【完結】僕は今、異世界の無人島で生活しています。

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5章 いざ海へ

6、鱗の限界

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 で、焚き火の所に戻って来たけどカゴカサってどうやって食べるんだろ。
 串焼き……はこの魚の形状からして串をさすのって難しいよな。
 となれば、普通の魚の様にさばいて石の上に置いて焼くしかないか。
 サバイバル動画でよく魚をさばいているシーンがあるけど、基本魚は切り身しか買わないから果たしてうまくさばけるか不安ではある。
 しかも、包丁といった刃物が無い……現状、刃物代わりで使っているのはドラゴンの鱗のみ。
 これでやらないといけないと思うとますます不安になるな。

「ある意味、賭けだな……あっそうだ」

 身近にあるじゃないか、切れ味抜群の刃物が。

「ア、アリサ……さん。ちょっといいかな?」

「ん? なに?」

「こ、このカゴカサを、その爪でさばいてほしんだけど……出来るかな?」

 それは切れ味抜群なアリサの鉤爪だ。
 足の爪でさばくのはどうなんだって感じもするけど、使える物は使っていくそれがサバイバル。

「……うちが、さばくの? え~と……身がズタボロになっても、いいのなら……」

「ズタボロ!?」

「爪で細かい作業を、するのは苦手なの。切り裂くとか、突き刺すみたいな事は得意なんだけど……」

 なるほど、そういう事ですか。
 自分でズタボロにすると言っちゃってるから、本当にそうなってしまうんだろうな。
 うーん……せっかくの食材だからそうなるのは困る。
 となればドラゴンの鱗でやった方がまだましか。
 その包丁代わりのドラゴンの鱗を手に取り、波打ち際へと向かった。

 えーと、まずは尻尾から頭の向きに鱗の刃先を滑らせて全身のウロコを取って行く。
 この取れた魚の鱗も再利用できたらいいんだけど、そういうのは見たことも聞いたことないから無いのかな。
 少しでも有効活用したい気持ちがあるから、ちょっともったいない感じがする。

「……これで大体とれたかな?」

 ウロコを取ったら海の中につけて洗い流す。
 流し終えたら、次は内臓とりだ。
 肛門から刃物の先を入れて、腹を開くんだけど……ドラゴンの鱗の場合は先端の尖った部分を入れるしかないか。
 僕は無理やりドラゴンの鱗を入れ込み、カゴカサの腹かけて切り始めた。
 うぐぐぐぐ……これは切っているというより、引き裂いている感じだな。
 だからといって、力任せにやってはいけない。
 魚の内臓を傷付けてしまうと、苦味が身に移る可能性があるからな。

 腹を開いたら、の中につけて内臓を手で取り出す。
 あーあ、切り口がギザギザになっていて、これはこれでボロボロな感じになっちゃっているよ。
 まぁ見栄えが悪いというだけで味とかの問題は無いとは思うけど……ちょっと心配だな。

 で、内臓を取り終えたら次は頭なんだけど……これが問題。
 ドラゴンの鱗で頭を落とすのは無理だよな。
 ここはアリサの爪を使って切り落とすしか……。

「あっ頭は食べれるから、落とさなくていいわよ」

 どうしようか悩んでいると、アリサが察してくれてアドバイスをくれた。

「わ、わかった」

 なるほど、胴体の身が少ないから頭の身も食べるってわけか。
 そう考えると悩む必要なんて全くなかったな。
 なら、下ごしらえはこれで終わりだな。

「じ、じゃあこれで完成」

 ふぅー魚をさばくだけなのに、この疲労はやばいな。

「よく鱗で、そこまでできたね。すごいわ」

「あ、ありがとう……」

 地味に苦労したから、褒められて素直にうれしい。
 でも、これからの事を考えると刃物は欲しいところだ。
 毎回ドラゴンの鱗で魚をさばくのは大変だし、もしかしたら動物をさばく事になるかもしれない。
 となればドラゴンの鱗だと限界がある。
 どうにかして刃物を手に入れたいところだな……。

「……この磯の石で、石器を作ってみるのも……ん?」

 石器に出来そうな石が無いか、辺りを見わたしてみると石の上に変な物がのっかっている事に気が付いた。
 細長くて半透明で、ビニール紐の様な……ん? ビニール紐?

「……あっ! そうだった!」

 僕は慌ててビニール紐の所まで走って行った。

「え? ちょっ、ちょっと!」

 やっぱり透明な海藻だ。
 ミースルを取るのに邪魔だからと、とりあえずこの辺り置いたのをすっかり忘れてた。
 拾い上げるてみると若干水分が抜けた感じがする。
 少しとはいえ、日に当てた状態だったからかな。
 それで透明だったのが半透明になってしまったのかもしれない。
 
「もう~急に、どうしたのよ……あれ、それアドサじゃない」

「これアドサっていうんだ」

「うん、そう。それにしても、よく見つけたわね。その海藻、透明だから、なかなか見つからないのよ」

 そりゃそうだ。
 海の中の透明な物なんて、そう簡単に見つかるわけがない。
 僕が見つけたのも偶然だったし。

「ぐ、偶然見つけたんだ。これって食べれるの?」

「食べられるわよ。海の近くの町や村の、スープに入っているわ」

「スープ以外には?」

「スープ以外? ん~……それ以外は、食べた事ないわね」
 
 海の近くでスープ以外食べた事が無いとなると生で食べられる海藻じゃないっぽいな。
 生で食べる習慣がないというのも考えられるけど、それだけで生の状態で食べるのはあまりにもリスクが高すぎる。
 余計な事をせず、アドサを食べる時は必ず火を通すようにしよう。
 


 焼き石の上にはジュージューといい音を出して、いい具合に焦げ目がついてきたカゴカサが1匹。
 辺りには魚が焼けるいい匂いも漂っている。
 うおおお……この匂いを嗅いでいると、めちゃくちゃ米が欲しくなる。

「そろそろ、いいかな……あちち」

 アリサが木の枝を使って、カゴカサの身をほぐして取り分けてくれた。
 ほぐした感じはサンマみたいだ。
 ますます米がほしいよ。

「で~頭、だけど……」

 おっと、これはアリサに譲った方がいいよな。
 だってカゴカサをとったのはアリサなんだから、その権利がある。

「ぼ、僕の事は気にしないでアリサ……さんが食べてよ」

「え? でも……」

「カ、カゴカサをとったのはアリサ……さんなんだから遠慮しないで。そ、それに今度は罠を作って捕ろう思うんだ。僕は、その時に食べるよ」

「……わかったわ。じゃあ、遠慮なく」

 アリサは嬉しそうに、カゴカサの頭を手元に寄せて……。

「――ハグッ!」

「!?」

 文字通り、頭から噛みついた。
 そしてカゴカサの頭をかみ砕き、咀嚼しはじめた。

 えっ!? 頭は食べれるってそういう事なの!?
 僕の思っていた事と全然違うんですけど!!

「バリボリバリボリ……この歯ごたえ、たまらないわ……バリボリバリボリ」

 この音から察するに、どの道僕はカゴカサの頭を食べれなかったのは間違いない。
 今度から足の鉤爪だけじゃなく、アリサの顎と歯も注意しないといけないな。
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