【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

コル

文字の大きさ
上 下
12 / 75
3章 二人の遭遇

アースの書~遭遇・3~

しおりを挟む
 ラティアはついて来てくれる事になったがエイラはどうするんだろう。

『エイラはどうするんだ?』

「ん? もちろんあ~しもついて行くよ~」

 エイラも一緒に来てくれるのか。
 だと3人旅になるな。
 にしても、また旅に出る事になるとは思いもしなかった。

「えッ! エイラもくるノ!?」

 あれ、何故かラティアが驚いている。
 そんなにエイラがついてくるのが意外だったのかな。

「そりゃ~そうよ。あ~しが傍に居ないとラティの魔力が尽きちゃうじゃない」

「あウ……そうだっタ……」

 ああ、そういえばエイラの魔力をラティアに流していたんだっけ。
 という事はエイラが来てくれないと、俺は動けなくなってしまうところだったのか。
 あー良かった……来てくれる事になって。

(うウ……せっかくアース様とラブラブな2人旅が出来ると思ったのニ……)

 何やらラティアがブツブツと小声で言っているがよく聞こえない。
 さっきの驚きといい、エイラが一緒なのは嫌なのかな。
 でも、エイラには一緒に来てもらわないと困るし……。

『えと……ラティアには申し訳ないんだけど……エイラが一緒に行くのを許してくれないか? 旅をするうえでどうしてもラティアとエイラの力が必要なんだ! 俺一人じゃ無理なんだ、頼む!』

 とは言っても、俺に出来る事は頭を下げて頼むしかない。
 術で生き返ったとはいえ、俺一人では何もできないのが悔しい。

「え? あっ! アース様、頭をあげて下さイ! エイラと一緒なのは全然問題無いでス!」

『それならいいんだが……』

 本当に問題が無いのだろうか。
 旅の途中でいざこざとかはやめてほしい。

「たダ……ちょっと心を落ち着かせる時間を下さイ」

『あ、ああ、わかった……』

 そう言ってラティアは俯いてしまった。
 この姿を見ると不安でしかないぞ。

「気にしないで、嬉しい時に悲しい事が起きるとショックが大きすぎて気分が沈んぢゃうでしょ? だから今はそっとしてあげて。大丈夫、ラティとあ~しはちょ~仲良しだから!」

 エイラが笑顔で俺の肩を叩いた。
 このラティアを見てちょー仲良しだからと言われましても……。
 んー不安は拭いきれないが、だからといって立ち止まっているわけにもいかない。
 よし、問題が起きた時は起きた時にまた考えよう、そうしよう。

『その言葉を信じるよ……。じゃあ、神殿の周辺にレインや人が居ないかを確認して移動を……あっ』

 いや、それは出来ない。
 なんでこの事に今まで気が付かなかったかな。
 ラティアとエイラ問題よりこっちの方が深刻じゃないか。

「どったの? 出発しないの?」

『したいのは山々なんだが、ラティアとエイラは目立ちすぎる。これだとすぐにレインに見つかってしまうぞ』

 俺は何か武器を持てば傭兵か騎士に見られるだろうが、この二人はそうもいかない。
 ラティアは前髪が目の所までかかって薄紫色という髪型が特徴的すぎる。
 そしてエイラに至っては全身が特徴の塊だ。
 まぁラティアはフード付きマントを羽織って、人前でフードを取らない様に気を付ければいいとは思うが……エイラは羽と尻尾が邪魔でどう考えてもはみ出るよな。
 これは困った。

「あ~そっか。なら、あ~しは人から見えない様に不可視魔法を自分にかけるよ」

『そんな魔法が使えるのか?』

 それなら実にありがたい。
 見えなくなる方が一番安心できるからな。

「あ~しをなめないでほしいな~。ほいっと……どう?」

 エイラの体が一瞬光ると俺の目の前から姿が消えた。
 声はするが確かに見えない。

『おお! すごいな』

 ラティアにもその魔法をかければこの問題は解決だな。
 なんだ、悩んで損をした。

「ただ、これは自分自身にしか使えないのと、不可視を維持の為に魔力を使うから他に魔法を使うなら解かないといけないけどね」

 エイラが魔法を解いて姿を現した。
 なんだ……自分自身にしかかけられないのか。
 まぁ大問題のエイラが解決しただけでも良しとするか。

『となると、ラティアをどうするかだな』

 やはりフード付きマントを羽織ってもらうしかないか。
 どこかで調達しないといけないな。

「それならあ~しに任せて。ラティちょっとこっちを向いて」

「へッ? 何々?」

 エイラがラティアの顔を自分の方に向けて何やらいじり出した。

「ここをこうして……後は~髪を三つ編みにすれば可愛いかな」

 そう言って今度はラティアの髪を集めて編みだした。
 三つ編みにすれば印象が変わるかもしれないが、普通にラティアとバレてしまうと思うんだが……。

「……よしっと。はい、出来上がり~」

 エイラがラティアの顔をこっちに向けた。

『……え?』

 ラティアは薄紫色の髪は三つ編みで左横にまとめていて、前髪はセンター分けがされている。
 それにより、今まで見えていなかった目元部分がよく見える様になっていた。
 ラティアの目はぱっちりとしていて、右が緑色、左が金色のオッドアイだった。

「ラティって普段は前髪で顔が見えないからね。こうやって前髪を左右にわけるだけで別人でしょ?」

『確かに……』

 前髪で隠れていた部分が見えるだけで、こんなにも印象が変わるとは。
 エイラもよくこんな事を思いついたな。

「え? え? 前髪が……はわ……はわわわ……イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

『っ!? ど、どうしたんだ?』

 ラティアがいきなり大声を上げ両手で顔を覆った。
 何が起こったんだ。

「無理でス! 自分の顔を人前に出すのは無理なんでス!! うわああああああああん!」

 今度は泣き出した。
 うーん、理由はわからないが自分の顔を見られたくないから前髪を長くして隠していたみたいだな。
 ここまで嫌がるなんてよっぽどの事があったんだろうな。



「ぐズ……ずズ……」

 少し時間をおいて様子を見ていたが、そろそろ落ち着いたかな。

『えーと……ちょっとは落ち着いたか?』

「……はい、すみませン……」

「ラティが謝る事じゃないよ。あ~しがラティの嫌がる事をしちゃったんだし、ごめんね」

「ううン……」

 うーん、前髪を変えるだけで別人みたいになるのは良かったんだがな。
 だが本人が嫌がっている以上このやり方は駄目だな。
 無理強いはさせられない。

『別の方法を考えるしかないな』

「そうだね……ん~見せるのが嫌なのなら逆に隠しちゃえば…………あっそうだ!」

 エイラが俺を見て何か閃いた様子。
 頼むからまともな思いつきであってくれよ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

魔拳のデイドリーマー

osho
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生した少年・ミナト。ちょっと物騒な大自然の中で、優しくて美人でエキセントリックなお母さんに育てられた彼が、我流の魔法と鍛えた肉体を武器に、常識とか色々ぶっちぎりつつもあくまで気ままに過ごしていくお話。 主人公最強系の転生ファンタジーになります。未熟者の書いた、自己満足が執筆方針の拙い文ですが、お暇な方、よろしければどうぞ見ていってください。感想などいただけると嬉しいです。

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

処理中です...