20 / 75
4章 二人の修理と盗賊
レインの書~盗賊・3~
しおりを挟む
それにしても闘争の女神ソフィーナか。
ある意味、アタシにピッタリなのが選ばれたわね。
「ソフィーナって……え? えっ? ちょっと待ってよ、レイン。一体何を言っているのさ」
もうジョシュアったら、アタシはソフィーナだって言ったのに。
「レインじゃなくてソフィーナよ。これからはアタシの事をそう呼ぶように」
と言いつつ、アタシ自身も気を付けないといけないわね。
意識していないとソフィーナって呼ばれても反応出来なさそう。
「呼ぶようにって……どういう事なのか、さっぱりわかんないんだけど」
ジョシュアがまた首をひねって不思議そうな顔をしている。
どうもアタシの考えがわかっていないみたいね。
まったく、仕方が無いな~。
「いい? 協会に入る前って、帝国が関わっている件があってもアタシ達個人の事だから好きに首を突っ込めた。でも、今は協会に入ってから好きに出来ない。けど、旅の剣士【ソフィーナ】という人物が居れば話は別。どこで何をしようが、協会に迷惑が掛からない」
正体がアタシだってバレなければね……。
けど、バレなければかなり使える。
今まで帝国が関わっているからと、目を背けていた件がいくつかあった。
でも旅の剣士【ソフィーナ】として、そういったしがらみのある件でもどんどんと関わっていける。
「それに名前があった方が今後も便利でしょ?」
アタシって馬鹿だな~。
なんでもっと早くこの事を思いつかなかったのかしら。
「……なるほど、確かにそうだけど……それだと【ソフィーナ】が帝国にマークされちゃうんじゃない?」
「……あ」
そこまで考えていなかった、確かにジョシュアの言う通りだ。
ソフィーナが帝国にマークされるのはまずい。
アタシだってすぐにバレちゃう可能性がある。
「そこはどうするの?」
どうしよう。
ここまでやっといて、やっぱり偽名の話は無しで~……って言うのも非常に格好が悪い。
何とかジョシュアの質問に対して答えを絞り出さねば。
「あ~う~え~……そっその時は、また名前を変えればいいだけよ!」
そうよ、アタシにはあと9人の女神の名前がある。
そもそも女神に拘らなくても、偽名なんだから自由に名乗ればいいだけの話だわ。
「んー……そんな単純な事で誤魔化せるのかな?」
ジョシュアがアタシに疑いの視線を送って来た。
いや、ジョシュアだけじゃない……ジムさんとガンシュさんも同じような目をしている。
やめて、そんな目でアタシを見ないで!
「――っだ、大丈夫よ!!」
痛い視線を切るように、アタシは勢いよく立ち上がった。
ここまでくるとアタシも後には引けない。
ごり押してでも、このやり方を貫いてやるんだから!
「ジムさん、ガンシュさん!」
まずはこの件に対して重要である、この2人から。
ジョシュアは後回し。
「「はっはい!」」
2人は急に名前を呼ばれた事に驚いたのか、アタシにつられたのかわからないけど勢いよく立ち上がった。
別に立ち上がらくてもいいんだけど……まあいいか。
「くれぐれも名前には気を付けて下さいね! アタシはレインじゃあありません、ソフィーナです! いいですか! アタシは! 旅の! 剣士の! ソフィーナ! です!」
低くて威圧感のある声を出して2人を交互に見る。
「はい、わかりました!」
「よろしくお願い致します! 旅の剣士のソフィーナさん!」
こんな威圧のある声を出すのはモンスター相手の時で、一般人に対して出す事は無いんだけど……つい出てしまった。
とはいえ、この感じだと2人はこれで大丈夫そうね。
「そして、ジョシュ……あっ」
そうか、よくよく考えたらアタシだけ偽名を使っても意味がない。
ジョシュアの偽名も考えないといけなかったわ。
う~ん……ん~……んん~……うん、何も思いつかない。
「……ジョシュアってさ、あだ名は何て呼ばれていた?」
「あだ名? また急だな……色々呼ばれていたけど、ジョンとかジョシュと――」
「じゃあ、ジョンで」
覚えやすいし、なんか呼びやすい。
「――か……え、今なんて?」
「今日からアタシはソフィーナ、あなたはジョン。オーケー?」
「オーケーって……ちょっと待ってよ、ボクの偽名をなに勝手に決めているのさ! こういうのは名乗る本人であるボクが考えるべきでしょ!?」
確かにジョシュアの言う事は正しい……正しいけど、今はそんな事どうでもいい。
アタシはもうこの場に居たくないの、ごめんねジョシュア。
「今は時間がないって言ったでしょ! それにあだ名で呼ばれていたんだからいいじゃない。はい、決まり! それでは準備を整え次第、盗賊の討伐に行きますので、これで失礼します!」
まずはメイスを手入れに出しちゃっているから、それを回収しないと。
後アタシ達だとわからない様に、顔や姿が見えない物を買わないとね。
「いやいやいやいや、そんなの納得できないよ! 待って、すぐに考え……って、レイン! やめて! 放してよおおおおおおおお!」
アタシはジョシュアの手を取り、応接間から出ようとした。
しかしジョシュアはそれに対して居座ろうと抵抗してくる。
もう~往生際が悪いわね。
「えーと……あー……盗賊退治をよろしくお願い致します、ソフィーナさん、ジョンさん。どうかお気をつけて」
そんなやり取りをしているアタシ達に対して、ジムさんがアタシ達に頭を下げた。
「あっはい! 任せて下さい」
「嘘でしょ! 町長さんまでジョン呼びなの!?」
ジムさんがジョンと呼んだ。
ならこの場に居るのはレインとジョシュアじゃない。
旅の剣士ソフィーナ、ジョンというわけだ。
「ほら、さっさと行くわよ。ジョン!」
「ええええ!! ちょっとまってよおおおおおおお!」
アタシは泣き叫ぶジョシュアを引き摺り、町長さんの家を出て即鍛冶屋へと向かうのだった。
ある意味、アタシにピッタリなのが選ばれたわね。
「ソフィーナって……え? えっ? ちょっと待ってよ、レイン。一体何を言っているのさ」
もうジョシュアったら、アタシはソフィーナだって言ったのに。
「レインじゃなくてソフィーナよ。これからはアタシの事をそう呼ぶように」
と言いつつ、アタシ自身も気を付けないといけないわね。
意識していないとソフィーナって呼ばれても反応出来なさそう。
「呼ぶようにって……どういう事なのか、さっぱりわかんないんだけど」
ジョシュアがまた首をひねって不思議そうな顔をしている。
どうもアタシの考えがわかっていないみたいね。
まったく、仕方が無いな~。
「いい? 協会に入る前って、帝国が関わっている件があってもアタシ達個人の事だから好きに首を突っ込めた。でも、今は協会に入ってから好きに出来ない。けど、旅の剣士【ソフィーナ】という人物が居れば話は別。どこで何をしようが、協会に迷惑が掛からない」
正体がアタシだってバレなければね……。
けど、バレなければかなり使える。
今まで帝国が関わっているからと、目を背けていた件がいくつかあった。
でも旅の剣士【ソフィーナ】として、そういったしがらみのある件でもどんどんと関わっていける。
「それに名前があった方が今後も便利でしょ?」
アタシって馬鹿だな~。
なんでもっと早くこの事を思いつかなかったのかしら。
「……なるほど、確かにそうだけど……それだと【ソフィーナ】が帝国にマークされちゃうんじゃない?」
「……あ」
そこまで考えていなかった、確かにジョシュアの言う通りだ。
ソフィーナが帝国にマークされるのはまずい。
アタシだってすぐにバレちゃう可能性がある。
「そこはどうするの?」
どうしよう。
ここまでやっといて、やっぱり偽名の話は無しで~……って言うのも非常に格好が悪い。
何とかジョシュアの質問に対して答えを絞り出さねば。
「あ~う~え~……そっその時は、また名前を変えればいいだけよ!」
そうよ、アタシにはあと9人の女神の名前がある。
そもそも女神に拘らなくても、偽名なんだから自由に名乗ればいいだけの話だわ。
「んー……そんな単純な事で誤魔化せるのかな?」
ジョシュアがアタシに疑いの視線を送って来た。
いや、ジョシュアだけじゃない……ジムさんとガンシュさんも同じような目をしている。
やめて、そんな目でアタシを見ないで!
「――っだ、大丈夫よ!!」
痛い視線を切るように、アタシは勢いよく立ち上がった。
ここまでくるとアタシも後には引けない。
ごり押してでも、このやり方を貫いてやるんだから!
「ジムさん、ガンシュさん!」
まずはこの件に対して重要である、この2人から。
ジョシュアは後回し。
「「はっはい!」」
2人は急に名前を呼ばれた事に驚いたのか、アタシにつられたのかわからないけど勢いよく立ち上がった。
別に立ち上がらくてもいいんだけど……まあいいか。
「くれぐれも名前には気を付けて下さいね! アタシはレインじゃあありません、ソフィーナです! いいですか! アタシは! 旅の! 剣士の! ソフィーナ! です!」
低くて威圧感のある声を出して2人を交互に見る。
「はい、わかりました!」
「よろしくお願い致します! 旅の剣士のソフィーナさん!」
こんな威圧のある声を出すのはモンスター相手の時で、一般人に対して出す事は無いんだけど……つい出てしまった。
とはいえ、この感じだと2人はこれで大丈夫そうね。
「そして、ジョシュ……あっ」
そうか、よくよく考えたらアタシだけ偽名を使っても意味がない。
ジョシュアの偽名も考えないといけなかったわ。
う~ん……ん~……んん~……うん、何も思いつかない。
「……ジョシュアってさ、あだ名は何て呼ばれていた?」
「あだ名? また急だな……色々呼ばれていたけど、ジョンとかジョシュと――」
「じゃあ、ジョンで」
覚えやすいし、なんか呼びやすい。
「――か……え、今なんて?」
「今日からアタシはソフィーナ、あなたはジョン。オーケー?」
「オーケーって……ちょっと待ってよ、ボクの偽名をなに勝手に決めているのさ! こういうのは名乗る本人であるボクが考えるべきでしょ!?」
確かにジョシュアの言う事は正しい……正しいけど、今はそんな事どうでもいい。
アタシはもうこの場に居たくないの、ごめんねジョシュア。
「今は時間がないって言ったでしょ! それにあだ名で呼ばれていたんだからいいじゃない。はい、決まり! それでは準備を整え次第、盗賊の討伐に行きますので、これで失礼します!」
まずはメイスを手入れに出しちゃっているから、それを回収しないと。
後アタシ達だとわからない様に、顔や姿が見えない物を買わないとね。
「いやいやいやいや、そんなの納得できないよ! 待って、すぐに考え……って、レイン! やめて! 放してよおおおおおおおお!」
アタシはジョシュアの手を取り、応接間から出ようとした。
しかしジョシュアはそれに対して居座ろうと抵抗してくる。
もう~往生際が悪いわね。
「えーと……あー……盗賊退治をよろしくお願い致します、ソフィーナさん、ジョンさん。どうかお気をつけて」
そんなやり取りをしているアタシ達に対して、ジムさんがアタシ達に頭を下げた。
「あっはい! 任せて下さい」
「嘘でしょ! 町長さんまでジョン呼びなの!?」
ジムさんがジョンと呼んだ。
ならこの場に居るのはレインとジョシュアじゃない。
旅の剣士ソフィーナ、ジョンというわけだ。
「ほら、さっさと行くわよ。ジョン!」
「ええええ!! ちょっとまってよおおおおおおお!」
アタシは泣き叫ぶジョシュアを引き摺り、町長さんの家を出て即鍛冶屋へと向かうのだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
魔拳のデイドリーマー
osho
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生した少年・ミナト。ちょっと物騒な大自然の中で、優しくて美人でエキセントリックなお母さんに育てられた彼が、我流の魔法と鍛えた肉体を武器に、常識とか色々ぶっちぎりつつもあくまで気ままに過ごしていくお話。
主人公最強系の転生ファンタジーになります。未熟者の書いた、自己満足が執筆方針の拙い文ですが、お暇な方、よろしければどうぞ見ていってください。感想などいただけると嬉しいです。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる