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第七章 とある天使の昔話

1 『教えてやろう。魔天戦争の終焉を、な』

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「天使とはどういう事だ!? アナネット!!」

「言葉の通りだよ……それに私がエリンだ、アナネットと呼ぶ、な!!」

「うがっ!?」

 グラヴィティバインドか! くそ、体が動かん!

「……エリン……何ぼさっと、突っ立っておるのだ! ……何とかしろ!」

「はぁ……【私】よ、その人間の体の魔力吸収は済んでいるのか?」

「……はい」

 は? 私? この体の魔力?
 そういえばエリンが外に出てから魔力が感じられん。

「そうか、ならばアブソーヘイズをこっちに持って来るんだ」

「……はい」

「……なっ? おい! どうしたと言うのだ? ……なぜあいつの……言いなりに……なっておる!?」

 エリンの奴、アブソーヘイズを拾い上げてアナネットの元へ持って行く……のはまずい!!
 地面にへばり付けられているこの状態でアブソーヘイズを移動させられたら――。

「ちょっとまっ――ででででででででででで!!」

 この様に引き摺られてしまう形になってしまうううううう!!

「ああ、そうか。この剣には持ち主と一定距離はなれられない呪いが付いていたな」

 やっぱり呪いだったのかよ!

「お前まで来てしまったが……まぁいいだろう。ん? クスクス、訳が分からないって顔しているな」

 当たり前だろ……。

「……こんな状況……理解しろと言うのが……無理がある」

「それもそうだな。長い長いとっても長かったこの計画、私だけの内に残しとくのも何か勿体無い気もする……これから死ぬ相手に語るのもあれだが、冥土の土産って奴で教えてやろう。クキャキャキャキャ!!」

 アナネットの口元が三日月のような笑みになった……そんなの今まで見たことがないぞ。

「500年前の魔天戦争、お前は天使、悪魔の痛み分けの様に思っているが本当は天使が圧倒的だった。だがその天使が天界に引きこもるほどの大打撃を与えたのは……この私なんだよ!」

「は!?」

「いい機会だ、教えてやろう。魔天戦争の終焉を、な」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「あそこが報告にあった悪魔共の隠れ家か、エリン」

「はい、ベデワル隊長」

「そうか……見たところ少数の様だな、強い魔力も感じない。……よし、ここはエリン、ジェイ、シルバに任せる」

「「「はっ!」」」

「残った者は私と周辺の捜索だ」

「「「「はっ!」」」」

 ベデワル隊長が残った4人の天使騎士を連れて行ってしまった。
 隊長の名に恥じぬ3m近くある大柄な体格なのだが……何故か羽根と天使の輪が他の天使と変わらないためどっちも小さく見えるし、サラサラの金髪で長髪も合間って本当に異質の姿すぎる……。

「あ~あ……ベデワル隊長ってばまた俺らに面倒くさい事押し付けて行っちゃったよ」

 赤髪の頭をガシガシと掻いてジェイがぼやく、同意見だけどもう少しベデワル隊長達が行ってからぼやいてほしい、もし聞こえていたら私達まで叱られるから勘弁してほしい。

「ジェイ~文句言わないの~命令だからしょうがないよ~ふぁ~」

 シルバが自慢の銀髪をかき上げてけだるそうに答えている、この娘、実力はあるのにいつもやる気のないな……。

「2人ともおしゃべりはそこまでです、行きますよ」

「へいへい」

「は~い」



「天使だ! 天使達が攻めてきたぞ!!」

「あ、淡い青色の長い髪に紫のリボン……あれはエリンだ! 虐殺のエリンだ!!」

 な!? 何て失礼な事を言う悪魔だ!

「キャハハハ、虐殺のエリンだってさ」

「しょうがないね~本当の事だし~」

 ……どいつもこいつも。

「――死ねぇええええええええ!!」

「ぎゃああああ!!」
「ぐあああ!!」
「ひぃ!!」

「エリンの奴、いきなりどうしたんだ?」

「さぁ~? ただあの殺意……一瞬こっちにも向いてたような~」

 さて後1匹いたはずだが、どこに行った?

「ん? あれは……――なるほど、隠し通路があったとはね」

 悪魔が隠し通路を造っていたなんて予想外だな。

「どうしたんだ? ――なんだこりゃ、通路か? うわ~中は広そうだな、で? この中を探すのか?」

「しかないでしょ」

「まじか……こんな汚い所に入ると羽が汚れるぜ」

「え~面倒くさい~」

 この2人は本当にやる気がないな……まったく。
 しょうがない、不本意だが【これら】を使うか。



「はぁはぁ……くそ、まさかここを襲撃されるとは……。何とか逃げださないと……っ誰だ!?」

「……俺だ……」

「何だ、お前か……良かっ――た、がっは! ……え? なっなん……で俺を刺し……て……ぐふっ」

「見つかったか? ――お~お~、やっぱりえげつい固有魔法だな、これ」

「だね~死体を操る能力なんて~とても天使とは思えない能力だよ~それじゃ死霊術だね~」

「わざとそんな言い方をしているでしょ、シルバ! 知っているでしょ、本来は自分の魂の欠片と魔力を外部へ送りもう一人の自分を具現化させる固有魔法だという事を!」

「そうそう、あの時は驚いたよな。その場所に偶然、悪魔の死体があってエリンが具現化せずに死体が動き出したからよ」

 やった本人が一番驚いたわ、背後の援護させようと使ったら血まみれの悪魔が援護していたんだから……。

「そして~その状態だと少量の魔力で数体を操れる事もわかったし~、一人の自分じゃないから固有魔法の制限もなく他の魔法も使えて戦闘が有利にもなると~本当にずっこい能力ですよね~それ~」

 ずっこいって……しょうがないでしょ。

「私だって死体を操るのは嫌なんです、でも今回は中が広いから仕方なく――」

「はいはい~わかってますよ~」

 駄目だ……まったく聞く耳を持っていない。

「はぁ、もういいです。2人とも周辺の探索をしますよ」

「へいへい」

「はいはい~ふぁ~」

 ……本当に大丈夫なんだろうか。



 ここは武器庫か。
 ふむ、なまくらな物ばかりだな……ちゃんと手入れを……ん? あれは――。

「この剣、魔力を感じる……。という事は魔剣か。何故こんな所に……」

 もしかして悪魔共が作ったのだろうか。
 だとすれば隠し通路といい、この魔剣といい、最近の悪魔は知識を持ち始めている?
 それが事実なら少々面倒くさい事になるな。

『それは私に対する問いでしょうか?』

「え? 剣がしゃべ……った?」

『はい、私はアブソーヘイズと申します』

「なっ!? まさか意思を持っている魔剣……なのか?」

『はい、私はジュラージ様に創造されました』

 ジュラージ……魔界での実力者の一人の名前だな。
 こんな物を作り出されていたとは……悪魔が作った魔剣か。なるほど……クスクス、面白い! 実に面白い物を見つけたぞ!! 
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