59 / 75
8章 二人の病気と看病
アースの書・レインの書~病気と看病・4~
しおりを挟む こんど伶莉さまに寝かされたところは、からだが沈みこむくらいふかふかしていた。
背中がやわらかくてあたたかくって、触れてるところから幸せになる。
ただ寝ているだけで心地いい。ごろごろところがって幸せをあじわう。
「そんなに綿布団が気に入ったか」
「うん! だってこんなふかふかなところで寝たことないよ」
「ノノが気に入ったのなら良かった。だが、少々妬けるな」
「うん?」
伶莉さまの顔がだんだんと近づいてきて大きくなる。
はずかしくなって目を閉じた。
またくちびるを、吸われる。
「ん……!」
くちびるだけじゃなくって伶莉さまの体も、かぶさってくる。
背中はふかふか、上は伶莉さまにはさまれて、しあわせすぎるよ……!
ふかふかの上にねころがって落ちついてきてたのに、また体がきゅんときてふるふるっとそれを流した。
「調子はどうだ?」
「ふかふか……」
だって背中がすっごい気持ちよくってそれしか考えらんない。
それしか、でもない。
伶莉さまと重なると、まだ兄から飲まされたものが効いてるのが、うずうずとして分かる。
まだ、あつい──
「調子はいいと受け取っておく」
伶莉さまがゆっくりとわたしの髪を梳く。
まだ濡れてておもたい髪の間に指を通されるのがくすぐったい。
とんとんと肩をたたいてくれるのも、おちつくようでおちつかなかったりもする。
そしたら、襦袢の足のあいだを割られてびっくりする。
薄目をあけてみる。伶莉さまのお顔立ちに美しいだけじゃなく熱がこもっているのにどきどきとして、また閉じた。
「はっ」
さっきも触れられた敏感なところを伶莉さまにまた指でなぞられ、思わず腰をひく。
ふかふかな綿布団にすこしおしりが沈むけど、それでもぜんぜん伶莉さまからは逃げられない。
いちど伶莉さまにほぐされたところは、すぐにずぶずぶとその指を受け入れてしまう。
「伶莉さま……っ」
「そのままでいい」
そのままじゃなくて、胸のあいだも広げられてその先も吸いだされる。
伶莉さまに愛でられたところはすぐにさっきのことを思いだしたように敏感に感じてしまう。
「ん……はぁ、伶莉さまぁ、からだ、変、です、っ」
「慣れないかもしれないが、大丈夫だ。ノノにおかしいところはない」
「わたし、わたし……、おかしくないです、か?」
「ああ」
さすさすと肩から二の腕までをなでられるとちょっと安心する。
でも熱いのはどうしようもなくて、ほぐされたわたしのなかはぐしょぐしょに溶けていた。
「少し痛いかもしれないが、少しだけだからこらえて欲しい。我の愛するノノと一つになりたい」
「……はい」
ちょっと不安を感じたけど、いやとは言えなかった。
伶莉さまの体に腕まわしてると、すこしだけ落ち着いた。
すると足のあいだに、指よりもっと熱くて大きいものが添えられる。
ずぶずぶと、入ってくる──
伶莉さまと一つになってく感覚が持てて、入ってくるぶんまでは我慢できた。
だけど全部入りきってもそこで止まって、痛みが抜けない。
こらえるけどこらえきれなくって、伶莉さまにうったえてしまう。
まだ我慢できたけど、伶莉さまには聞きたくって、うったえてしまう。
「ぃたい、いたいです、伶莉さま……!」
「すまない。少し痛みが安らぐから、ゆっくり体の力を抜いて欲しい」
体の痛みだけだったらまだもうすこし、我慢できた。
けど、痛いのはそれだけのせいじゃない──
「伶莉さまもわたしのこと痛くしたい? とろいから? 頭悪いから? ううん、痛くしたいならいいんです。けど」
(痛いのは慣れてるもんね)
お兄ちゃんたちと一緒だし、それよりはいいかもしれない。
あきらめがつくと気が抜けて、すこし痛いのが楽になる。
「大事なノノにはできるだけ痛くないようにしたかった。我の手違いだ。すまない、すぐ痛みが和らぐようにする」
「ううん、いいんで」
答えきる間もなく口をふさがれた。
舌をいれられることにだってびくっとしてしまう。
けど、舌どうしを絡ませられると胸がぽうっとしてくる。
伶莉さまとわたしの口のなかが混ざりあうと、舌の気持ちいいので繋がってるところもすこし気持ちよく感じてくる、ような気がした。
口づけられながら、小さい子がしてもらうみたいに頭なでられる。
ゆっくりゆっくりなでられると気持ちよくって、痛いのがすこしずつ気にならなくなる。
(伶莉さまは、兄たちとはちがう……)
口のまわりべたべたするくらいいっぱいすると、痛いのはこらえきれるくらいになった。
それより、かすかに伶莉さまが動くときに感じるつんとした気持ちよさに甘い期待がこみあげてくる──
けど唇がはなれて、すこしさびしくなってそのあとにつたう銀色の線を見上げてしまう。
「大丈夫か? ノノ」
大丈夫じゃない気もするし、もう少し感じてみたい気もしてしまう。
でもどっちの返事も、していいものなのかなって迷う。
「伶莉さま、どうすればいい?」
「ノノはそのままでいい。また痛みが酷かったら教えてくれ」
(また口くっつけて欲しいな……)
そんなふうにぽーっと見あげてたら、また伶莉さまの唇が降ってきて重なる。
唇だけじゃなくって、わたしのなかの伶莉さま自身もゆっくり小さく動きだす。
「あ……う……んふっ……ん、ん……!」
伶莉さまに広げられてると、まだ少し痛む。
でも違和感より、つながってるしあわせのほうがずっと大きい。
「善くなったようだな。誠に可愛らしい」
口つなぎ頭なでられる。
おちつくのに、でもなかの伶莉さまを感じさせられてどうしようもない気持ちがあふれてくる。
お湯の池とちがって部屋中静かで、伶莉さまのうごきが速くなるにつれてはずかしい音も耳に流れてくる……!
「ん……! は……っ、あ、あぁ……ん……そこ、へん……!」
「おかしくしている。もっと乱れたノノを見せてくれ」
どうすればよいのかわかんなくって、それはわかんない。
でも伶莉さまは今のままでいいんだってことだけ分かって、それでほっとする。
確かめるように、腕まわしなおした。
伶莉さまの背中広くて、なかなか手は合わさらない。
「ん、ぁ、あぁ、はい……!」
伶莉さまがわたしのなかにいるのが、こすれる感覚でも耳にながれこんでくる水音でもわかってしまう。
おかしいのがわたしだけじゃなくって、伶莉さまの息も乱れてるのがきこえてくる。
それも一緒なのが、きもちいい──
「ノノ……ッ! 夢中になってしまっているが、平気か」
「ううん、もうへいき。……や、ん……ぁっ……ね、伶莉さまぁ」
「なんだ?」
「名前、呼んでくれるのうれしくて……ん、ぁ……ん……ん、んぅ……」
お前とかそれとかじゃなくて、ノノって呼んでもらえるのがうれしい。
それも伶莉さまの雄々しい声で呼ばれると、耳からだってきゅんきゅんしてくるしくなっちゃう。
「ノノ……ぐ……! ノノ、ノノ」
「あぅ……ん、んん……! ん、伶莉さま、んん、んんぅ……!」
引き抜かれたり奥まで満たされたりって、怜悧さまとの繋がりはめまぐるしく変わる。
一つじゃないから触れ合う感覚があるのに、でもこすれあうともっと一つになってるように感じる。
しあわせで目からなみだがこぼれてきた。
唇がはなれてさびしくなって見あげる。
そしたら急に目尻のなみだをなめとられてびっくりする。
「やぁ……ん……やんっ!」
怜悧さまの動きがしだいに速くなって体がくがくってなる。
けど背中がふかふかにはねかえされて、体じゅう怜悧さまと一つになってしあわせがあふれてくる。
しあわせすぎて、おかしくなる──
「や、あ、あ、伶莉さま、おかしくなる、おかしくなっちゃうよ、あっ、あっ!」
「そのまま身を任せろ。ノノ、く……いけ」
「あ、う……あ、ああ、や」
体じゅうにしあわせがどっとあふれる──
伶莉さまにつながりをほどかれる。
ちいさなうめき声。おへその下にお湯より熱いものがかけられるのを、感じた。
熱が抜けると、兄に飲まされてから体おかしかったのも治ってた。
* * *
お嫁さんになったわたしは、なにもない日に伶莉さまとごろごろしてた!
人の姿をとると疲れるのか、伶莉さまはよく前みたいなキツネ姿で寝ている。今もね。
「もふもふ気持ちいいー!」
ぎゅうーと抱きしめると、ふさふさの毛が肌をなでる。
手入れのゆきとどいたキツネっ毛は、服の上からだって肌に直接あたるところだってきもちいい。
すりすりってしあわせを味わう。
「襲うぞ」
伶莉さまが不機嫌そうにふりむく。
ほんとはキツネ姿だって人の言葉もしゃべれるんだよ伶莉さま。
「いいよ」
「ん?」
顔近づけてくるからもう一回言う。
「おそってもいいよ。怜悧さまにおそわれるのはしあわせだから」
そう言って目とじて、自分のくちびるをつんと人差し指でついた。
「ここ。おそって?」
怜悧さまはぎゅうって抱きしめてても器用にくるんと体をわたし側に返す。
怜悧さまがひっくり返るときにもふもふの毛がこすれるのだって、とっても気持ちいい……!
向かい合うとくちびるをつん、と怜悧さまのくちびるで突かれた。
うん。しあわせだねっ!
「今日は霧も出てないし呼吸法の修練には丁度佳い。起きるぞ」
「ねむいよ……」
「愛するノノが山を飛び降りても気圧差に耐えられる程度の呼吸法を覚えてくれないと、我も下界に降りられん。ノノは離せないからな」
そういってやり返すみたいに体抱かれるから、どきりとしてしまう。すこし目が覚めた。
怜悧さまはすかさずわたしの体を起こしてくる。
「もう! ばか! 大好き!」
そしたらまた、うるさくした口をふさがれた。
静かにゆっくりと、重ねられていた。
(終)
背中がやわらかくてあたたかくって、触れてるところから幸せになる。
ただ寝ているだけで心地いい。ごろごろところがって幸せをあじわう。
「そんなに綿布団が気に入ったか」
「うん! だってこんなふかふかなところで寝たことないよ」
「ノノが気に入ったのなら良かった。だが、少々妬けるな」
「うん?」
伶莉さまの顔がだんだんと近づいてきて大きくなる。
はずかしくなって目を閉じた。
またくちびるを、吸われる。
「ん……!」
くちびるだけじゃなくって伶莉さまの体も、かぶさってくる。
背中はふかふか、上は伶莉さまにはさまれて、しあわせすぎるよ……!
ふかふかの上にねころがって落ちついてきてたのに、また体がきゅんときてふるふるっとそれを流した。
「調子はどうだ?」
「ふかふか……」
だって背中がすっごい気持ちよくってそれしか考えらんない。
それしか、でもない。
伶莉さまと重なると、まだ兄から飲まされたものが効いてるのが、うずうずとして分かる。
まだ、あつい──
「調子はいいと受け取っておく」
伶莉さまがゆっくりとわたしの髪を梳く。
まだ濡れてておもたい髪の間に指を通されるのがくすぐったい。
とんとんと肩をたたいてくれるのも、おちつくようでおちつかなかったりもする。
そしたら、襦袢の足のあいだを割られてびっくりする。
薄目をあけてみる。伶莉さまのお顔立ちに美しいだけじゃなく熱がこもっているのにどきどきとして、また閉じた。
「はっ」
さっきも触れられた敏感なところを伶莉さまにまた指でなぞられ、思わず腰をひく。
ふかふかな綿布団にすこしおしりが沈むけど、それでもぜんぜん伶莉さまからは逃げられない。
いちど伶莉さまにほぐされたところは、すぐにずぶずぶとその指を受け入れてしまう。
「伶莉さま……っ」
「そのままでいい」
そのままじゃなくて、胸のあいだも広げられてその先も吸いだされる。
伶莉さまに愛でられたところはすぐにさっきのことを思いだしたように敏感に感じてしまう。
「ん……はぁ、伶莉さまぁ、からだ、変、です、っ」
「慣れないかもしれないが、大丈夫だ。ノノにおかしいところはない」
「わたし、わたし……、おかしくないです、か?」
「ああ」
さすさすと肩から二の腕までをなでられるとちょっと安心する。
でも熱いのはどうしようもなくて、ほぐされたわたしのなかはぐしょぐしょに溶けていた。
「少し痛いかもしれないが、少しだけだからこらえて欲しい。我の愛するノノと一つになりたい」
「……はい」
ちょっと不安を感じたけど、いやとは言えなかった。
伶莉さまの体に腕まわしてると、すこしだけ落ち着いた。
すると足のあいだに、指よりもっと熱くて大きいものが添えられる。
ずぶずぶと、入ってくる──
伶莉さまと一つになってく感覚が持てて、入ってくるぶんまでは我慢できた。
だけど全部入りきってもそこで止まって、痛みが抜けない。
こらえるけどこらえきれなくって、伶莉さまにうったえてしまう。
まだ我慢できたけど、伶莉さまには聞きたくって、うったえてしまう。
「ぃたい、いたいです、伶莉さま……!」
「すまない。少し痛みが安らぐから、ゆっくり体の力を抜いて欲しい」
体の痛みだけだったらまだもうすこし、我慢できた。
けど、痛いのはそれだけのせいじゃない──
「伶莉さまもわたしのこと痛くしたい? とろいから? 頭悪いから? ううん、痛くしたいならいいんです。けど」
(痛いのは慣れてるもんね)
お兄ちゃんたちと一緒だし、それよりはいいかもしれない。
あきらめがつくと気が抜けて、すこし痛いのが楽になる。
「大事なノノにはできるだけ痛くないようにしたかった。我の手違いだ。すまない、すぐ痛みが和らぐようにする」
「ううん、いいんで」
答えきる間もなく口をふさがれた。
舌をいれられることにだってびくっとしてしまう。
けど、舌どうしを絡ませられると胸がぽうっとしてくる。
伶莉さまとわたしの口のなかが混ざりあうと、舌の気持ちいいので繋がってるところもすこし気持ちよく感じてくる、ような気がした。
口づけられながら、小さい子がしてもらうみたいに頭なでられる。
ゆっくりゆっくりなでられると気持ちよくって、痛いのがすこしずつ気にならなくなる。
(伶莉さまは、兄たちとはちがう……)
口のまわりべたべたするくらいいっぱいすると、痛いのはこらえきれるくらいになった。
それより、かすかに伶莉さまが動くときに感じるつんとした気持ちよさに甘い期待がこみあげてくる──
けど唇がはなれて、すこしさびしくなってそのあとにつたう銀色の線を見上げてしまう。
「大丈夫か? ノノ」
大丈夫じゃない気もするし、もう少し感じてみたい気もしてしまう。
でもどっちの返事も、していいものなのかなって迷う。
「伶莉さま、どうすればいい?」
「ノノはそのままでいい。また痛みが酷かったら教えてくれ」
(また口くっつけて欲しいな……)
そんなふうにぽーっと見あげてたら、また伶莉さまの唇が降ってきて重なる。
唇だけじゃなくって、わたしのなかの伶莉さま自身もゆっくり小さく動きだす。
「あ……う……んふっ……ん、ん……!」
伶莉さまに広げられてると、まだ少し痛む。
でも違和感より、つながってるしあわせのほうがずっと大きい。
「善くなったようだな。誠に可愛らしい」
口つなぎ頭なでられる。
おちつくのに、でもなかの伶莉さまを感じさせられてどうしようもない気持ちがあふれてくる。
お湯の池とちがって部屋中静かで、伶莉さまのうごきが速くなるにつれてはずかしい音も耳に流れてくる……!
「ん……! は……っ、あ、あぁ……ん……そこ、へん……!」
「おかしくしている。もっと乱れたノノを見せてくれ」
どうすればよいのかわかんなくって、それはわかんない。
でも伶莉さまは今のままでいいんだってことだけ分かって、それでほっとする。
確かめるように、腕まわしなおした。
伶莉さまの背中広くて、なかなか手は合わさらない。
「ん、ぁ、あぁ、はい……!」
伶莉さまがわたしのなかにいるのが、こすれる感覚でも耳にながれこんでくる水音でもわかってしまう。
おかしいのがわたしだけじゃなくって、伶莉さまの息も乱れてるのがきこえてくる。
それも一緒なのが、きもちいい──
「ノノ……ッ! 夢中になってしまっているが、平気か」
「ううん、もうへいき。……や、ん……ぁっ……ね、伶莉さまぁ」
「なんだ?」
「名前、呼んでくれるのうれしくて……ん、ぁ……ん……ん、んぅ……」
お前とかそれとかじゃなくて、ノノって呼んでもらえるのがうれしい。
それも伶莉さまの雄々しい声で呼ばれると、耳からだってきゅんきゅんしてくるしくなっちゃう。
「ノノ……ぐ……! ノノ、ノノ」
「あぅ……ん、んん……! ん、伶莉さま、んん、んんぅ……!」
引き抜かれたり奥まで満たされたりって、怜悧さまとの繋がりはめまぐるしく変わる。
一つじゃないから触れ合う感覚があるのに、でもこすれあうともっと一つになってるように感じる。
しあわせで目からなみだがこぼれてきた。
唇がはなれてさびしくなって見あげる。
そしたら急に目尻のなみだをなめとられてびっくりする。
「やぁ……ん……やんっ!」
怜悧さまの動きがしだいに速くなって体がくがくってなる。
けど背中がふかふかにはねかえされて、体じゅう怜悧さまと一つになってしあわせがあふれてくる。
しあわせすぎて、おかしくなる──
「や、あ、あ、伶莉さま、おかしくなる、おかしくなっちゃうよ、あっ、あっ!」
「そのまま身を任せろ。ノノ、く……いけ」
「あ、う……あ、ああ、や」
体じゅうにしあわせがどっとあふれる──
伶莉さまにつながりをほどかれる。
ちいさなうめき声。おへその下にお湯より熱いものがかけられるのを、感じた。
熱が抜けると、兄に飲まされてから体おかしかったのも治ってた。
* * *
お嫁さんになったわたしは、なにもない日に伶莉さまとごろごろしてた!
人の姿をとると疲れるのか、伶莉さまはよく前みたいなキツネ姿で寝ている。今もね。
「もふもふ気持ちいいー!」
ぎゅうーと抱きしめると、ふさふさの毛が肌をなでる。
手入れのゆきとどいたキツネっ毛は、服の上からだって肌に直接あたるところだってきもちいい。
すりすりってしあわせを味わう。
「襲うぞ」
伶莉さまが不機嫌そうにふりむく。
ほんとはキツネ姿だって人の言葉もしゃべれるんだよ伶莉さま。
「いいよ」
「ん?」
顔近づけてくるからもう一回言う。
「おそってもいいよ。怜悧さまにおそわれるのはしあわせだから」
そう言って目とじて、自分のくちびるをつんと人差し指でついた。
「ここ。おそって?」
怜悧さまはぎゅうって抱きしめてても器用にくるんと体をわたし側に返す。
怜悧さまがひっくり返るときにもふもふの毛がこすれるのだって、とっても気持ちいい……!
向かい合うとくちびるをつん、と怜悧さまのくちびるで突かれた。
うん。しあわせだねっ!
「今日は霧も出てないし呼吸法の修練には丁度佳い。起きるぞ」
「ねむいよ……」
「愛するノノが山を飛び降りても気圧差に耐えられる程度の呼吸法を覚えてくれないと、我も下界に降りられん。ノノは離せないからな」
そういってやり返すみたいに体抱かれるから、どきりとしてしまう。すこし目が覚めた。
怜悧さまはすかさずわたしの体を起こしてくる。
「もう! ばか! 大好き!」
そしたらまた、うるさくした口をふさがれた。
静かにゆっくりと、重ねられていた。
(終)
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
魔拳のデイドリーマー
osho
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生した少年・ミナト。ちょっと物騒な大自然の中で、優しくて美人でエキセントリックなお母さんに育てられた彼が、我流の魔法と鍛えた肉体を武器に、常識とか色々ぶっちぎりつつもあくまで気ままに過ごしていくお話。
主人公最強系の転生ファンタジーになります。未熟者の書いた、自己満足が執筆方針の拙い文ですが、お暇な方、よろしければどうぞ見ていってください。感想などいただけると嬉しいです。

2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる