【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

コル

文字の大きさ
上 下
27 / 75
5章 二人の巡り合い

アースの書~巡り合い・4~

しおりを挟む
 村長の家の前まで来たが……明かりがついているし、煙突から煙も出ている。
 誰もいないって事はなさそうだな。

「では伺ってみましょうカ」

『ああ』

 ラティアが村長さんの家のドアをノックした。

「すみませ~ン。どなたかいらっしゃいますカ?」

 家の中から、は~いという声が聞こえてドアが開いた。

「はい、どなたですか?」

 家の中から出て来たのは、ラティアと同じ歳くらいの若い女性だ。
 村長さんの娘さんだろうか。

「あの、突然すみませン。村長さんにちょっとお聞きしたい事がありまして、お伺いをしたんですガ……」

「え? 父にですか?」

 やっぱり、この女性は村長さんの娘さんだったか。
 それにしても娘さんはなにやら困った顔をしているが、何かあったのだろうか。

「申し訳ありません。お父さんは今、隣村の集会に行っておりましていないんです」

 あーそれで困った顔をしていたのか。

「そうなんですカ……(アース様、どうしましょウ?)」

 ラティアが俺にしか聞こえないような小声で聞いてきた。
 んー村長さんの娘さんだし、オリバーの情報を持っている可能性もあるよな。
 聞くだけ聞いてみるか。

『村長さんの娘さんなんだ。聞いてみてもいいんじゃないか?』

「(そうですね、わかりましタ)……あの、私達はオリバー・ジョサム様を探しているのでス。この村に来た事があるのかどうか、もしくはオリバー様の情報を持っていませんカ?」

「オリバー・ジョサム……ああ、英雄五星のオリバー様の事ですか」

 はい、その英雄五星のオリバー様です。

「申し訳ありません。私の知る限りオリバー様の話は聞いた事がありません」

 オリバーの話を聞いた事が無いか。
 あいつは一体何をしているんだろうか。

「後、この村に来られたかどうかもわかりません。何分私は村を数年離れていまして、戻ったのはつい最近なんです。ですから、その間の事はお父さんか村の人に聞くしかないですね……ただ、お父さんが帰って来るのは夜中になると思います」

「なるほド……(どうしましょウ)」

『んー……』

 村長さんは夜中まで戻らないか。
 その間に、村の人に聞き込みをするというのも難しいな。
 なにせ今は夕刻だから村の人はみんな家の中。
 ここに来る途中も誰1人見なかったし……だからと言って、今から1件1件聞いて回るのもな……。
 となると、明日に出直して村長さんに聞いた方がいいか。

『流石に夜中に伺うのも悪いし、出直して明日の朝にまた伺うとしよう』

「(そうですネ)……では、明日の朝にまたお伺いさせていただきます」

「わかりました。でしたら今日はあの教会でお休みください」

 娘さんが指をさしたのは、奥にあった大きい立派な建物。
 やっぱり、あれは教会だったのか。
 ……え、教会でお休みくださいだって?

「? あの宿屋ハ……」

「この村には宿屋は無いんですよ」

「え! ないの!?」

 余計な事をしてバレないよう、黙ってじっとしていたエイラも驚いて声をあげてしまった。

「そうなの。それであの教会が宿屋代わりになっていて、管理はうちがしているのよ」

 娘さんがエイラに目線を合わせて答えている。
 完全に子供扱いだな。
 まぁ見た目が少女だから仕方ないんだが……年齢だと貴女の何倍も年上なんですよ。

「村長さんのお家が管理って、あの教会には神父様はいないのですカ?」

「はい、数年前に亡くなられました。未だに常駐して頂ける神父様もいなくて……それで教会の管理はうちでしています」

 なるほど、この辺鄙な所に誰も来ずか。
 仕方のないことだとは思うが世知辛い事だな。

「後、神父様は生前にこの村に来た旅人を教会に泊めていたのです。遺言も次の神父様がいらっしゃるまでは旅人の為に使ってほしいと」

 その話を聞くと、次にあの教会へ入る神父様も同じような心を持っている事を祈りたくなるな。

「わかりましタ。では、あの教会を使わせていただきまス」

 娘さんに別れ、さっそく俺達は教会へと向かった。



 俺達は教会の中に入り、奥へ入ると5つ部屋があった。
 それぞれのドアの前にはプレートが掛かっていて、これで中に人が居るかどうかを確認できる。
 今の所は5部屋とも空いている様だ。

『あの娘さんの言う通り、ちゃんと管理をされているな』

 1つの部屋を覗いて見ると、きちんと掃除と整理をしている様でホコリが無く実に綺麗だ。

「ですネ。部屋分けはどうしましょうカ」

『あー……』

 本来なら女のラティアとエイラは一緒、男の俺は別部屋と考えるべきだ。
 しかし、部屋が5つな上に他の旅人もここを利用するかもしれん。
 となると1人で1部屋占領するというのは流石に……仕方がないか。

『他の旅人もこの教会を使うかもしれない。だから、ラティアとエイラが良ければ3人で1つの部屋を使わせても――』

「異議はありませン! そうしましょウ! 他の人の為にもその方がいいでス!」

 躊躇いもなく即承諾してくれたラティア。

「あ~しはベッドで寝られればどっちでもいいよ~ふあ~……」

 そして、本当にベッドで寝られるなら俺はいてもいなくてもどうでもいい感じのエイラ。
 2人が了承してくれるのは非常にありがたいが……何だろう、この姿のせいで人じゃなく物と見られている感じがすごくする。

「? どうかしましタ?」

『……いや、なんでもないよ。中に入るとしよう』

 その考えは止めるとしよう。
 この姿とはいえ、物扱いされているのかと思うと悲しすぎるからな。

「わ~い! ベッドだ~!」

 部屋に入るや否や、嬉しそうにベッドにダイブをするエイラ。
 その姿をみるとやはり子供にしか見えない。

『ラティアも俺の体を着ていて疲れただろう。さっさと脱いで休んでくれ』

 後、明日は俺を着ずに外に居てもらった方がいいな。
 結局アルガムの時も、ほぼ俺を着ている状態だったから少しは楽にしてもらいたい。

「え? 別にそんな事ハ……」

「ラティ、この前みたいにアースの体を脱がないでベッドに入ら――」

「ワアアアアアアア! ワアアアアアアア! 脱グ! 脱ぐかラ! アース様、頭をここに置きますね!」

『あっああ……』

 ラティアが俺の頭をドア近くにあったテーブルの上に置いた。
 何でいきなり大声を出したのだろうか。

《――》
《――》

『ん?』

 部屋の外から人の話声がする。
 誰か教会が入って来たみたいだな。

《――――――いの?》
《――の! 気にしないで!》

 声が近づいて来た、となると俺達みたいにこの教会へ泊まりに来た旅人か。
 よく聞き取れないが2人組の声っぽいが……。

「アース……流石に盗み聞きなんてよくないと思うよ?」

『なっ!?』

 エイラの奴、なにを言い出すんだか!

『盗み聞きなんてしようとしていない! 頭がこの場所にあるから自然と聞こえてしまっているだけだ!』

 まったく俺にそんな趣味は無いっての。
 にしても、1人の声がジョシュアによく似た感じだったが……まさかな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

魔拳のデイドリーマー

osho
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生した少年・ミナト。ちょっと物騒な大自然の中で、優しくて美人でエキセントリックなお母さんに育てられた彼が、我流の魔法と鍛えた肉体を武器に、常識とか色々ぶっちぎりつつもあくまで気ままに過ごしていくお話。 主人公最強系の転生ファンタジーになります。未熟者の書いた、自己満足が執筆方針の拙い文ですが、お暇な方、よろしければどうぞ見ていってください。感想などいただけると嬉しいです。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

処理中です...