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第四章 悪魔四天王「斬風のバルフライ」VS豪拳

6 『この歳でも譲れないものはあるんじゃよ』

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「で、何があったのだ?」

「ダリ爺を見つけて印を付けながら追って、それからダリ爺の元に駆けつけたんだけど……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ダリ爺!」

「エリン!? 何故ここに!?」

「何故って助っ人に来た……ってちょっ何するの!? 何で頭を握るの!? 痛い痛い痛い!!」

「勝負の邪魔じゃ! お前さんはおとなしくあっちで――」

「え? わっ! わっ!?」

「見とれぇ!」

「ぎゃあああああああああああああああああああああ!! ハブッ!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「とまぁそんな感じでここに投げ飛ばされちゃって……」

 なるほどな、だからこんな雪だるま状態だったのか。

「無鉄砲につっこむからそうなるのだ」

 馬鹿は置いといて、え~と爺さんは~いた……――っ!?バ ルフライも目の前にいるではないか!
 そうか、それでエリンの奴が爺さんの所につっこんでいったのか。

「おい! 爺さん!」

「やはり勇者殿達も来たのか。すまぬがここはわし一人でやさせてくれんかの」

「いやしかし――」

「この歳でも譲れないものはあるんじゃよ」

 あの真剣な眼……理由は良くわからぬが、これは邪魔をするのは無粋……そんな気がする。

「わかった、だがもしもの時は我輩達が出るからな」

「了解了解」

 本当にわかっておるのか……。

「それにしてもあの2人がいる所……湖が凍った上みたいだが、やたら明るいのは何故だ」

「恐らく光石を砕いたものを湖にばら撒いたのでしょう、いつでも相手を迎え討つ為に……」

 バルフライらしいな……ん? そういえばまだ2人が戦った様子がないぞ。
 それに爺さんのあの篭手……今まで見たことがないものだが、なんだ? 魔石がくっ付いているのか?

「あれは【豪魔の篭手】!? 何故!?」

 む? ベルトラは知っていて当たり前だろうが、何故そんなに驚いているのだろうか。

「あれはなんなのだ?」

「あれは全盛期にダリル様が使っていた魔具【豪魔の篭手】です。魔力を身体強化にする補助をするための魔具なのですが」

 そんな物があったのか……って、んん!?

「おい! ちょっとまて! 何故そんなものがあるのにフィゲロアやアディアの時に使わなかったのだ!?」

「本来なら使おうにも使えないんです」

 ……意味がわからんぞ。

「豪魔の篭手の強化はあまりにも強力すぎて今のダリル様のお体では耐えられないのです」

 あんな屈強な体なのに耐えられないって……どれだけの強化をするのだ、あれは。

「しかし、今見る限り豪魔の篭手は起動しているようですしダリル様の体も異常は見当たりません。一体どうしてでしょうか」

 ふむ、確かに。

「っ! まさか!?」

 今度はフェリシアが驚いておるし、あれか? あの時渡していたものと関係があるのか?

「さて温まってきたか……バルフライよ、待たせてしまったな」

「かまわぬ、双豪の噂は、聞き及んでいた、貴殿の全力、という奴が、気になった、だけだ」

 爺さんが力を出すのをバルフライが待っていた訳か……相変わらずの変人だな。

「もう、戦闘と、判断しても、良いか?」

「おう、手加減はせぬぞ!」

 バルフライが魔剣を抜いた、反りがあり刀身の片側に刃……何度見ても変わった刀剣だな。
 そういえばあれをどこで手に入れたのか聞いた事なかったな、そもそも聞いたとこでバルフライが答えるように思えないが。

「では……参る!!」

「うおっ!?」

「うそっ!? 今何が起こったの!?」

 相変わらず速い、一瞬で爺さんの背後に回りこんだ……まさに風だな。

「……本当に速いのぉ……目で追えなかったわい」

「その割には、我の剣を、紙一重で、避けていた、様だが?」

 なんだと!? 回り込んだのではなく爺さんが避けただと!?

「いやはや、長年の勘……というのかの。とっさに体を動かしたのが吉となったわ」

「勘で、我の剣を、避ける、とは、な!」

「っと! 危ない危ない、わしも負けてられんの! おりゃああああ!!」

 バルフライの動きに爺さんが反応して避け反撃をしていたりとすごい戦いをしておる……はずだろうが、バルフライが見えないせいで爺さん一人が変な踊りをしているようにしか見えない。

「なぁ、ベルトラ」

「なんでしょう」

「あの2人の戦いが見えるか?」

「いえ、バルフライの方はまったく……ただダリル様が不思議な踊りをしているようにしか……」

 ですよねー。

「いけ! そこだ! ああ! 危ない! ダリ爺がんばれぇ!!」

「エリン、お前見えているのか? ……あれを」

「え? うん全部が全部じゃないけど」

 こいつの目は一体どうなっておるのか。

「……」

 フェリシアがずっと青ざめた顔で見ておるが戦闘というよりは爺さんに対して何かしらの不安を持っている様に見える……あの時の事に関係しておるよな。

「フェリシア、ちょっといいか」

「……」

 ダメだ、完全に聞こえてない。では今度は体を揺らしつつ――。

「おい! フェリシア!」

「っ!? っふぁい!? ……つ~~」

 驚いて舌を噛んでしまったか、悪い事をしたな。

「すまん、大丈夫か?」

「……ふぁい、すみまふぇん。大丈夫でふ」

 本当に大丈夫なのか? ろれつが回ってない気がするのだが……まぁいいか、話を進めよう。

「実はフェリシアが爺さんに何か渡していたのをたまたま見かけたのだが一体なんなのだ?」

「あ、見られてたですか……」

「デール、覗きはサイテーだよ」

 覗き何ぞしてねぇよ!!

「たまたまといったろうが!! たく……でだ、戦いが始まる前に何か心当たりがあるようだったし、豪魔の篭手が使えているのも関係するのだろう?」

「はい、ダリル様にお渡したのは一時的に肉体を活性化させて魔力を増加させる薬です」

 肉体を活性させ魔力を増幅、か……。

「なるほど、それで豪魔の篭手で耐えておったのか。しかし肉体の強化をうがなす薬ならそこまで心配なかろう」

 と言うか、この薬があれば我輩達の全員の強化になるのではなかろうか。

「いえ、無理やりに肉体を活性化させていますので効果が切れると体への負担が掛かります。……なのでダリル様にお渡しするのは……躊躇しましたです……」

 そうなのか、フェリシアが躊躇をする物を我輩達が使うのは無理か……もったいない。
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