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8章 生活の強化

3、今気が付いた事

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 しかし悔しいな、せっかく肉が手に入るチャンスなのに。
 でも、島の大きさなんてどうしようもない。
 猪鹿蝶の行動パターンさえ分かればな…………あ、そうだ!

「あ、あのさ、猪鹿蝶が食べた卵芋のところ、あの辺りに罠を仕掛けるのはどうかな?」

 卵芋は全部食べられてはいなかった。
 とすれば、また食べにくる可能性は十分考えられる。
 いつ来るかわからないから見張るのは無理でも、落とし穴みたいな設置系の罠をおけばいけるかもしれない。

「ん~……」

 あれ? アリサの渋い顔が戻らない。
 いい考えだと思ったんだけどな。

「厳しい、かな……別にイノシカチョウは、卵芋が好きってわけでもないし。雑食でなんでも食べるから、たまたま卵芋が目に入って、食べただけよ」

「で、でもさ、全部食べなかったから、また食べに来るかもしれないじゃないか」

 可能性があるのなら、それにかけてもいいと思うんだよな。
 何もしないよりはマシだろうに。

「それは、食べなかったじゃなくて、食べられなかったんだと思う」

「食べられなかった? ……えと、どういう事?」

「リョーは、リーンの実を取りに、あの辺りを歩いたんでしょ? じゃあその姿を見た、イノシカチョウは……」

「ああ! そういう事か……」

 猪鹿蝶が卵芋を食べている時に、僕が来て逃げだしたと。
 なんというタイミングだ。
 待てよ、よくよく考えたら異世界人から逃げるって習性が無かったら、あの時に襲われていたかもしれないのか。
 うわ、そう考えると今更ながらめちゃくちゃ怖くなってきた。

「そんなにイノシカチョウ、食べたいの?」

 その言い方をされると、僕が食い意地が張っている人みたいに思われてるようで嫌だな。
 食べたい気持ちはあるけど、それだけじゃないってちゃんと伝えないと。

「き、貴重な肉だし、魚以外の保存食にもなるしさ。諦めるにはもったいなと思っただけだよ」

「……あ~、なるほど……本音を言うと、うちも肉は食べたいから、気持ちはわかる……わかった、何かいい方法が無いか、考えてみるね」

「た、助かるよ」

 本当に僕の言いたい事が伝わったのだろうか。
 まぁいいや、ここはアリサのひらめきに頼ろう。
 こればかりは任せるしかないしな。



「塩をバムムの入れ物の中に入れた、ミースルを食事分の量を獲った、もんどりを海の中にセットしなおした、板状にした石も手に持った……」

 拠点に持ち帰る物を手に取り、他に忘れ物が無いかもう一度辺りを見わたした。

「……大丈夫かな。じゃ、じゃあ沢に行こうか」

「あれ、拠点に戻るんじゃないの?」

「も、戻る前に使った服と土器を洗っておこうと思って」

 別に拠点に戻ってからでもいいけど、洗い物はさっさと済ませておきたいんだよな。

「なるほど、了解~」

 ついでに、これで猪鹿蝶の手掛かりも見つけられるといいな。



 と思っていたけれど、やっぱり現実は甘くなかった。
 猪鹿蝶の手掛かりなんて、全く無い状態で沢に着いてしまった。
 まぁこればかりは仕方ないか。

「ぼ、僕は石と土器を洗うから、アリサ……さんはこす為に使った服の洗濯をしてくれるかな?」

「は~い、まかせて~」

 服をアリサに渡し、僕は土器を水の中につけて洗い始めた。

「……」

 うーん……手でこすっているだけだと洗えている感じがしないな。
 スポンジとたわしが欲しいけど、当然どっちもあるわけがない。
 これは今後の事を考えてもあった方が良いよな。
 何か代用品が手に入れたいところだが……あーそういえば、小学校の頃にヘチマを育ててヘチマたわしを作った事があったな。
 手ごろな大きさに切って、30分ほど煮て、皮をむいて、種を取り出して、乾燥させて完成。
 っと、簡単な流れで作れる。

 でだ、問題はヘチマその物だ。
 この世界にある可能性はほぼないだろうけど、聞くだけ聞いてみるか。
 あればラッキーなんだし。

「あ、あのさ、ヘチマってこの世界にあるかな?」

「ヘチマ? なに、それ?」

 やっぱり無かったか。
 そうなると、バムムみたいな代わりになるものだな。

「えーと……ヘチマって、瓜の一種なんだけど……全体が緑色で、長い楕円の形をしている野菜で……そのー……えーと……」

 どうしよう、これ以上言葉が出来ない。
 思ったよりヘチマの説明が難しいぞ。

「ウリ? 全体が緑色で、長い楕円の野菜……う~ん、ごめん。いっぱい候補があって、どれの事を言っているのか、わからないや」

「あー……」

 そうだよな。
 流石に説明不足すぎてわからないよな。

「……ご、ごめん、今のは忘れて……」

「? リョーが、いいのなら」

 とりあえず一度置いておいて、それっぽいのを見つけたらアリサに聞いて確認。
 ヘチマみたいな物だったらヘチマたわしを作ってみよう。

「こんな、ものかな。よっと――」

 アリサは洗っていた服を絞った後、勢いよく振りパンッと辺りに鳴り響いた。
 へぇー、こっちの世界でも同じ事をするんだな。

「ねぇねぇ、こんな感じで、いいかな?」

 アリサは服を広げて、僕に確認して来た。
 汚れが目立つほどの事はしてないし、水洗いでも綺麗になっているな。

「そ、それでいいよ。そこの日の当たる木の枝にでもかけて、干しておいてくれる?」

「うん、わかった」

 干された服がそよ風で揺れている。
 こう綺麗になった物を見るのって、なんか気分が良いよな。
 綺麗に……か。

「……」

 目線を洗濯物から自分の着ている服に移した。
 そういえば、雨で濡れて以降はこの服を洗濯していないな。

「くんくん……うーん……」

 服の一部を引っ張って臭いを嗅いでみた。

「臭い……かな?」

 まぁ臭くなくても、流石に洗濯はしないといけないよな。
 清潔にするのもサバイバルだと大事な事だし。
 そうと決まれば、今夜あたりに灰汁作りをしておこう。
 で、明日は僕とアリサの服を洗濯……あっ! そうなると僕の着る服が無いじゃないか!
 じゃあ服が流れ着くまであきらめるか? ……いや、それだといつになるかわからないから駄目だ。

 うー雨に濡れた時は1人だったから裸になったけど、流石にアリサがいる前では無理。
 ヘチマの代用とか考えている場合じゃないぞ。
 服だ、服の代用を早急に手に入れなければいけない!

「えーと……えーと……えーと……えーと……」

 僕は必死になって頭を回転させつつ辺りを見わたした。
 あるのは葉、葉、葉。
 ぐおおお! 葉っぱ1枚で前の部分を格好しか思いつかない!!
 裸よりましかもしれんが、そんな格好もできるわけがないよ!!
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