【完結】僕は今、異世界の無人島で生活しています。

コル

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6章 色々と手にして

2、バムムの木

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 近くでバムムの木を見て改めて思う。
 本当に木という呼び名でいいのだろうかと。
 だって、幹と言うより茎って言った方がしっくりくるんだもの。
 バムムの木の周りに生えている、竹くらいに太くてまっすぐ伸びた茶色の木こそが【木】だと思うね。
 まぁこの世界がそう呼んでいるから仕方ない事なんだけど……なんか納得がいかない。

「っと、そんなどうでもいい事を考えている場合じゃないな」

 さっさとバムムの木を伐ってしまわないと。
 太さは5cmほどだから、この鱗斧でも余裕で伐れるだろう。
 幹の部分を左手で持って……バムムの木の根元付近に向かって鱗斧を振り落とす!

「ふんっ!」

 カコーンという乾いた音が辺りに鳴り響いて、鱗斧の先がバムムの木につき刺ささった。

「……あら?」

 この太さを1発で伐れなかったのは予想外だな。
 思ったより強度があるようだから、これは期待できるぞ。

「ふんっ! ふんっ! ふん!!」

 続けざまに鱗斧を根元に向かって振り下ろし、バムムの木を伐り倒すことが出来た。
 切り口を見てみると、確かに竹の様に中は空洞になっているようだ。

「後は竹みたいに使えるかどうか……だな」

 まずは節の部分を目安に切って数本の棒を作ろう。
 えーと、節……節……。

「…………あれ?」

 バムムの木には節の出っ張りらしきものが全く見当たらない。
 まさかと思い、20cmほどの長さで切り落として中を覗き込んでみた。

「……マジかよ」

 覗き込んだ向う側の景色が見えている。
 確認の為にもう1本切り落として覗いて見ると、1本目と同じで覗き込んだ向う側が見える。
 間違いない、このバムムの木には竹の様に節が無いんだ。

 くそっ! これじゃあ竹筒の様に節を残して使う事が出来ない。
 容器、水筒、食材を詰めて火にかける調理とかでサバイバルではかなり重宝したのに。
 これはショックだな。

「……いや、節がないだけ落ち込んでどうする」

 節の存在は確かに重要だ。
 だからといって、竹の様に使えないと決まったわけじゃない。
 現にこの筒状になっているだけでも十分に使える。
 長めに切り落とせば、焚き火やかまどの火に空気を送る火吹き棒に出来るわけだ。
 吹き矢の筒として武器にもつかえる……かもしれない。
 うん、こんな感じで節以外の使い道を考えだしていこう。

 バムムの木を割るのも薪割りの様にすれば行けるはずだ。
 まずは棒を石の上に立てて、鱗斧の先を当てたまま台に軽くコンコンと打ち付けて、刃先を食い込ませる。
 食い込んで棒が持ち上がる状態になったら石に向かって振り下ろす。
 パカンとバムムの木は綺麗に真っ二つに割れた。
 ちくわを縦半分に切ったような感じになったな。

 この状態ですぐに思いつくのは、流しそうめんの水路だよな。
 そうだ! 沢の水を拠点に流して……いや、それはかなり厳しいか。
 沢と拠点の距離を考えると、相当な長さが必要になる。
 バムムの木が何百本必要になるのやら。
 水路を通すだけで雨期に入っちゃうよ。

 水路以外だと……あ、そういえば竹の半分を繋いでシェルターの屋根、樋にしている人が居たな。
 って、バムムの木だと太さが全然足りないじゃないか。
 こっちも相当な数が必要になっちゃうよ。
 はあー……半分の使い道も思いつかない状態だな。
 となれば、どんどん裂いて棒状にしてみよう。

 僕は竹串状になったバムムを上下に曲げたり、捩じったりを繰り返してみた。
 しなやかで折れにくいところは竹とほとんど同じだな。
 となると……ざる、籠、箸、串といった編んだり削ったりする竹細工系はいけそうかな。
 火であぶって曲げる事が出来るのかどうかは、アリサの所に戻ってから確認しよう。

 後、出来そうなのは釣り竿の竿と武器の弓か。
 けど、どっちも糸問題がぶち当たって来る。
 糸が無ければ機能しない。
 竹の繊維から作った糸があるっていうのはネットで見た事があるけど、流石に作り方まではわからない。

 ………………。
 とりあえず、火であぶったらどうなるかを確認してみるか。

「け、決して糸問題に目を背けたわけじゃない。今できる事を優先しているだけだ!」

 誰も聞いていないのに、そんな事を口走りつつ僕はアリサの元へと戻った。



「あ、必要な、若木は見つかった?」

「へっ?」

 戻るなり、アリサの口から不穏な単語が飛び出した。

「……い、今、わ、若木って……言った?」

「? うん、言ったけど……」

 マジデスカ。

「ちょっ、ちょっと待って! そんな成長したバムムの木なんて無かったよ!?」

 あのブロッコリーが成長して大きくなっていたら、それに気付かないわけがない。
 間違いなくあの場所にあったのはこのサイズのみ。
 どういう事なんだ。

「そんな、はずないわ。若木の傍に、あったでしょ。この位の太さで、まっすぐに伸びた茶色の木が」

 アリサが両手で竹くらいの太さの輪っかを作った。
 竹くらいの太さで、まっすぐ伸びた茶色の木……って、あの【木】の事じゃないか!

「ど、どうして成長した方を教えてくれなかったの!?」

「教えてくれなかったのって、リョーは、緑色で中が空洞の植物って、聞いて来たんじゃない」

「うっ!」

 確かにそう聞いたけど……そんな成長の仕方をするなんて思わないよ。

「……成長すると、他はどう変わるの……?」

「他? あ~先端部分が、変化するわね。後は……若木と、同じかな」

「……そ、そう……」

 中身が空洞なのは変わらずか。
 けど、性質が変わっているかどうかはわからない。
 手間だけどもう一回戻って確認しないといけないな。
 はぁ……まさか、こんなところで深っかい落とし穴があるとは思いもよらなかったよ。
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