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終章 二人の書~ケビンとコレット~

二人の書~【ケビン】とコレット・4~

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 それにしても、あいつが死霊魔術師ネクロマンサーねぇ……人は見かけによらんな。
 そういえば、あいつがガントレットを付けた時に俺の体に静電気が流れた様な感じがしたが……もしかして、あれが死霊魔術ネクロマンシーだったのかもしれんな。

「あれ? そんなすごい力があるのなら、自分の体を操ればいいんじゃ?」

 確かにコレットの言う通りだ。
 自分で言うのもなんだが、俺なんかを操るより遥かにその方が強いものな。

「出来るならそうしたかったっスよ。でも、あれから約200年も経ってるっスよ? 俺の体なんてとっくの昔に塵になっててなーんも残ってないっス」

「あ~なるほど……」

 さすがの魔神の肉体でも、200年もの年月には勝てなかったか。

「それで考えたわけっス。俺の肉体が駄目なら、それに匹敵する力をもつ者を操ればいいと! この時代だと、それがドラゴンだったっス! そして俺は、各地でドラゴン探しをしているっス!」

 は? ちょっと待て。
 なら、どうしてこいつは白の遺跡に来ているんだよ?
 ドラゴンとこの白の遺跡は全く関係ないぞ。

「ぬおおおおおおお……」

「ごしゅじんさま、だいじょうぶですか?」

 ……ある意味、力のある存在はそこでうずくまってはいるが。
 つか、いい加減ナシャータをこんな状態にしとくわけにもいかんな。
 うーん、どうしたものか……洗濯ばさみは、今の騒動で無くなってしまったし……あっそうだ!

『ポチ。お前の羽織っている布を少し破いて、ナシャータの鼻に詰めろ』

 鼻栓なら洗濯ばさみの代わりになって、復活できるだろう。

「それでごしゅじんさまはなおるのか? わかった、やってみる」

 治るって、匂いは怪我じゃないんだから……まぁナシャータにとっては怪我の方がましだったかもな……怪我なら治癒力が高いからすぐに治る。
 しかし、香水となるとそうはいかない。その匂いは中々落ちないからな……しばらくは、その苦痛を味わい続ける事になってしまう。

「情報のあったドラゴンのいる場所に行っても、巣が空っぽだったり、まだ生きていて手が出せなかったりと収穫がまったくない状態っス」

 そりゃそうだ、生きているのは当然無理として、ドラゴンの死体も無理だ。
 なにせ、ドラゴンの死体は発見されたことが無いからな……光になって消える、火山の中へ入りこの大地と溶け込む、霊界の門を開けて霊界へ行く、と言った色んな説がある。ジゴロ爺さんも研究対象にしてたけど結局謎のままだったな……。
 というか、そんな事も知らんのかこいつは。

「そして、数日前にこの白竜の遺跡に来たっス」

『……ん?』

 今こいつ、白竜の遺跡って言ったよな。
 あれ? 俺は白の遺跡に居るはずなんだが……いつの間に白竜の遺跡って場所に来たんだ?
 それとも、俺の勘違いか聞き間違いをしたか?

『なあ、グレイ。ここは……白の遺跡で良いんだよな?』

「あん? 何を言って……ああ、そうか……お前にとっては、ここはまだ白の遺跡だわな」

『その言い方だと……』

「そうだ、今は白竜の遺跡って呼ばれている。お前が見つけた隠し通路の先に、ドラゴンの巣があったんだよ」

『なんだと!?』

 この白の遺跡にドラゴンの巣があったのかよ! しかも、俺が見つけた通路の先に……。
 じゃあ、なにか? あの時落とし穴に落ちていなかったら、その巣は俺が見つけていた事になるじゃないか。
 だとしたらギルドの貢献度が上がっていたのに、なんて勿体ない事を!

「おおい! まだ俺がしゃべってるっス! そんな事なんてどうでもいいっス、ちゃんと俺の話を聞くっスよ!」

 どうでもよくないっスよ。
 臨時報酬も貰えたのにな……とほほ……。

「そして、いつもの様に遺跡前でドラゴンゾンビかスケルトンとして復活させようと死霊魔術ネクロマンシーを使ったっスが……何故か急に魔力が乱れはじめ暴走してしまったっス」

 魔力の乱れ?
 あー、【母】マザーの魔力が干渉したかもしれんな。

「そのせいで魔力のガントレットの魔力は無くなるわ、ドラゴンゾンビもスケルトンも出てこないわで損だけしかなかったっス」

 そもそも、俺が生きていた時でもこの遺跡でドラゴンなんて見た事ねぇし。
 死体もあるわけがないっての。

「もはやどうしようない状態になったんで、仕方なく情報を得にリリクスのギルドに行ってみたっス……」

「……で、俺らの話を盗み聞きしたってわけだ」

「失礼な、たまたま聞こえて来ただけっスよ! ただ……見れば四つ星級がいるじゃないっスか。もしかしたらドラゴニュートの体を手に入れられるかもしれないし、魔力の補充か装備を造れるほどのレアを手に入れられると思ったっス」

 せこい。
 こいつ魔神のくせに、他人任せとは実にせこい。

「それで、あんなに頭まで下げて必死に付いて来ようとしていたんですね……」

 魂のままで彷徨ってたり、魔神が人間に頭を下げたりと執念だけはすごいみたいだがな。

「……なるほど、ゲホゲホッ! あの気持ち悪い魔力を出していたのはお前……じゃったのか」

 お、ナシャータが復活した。
 まだ弱弱しいが、鼻栓が効いたみたいだな。

「おかげで……最悪の目覚め方じゃったぞ、ゲホッ!」

 そうか、ナシャータが目覚めた理由はこいつの死霊魔術ネクロマンシーのせいだったのか。
 
「じゃから、イラついて……わしの魔力をぶつけて、乱してやったのじゃ」

 【母】マザーじゃなくて、お前の仕業かよ!

「……はあ? お前のせい魔力で暴走したっスか!? なんて事をしてくれたっス、それで大変な事になったっスよ! 不死モンスター達が勝手に増えるわ、俺の言う事を聞かないわで! もはや、逃げるしかなかったっスから!」

 おーい! 魔神が不死モンスター相手に逃げるなよ!
 ……ナシャータの時と同じように、俺の中で魔神の格がドンドン落ちていっている。
 上級モンスターって、実はたいしたことはない?

「ちょっと待て! ここ数日起きていた、不死モンスター達の活性化騒動はお前等が犯人だったのか!?」

 地上では、そんな事が起きてたのか。
 もしかして、遺跡で起きたスケルトン狩りもそのせいなんじゃ……?
 だとしたら俺も火の粉が飛んで来ているじゃないか! なんて迷惑な話だ!

「俺のせいじゃないっス! こいつのせいっス!」

 ナシャータに指を指す魔神ファルベイン。

「何を言うのじゃ! お前がわしの眠りを妨害したせいじゃろうが!」

 魔神ファルベインに指を指すナシャータ。

「いや! お前のせいっス!」

「いやいや! お前のせいじゃ!」

 ドラゴニュートと魔神ファルベインが口論をしているという、すごい光景……。

「いやいやいや! お前のせいっス!」

「いやいやいやいや! お前のせいじゃ!」

 のはずなんだが……ビジュアルでは、ビキニの少女と赤髪のチャラ男が責任のなすりつけ合いで喧嘩をしている様にしか見えん。
 傍から見ると、滑稽にもほどがあるぞ。
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