【完結】僕は今、異世界の無人島で生活しています。

コル

文字の大きさ
上 下
13 / 66
3章 1つ1つ

5、未知の植物

しおりを挟む
 森の中を探索して1時間はたっただろうか。
 拠点に出来そうなところは中々見つからない。
 食料も毒の実、毒キノコ、毒の葉っぱと食べれない物ばかり。
 解熱や傷薬になる薬草系の植物も生えてはいるものの、食料としては使えないのは辛い。
 んー探索のルートが悪いのか、時期が悪いのか、この島には元々食べられる物が少ないのか……もしかしたらその3つ全部かも。
 そうなると、食料は魚介類に絞った方がいいかもしれないな。

「ん? あの木は……」

 僕の前を歩いていたアリサが茂みの中へと入って行った。
 慌てて後を追うと、アリサは青い樹皮をした木の前で立ち止まった。
 あの木はどうしたっていうんだろ。

「うん、間違いない。粘樹ねんじゅだわ」

粘樹ねんじゅ?」

 名前を聞く限り粘り気がある木って感じだけど……見た感じ、樹皮が青色をしてるって所以外は普通の木にしか見えない。

「この木、ちょっとおもしろい性質を持ってるから、見てて」

「?」

 アリサは足の爪で粘樹に切れ込みを入れると、その傷から樹皮と同じ青色の樹液が垂れて来た。
 この樹液の粘りが強いのかな?
 いや、でも樹液って大抵粘り気が強いよな……うーん?

「で~、こうして……」

 そして、垂れ落ちた樹液を土と混ぜだした。
 どう見ても土遊びをしている様にしかみえない。
 マジで何をやっているんだろう。

「こんな感じかな。はい、もってみて」

 アリサの手には普通の泥の塊がのっかっている。
 よくわからないまま、僕は泥の塊を手に取った。

「……あれ?」

 これって普通の泥の塊じゃないぞ。
 粘っこい土の塊……この感触って――。

「粘土じゃないか!」

「そう、粘樹の樹液と土を混ぜると、粘土になるの。乾かすと、ちゃんと硬くもなるのよ。ね? 面白いでしょ」

 乾かすと固くもなる……なら、火で焼いたら土器を作れるんじゃないか?
 もし土器が作れるのなら、この無人島において革命的だ!

「うん! これはすごく面白いよ!」

 これは絶対に土器が作れるかどうか試してみないといけない。
 ある意味、食べ物よりもいい物を見つけたかもしれないぞ。



「うーん……」

 早く土器の実験をしたいのに、未だに拠点に出来そうな場所が見つからない。
 火を起こして試すだけだし、もうその辺りでやってもいいかな。
 そんな事を考えていると。

「お~いっ! リョー!」

「はい?」

 少し離れたところでアリサが僕を呼んでいた。
 あれこれと考え事をしている間に、いつの間にか距離が空いてしまっていたらしい。

「食べられるキノコ、発見したよ!」

「――本当に!?」

 その言葉に、僕は大急ぎでアリサの居る場所まで駆け寄った。
 食べれるキノコなんて、今の所一番まともな食べ物じゃないか。
 そう思うだけで嬉しくて涙が出てきたよ。

「ゴブリンノコシカケよ」

 アリサが木の幹から飛び出している、茶色の半月状の物に指をさした。

「ゴブリンノコシカケ……?」

 見た感じは、人の頭くらいの大きさがあるサルノコシカケ。
 サルじゃなくてゴブリンって呼ばれてるあたり異世界だなーと感じるな。
 いや、それよりも。

「……本当に食べれるの……? それ……」

 サルノコシカケは硬いし、苦いしで食べ物としては不向きだったはず。
 だから一般的には乾燥させてから粉末状にして、それを煎じてお茶として飲むのが基本なんだ。

「食べれるわよ。けど、このままだと硬くて歯が折れちゃうから、表面の皮を削り取って、水に浸して柔らかくしないといけないけどね」

 干物を水で戻すみたいに食べるのか。
 見た目はサルノコシカケに似ているのに全然違うな。

「あとさ、あの場所って、使えるんじゃない?」

「あの場所? ……あっ」

 アリサの目線の先を追いかけると木がまばらに生え、雑草が生い茂っている空き地があった。
 広さ的には6畳くらいだろうか。
 あの広さなら十分拠点に使えるかもしれない。



 うん、この空き地の地面はしっかりしている。
 周辺もアリサに調べて貰って危険はなかった。
 崖下でも無い、古い木も無い、大きな木の実も無い。
 場所は大体だけど島の西南辺りくらいか。
 ちょっと沢まで遠いけど……通えない距離じゃない。

「ここを拠点にしようと思うんだけど、問題はないかな?」

「うん、うちは問題ないよ」

 よし、じゃあ拠点作りを開始しよう。
 まずはシェルターを……っと言いたいところだけど、差し掛けシェルターは2人も入れないし、雨風が強かった場合は役目を果たせないのは身をもって経験積み。
 雨期の事を考えると作るテント、出来れば家みたいな屋根と壁があるのが理想だろう。

 ただ、それだと柱にする木は差し掛けシェルターより太い木が必要になる。
 他にも必要な木材や薪の事も考えると、太い木を何本も鱗で削るなんて相当時間が掛かる。
 となれると木を伐る道具、斧が理想だよな。
 昔の人は石斧を使っていたけど、僕の場合は……この鱗を使うとしよう。
 石より頑丈だし、刃物状に加工もしなくて良いからな。
 ただ鱗斧なんて聞いた事がないし、僕の思い付きで作るからうまくいくかはわからないけど……やるしかないよな。

「じゃあ僕は沢に行ってゴブリンノコシカケを水に浸しつつ石を集めて来るから、その間にアリサさんは草むしりとか空き地の整地をしておいてくれないかな?」

「整地ね。わかったわ、まかせて」

 ここを拠点にするのから、もうかまどを作ってしまおう。
 何回も沢に行っているのにまともに石運びが出来ていないのは何でなんだろうか。
 まぁここ数日まともに筋トレができてなかったし、これもトレーニングの一環だと思ってがんばろう。
 そう自分を奮い立たせ、沢へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界チートはお手の物

スライド
ファンタジー
 16歳の少年秋月悠斗は、ある日突然トラックにひかれてその人生を終えてしまう。しかし、エレナと名乗る女神にチート能力を与えられ、異世界『レイアード』へと転移するのだった。※この作品は「小説家になろう」でも投稿しています。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

異世界転移しても所詮引きこもりじゃ無双なんて無理!しょうがないので幼馴染にパワーレベリングして貰います

榊与一
ファンタジー
異世界で召喚士! 召喚したゴブリン3匹に魔物を押さえつけさせ、包丁片手にザク・ザク・ザク。 あれ?召喚士ってこんな感じだったっけ?なんか思ってったのと違うんだが? っていうか召喚士弱すぎねぇか?ひょっとしてはずれ引いちゃった? 異世界生活早々壁にぶつかり困っていたところに、同じく異世界転移していた幼馴染の彩音と出会う。 彩音、お前もこっち来てたのか? って敵全部ワンパンかよ! 真面目にコツコツとなんかやってらんねぇ!頼む!寄生させてくれ!! 果たして彩音は俺の救いの女神になってくれるのか? 理想と現実の違いを痛感し、余りにも弱すぎる現状を打破すべく、俺は強すぎる幼馴染に寄生する。 これは何事にも無気力だった引き篭もりの青年が、異世界で力を手に入れ、やがて世界を救う物語。 幼馴染に折檻されたり、美少女エルフやウェディングドレス姿の頭のおかしいエルフといちゃついたりいちゃつかなかったりするお話です。主人公は強い幼馴染にガンガン寄生してバンバン強くなっていき、最終的には幼馴染すらも……。 たかしの成長(寄生)、からの幼馴染への下克上を楽しんで頂けたら幸いです。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

処理中です...