【完結】僕は今、異世界の無人島で生活しています。

コル

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4章 物作り

1、斧作り

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 僕は拾って来たL字型の木材を取り出して、斧を作る作業に取り掛かった。
 まずはL字の握りやす方を選んで柄にする……うん、こっち側の方が握りやすいな。
 で、握らない部分に鱗を置く為にみぞを掘って加工する。
 加工する場所に鱗でざっと線を引いて、鱗を使って削り始めた。
 鱗を置く場所を鱗で作る……か。
 現状、かなり鱗に頼りまくりだな。
 サバイバルはナイフ1本あるかないかで相当変わるという。
 僕にとってはそのナイフがこの鱗になるな。
 見つけられてなかったら、もっとサバイバル生活が大変だったかもしれない。

「お? ねぇねぇ、何作ろうとしているの?」

 木を鱗で削っていると、アリサが興味津々で僕の隣に座って来た。

「――っ!」

 急な接近に僕はとっさに少しだけアリサから距離をとってしまった。
 この無人島を2人で生活する以上、こういった行動を一々反応していたらきりがないし、アリサを避けているみたいに見えてしまって印象も悪くなってしまう。
 そうなると今後の生活で手伝って貰えない可能性もあるから良くない。
 だから、駄目なのはわかっているんだけど……もはや条件反射状態だ。
 こういう所を治していくか慣れさせなて行かないと。

「こ、これは斧を作ろうと思ってさ」

 今削っている場所に鱗を乗せて、こんな風になるんだよとアリサにアピールをした。
 それを見たアリサは目をまん丸にして。

「え、それ斧? いや、斧ってさ、こう刃と棒が平行している物じゃない。でも、今リョーが見せてたのって斧というより……」

 あーアリサの言いたい事はわかる。

「クワって言いたいんでしょ?」

「そう! クワ! それじゃあ、柄の短いクワよ」

 僕も初めて石斧作り動画を観た時そう思ったな。

「そ、それは縦斧って言って、僕が作ろうとしているのは横斧なんだ」

 刃と柄が平行についているのが、一般的によく見る斧で縦斧。
 そして刃が柄が直交についていていつものが、クワのような形をしているのが横斧だ。
 縦と横の両方のタイプの石斧を作って紹介してくれていた動画には感謝だ。
 知らなかったら縦斧を作ろうとして、大変だったかもしれない。

「へぇ~そうなんだ。横の方が、木が伐りやすいの?」

「あー……木を伐るのは、縦斧の方が向いているらしいんだけど……」

 だから、最初は僕も縦斧を考えていた。

「? じゃあ、そっちで良かったんじゃ?」

「石斧の場合、柄になる棒の先の部分を削って穴を開けて、その穴に加工した石をはめ込むんだよ。けど、石じゃなくて鱗を刃として使う場合はこの鱗の薄さが問題なんだ」

 石斧なら穴と石の大きさ調整して、ぴったりハマる様に出来るけど鱗はそうはいかない。
 鱗は硬くて厚さも変えられないから調整できない、となると柄となる棒でしか調整するしかない。
 それも、はめ込む穴が細い形状態でだ。
 穴が大きいと隙間のせいで鱗が左右ぐらつく、それだと到底使い物にはならない。
 隙間に粘樹から作れる粘土を埋める方法も考えたけど、がっちりとかたまるパテならともかく粘土だと木を何回か叩いただけで衝撃で簡単に剥がれ落ちてしまう。

 そうなると、今できるのは横斧になるという訳だ。
 この辺りを事を簡単にアリサに説明して、僕は横斧作りを再開した。

「なるほどね…………ん? クンクン……なんか、焦げ臭いような……あっ! ゴブリンノコシカゲが、焦げちゃう!」

 アリサは慌ててゴブリンノコシカゲの所に戻り、回転させて別の面を焼き始めた。
 ハマラシュウと違ってあれは焦げちゃ駄目のか。



 約3分の1くらいを削ったけど、このくらいでいいかな。
 まぁダメならまた削ればいいし、まずはこれでやってみよう。
 鱗を削ったみぞに乗せてから蔦を……。

「おっと、その前にまだやる事があったんだった」

 持ち手になる部分の樹皮をめくって、全体的に柄を火にあぶってっと……。
 僕はかまどの火の中に柄を入れ込んだ。

「え? ちょっと、なにしているの!? せっかく、作ったのを燃やしちゃうわけ?」

 僕の行動にアリサは驚きの声をあげた。

「燃やさないよ、こうやって焦げたかなってくらいまで火であぶれば、木が硬くなって強度が増すんだよ」

 とは言っても、本当に燃えて木炭になってしまったら強度なんてガタ落ちで使い物にならない。
 十分に気を付けなければ。

「…………こんな所かな? ――あっつ!」

 流石にあぶりたては熱を持っていたので、ちょっと冷ましてから次の工程へ。
 後は削ったみぞの上に鱗を置いて、そこを蔓をグルグルに巻いて固定すれば……。

「鱗斧の完成!」

「お~!」

 僕の言葉にアリサは拍手をしてくれた。
 拍手の音を聞くと達成感がすごいな。
 よし、さっそく切れ味を試すとするか。

 僕は立ち上がり、近くの木に向かって鱗斧を振り下ろした。
 そして、カコーンと乾いた音が辺りに鳴り響いた。

「…………あれ?」

 ここで予想外の事が起きた。
 鱗が思ったより木に刺さっていない。
 おまけにしっかり固定したつもりだったけど木を叩いた瞬間、若干鱗がズレた感触もした。

「あれ……? もしかして、失敗……?」

 うぐっ。
 認めたくないけど、アリサの言う通りだ。

「うん……このままだと、使い物にならない。鱗をもっとしっかりと固定しないと駄目だし、深く木に突き刺さらないとだし……」

 まずいぞ、これは非常にまずい。
 今後の作業の事を考えると斧は必要不可欠。
 どうにかして改善策を練らなければ。

「うーん…………」

 僕は必死に頭を回転させた。
 何かないか……何か……。

「しっかりと、固定が出来て、深く木に突き刺す方法か……う~ん…………あっ、ねぇねぇ! この石で挟んじゃえば、いいんじゃないの?」

 アリサがかまどの石に指をさした。

「挟む……そうか! その手があった!」

 鱗みたいな薄い物は、挟んだ方がしっかりと固定される。
 そんな簡単な事、どうしてすぐに思いつかないかな。
 僕は急いで蔓を外し、沢で拾って来た石を鱗の上に乗せてからもう一度蔓を巻いた。

「……これで、よし…………うまくいってくれよ! ふん!」

 改良して出来上がった鱗斧を同じ木に向かって再び振り下ろした。
 カコーンと先ほどと同じ乾いた音が辺りに鳴り響いた。
 しかし、音は同じでも鱗斧の状態は違っていた。
 深く木に刺さり、鱗がズレた感触も全くなかった。

 石で鱗を挟んだのは正解だった。
 しっかり固定されただけじゃなく、石の重みもあったからだ。
 重みが入った分、斧を降り下ろした時の勢いも強くなった。
 これで木の伐採もかなり楽になるぞ!

「鱗斧の完成だああ!!」

「お~~~~! やったね!!」

 アリサがまた拍手をしてくれた。
 違うよ、拍手を送りたいのは僕の方だ。
 だって鱗斧が完成したのは、助言をしてくれたアリサのおかげなんだから。
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