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14章 二人の真実

コレットの書~真実・4~

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「いやいや! 出て来たのはスケルトンじゃないですか!」

 ケビンさんに会えると思ったらこれだよ!
 何でいっつも邪魔ばかりするのかな!?
 もう怒った、今日という今日は許さないんだから!

『カタ! カタカタカタ!』

 このメイスに、私の怒りを乗せ――。

「武器を下げろ」

 ――てっ!?
 なんで止めるのよ!

「どうやら、そのスケルトンがケビン……って、何で前歯が1本無くなってんだ、お前……」

 ……え? 目の前にいるスケルトンがケビンさんですって?
 いやいや、グレイさんってば何を言っているのよ……そんな冗談……。

「……」

 グレイさんが今まで見た事もない真剣な顔をして、スケルトンを見ている。
 とても、冗談を言っている様には見えない。
 
『カタ? ……カタカタカタ! カタカタカタカタ!!』

 あのスケルトンも、グレイさんの言葉に反応して前歯を触っているし。
 嘘……まさか……本当にそうなの? あのスケルトンが……ケビンさん?
 これって夢じゃないわよね?

「……いふぁい」

 ほっぺを引っ張ったら普通に痛いという事は夢じゃない。
 え? これはどういう事なの? これはどう状況なの? 全然頭が纏まらない。
 てか、こんな時にスケル……もといケビンさん? の歯を気にしているグレイさんも何を考え……ん?

「……歯? ……あっ!」

 あの時、体にくっ付いていた歯って……まさか。

「どうした、コレット」

「イッイイエ、ナニモ! アハ、アハハハハ!」

 いやいや、あの1本の歯くらいでそうと決まったわけじゃない。
 それにあの歯はジャイアントスネークに食べられた後に付いた物のはずだし、そんな事が――。

『カタカタ! カタカタカタカタカタカタカタ!?』

「ん? ヘビに食われた後じゃな。ポチはちゃんと全部拾ったらしいのじゃが……」

『カタカタカタカタ、カタカタカタカタカタカタ!?』

「お前は物を食べないし、前歯1本無くても問題はないじゃろが」

「……ヘビに食われた後?」

 ――あった。

「……ああ、やっぱり……」

 ケビンさん? もジャイアントスネークに食べられていたのと、何故か嫌な予感だけはよく当たる私の感で考えると、あの埋めた歯はケビンさん? の可能性が非常に高い。

「やっぱりって……どういう事だ?」

「うっ!」

 どっどうしよう! ケビンさん? にとって歯はとても大事にしていたみたい……あのドラゴニュートに向かって文句を言っていたみたいだし、だとしたら「歯は私が地面に埋めちゃいました」なんて言えるわけがない。
 かと言って、このまま追及されるのも辛いし……ええい、こうなったら。

「そっそれよりも! あのスケルトンがケビンさんってどういう事なんですか?」

 話題を変えてしまおう! どっちにしろこれは重要な事だしね、うん!
 ……で事が終わり次第、街に戻って、こそっと歯を掘り出して、こそっとどこかに置いておこう。

「ああ。この手紙によるとだな……」

 ふむふむ。

「ケビンはここ数日前に目覚めたそうだ……」

 なるほど。

「で、どういう訳かスケルトンになっていたんだとよ」

 そういう事……って。

「えっ!?」

 それで終わり?
 何の解決にもなってないし!

「その話――」
「――その話は本当の事ですかな!?」

 ジゴロ所長さん、お願いだから最後まで言わせて下さいよ。
 しかも、そのままケビンさん? の方へ走って行っちゃったし。

「ほうほう! ふむふむ! んーこの目は見えているのですかな!? 私の声は聞こえているのですかな!?」

 ケビンさん? の周りを目を輝かせながらウロチョロしている。
 まるで新しいおもちゃを買ってもらったばかりのヘンリーみたい。

「この関節の部分は――」

「そこまでだ。――よいしょっ!」

 グレイさんがジゴロ所長さんを捕まえた。

「なっ何をするですな!? これをほどくですな! まだ調べないといけない事――もがっ!」

 そして、体をロープでグルグル巻きにして猿轡まで……さすがにやりすぎの様な気もするけど、これくらいしないと止まらないからね、この人は。

「これでよし、すまんが今は大人しくしていてくれ、じゃないと話が前に進まん。……さて、この手紙の字は間違いなくケビンだが、内容についてはまだ半信半疑なんだ……お前は本当にケビンでいいのか?」

 グレイさんは全てを信じきっていなかったのね。
 それに比べ私は夢じゃなかったからって、ほとんど信じきってしまっていた……。

『カタ、カタカタ』

 ……。

「……本当に、ケビンなのか?」

『カタカタ、カタカタカタカタ』

 うん、カタカタ言っているだけでまったくわからない。

「……」

『カタカタ、カタ……』

「だあああああ! さっきからカタカタと鳴らしやがって! ちゃんと俺の質問に答えろ! やっぱりお前は偽物か!?」

 ちょっグレイさんがキレた!

『カタ!? カタカタカタ、カタカタカタカタカタカタ! カタ、カタカタカタカタカタカタ……カタッ』

 質問に答えろって、骨だから声が出ないと思うんだけど。
 もしかしてグレイさんってば、見た目ではわからなかったけど内心はこの状況に動揺していて、そんな簡単な事にも気付いていないんじゃ。

「あの~グレイさん……ケビンさん? はスケルトンですから、声が出ないと思うんですけど……」

「……あっそうか……」

 やっぱりそうだったみたい。
 歯は気になったくせに、声には気がついていないって……。

『――!』

 あ、ケビンさん? が両手で丸を作った。
 思った通り……じゃなくて見た目通りのままね。

「どうやら当たりみたいだな、ケビン? が両手で丸をしていやがる。お前、そんな大事な事はちゃんと書いておけよ!」

 いや、その前にわかるでしょ!

『カタカタカタ!』

 それよりも、これは困ったわね。こっちの言葉は通じても、ケビンさん? の言葉がこっちに通じないんじゃ結局はわからないまま……どうすればいいのかしら。

「じゃあ何か? この手紙みたいに筆談で会話しろってか?」

 あっなるほど。
 その手があったか。

「……勘弁してくれ……解読しながらだと時間がかかるぞ」

 それは嫌だ。
 いい案だと思ったんだけどな~私もその解読が出来ればよかったんだけど……う~ん、やっぱりこの字は読めない。

「そんな面倒くさい事をせずとも、ケビンの声がお主等に聞こえる様には出来るのじゃ」

 えっそんな事が出来るの?

「……そういえばお前は会話しているものな。それはどうやるんだ?」

 確かにケビンさん? とドラニュートは普通に会話してたわね。
 にしても、私達にも聞こえるようにってどうやるんだろ? 例えば私達がゾンビ化させるとか?

「……」

 うん、想像するだけで恐ろしいから止めよう。
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