【完結】僕は今、異世界の無人島で生活しています。

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9章 奴を捕まえろ!

6、捕獲!

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 まさかこんなに早く猪鹿蝶と再会できるとは思いもしなかった。
 穴を掘っている事に集中しているみたいだから、今のうちになんとかして捕まえたいな。
 こういう時って手作りの弓で仕留めるのが定番なんだけど……そんな物は作ってない。
 となれば罠を作ってそこに誘うしかないか。

 デッドフォールトラップだと、あのサイズの猪鹿蝶を押し潰すのにでかいのを作らないといけないから、時間的に考えて駄目。
 ピットフォールトラップだと、穴を掘っている間に猪鹿蝶に逃げられてしまう。
 これも作る時間の事を考えると駄目。
 となれば、残りはスネアトラップになるけど……あの猪鹿蝶が暴れても切れない蔓なんて手持ちに無い。
 うーん……どうしたものか。

「……そうだ。ア、アリサ……さんの、足の爪で猪鹿蝶を仕留める事は出来ないの? 今なら油断してるし……」

 アリサの蹴りなら猪鹿蝶を一撃で仕留められそうなんだけどな。

「そんなの出来たら、昨日、逃げなかったわよ」

「あー……」

 それはそうか。
 めちゃくちゃ全力で逃げていたものな。

「魔法を使わないと、普通に力負けしちゃうわ。はぁ~……この枷、無かったらな~」

 アリサが忌々しそうに、首に付いている枷をコンコンと叩いた。
 魔法が使えたら獲れるのかと思うと、それは悔しいな。
 
「……はっ!」

 ベトベトのアリサの姿を見て、いい方法を思いついたぞ。
 これならうまくいくかもしれないけど、その為にはアリサの協力が必要不可欠……頼んでみるか。

「ア、アリサ……さん、作戦があるんだけど……聞いてくれるかな?」

「ん? 作戦?」



「――という作戦なんだけど……どうかな?」

 僕の作戦を聞いたアリサの眉間にしわが寄った。
 まぁ寄るよね……僕も同じこと言われたら、眉間にしわが寄るかも。

「……それ、うちじゃなきゃ、駄目?」

「ぼ、僕が猪鹿蝶の前に出ると逃げちゃうから、追いかけて来るアリサ……さんにしか出来ないんだ。猪鹿蝶を捕まえる為なんだ、このとおり!」

 僕は両手を合わせてお願いのポーズをとった。

「あ~そっか……う~…………わかった、やるわ」

「あ、ありがとう!」

 良かった、引き受けてくれて。

「場所は、ラファイスルの所で、いいの?」

「う、うん、そこで。じゃ、じゃあ準備が出来たら、合図は指笛を鳴らすよ」

「わかった、はやくね。……にしても、口笛で呼ぶか……ペットみたいで、なんだか複雑だわ……」

 ボヤくアリサを残し、僕は急いでラファイスルの場所へと戻った。



 ラファイスルの前まで戻った僕は、休む暇もなく作業に入った。
 まず、ラファイスルの蔓を長めに切り取って、そして服を脱いで蔓の粘液をふきとっていく。
 せっかく洗濯したけど、わがままなんて言っていられない。
 こうしないと粘液が滑って蔓を結べないからな。
 粘液をふき取ったら脛辺りの高さで木に結ぶ。
 そして地面に沿わしながら反対側の茂みの中に持って行って……準備完了。
 
「これで良し。後は、アリサに合図だ。すぅー……ピィーーーーー!!」

 指笛の音が辺りに鳴り響いた。
 頼むぞ、聞こえてくれ。

「………………………………来たっ!」

 少し待つと、遠くから走って来るアリサの姿と、その後ろで追いかけてきている猪鹿蝶が見えた。

「こっちこっち!」

 僕の声にアリサが気が付いて、こっちに走って来た。
 それを確認してから蔓の先がある茂みの中に飛び込んだ。

「ひいいいいいいいいいい!」

 アリサの叫び声がどんどんと近づいてくる。
 勝負は1度きり。
 これが失敗したら、猪鹿蝶に警戒されて捕獲はかなり難しくなるだろう。

「ふぅー……慎重に慎重に……」

 僕は深呼吸をしてから両手で蔓を強く握り、アリサが通り過ぎる瞬間を待った。

「ひいいいいいいいいいいいいい!」

 アリサが蔓の上を通り過ぎた。

「――今だっ!」

 その瞬間に僕はグイっと思いっきり蔓を引っ張った。
 地面に沿わせてあった蔓が持ち上がり、ピンと張った状態になった。

『――ブモッ!?』

「――ぐっ!!」

 猪鹿蝶は急に足元に出てきた蔓に足を引っかけて盛大に吹っ飛び、ラファイスルの蔓の密集している場所へ突っ込んだ。
 おお……すごい衝撃だった、手が痛い。
 よく蔓が切れずもったもんだよ。

「……猪鹿蝶はどうなったかな?」

 僕は恐る恐る茂みから這い出て、猪鹿蝶が突っ込んだ場所へと向かった。

『ブモッ! ブモッ!』

 予想通り、猪鹿蝶が暴れてどんどん蔓が絡んでいく。
 アリサの時同様にがんじがらめになって来た。

『ブモッ! ブモッ! ……ブフ……ブフ…・・」

 暴れ疲れたのか、諦めたのか猪鹿蝶の動きが無くなった。
 これなら逃げられる感じもしないし、もう捕獲で来たって事で良いよな。

「……やった! やったぞおおおおおおおおおお! 肉だああああああああああああああああああ!! この島で肉が食えるぞおおおおおおおおおお!!」

 僕はガッツポーズを取り、嬉しさのあまり大声で叫んでしまった。
 今の状況が状況だけにこうなってしまうのも仕方がないよね。

「あの~……喜んでいるところ、悪いんだけどさ……うちを、忘れないでくれる?」

「え? ……あ」

 そうだ、立役者のアリサの存在をすっかり忘れていた。
 アリサの声がする方を見ると、猪鹿蝶と同じ様に蔓に絡まったアリサの姿があった。

「な、なんで、そんな事に?」

「全力疾走、してたから、止まれなくて……勢いでそのまま、つっこんじゃったの……」

「……なるほど……」

 全力疾走の後の事を全く考えていなかったな。
 アリサには色々とひどい目に合わせてしまったから、好きな肉の部位は優先的に譲ろう。
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