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最終章 魔王の我輩、勇者の我輩

7 『食らうがいい我輩の固有魔法の力を!!』

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「まったく勇者殿は相変わらずじゃな」

「あの、ダリル様……」

「なんじゃ?」

「叫んでいた時はともかく、今の会話がデール殿に聞こえていたようですが」

「それが?」

「戦闘が始まる前の時のも聞こえていたんじゃ……?」

「あ……じゃがあいつは普通じゃったぞ?」

「デール殿も思う所はあったと思いますが……恐らく考えるのが面倒くさくなってとりあえず目の前のアナネットの事しか考えないようにしたのでは……」

「勇者殿じゃと……それじゃな……たぶん」

「……プッ、アハハハハハハ!」

「え? ちょっとフェリシア? どうしたの!? 急に笑い出すなんて!」

「どうしたのじゃ、フェリシア!」

「ハハハハハハ……ハァ、ハァ、すっすみませんです……あの姿でもやっぱり中身はデール様のままなんだと思うと今まで魔王なのか勇者なのかそんな事を考えていた自分達が馬鹿らしくいと思ったです、それでつい笑っちゃったです……」

「…………クス、確かにそうね。あれを見ていると魔王でも勇者でもどっちでもいい、どうなろうとデール殿はデール殿だったわ」

「ダッハハハ! そうじゃな! わしら馬鹿みたいじゃな、ダッハハハ! 」

「…………」

 だから丸聞こえなんだってば、くそ~言いたい放題いやがってあいつ等は……。

「余所見をするとは、なめるのもいい加減にしろ! この!!」

「おっと! そうだな、今は貴様に集中せねばな」

 とはいってもこう四方八方から攻撃されるのはさすがにきつい、だったら。

「ハエのように周りをウロチョロと鬱陶しい、これでも食らえ! エアープレス!!」

 これでアナネット達を全て叩き落してくれるわ!

「「「「クキャキャキャキャ――キャッ」」」」

「はっ!?」

 なっ、4人のアナネット全員が消えただと?
 分身はともかく本体まで消えるとはどういう事だ。

「馬鹿め!」

「うぐっ!」

 しまった、4人全てが分身で本体は我輩の死角にいたのか!
 わき腹を刺されてしまった……刺されて? まずい! アブソーヘイズで刺さされるのは――。

「貴様の魔力、今度こそ貰い受ける!!」

 やっぱりそうなるよな! うおおおおおおおお、これが魔力を吸われる感覚なのか! どんどん魔力が抜かれて体の力が……いや、生命力が失って……いく……これは……如何にかしないと……。
 くそ……これだけは……使いたく……なかった……が、仕方あるまい!

「……調子に……乗るなよ! アナネットオオオオオオ! ファイアボール!!」

 ――を我輩自身に向かって撃つ!

「はっ!? うぐっ! こいつ血迷った事を!」

「ぐおおおおおおおお!」

 分かっていても、やっぱり熱いいいいいい!

「貴様も……燃え尽きたく……なければ……早く離れろ!!」

 というか早く離れてくれええええええ、これ以上はもたない!

「くっこれ以上は――ちぃ!!」

 よかった、意外にすんなり離れた。
 ってそんなこと言っている場合ではない、消火消火!

「スプラッシュ! ――ぜぇ……ぜぇ……ふぅ……どうだ、我輩の奥の手の威力は!」

「奥の手って、ただの自滅行為ではないか! 馬鹿な真似を」

「チョッハハハハ……ん? うお!?」

 我輩の自慢のマントが燃えて悲惨な事になっておるし!
 このマントはお気に入りだったのに……何たる事だ。

「くそ、私のローブや羽まで焦げてしまった……」

 でもフード部分はほとんど無事なんだよな……どうなっておるのだろう?
 いや、今はそんな事よりアブソーヘイズの事だ。すっかり忘れておったがあの魔力吸収は実に厄介だ……次ぎ刺されたらおしまいだな。
 おのれ、我輩が使っていた武器が敵に使われるというのはなんとも癪なものだな……使っていた……そう、我輩もアブソーヘイズを使って身、強い所も弱い所も知っているではないか! 考えるんだ、アブソーヘイズの事を、弱点を――あ、あるではないか!! 最大の弱点、いや最大の欠点を!!

「チョッハハハハハハハハ!!」

「おいおい、急に笑い出すなよ気持ちが悪い。お気に入りのマントが燃えてそんなにショックだったのか?」

「ムカッ、違うわ! 貴様を倒す取っておきの手段を思いついただけだ!」

「クキャキャキャ! 私を倒す? 無駄だ、貴様の魔力全ては無理だったが――」

「「「「「あれだけでも十分だったぞ、分身を作り出すにはな」」」」」

 アナネットが5人か、だが……。

「何人に増えようが関係ないぞ、アナネット。ブラックスモーク!!」

「ふん、煙幕か……しかし、そんな事が貴様の取っておきの手段なのか? クキャキャキャ! この煙幕にまぎれて不意打ちか、何ともまぁお粗末な取っておきの手段だこと。こんな物……は吹き飛ばせばいいだけ、エアープレス! さぁこれで丸見……え? デイルワッツがいない!?」

 お~お~アナネット5人が揃いも揃って辺りを探しておるわ、まぬけめ。
 そんな空中で探してもいるわけないんだよ、何せ我輩は……地上におるのだからな!
 煙幕は不意打ちするためでもなんでもない、ただ地上に降りるだけでは追いかけられるからそれを見られないための目くらましだ、距離を取らないと意味が無い作戦だからな。

「チョッハハハ! 我輩はここだ! 食らうがいい我輩の固有魔法の力を!!」

「――いた!! デイルワッツは地上にいるぞ!!」

「大声で笑って自分の居場所を教えるなんて本当に馬鹿な奴ね。それに固有魔法の力だと? そんな盗むだけの魔法で何ができるっていうのかしら、私の下着でも盗むの? クキャキャキャ!!」

 よし、予想通り余裕かまして隙が出来た。今がチャンス。

「だからこそ、だ。初めてだ……この固有魔法が役に立つとは――なっ!」

「ん? なっアブソーヘイズが消え――、なっ何だ!? かっ体が奴に引き寄せられるてる!? いや、これは、後ろから見えない壁を押し付けられているようなこの感じ……そうか! しまった!!」

「チョッハハハ!! 貴様もアブソーヘイズの持ち主だったから知っておろう……この呪われた面倒な力をな。それに言っただろう、何人に増えようが関係ないと……なにせ本物のアブソーヘイズは1本しかないのだ。我輩の固有魔法を使えば簡単に手の中に入る」

 あの状態ではもはや動く事はできない、我輩がフレイザーの時に実体験をしたしな。
 後はこうやってアナネットの方に刃を向け自分から来るのを待つだけ。

「ちくしょおおおおおおおお!」

「お互いこの呪いにはうんざりだな、アナネット」

 自分から刺さりに来てくれると、剣術が使えない我輩でも刺せるからこれは実に楽だ。

「――ガハッ!!」

 これで終わりだな……何故最初から思いつかなかったのだろうか、このやり方……。
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