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終章 二人の書~ケビンとコレット~

二人の書~【ケビン】とコレット・7~

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 まさか、ナシャータが白の竜ホワイト・ドラゴンだったとは。
 にしても、この竪穴の中で白い物が山みたい盛り上がっている……この光景ってどこかで見たような……。

『……ああ! あの時に見た白い山はナシャータだったのか!』

 なるほど、穴の中に進めなかったのはナシャータ……つまり、ドラゴンがいたせいで本能的に危険を感じていたせいか。

《どうじゃ? わしの姿は?》

 どうと言われても……さすがに驚くわ。
 ただ、大きくなったせいで鼻栓が取れたのか自分の爪を自分の鼻に突っ込んでいる姿はかっこうが悪い。

『ああ、すごく驚いたぞ……』

 姿はドラゴンでも中身はナシャータだ、変な事を言ったら怒りそうだから言わないでおこう。

《そうじゃろ、そうじゃろ》

 口調の事も、この姿を見てわかった。
 ジゴロ爺さんの先祖はドラゴニュートのナシャータにじゃなくて、白の竜ホワイト・ドラゴンとしてのナシャータに意見したんだろう。
 確かに威厳が出る感じはするが……別にこだわる必要は無かった気がするんだがな。まぁジゴロ爺さんの先祖だし仕方なか。

「で? そんな大層な姿になったが、何をしようというんだ」

 俺はナシャータの存在に慣れたのか、スケルトンとしてモンスターになったからなのか動揺はそこまでないが……グレイ、いくら何でも落ち着きすぎると思うぞ。
 コレットなんてへたり込んでいるのに。

《今から霊界の門を無理やり開けて、あやつの魂と不死者達を霊界に帰すのじゃ》

 へぇードラゴンってそんな事までできるのか、すごいな。

「……霊界の門……ですか……?」

《そうじゃ、じゃが事を始める前に……ケビン、今からお前に魔力を送るのじゃ》

『魔力を?』

 ナシャータが俺の頭に指を乗せた。
 人形になった気分だな。

《――っ。これで良いのじゃ》

 【母】マザーの魔力を得たような感じがするな。

『これに何の意味が?』

《ケビンを押さえつける時にバラバラになってしまうと、意識が飛びケビンの魂が霊界に吸われる恐れがあるからじゃ》

『……? それはどういう――』

「――うぎぎぎ! プハッ! やっと中が見えれたっ……ス……えっ!? 白の竜ホワイト・ドラゴン!?」

 相変わらずのタイミングで出て来るな、おい。

《っと、あやつが顔を出したようじゃ。逃げられる前に……》

 ナシャータがファルベインに手を伸ばした。

「ちょっ!? ――何をするっスか!? この手を離すっス!」

 で、鷲掴みにした。
 ……おい、まさか!

『お前、そのまま握りつぶすのか!?』

 そんな所をコレットに見せられるかよ!

《無駄な殺生はせぬのじゃ! それよりもお主等、ケビンを押さえているのじゃぞ!》

「あん?」
「えと、それは……」

 さっきも言いかけていたが、なんで俺が押さえつけられないといけないんだ?

《行くのじゃ! ――ヒラケッ!》

 ナシャータの目の前に、丸くて黒いトンネルみたいなのが出て来た。
 あれが霊界の門なのか? 門ってか、ただの穴の様にしか見えないが……。

「なっなんっスか? あの穴に吸い込まれる感覚が!」

 でも、ファルベインに効いているみたいだ。
 なんだ、簡単に終わりそうじゃないか。

『……ん?』

 はて、俺の体が何かおかしいような……。

『――ちょっ!』

 体が勝手に霊界の門の方へ歩いて行っているぞ!?

『この! 止まれ!』

 駄目だ、まるで寄生の鎧に操られている時みたいに、体が言う事を聞かない。

『っ!』

 よく見たら、周りの不死モンスター達も次々と霊界の門へ歩いて行っている。
 これと同じことが俺にも起きているのか!?

「ん? ケビン、どこへ行くんだよ?」

『どこも行く気はねぇよ! 体が勝手に動くんだ!』

「は? 何冗談を……」

『冗談じゃなく本当なんだって! 止めてくれ!』

 でないと、霊界の門に入ってしまう!

「……おいおい、マジかよ。みんなケビンを取り押さえるぞ!」

「あっはい!」
「も~なにやってんの~」

『ぐへっ!』

 みんなに地面へ押さえつけられたが……俺の体は這いずって前へ進もうとしてやがる。

『ナシャータ! これはどう事だ!?』

《ケビンも死者じゃ。無意識にこの門を通って霊界に帰ろうとしておるのじゃよ!》

 俺の意思関係ないのかよ。
 さっき言っていた、押さえつけられた時にバラバラになるってこういう事だったのか。

「それを早く言えよ!」

「まあまあ、簡単に押さえつけられましたし、これ以上は動けないからいいじゃないですか」

 コレットに簡単にと言われてしまった。
 それはそれで情けない。

「ぐぬぬ! この手を離せっスよ! 俺は霊界なんぞに行かないっス!」

 ……あいつ、まだこの世にいたのか。

《しつこい奴じゃな! いい加減、生者にしがみついておらんでさっさと霊界に帰るのじゃ!》

「お断りっス!」

 早くこの状態から解放されたいんだがな。
 もうしばらくかかりそうだ……。

「ん? おい、ケビン……お前は一体何をする気なんだ?」

『何をってなにが……あれ?』

 なんで俺は自分の頭を取って、手に持っているんだ?

『……あっ! これって、まさか!』

 ――ブンッ!

『やっぱりかああああああ!』

「えっ!?」
「ケビンさん!?」
「お~きれいにとばしたな」

 俺の体が、俺の頭を霊界の門に向けて投げやがった!
 動けないから、体が頭だけでも霊界に帰そうとしたのか? 自分の体とはいえなんて事を!
 ああ……これはどうしようもない、終わっ……。


「ケビンさん! 逝っちゃ駄目ええええ!!」


『――っ!』

 そうだ! コレットにまだ告白していないのに、こんな形で終わってたまるか!
 こうなりゃ一か八か!

『っナシャータ! 羽を広げろ!』

《んあ!?》

 ――バサッ!

 やった! ちょうど目の前に羽が出た!

『――ハグッ!!』

《あいたっ!?》

『――フグウウウ!!』

 死んでもこの歯は離さんぞ!

《あだだだだ! こら、ケビン! そんなに強く噛むな!》

「ケビンのやつ、ナシャータの翼に噛みついて飛ぶ勢いを止めたぞ」

「……良かった……」

《良くない! わしの翼に歯型がつい――》

「くそおお、もう……限界……っス!〉

《――! やつの魂が出て来たのじゃ!》

 何だっていい、早く終わってくれ!
 顎がメキメキって言っているんだよ!

〈こんな……ところで俺が……この俺が!!〉

《霊界に帰るのじゃ!》

〈――ちくしょおおおおおおおおおおおっス!〉

《よし、奴が門の中に入ったのじゃ! ――トジヨッ!》

「……門が閉じていくぞ……」

「という事は、終わったんでしょうか……?」

 ……終わった?

『はが……』

 ――カラーン

「あっケビンの頭が落ちたぞ!」

「ケビンさん!」

 コレットとグレイが走って来た。
 ポチに押さえつけられている体も感覚がある。
 やった……やったぞ! 俺は生き残ったんだ!

「ケビンさん大丈夫ですか!? 中身はいますか?」

 コレットが俺の頭を拾い上げたから、コレットの顔が目の前に。
 ――っ今こそ、俺の気持ちをコレットに言うんだ!

『――コレット! 君を一目見た時から好きでした! 結婚を前提に俺と付き合ってくださいっ!』
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