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終章 僕は今
7、女神の贈り物
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なんで?
どうして、女神様がいきなり僕の目の前に現れたんだ?
……あっ! そうか! そういう事か!
「僕のピンチに助けに来てくれたのですね! 時間を止めてくれて助かりましたよ」
この状況、完全に終わっていたからな。
時間を止めて助けてくれるなんて、流石は女神様だ。
「ん? 何を言っているの?」
「……へ?」
僕の言葉に女神様が首を傾げた。
この反応は冗談……じゃないな。
じゃあ一体何の為に現れたんだ。
「アタシはただ、貴方に能力を与えるのを忘れていた事に気付いて慌てて来ただけよ?」
「はあ!?」
なんだよ、その理由。
というかやっぱり能力を与え忘れていたのかよ!
「時を止めたのも、アタシの姿をこっちの世界の人に見られるとまずいからだし」
「そ、そうなんです……か」
そんな偶然から僕は助かったのか。
助かったのはいいけど……なんか複雑な気分。
……いや、待てよ。
今能力が貰えるなら、この絶望的な状況を打破出来るじゃないか。
ドラゴンを一撃で倒せる力がいいかな?
いやいや、無人島から脱出も考えて空を飛んだり、瞬間移動系もいいかも。
んー非常に悩む所だな。
「さて、貴方の能力を決めるからちょっと待ってね」
そういうと女神様は両手を光の柱の中へと入れた。
僕の能力を決めるだって?
「え? あ、あの……能力って僕が選ぶんじゃないんですか?」
「あ~前まではそうだったんだけど……固有能力だから、後の人は使えないっていうのは不公平だ! って声があってね。だから……これで決める事にしたの」
光の中から取り出したのは真っ白で正方形の箱。
上の部分は丸い穴が開いている。
これって……どう見てもクジの箱だよな。
「も、もしかして、その箱の中身ってクジなんじゃ……」
「正解! この箱の中には能力を書いた紙が入っているから、1枚引いてそれに書かれている能力が貴方を与えます」
「マジですか!?」
それじゃあ物によっては、この絶望的な状況を打破できないじゃないか!
そんな運任せの能力なんて嫌すぎる!!
「何か不安そうな顔をしているわね……大丈夫よ、貴方もクジで選ばれたんだし運はあると思うから、きっといい能力を引くわよ」
今、とんでもない事実が女神様の口から発せられた。
クジで選ばれた……だって?
「ぼ、僕って選ばれた人間なんじゃないんですか?」
「そうよ、貴方は選ばれた人間よ? クジに」
「……」
違う、そうじゃない。
僕の聞いたのは、そういう意味じゃないんだ。
なんかもう色々と起こりすぎて、感情が追い付かなくなってきた。
「よし、能力を忘れていたお詫びにこのくじを貴方に引かせてあげるわ。特別だからね」
そんなシンプルなクジの箱を目の前に出されても、特別感が全く感じられないんですけど。
とはいえ、能力が無いよりはマシだよな。
ハズレでも、せめてこの無人島でも使える能力が来ますように!
「……じゃあ……引かせてもらいます」
僕は自分の運命を右腕にかけて箱の中へと入れた。
本当に小さな紙が大量に入っているよ。
どれだ? どの紙がいいんだ?
これか? それともこれか?
「……んんんんん…………っこれだ!!」
箱の一番下あった1枚を手に取り、箱から取り出した。
「はい、じゃあ見せて」
僕は手に取った紙を女神様に渡した。
あードキドキする。
「どれどれ……ふむふむ、引いたのはスーパー・チャームね」
「スーパー・チャーム……?」
なんだそれ。
「異性を魅了させて、貴方の虜にさせる魔法が使えるわ」
「異性を虜に……って、え? それだけの魔法!?」
ハズレにもほどがあるじゃないか!
しかも、能力の内容と僕の性格との相性がものすごく悪い!
ああ……なんてクジ運の悪さなんだ。
「チッチッチ、甘いわね。スーパー・チャームは人だけじゃない、動物や虫、更にはレイスといったモンスターをも虜に出来るのよ! あっでも、アタシみたいな神クラスには効かないからね」
そんなのどうでもいい。
どうあがいても、この無人島では全く役に立たない。
「あの引き直しは……」
「出来るわけないでしょ。1回きりよ」
「デスヨネ」
「それじゃあ、与えるわね」
女神様が僕の頭に右手を置いた。
そして、一瞬だけ僕の全身がピカっと光った。
「はい、終わり」
「……え、もう?」
女神様は僕の頭から手を離した。
んー特に変わった感じがしない。
本当に能力を貰えたのかな?
「使い方は簡単、虜にしたい相手と目を合わせて唱えるだけよ。じゃあ、アタシはこれで帰るわね」
女神様は光の柱の方へと歩き始めた。
「あ、はい……」
本当に能力を渡しにに来ただけなのな。
「そうそう、アタシが帰ったと同時に時間も動き出すからね」
「そうですか……あっ! ちょっちょと待って下さい!」
止まっているアリサを担ぎ、炎が当たらない木の影に急いで避難をした。
危ない危ない、時間が動き出したら即焼かれてしまうところだった。
「もういいかな? それじゃあ頑張ってね~バイバ~イ」
女神様が手を振りながら、光の柱へと入り消えていった。
直後、時間が動き出し、僕達のいた場所に炎が降り注いだ。
おーこわ……丸焼きじゃすまなかっただろうな。
『グルルル……』
レッドドラゴンが辺りを見わたしている。
何とか今は逃げ出せたけど、状況は全然変わっていないよな。
スーパー・チャームを貰ったところで何の役にも……待てよ、モンスターでもと言っていたよな。
あのレッドドラゴンがメスだった場合は使えるわけだ。
確率はオスかメスかで半々……ええい、一か八か賭けてみるしかない!
「おい! こっちを見ろ!」
僕はレッドドラゴンの前に出て、大きな声で叫んだ。
その声にレッドドラゴンは即座に反応して僕と目を合わせた。
「今だ! スーパー・チャーム!」
『……』
動きが止まったレッドドラゴン。
「……」
同じく止まる僕。
お互い動かないまま、静寂な時間が流れていく。
きっ効いたのか? それとも失敗したのか?
どっちだったんだ……。
『……グルルル!』
レッドドラゴンが動き出し、口を開け僕に向かって襲ってきた。
あ、オスだったのか。
つくづく運がないな……この無人島に飛ばされ、ハズレクジを引き、性別も外すか。
全てを諦め茫然としていると……。
――ベロッ
「っ!?」
レッドドラゴンが僕を舐め、鼻先をすりすりと体に摺り寄せてきた。
この行動……もしかして……。
「お座り!」
僕が叫ぶと、レッドドラゴンはバッとその場に座った。
「伏せ!」
レッドドラゴンが身を低くして伏せの姿勢をとった。
「お手!」
レッドドラゴンの大きな手の爪が、僕の小さな手の上に乗った。
「……やった! 成功だ!」
こいつはメスのレッドドラゴンだ!
賭けに勝ったんだ!!
どうして、女神様がいきなり僕の目の前に現れたんだ?
……あっ! そうか! そういう事か!
「僕のピンチに助けに来てくれたのですね! 時間を止めてくれて助かりましたよ」
この状況、完全に終わっていたからな。
時間を止めて助けてくれるなんて、流石は女神様だ。
「ん? 何を言っているの?」
「……へ?」
僕の言葉に女神様が首を傾げた。
この反応は冗談……じゃないな。
じゃあ一体何の為に現れたんだ。
「アタシはただ、貴方に能力を与えるのを忘れていた事に気付いて慌てて来ただけよ?」
「はあ!?」
なんだよ、その理由。
というかやっぱり能力を与え忘れていたのかよ!
「時を止めたのも、アタシの姿をこっちの世界の人に見られるとまずいからだし」
「そ、そうなんです……か」
そんな偶然から僕は助かったのか。
助かったのはいいけど……なんか複雑な気分。
……いや、待てよ。
今能力が貰えるなら、この絶望的な状況を打破出来るじゃないか。
ドラゴンを一撃で倒せる力がいいかな?
いやいや、無人島から脱出も考えて空を飛んだり、瞬間移動系もいいかも。
んー非常に悩む所だな。
「さて、貴方の能力を決めるからちょっと待ってね」
そういうと女神様は両手を光の柱の中へと入れた。
僕の能力を決めるだって?
「え? あ、あの……能力って僕が選ぶんじゃないんですか?」
「あ~前まではそうだったんだけど……固有能力だから、後の人は使えないっていうのは不公平だ! って声があってね。だから……これで決める事にしたの」
光の中から取り出したのは真っ白で正方形の箱。
上の部分は丸い穴が開いている。
これって……どう見てもクジの箱だよな。
「も、もしかして、その箱の中身ってクジなんじゃ……」
「正解! この箱の中には能力を書いた紙が入っているから、1枚引いてそれに書かれている能力が貴方を与えます」
「マジですか!?」
それじゃあ物によっては、この絶望的な状況を打破できないじゃないか!
そんな運任せの能力なんて嫌すぎる!!
「何か不安そうな顔をしているわね……大丈夫よ、貴方もクジで選ばれたんだし運はあると思うから、きっといい能力を引くわよ」
今、とんでもない事実が女神様の口から発せられた。
クジで選ばれた……だって?
「ぼ、僕って選ばれた人間なんじゃないんですか?」
「そうよ、貴方は選ばれた人間よ? クジに」
「……」
違う、そうじゃない。
僕の聞いたのは、そういう意味じゃないんだ。
なんかもう色々と起こりすぎて、感情が追い付かなくなってきた。
「よし、能力を忘れていたお詫びにこのくじを貴方に引かせてあげるわ。特別だからね」
そんなシンプルなクジの箱を目の前に出されても、特別感が全く感じられないんですけど。
とはいえ、能力が無いよりはマシだよな。
ハズレでも、せめてこの無人島でも使える能力が来ますように!
「……じゃあ……引かせてもらいます」
僕は自分の運命を右腕にかけて箱の中へと入れた。
本当に小さな紙が大量に入っているよ。
どれだ? どの紙がいいんだ?
これか? それともこれか?
「……んんんんん…………っこれだ!!」
箱の一番下あった1枚を手に取り、箱から取り出した。
「はい、じゃあ見せて」
僕は手に取った紙を女神様に渡した。
あードキドキする。
「どれどれ……ふむふむ、引いたのはスーパー・チャームね」
「スーパー・チャーム……?」
なんだそれ。
「異性を魅了させて、貴方の虜にさせる魔法が使えるわ」
「異性を虜に……って、え? それだけの魔法!?」
ハズレにもほどがあるじゃないか!
しかも、能力の内容と僕の性格との相性がものすごく悪い!
ああ……なんてクジ運の悪さなんだ。
「チッチッチ、甘いわね。スーパー・チャームは人だけじゃない、動物や虫、更にはレイスといったモンスターをも虜に出来るのよ! あっでも、アタシみたいな神クラスには効かないからね」
そんなのどうでもいい。
どうあがいても、この無人島では全く役に立たない。
「あの引き直しは……」
「出来るわけないでしょ。1回きりよ」
「デスヨネ」
「それじゃあ、与えるわね」
女神様が僕の頭に右手を置いた。
そして、一瞬だけ僕の全身がピカっと光った。
「はい、終わり」
「……え、もう?」
女神様は僕の頭から手を離した。
んー特に変わった感じがしない。
本当に能力を貰えたのかな?
「使い方は簡単、虜にしたい相手と目を合わせて唱えるだけよ。じゃあ、アタシはこれで帰るわね」
女神様は光の柱の方へと歩き始めた。
「あ、はい……」
本当に能力を渡しにに来ただけなのな。
「そうそう、アタシが帰ったと同時に時間も動き出すからね」
「そうですか……あっ! ちょっちょと待って下さい!」
止まっているアリサを担ぎ、炎が当たらない木の影に急いで避難をした。
危ない危ない、時間が動き出したら即焼かれてしまうところだった。
「もういいかな? それじゃあ頑張ってね~バイバ~イ」
女神様が手を振りながら、光の柱へと入り消えていった。
直後、時間が動き出し、僕達のいた場所に炎が降り注いだ。
おーこわ……丸焼きじゃすまなかっただろうな。
『グルルル……』
レッドドラゴンが辺りを見わたしている。
何とか今は逃げ出せたけど、状況は全然変わっていないよな。
スーパー・チャームを貰ったところで何の役にも……待てよ、モンスターでもと言っていたよな。
あのレッドドラゴンがメスだった場合は使えるわけだ。
確率はオスかメスかで半々……ええい、一か八か賭けてみるしかない!
「おい! こっちを見ろ!」
僕はレッドドラゴンの前に出て、大きな声で叫んだ。
その声にレッドドラゴンは即座に反応して僕と目を合わせた。
「今だ! スーパー・チャーム!」
『……』
動きが止まったレッドドラゴン。
「……」
同じく止まる僕。
お互い動かないまま、静寂な時間が流れていく。
きっ効いたのか? それとも失敗したのか?
どっちだったんだ……。
『……グルルル!』
レッドドラゴンが動き出し、口を開け僕に向かって襲ってきた。
あ、オスだったのか。
つくづく運がないな……この無人島に飛ばされ、ハズレクジを引き、性別も外すか。
全てを諦め茫然としていると……。
――ベロッ
「っ!?」
レッドドラゴンが僕を舐め、鼻先をすりすりと体に摺り寄せてきた。
この行動……もしかして……。
「お座り!」
僕が叫ぶと、レッドドラゴンはバッとその場に座った。
「伏せ!」
レッドドラゴンが身を低くして伏せの姿勢をとった。
「お手!」
レッドドラゴンの大きな手の爪が、僕の小さな手の上に乗った。
「……やった! 成功だ!」
こいつはメスのレッドドラゴンだ!
賭けに勝ったんだ!!
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