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第三章 オアシスの魔女と悪魔四天王の魔女「暴水のアディア」

4 『貴様はもう少し遠慮というものを覚えろ!』

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「あ~食べた食べた~お腹いっぱい~もう動けない~……うえっぷ」

 そりゃあれだけ食べればそうなるに決まっておるわ、そんなに腹をパンパンにさせおって……部屋に運ぶのに一苦労したわ。
 はぁ、とりあえずあんなダルマはほって置いて、だ。

「皆いいか、先ほどの夕食で気になる事があったのだが」

「あ、私も気になる事がありました」

「同じかどうかわからんが、わしもじゃ」

「え!? そうなの!? ……うえっぷ、今動くと危ない……」

 やはりこいつ以外は疑問を持っていたか……。

「……エリン、貴様は参加しなくてもいいからフェリシアの動向を感じ取っておけ。先ほどみたいに話の最中に来られては困るからな」

「うい~了解~……うえっぷ」

 これでゆっくり話せるな。

「それでは、まず我輩からでいいか?」

「はい」

「おう」

「……うえっぷ」

 エリンよ、それで返事するのはやめてくれ……。
 こっちも飯の後なんだぞ、まったく。

「……我輩が思ったのは夕食の種類だ、主に野菜ばかりだった。あれだけの野菜をこんな砂漠で作れるとも思えん、貯蓄するにしてもそのような部屋はなかった……それに一人の少女があの量を食べるとは到底思えない」

「そう? 普通だと思うけど……うえっぷ」

「貴様は異常なのだ! そもそも貴様はもう少し遠慮というものを覚えろ!」

「夕食の事もエリンの事もデール殿に同意ですね」

「ちょ!? ベル!? ……うえっぷ」

「なので地下室でもあるかと足音に気を付けていましたが、床には変わった所はありませんでした」

 ベルトラは足音で調べていたのか。
 床下か……そんな事まったく思っておらんかった、我輩は家の部屋しか見てなかったぞ……。

「ふむ、二人とも同じ考えだった様じゃな、夕食の事もエリンの事も」

「ダリ爺も!? ……うえっぷ」

「あと明らかに野菜は新鮮じゃった、採れたてとしか考えられんほどにな。じゃからこっそり窓から外を覗いたが畑らしきものはなかったぞ」

 そうなのか、新鮮かどうかなんて考えずに食っていた……というか魔界でもそんな事考えずに食っておったわ。
 というか人間界のメシはベルトラ飯を除きうますぎるよな……魔界では味わえなかった美味……。

「夕食の他では……フェリシア殿が最初からフードを深々と被っている事が気になってはいましたが、夕食時の時でもずっと被ったままでしたね」

「え?」

「え?」

「あ……ああ、うん、そっそうだな、その辺気になるな」

 フードを深々と被っているという事に違和感を感じていなかった、アナネットのせいで感覚がマヒしている……そうだよな、普通家の中、ましてや飯食っている時まで被っているのはおかしいよな。

「そんなに顔を見られたくないのでしょうか?」

「う~む、何かしらの事情があるかも知れないし……そこについては人それぞれじゃしな」

「それもそうですね、私達がいるせいで脱がなかったかもしれないですし……」

 ……アナネットも何かしらの理由があったのだろうか。

「後はこの部屋の藁の事じゃな、夕食同様一人暮らしなのに量が多すぎる」

 この藁っておかしかったのか!? 我輩はただただ砂の上よりはるかにましとしか見てなかったぞ。

「ふむ、やはりフェリシアが魔女で何かしらの方法を使って食料やこの藁を増やしている……と」

 多少強引な考えもするが……。

「ね~ね~そんなに不思議なことなの? 固有魔法があるじゃん」

「固有魔法は魔法や特定の媒体を強化するものであって、物の増殖なんぞ出来ん」

 ただ……何かしらの方法で増殖が出来るから魔女と呼ばれている可能性もあるが。
 って、もう腹が引っ込んでいる!? 消化するのはや!!

「は~なるほ……――っ!?」

「うお!?」

 エリンが急に起き上がるからびっくりしたではないか。

「いきなりどうしたのだ!? フェリシアがこっちに来たのか?」

「ううん、違う……」

 フェリシアではないのか。

「では何が――」

「……何? この大群の足音……」

 なんだ? エリンが珍しく緊迫した顔に……この顔はベルトラ飯に自分の嫌いな食べ物を入れているのを見た時と同じだな、ベルトラ飯+嫌いな食べ物まさに悪夢。
 その悪夢は置いといて、足音だと?

「えっと……足音ですか?」

「特に何も聞こえないがの……」

 ベルトラも爺さんもエリンの急変にびっくりしている。

「何かの大群がこっちに向かって来てるんだよ!」

「あ! ――おい! エリン!?」

 あやつ、外に文字通り飛び出して行ったが一体なんだというのだ!?

「エリンはどうしたのでしょうか!?」

「わからん! とにかく後を追うぞ!」



 いた! 良かった、家の前にある岩に身を隠すように体勢を低くしておる。そのまま空を飛んでいかれては見つからないとこだったぞ……。
 む、エリンがこっちに気が付いたみたいだ、手のひらを上げ下げして……そして仰いでいる? で、それの繰り返ししているが……あいつは何をしておるのだろうか。

「どうやら身を低くして、こっちに来いって言っておるみたいじゃな」

 ああ……なるほど、だったら口で言えばいいものを……面倒くさい奴だな。

「どうしたのだ? エリン、急に外に飛び出して」

「何事ですか!?」

「しっ~! 静かにして! 声が大きいよ、あいつ等に聞こえちゃう!」

 手で呼んでいたのは声を出さない為か、しかしお前の声が一番でかいから意味がない気がするのだが。

「……あいつ等とは誰の事だ?」

「あれを見て!」

 何かに向かって指を刺しているが。

「あれといわれても暗くて何も見えんだが……」

 日が落ちているから辺りはもう真っ暗、この家以外周りに建物が無いから明かりもないし。しかも曇っているせいで月はおろか星の明かりもない、まさに漆黒……。

「私も全然見えないです……」

「わしなんて特に見えんわい」

 みんなそうだよな。

「なんでみんな見えないの!? 曇の間から出ている月や星の光があれば見えるでしょ!?」

 そんなもので見えるかぁああああああああああああああ!!

「アホか!! 普通の人間がそんなもので見えるわけあるか!! 見えるのは貴様だけなんだから何がいるのか早く答えんか!」

「あ~も~! あそこに悪魔の軍団が進んでいるんだよ!」

「なぬ!? 悪魔!?」

「なんですって!?」

「っ!? 悪魔じゃと!?」

 エリンが指刺すあの漆黒の先に……悪魔の軍団がいるだと!?
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