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7章 様々な使い道

7、異世界のつみれのすまし汁

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 煮詰めて、海水を継ぎ足して、煮詰めて、海水を継ぎ足して、煮詰めてを繰り返す事3回。
 これでそれなりの量の塩が取れるくらいの塩分濃度になったはずだから、次の工程へ移るとしよう。

「バ、バムムに海水を移すね」

「うん、わかった」

 海水を煮ている間に、器にするバムムを4本用意。
 量的には3本くらいでもいい気がするけど、念には念をだ。
 で、バムムの上に拾った服の上の部分を被せて……拳を服にちょっと押し付けて窪みを作る。
 そして、窪みのところに煮詰めた海水を流し込んで濾す。

 この世界の布がどの位の密度なのかが勝負だな。
 低密度だと塩以外の成分も流れ出てしまうから、うまく塩は出来ないだろう。
 あっそうだ……こういう時に、作った炭を使えば良かったんだ。
 窪みに粗く砕いた炭を入れれば何も無しより良かったかも。
 とはいえ、今から炭を取りに拠点に戻るのは時間が勿体ないからこれで行こう。

「……」

「?」

 アリサが服を被せたバムムをじっと見つめている。
 もしかして、服をこんな風に使うのに抵抗があるのかな。
 まぁその貴重な服だから気持ちがわからんでもないけど、汚れたら洗えばいいだけの話なんだけどな。

「え、えと、どうしたの?」

「いや……服、被せるより、うちの爪で切り裂いて、布にして被せた方が、良くない?」

 全然そんな事は無かった。
 むしろ僕より扱いが酷い。

「そ、それは出来ないよ。2人とも今着ている服しかないから、これは予備として残しておかないと……」

「そう? うちは服が無くても、この島なら別に、困らな――」

「困ります!」

 仮に僕の服が駄目になるのは、まだいいとしよう。
 アリサの場合は、別の意味で僕の命に関わる事になるのは目に見えている。
 絶対にアリサの服は死守せねば。

「とっとにかく、服は貴重だから……海水を移すよ」

「う、うん……貴重な割に、この使い方は、おかしいような……」

 腑に落ちない感じのアリサを横目に見つつ、僕は着ている服を脱いで手に巻き付けて土器の器を持ち上げた。
 そして、窪みに向かってゆっくりと海水を流した。
 全部流し終えたら、土器の器に水を入れて綺麗に洗う。
 これをしておかないと、ろ過しても土器についた成分がまた入ってしまって意味が無い。

 ろ過が出来たら土器の器に戻して、また煮詰める。
 次は水分のぎりぎりまで煮込むから、焦げない様に気を付けながらかき混ぜる。
 すると、アリサが舐めた時と同じように片栗粉を水で溶いたように白くてドロドロの状態になって来た。
 この状態になったら、服の下部分を使ってまたろ過をする。
 そして布に残った白い物が塩、下に流れた水分がニガリだ。
 ニガリを使えば豆腐が作れる……けど豆腐の作り方なんて知らないし、他のニガリの使い道も知らないから、勿体ないけど捨てるしかないか。

 後は、布に残った白い物の水分を飛ばしてしてしまえば……。

「……完成っと!」

「おお~! 本当に、出来た」

 見た目は塩ぽいけど、味が大事だ。
 ちゃんと塩の味になっているかな?

「ちょっと味見を……」

「あ、うちも、うちも」

 僕達は塩をひと掴みして、ペロっと舐めてみた。

「「……」」

 うーん……しょっぱくて塩は塩だけど、結構雑味が混じっているな。
 やっぱり、服でろ過するのは限界があったか。
 まぁとりあえずは出来たんだし、これで良しとしよう。
 今度作るときに気を付ければいいしな。

「……おお、これは間違いなく、塩だわ。ねぇねぇ! さっそく、この塩を使って、魚焼こうよ!」

「そ、そうだね」

 魚の塩焼きか。
 想像していた食べ物が、もう目の前まで来たな。

「じゃあ、罠の中から、出すね~」

 アリサはもんどりを逆さまにして、籠の中に小魚達を出した。
 ちゃんと確認していなかったけど結構な数の小魚が捕れているな。
 食べれないくちばしイワシ、スケルトンフナ、グッピードジョウ。
 そこにアブラゼミや、僕の足をつついてた奴、昨日見ていないのが3種類ほどか……あれ? 白エビザリガニの姿はないぞ。
 罠の形的に入れなかったのか、逃げ出せたのか……どちらにせよ、もんどりでは獲れない感じか。
 少し残念だな。

「それじゃあ、どんどん、焼いて行くね~」

「……んー」

 これを全部塩焼きにするっていうのも、なんか勿体無いな。
 どうせなら他の方法でも食べたい。
 んー塩焼き以外だと……。

「…………そうだ! ア、アリサ……さん、ちょっと待って」

「?」

「こ、小魚の半分くらいを僕に任せてくれないかな?」

「いい、けど。どうするの?」

「た、卵芋では出来なかったけど、小魚の汁物を作ろうと思うんだ」

 それも、ただ小魚達をそのまま入れるんじゃない。
 僕が作ろうと思うのは……つみれ汁だ。



 小魚を受け取って、調理開始。
 まずは、すっかり食べるのを忘れていた透明の海藻アドサ。
 昆布の様に旨味を出してくれる事を期待して、土器の器の中に入れて煮込む。

 煮込んでいる間に小魚達の調理。
 ワタと骨をとって、鱗と皮を剥ぐ。
 それができたら、小魚達をまな板代わり石の中央に寄せて……包丁代わりのドラゴンの鱗で叩く!
 マグロのたたきみたいになるまでひたすら叩く。
 それが出来たら、今度はコネコネと煉る。
 本当ならここでつなぎとして小麦粉や卵を入れて煮崩れしない様にするんだけど、どっちも無いから崩れませんようにと祈りながら煉るべし。

 そして、タネが出来たら手で一口サイズに千切って、沸騰したお湯の中に落として茹でる。
 食べごろになると、つみれが浮きあがってくるはずなんだが……。

「…………よし、上がって来た上がって来た」

 形も崩れていないし、完璧だな。
 入れた分のつみれが上がって来たら、最後の仕上げに塩を煮汁の中に入れて出来上がり。
 すくえる物が無いから、味見できていないのがちょっと心配だけど……大丈夫だろう。

 後は、枝でつみれを刺して取り出して、バムムの器に入れてその中に煮汁も入れる。
 見た目は完全につみれの入ったすまし汁だな。

「あっ、おいしそうね。はい、こっちも、焼けたよ」

 アリサから小魚の塩焼きを受け取って、アリサの分のつみれのすまし汁を渡した。
 目の前には小魚の塩焼きとつみれのすまし汁。
 まさか、無人島でこんな光景を目にするとは思わなかったな。

「いただきま~す! あ~ん!」

 アリサの奴、もう食べ始めたよ。
 この光景に感動しているの僕だけか。
 ……まぁいいや、僕も食べよっと
 小魚の塩焼きからいくか。

「はむっ……もぐもぐ……おおっ……」

 塩って本当に大事だな。
 昨日は小魚達を食べた時、どれも淡泊な味だった。
 特にグッピードジョウは見た目に反して、ほとんど味が無かった。
 それがどうだ、多少雑味があるもの塩を振る事によって味がついてすごくうまい!

「んん~! 塩味がついて、おいしいね~!」

 アリサも僕と同じ思いの様だな。
 よし、次はつみれのすまし汁だ。
 まずは汁を一口。

「――ズズ」

 んー……少し魚の臭みが出ちゃっているな。
 けど、それをふまえてもおいしい。
 特にアドサを入れたのが良かった。
 昆布に近い旨味が汁に出ていて、塩加減もいい。
 これはつみれの方も期待だな。

「ふーふー……はむっ……もぐもぐ……」

 ……あれ、思ったよりいまいちだぞ。
 色んな種類の小魚を混ぜたのに味は淡泊のままだし、魚の臭みが強い。
 これはつみれにも塩を入れて、味を付けを付けた方が良かったか。
 まずくもないが、うまくもないって奴だな。

「ふ~ふ~……ズズズ……」

 お、アリサもつみれのすまし汁を食べ始めていた。
 反応はどうだろう。

「モグモグ…………わ~! これ、おいしい! リョー、スープと団子おいしいよ! ズズズッ」

 ちゃんと満足している感じだな。
 良かった、アリサの口にはあったようだ。
 審査されているみたいでちょっとドキドキしてしまった。
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