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第五章 最後の悪魔四天王「食火のフレイザー」

4 『サァサァサァ行コウ行コウ』

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 なるほど、この暑すぎる状態はこのせいか……。

「なぁここにバルガスがあったんだよな?」

「はい……そう、なんですが」

 見事に何も残っておらぬな、いやマグマの池ならあるか。

「う~む、これじゃバルガスがマグマにのまれた……くらいしかわからんの」

 十中八九フレイザーが起こした事なんだろうが、奴の能力でこんな事が可能だったか? 現状だと情報が少なすぎて予測すら出来んな……。

「ん~……お、ねぇねぇあそこに家が並んでるよ~」

「どこだ? ――ふむ、ふもとの村のようだな。煙突から煙も見えるし人はおるようだな」

 ここはこんなにひどい有様だと言うのに良く無事だったな。

「どうやら被害は出ていなかったようですね。何か情報が手に入るかもしれませんし行ってきましょう」

 はぁ~やっぱりそうなるよな……せっかく登ってきたのにまた降りるはめになるとは。
 といっても何時までもここにいても埒が明かんし仕方のない事か。



「人はいるようではあるが……外には誰一人おらんな」

 村はそれなりに大きいのに活気がまったくない。
 城が落ちてしまって魔王軍を恐れて引きこもっている、そんな感じにも見えるが。

「仕方ありません、一軒一軒聞き込みするしかないですね」

 ええ……何て面倒くさい事を。

「いや、それはしなくてすみそうじゃぞ。ほれあそこに」

「ん? あれは酒場か、確かに普通なら人が集まっておるだろうが……今のこの状態でにぎわっているとは到底思えんぞ」

 むしろ賑わっている方がおかしいと思うのだが。

「かもな。じゃが営業はしておるみたいだからマスターはいるという事じゃ、行ってみても損はなかろう」

「ふむ……そうだな、入るだけ入ってみるか」

「そうと決まれば入ろう入ろう! 酒~酒~っと、最近まったく飲めておらんからな~」

 それが本当の目的かい!!



「いらっしゃ……見たところどこかの騎士様みたいですが、こんな辺鄙な村に何用で?」

 何かめちゃくちゃ警戒しておるのだが。

「ああ、わしらはアルムガムの騎士じゃ、用事はフレイザーの討伐とここのお勧めの酒は何か、後バルガス城について聞きたいんじゃが」

 バルガス城の事が酒のついでって……。

「っ!? アルムガムだと!? バルガスを見捨てて逃げ帰ったくせによくまた顔を出せたな!!」

 うお!? マスターがいきなり怒り出しおったぞ!

「貴様等が逃げ帰った後城に居られたバルガス王は……兵士だった息子は……フレイザーの手によって他の悪魔ごとマグマに呑まれ……っ貴様等に飲ませる酒もなければ聞かせる話もない!! 早く出て行け!!」



 勢いのまま追い出されてしまった、が――。

「聞かせる話もないと言いつつ、それなりの情報があったな。やはりバルガス城はフレイザーの手によってあのマグマに呑まれて壊滅してしまったようだな」

 やはりあやつのした事であったか、しかし他の悪魔ごとだと言っておったがどういう事だ? 我輩の知っておるフレイザーはそんな派手な事は好まない陰険タイプなのだが……。

「後アルムガムが見捨てて逃げ帰ったと言っておったが――」

 「……それはディック隊です。バルガスの近くに魔界の門が出現しその対応のため、アルムガムからはディック隊が派遣されました。しかしフレイザーに奇襲され応戦するも敗戦……ディック隊は逃げ帰る形に――」

 ん? 魔界の扉だと? なんだそれは、我輩初めて聞くぞ。

「あ~話を折ってすまぬのだが……魔界の門ってなんだ?」

「え!? 本気を言っておられるんですか!?」
「は!? 勇者殿ボケるにはまだはやいぞ!!」
「デっデール様……こんな時にふざけては駄目です……」

 なんだ? 我輩そんな変な事を言ったか? ――その哀れみの目は何だ!?

「しっ知らないものは知らないのだから仕方がないではないか! ふざけてもおらんぞ!」

「は~い、アタシもわかんないんだけど」

 ほれ! ここにも知らない奴がおるではないか。

「エリンは生まれたてだから仕方ないよ」

 なんだろう……我輩とエリンとの対応の温度差が激しく思うのだが?

「名前の通りこの人間界と魔界をつないでいる門の事なの、話によると突然門が現れてそこから悪魔が大量に現れたらしいわ」

 へぇ……そうだったのか、我輩はてっきり皆魔法のゲートで人間界に来ているとばかり……アルフレドの奴、このような大事な事を何故言わなかったのだ!? おかげで物凄い恥をかいたわ!!

「……魔界の門の事はわかった、で話を戻すがそのディック隊というのは……」

「私の……父の隊です……父がフレイザーに敗れた為に残った部隊が撤退したそうです」

 やはりそうだったのか。

「あのさ、アタシはフレイザーの事全然わかんないけど」

「ああ、フレイザーというのは――」

「悪魔四天王「食火しょくかのフレイザー」、……見た目は人間の男性の容姿に見えるそうですが腰辺りから尻尾が2本、最大の特徴として火の髪が生えているそうです。固有魔法は火を生き物のように操り、火の髪を媒体に攻撃してきたそうです」

 名前の事を補足するなら食火の由来は火が物を食っている用に見える事からだが……こんな空気でいう事ではないな。そういえばあの火の髪は奴にとって最大の自慢だったな。

「媒体は常に己で作り出せる……か、厄介じゃのぉ」

「今回は私まったく役に立てそうにないです、この体じゃ簡単に燃え尽きちゃいますです」

 骨まで燃やし尽くす奴なんだから誰であろうと関係ないぞ……しいて言うならそれが速いか遅いか位の差だ。

「ベル、妙に詳しいね」

 何言っておるのだこいつは……今までの話聞いてなかったのか、そんなの当たり前だろ。

「フレイザーは父の敵だからね、情報を収集していれば詳しくもなるよ」

「あ゛、そうだった……ごめん……」

「ううん……」

「「……」」

 2人とも俯いてしまったぞ……ん?
 (勇者殿! この場をどうにかしろ!)
 (デール様! この場をどうしたらです!?)
 と2人の目線がそう言っている気がするんだが、いや! 我輩に言われても!
 え~とえ~と――ハッ! あれは!

「ア、アソコニ宿ガアルデハナイカ! アソコデ休モウデハナイカ!」

「オオ、ソウジャナ! 今度ハ酒場ノ様ニナラナイヨウニセネバナ!」

「ソッソウデス! 休ミツツ今後ノ対策ヲ練リマスデス!」

「「「サァサァサァ行コウ行コウ!!」」」

「あ、う……うん」

「そう……ですね……行きましょう」

 よし、これで何とかこの場を凌げたぞ……凌げた……よな……?
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