! またご利用宜しくお願いしまーす!」
「お願いしまーす!」
甲板に出ると、頭に包帯を巻いた船長と副船長が笑顔で見送ってくれた。
もうこの船に乗る事は無いだろう……いや、あってたまるか。
そう固く決意し、俺は船を降りた。
『とうとう着いたな!』
北の大地に足を付けると、なんかこう新天地! って感じで気分が高まるな。
「うう……船から……降りたのに……まだ……揺れてる……感覚がするんだけど……」
「私モ……でス……」
『……』
今の2人はそれどころではないらしい。
『陸酔いって奴だな……船から降りても、しばらくは体が揺れている感覚が残るんだよ』
こればかりは自然に治るのを待つしかない。
「ええ……そんな……せっかく……船から……降りれたのに……」
エイラが半泣き状態になってしまっている。
まぁそうなるよな。
「…………」
一方ラティアは俺の中に居るから表情が見えない。
ただ、恐らくエイラみたいになっているだろう。
『……仕方ないか。少しこの辺りで休もう』
流石にこの状態でリックに向かうのは酷だよな。
結局、オリバーがいると思われるリックに着いたのは半日後になるのだった。
直しても直しても同じ場所が凹むのは……。
何かの呪いでもかかっているのではないだろうか。
もはやそうとしか考えられん。
「え~と……その……なんというか……」
俺が頭を気にしているのを見たソフィーナさんが言いよどんでいる。
その気持ちはわかる、俺がソフィーナさんの立場なら同じ様になるだろうな。
「……あ、あノ……ア……アース……様……」
俺の中から弱々しいラティアの声が聞こえてきた。
おっとそうだ、ソフィーナさんとの会話の為にラティアを連れて来たんだった。
頭の事で衝撃ですっかり忘れていた。
この状況をちゃんと話しておかないといけないな。
『ああ、すまん。ソフィーナさんがこの船に乗――』
「……そう……でス……」
……ん? 今なんて言ったんだろう。
ラティアの声が小さくてよく聞こえな――。
「…………うぷッ!」
っ!
何を言っていたのか、今ので全部わかった!!
『ちょっちょっと我慢してくれ!』
俺は急いで自分御頭を外し、甲板の手すりまで走った。
そして海に向かってラティアの頭を出した。
「オロロロ~」
と同時にラティアの胃の中の物が海に向かって発射された。
調子が悪いのに無理やり動かしたからこうなっちゃうのは当たり前だよな。
これはラティアには可愛そうな事をしてしまった。
そう考えると、大人しく部屋で隠れていた方が良かったかもしれん。
「あ~なるほど……ずっと無口だったのは船酔いをしていたせいだったんですね」
ソフィーナさんが俺達の傍に寄って来て背中をさすってくれた。
本当はそうじゃないけど、そういう事にしておこう。
ただ、俺の体の部分をさすっても意味がないんだけども……。
「……あウ……うッ……オロロロ~」
「それにしても、よくもまあこんな状態なのにあれだけ動けましたね……」
あの時は中身がいませんでしたから。
「今といい高熱を出した時といい……まるで鎧に意思があって、アイリスさんとは別に動いている様だわ」
うぐっ! 流石に怪しまれてしまったか。
誤魔化そうにもラティアがこの状態だし……これは困ったぞ。
「なんて、そんな馬鹿な事があるわけないか。高熱を出した時は自覚してない感じだったし、今回もクラーケンを相手にして船酔いどころじゃなかったものね」
よっ良かった。
よくわからないが自己完結してくれたようだ。
うーん、これからはもっと注意深くして行動しないといけないな。
「オロロロロ~」
というか、さっきからラティアがまずいな。
この状態だと下手に動かせないし……。
「えと……部屋に戻りますか? それともここに……」
「オロロロロ~……」
「……今は動かさない方が良さそうですね……」
の方が良さそうです。
結局ソフィーナさんはラティアが落ち着くまで傍についていてくれたのだった。
◇◆アース歴9年 7月19日◇◆
その後クラーケンが再び襲って来る事もなく、俺達は無事に北の大陸の港町ザレスへ到着した。
『ここが北の大陸か……』
この大陸のどこかにオリバーがいるのか。
俺は窓から見える景色を見つつ、爺さんに渡された石を取り出した。
改めて見てもやっぱりただの石にしか見えないな……。
あいつはこの石をどうするつもりなんだろうか。
「お待たせしました! ザレスに到着です! 下船の際、お荷物のお忘れない様にお気を付けくださいね!」
船長の声が船内に響き渡る。
俺はすぐには出ず、扉を少し開け通路の様子を見る事にした。
少し経つと、ソフィーナさんがジョンさんを背負って甲板へ向かって行った。
『……行ったみたいだな』
挨拶をしないのはどうかとは思うが……。
「……うウ……」
「……うう……」
ベッドの上で寝込んでいるこの2人。
この状態でソフィーナさんと鉢合わせすると、また面倒な事になりそうだしな。
こればかりは仕方ない。
『とはいえ、俺達も船から降りないとな』
俺はラティアを自分の中に入れ、エイラを背負って甲板へ向かった。
「乗船ありがとうございましたー! またご利用宜しくお願いしまーす!」
「お願いしまーす!」
甲板に出ると、頭に包帯を巻いた船長と副船長が笑顔で見送ってくれた。
もうこの船に乗る事は無いだろう……いや、あってたまるか。
そう固く決意し、俺は船を降りた。
『とうとう着いたな!』
北の大地に足を付けると、なんかこう新天地! って感じで気分が高まるな。
「うう……船から……降りたのに……まだ……揺れてる……感覚がするんだけど……」
「私モ……でス……」
『……』
今の2人はそれどころではないらしい。
『陸酔いって奴だな……船から降りても、しばらくは体が揺れている感覚が残るんだよ』
こればかりは自然に治るのを待つしかない。
「ええ……そんな……せっかく……船から……降りれたのに……」
エイラが半泣き状態になってしまっている。
まぁそうなるよな。
「…………」
一方ラティアは俺の中に居るから表情が見えない。
ただ、恐らくエイラみたいになっているだろう。
『……仕方ないか。少しこの辺りで休もう』
流石にこの状態でリックに向かうのは酷だよな。
結局、オリバーがいると思われるリックに着いたのは半日後になるのだった。
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